
壮絶な闘いの記録だ。
本を開いてから一気読みした。
2016年シーズン、開幕からレギュラーに抜擢されたアルビレックス新潟の早川史哉選手。
急性白血病の診断を受け、長い闘病生活に入った。
そして、今月、3年7か月ぶりに公式戦に出場し、ついに戻ってきた。
その早川史哉選手が著した本が、昨日の試合前、スタジアムで発売されていた。
「そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常」(早川史哉著;徳間書店)
大変なことがあったけど、負けずにがんばって戻ってきました。
めでたし、めでたし。
…というような本かというと、断じてそういう話ではない。
この本には、彼の闘病の記録があますところなく描かれている。
その闘いがどれだけ過酷なものであったか。
一人の人間として、病をどう受け止め、どんな症状になり、どう向き合い、どんな思いで生きてきたか。
起こった事実とその時の心情を包み隠さず語られていた。
読んでいくだけでも、彼の切ない思いが痛いほど伝わってきた。
時々泣かずにはいられなかった。
病と闘い、Jリーガーとして復帰を果たすまで、いや果たしても、彼には困難が襲いかかってきていた。
病の再発への恐怖と、プロ選手のレベルと自分との格差というものもあった。
彼は、あとがきで正直に言っていることに、彼の誠実さとなお続く病の大変さが伝わってくる。
闘病の日々があったから、ちょっとした体の不調で頭を「再発」という悪魔のシナリオがよぎると言う。
それは、彼が白血病を乗り越えたわけではなく、これから先も、白血病と、弱い自分とずっと向き合いながら、共に歩んでいかないといけないということを自覚している。
最後まで、彼が背負っているものの重さを感じる。
復帰出場してから、4試合連続出場している早川。
その間のチームの勝敗は、3勝1敗だ。
昨日の京都戦でも、先を読んだ動きや堅実なプレーぶりに、彼は本当にチームに必要な選手になったのだなあという感慨をもった。
ただ、心の中では、彼にしか分からない複雑な思いでいることだろう。
そのことを、本を読んで、改めて知ることになった。
そして、彼があとがきの最も最後に書いた思いにしみじみと同意する。
「生きる」ということに正解があるわけではない。それぞれ一人一人に自分の道がある。(中略)
みんなが自分の人生を真剣に生きている。だからこそ、自分の思いに突き動かされるほうへ、自分の気持ちに正直に生きることが大切なのではないでしょうか。
僕はこれからも、僕の人生を素直に、そして着実に前へと歩き出していきます。
彼の心中を知った今、その人生観に同意した。
これからの彼のますますの活躍を祈るとともに、歩みゆく人生に声援を送りたいと思う。