昨日6月11日は鍵和田秞子の2年前に亡くなった日でした。
私の愛読しているふらんす堂編集日記にこの記事が紹介されていました。
藤田直子著「鍵和田秞子の百句」より。
かの夏や壕で読みたる方丈記 『光陰』 平成6年
「かの夏」は戦時中の夏である。女学生だった秞子は家族と共に平塚に居た。空襲警報が鳴る度に防空壕に入ったが、戦況が激しくなった頃、壕の中でいつも読んでいたのは鴨長明の『方丈記』だったと言う。無常観に貫かれた『方丈記』をその齢で正しく理解していたかどうかは分からないが、と回顧している。しかし、平安末期の大火や地震や飢饉等の災害の中で無常観に至り、閑居の楽しみを見出した長明の思いや生き方は、戦争という不条理の只中に立たされていた者にとって一条の光明であっただろう。
秞子が文学を志す契機の一書が『方丈記』であった。
★★★
ふらんす堂の短歌日記、俳句日記もおすすめです。 佐保子