全日本卓球選手権シングルスの部も最終日を迎えた。
今回から、シングルスとダブルスを分けて行うことになった全日本。
今日は、シングルスの準決勝と決勝が行われた。
午前10時から午後3時まで、準決勝・決勝の全試合をNHKBSやらネットのライブ配信やらで、全部見ていた。
昨日の準々決勝の結果、勝ち残った張本兄妹が、兄妹同時優勝なるかというところに一般の関心がいっていた。
先に行われた女子の準決勝では、妹の張本美和が強かった。
相手は、昨日の準々決勝で平野美宇に2回のマッチポイントを握られていながら逆転勝ちした伊藤美誠。
しかし、張本美和は、伊藤美誠をまったく相手にせず、4-0で勝利した。
その試合の様子をネットのライブで見ていたが、16歳の張本美和がここまで強くなったかと思った。
もう一つの女子準決勝は、全日本2連覇中の早田ひなと、この1年進境著しく世界ランクを7位まで上げてきた20歳の大藤沙月。
パリ五輪での負傷からまだ完全に癒えていない早田だし、両ハンドが振れて、ラリー戦に強い大藤だから、この試合は大藤にチャンスがあるだろうと思っていた。
1ゲーム目は中盤まで7-7と接戦だった。
だが、そこから勝負強さを発揮した早田は、11-9でゲームを先取した。
2ゲーム目も連取した早田は、3ゲーム目は5-9と劣勢に立ったが、そこからジュースに持ち込み、粘り勝った。
ラリー戦の展開になっても、早田のつくコースは大藤を上回っていた。
結局、早田が4-0のストレート勝ち。
前日までの対戦相手には1ゲームは取られていたのに、強敵に対してストレート勝ちする早田の勝負強さ。
試合を経験するごとに以前の力を取り戻しているようだ。
男子の準決勝の1つは、王者張本智和対弱冠17歳の松島輝空。
世界での戦いでは、世界ランク3位という張本の方が上位に進出している。
松島は、まだ世界ランク31位で、日本人では5番目だ。
張本の方が上回るだろうと予想した。
だけど、試合が始まると、松島の攻撃的なプレーが目を引いた。
ミスは出ることもあるが、とにかく先に攻めたり強いボールを送ったりしていた。
特に素晴らしいのはバッククロスのフォアハンドスマッシュ。
近年見たことがないような力強いショット。
そのプレーに魅了された。
第1ゲームをジュースで奪うと、第2ゲームこそ接戦で落としたが、第3ゲームもジュースとなったが、これも取って松島が優位に立った。
そうなるのは、思い切った攻め。
要所でのロングサービスも効果的だった。
決めようという強いショットを打ち続ける松島としのごうとする張本。
こういう展開になると、乗っている方の得点が多くなる。
ビシバシと松島のスマッシュが決まった。
最後は、張本がお手上げというような状況に追い込まれ、4-1で松島勝利、決勝進出。
これで、張本兄妹のダブル優勝はなくなった。
松島は、決勝では、同じサウスポーの篠塚と対戦。
剛の松島対柔の篠塚。
強打で篠塚の牙城を崩す松島。
コースを突き、ミスを誘おうとする、技の篠塚。
去年の対戦では篠塚が松島を下していたのだが、今回の対戦では明らかに松島が上回っていた。
「粗削り」という言葉があるが、松島のプレーはそれを思わせる。
だが、それだけではない確かな技術力も高めていた。
なんといっても、豪快なスマッシュは魅力的だ。
相手の低いボールに対してもスマッシュを選択し、ノータッチで抜いて行くのを何本見たことだろう。
第4ゲームこそ落としたものの、ゲームカウント4-1で勝利し、初優勝を果たした。
ここ数年続いた、張本・戸上時代。
その間に割って入っただけでなく、それより上にのし上がった感じ。
まだ17歳での栄冠、もっともっと強くなるだろう。
今後の世界での活躍が楽しみだ。
さて、女子の決勝は、早田対張本。
早田と同年代で中国からは「大魔王」と呼ばれた伊藤美誠。
彼女を、コテンパンに打ち負かした張本美和だから、早田も危ないのでは、と思った。
ところがどっこい、そうではなかった。
張本の打ち込むボールに対して、もちろんやられるときもあるが、粘り強く返す。
ラリー戦になると、早田の方が得点することが多かった。
早田の懐の広いプレーぶりにため息が出た。
心配していた利き腕の左腕のケガも感じさせなかった。
第3ゲームこそジュースとなったが、勝負強い早田は譲らなかった。
去年のリベンジをねらっていた張本を、堂々4-0ではね返す強さを見せた早田だった。
3年連続4回目の優勝を果たした早田。
日本の女王にふさわしい勝利であった。
今後の早田の活躍が、ますます楽しみだ。
去年のアジア大会で、早田ぬきでも中国に勝った日本。
張本や大藤はじめ、若い選手たちも確実に育ってきている日本。
中国勢を倒せる日も近いと感じた。
早田も松島も、五輪のバックアップメンバーの経験後、「バックアップメンバーはもう経験したくない」と言って、本当に努力して力を伸ばしてきたところが共通する。
2人とも、今や日本の王者である。
今年の卓球界は、2人を中心に、世界で活躍する日本人や日本チームのよいニュースが聞けるのではないだろうか。
そんな期待をしてしまうような、今日の全日本卓球選手権であった。