中野 翠 (みどり) (著)
このブログ 2011年10月26日 (水曜日)
映画『秋刀魚の味」』 監督: 小津安二郎
のバーのマダム岸田今日子が店に現れたのは銭湯帰りのかっこうだったことに気づいて以来、コマ送りで観た画像全てがおもしろい。そのファッション、頭のタオル?その後のファッション。ほか電車を待つ岩下志麻の着物の(カジュアルな)柄、そして右足やや内股、左足のかかとがわずかに浮いていることに気付きましたか。三浦との相似形の並び。その時のカメラアングル。これも小津監督のこだわり。それよりもバーでの軍艦マーチの次のシーン。家に帰った笠智衆が家族に、バーのマダム岸田今日子が亡妻に似ていると説明するシーン。セリフをじっくり吟味すると、これがもう、大変なコメディじゃないかと一人合点して、「小津調」についてもっと詳しく、と思ったのが本書を読んだ動機です。
最初に本質をついて褒めちぎっているので、むしろ疑問点や問題点がズバズバ指摘した箇所が多いくらいの印象だ。それに加え、頭の固いおじさま評論家の小津批判文もそのまま引用される。それに再反論するときに、ものをいうのが女性である著者の細かい観察である。いや実際にものを言っているのは、ほかならない著者の好みであろう。自分の好みに忠実だあった小津安二郎は理屈では語りにくい。
「小津調」映画には結婚や「家庭」はあっても「恋愛」がないのが女性に人気がない第一の理由ではないか、と著者はいうP67のだが、それもまた、おじさま的見方なのではないだろうか、と思うのだが、当たっているかも。
ストリーやテーマやメッセージよりも、美的秩序(一章)、病床の小津「やっぱり映画はホームドラマだ」(三章)、時間が主役、など納得。人生も世の中も反復とズレ。わずかなズレの積み重ねがついには反復を終わらせる、それがドラマという意味か。
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amazon 内容(「BOOK」データベースより)
小津映画を俎板に載せる。小津映画には監督の美意識・趣味が溢れている。ファッション、インテリア、雑貨といった表層的なものから、俳優・女優の顔かたち、仕草や口調や会話の間にいたるまで。原節子、三宅邦子、笠智衆、佐分利信、東野英治郎、斎藤達雄と名を連ねるとおのずと小津映画ムードが湧いてくる。映画評論家の見落としがちな、監督の好嫌の感情に注目した、画期的な小津論。登録情報
単行本: 263ページ
出版社: 筑摩書房 (2008/02)発売日: 2008/02
商品の寸法: 18.8 x 13.2 x 2.4 cm
おすすめ度: 5つ星のうち 4.5 (2件のカスタマーレビュー)
Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 375,406位
543位 ─ 本 > エンターテイメント > 映画 > 日本映画
4348位 ─ 本 > エンターテイメント > ステージ・ダンス > 演劇
5929位 ─ 本 > エンターテイメント > 演劇・舞台
目次
1章 ファッション、インテリア(ドンゴロスと女たちのきもの
浦野理一のきもの ほか)
2章 女たち、男たち(おじさまごっこ
紀子のくすぐったさ ほか)
3章 セリフ、しぐさ(いわゆる「原節子風」
きわどい綱渡り ほか)
4章 今見られる小津映画、全三十七本(若き日の小津1 サイレント時代
若き日の小津2 トーキーになってから ほか)
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小津ごのみ 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2008-02 |
小津ごのみ (ちくま文庫) 価格:¥ 798(税込) 発売日:2011-04-08 |