『国家の尊厳』 (新潮新書) 新書 – 2021/5/17
先崎 彰容 (著)
5つ星のうち3.8 11個の評価
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先日、本書の著者と『人新世の「資本論」」の著者が出演していたTV(BSのニュース番組)を見た。
番組での討論は、驚くほどの濃い内容だった。
それで、名瀬の書店で本書を探してみたのだった。
多分ないだろうな、と思っていたのだが、驚いたことに、あった。
棚差しで一冊だけあった。よく見つけたものだと思う。
月曜に行ってみたが、見当たらなかった。
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本書で、”橋川文三が三島由紀夫は政治音痴だ”と言ったというくだりが
どうも気になって
読了から2週間ぶりに、はて?何ページに書いてあったのだろうか?と
探してみたが、付箋をめくっても出でこない。
目次から推察してp109第4章(戦後民主主義の限界と象徴天皇)あたりだろうと
急いで読み返してみたが、見つからない。
以下その第4章の項目(一部略)
三島由紀夫 VS 東大全共闘
これは、『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』というタイトルで2020年映画になっていて
予告編もみることができるし、Youtube でも討論のさまざまな動画がアップされつづけている。
共通する戦後民主主義へ懐疑と拒絶
「文化概念としての天皇」という処方箋
「美的一般意思」としての天皇とは
「分裂」した人間
『社会契約論』が持つ意味
ルソーと三島
『金閣寺』にみる政治主張
「行動」と天皇
自由と民主主義に代わる価値
など、第四章は、執筆依頼から4か月で書き上げたという本書の中でも
内容も深く、刺激的な章だ。ルソー、一般意思 と 三島、天皇。
急ぎ読み返してみても、橋川文三が三島由紀夫は政治音痴だと言ったくだりは
いっこうに出てこない。
とうとう
第四章、第五章、第六章と進んでもでも、出て来ず、最終章、国家の尊厳のP212で見つけた。
政治音痴のくだりのつづき。
橋川は、「政治と美は別物である、政治イコール芸術にはならないと指摘したわけです」
が、本書では、もちろん上の四章の項目から見ても三島の感受性、先見性は否定的な文脈でとらえられてはいない。
三島の感受性は、本書の重要な要素のひとつなのだと思う。
戦後と昭和もそして平成さえも遠くなったと感じるコロナ禍。、
国家観が見えにくい菅政権。現在の状況への分析、「令和の日本のデザイン」するには
やはり三島は重要な視点である、
と思いつつ、いそいで再読した。
令和の日本は、「尊厳とコモン・センス」をキーワードにした国つくり目指すべきだ、
という意見で、この記事冒頭の『人新世の「資本論」」(そろそろ読了)の著者とつながる。
このつながりは、わたしの年代のものには、すこしばかり不思議でもあるのだが・・・。
ま、時代が確実に変わったというべきか。
そのほか、これは一例だが、たとえばルソー、一般意思 と 三島、天皇
の共通点にも、驚かされる。
自身の体験をつづりながら、古今の思想を通して状況を立体的に浮かび上がらせ、
処方箋を示す。文章は非常に読みやすい。
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昨夜政府専用機のトラブルで1時間40分遅れで日本出発した
菅総理は今日からイギリスで開かれるG7サミットに出席する。
会議では、新型コロナウイルスの感染
ワクチンの公平な供給
地球温暖化対策、気候変動問題
とくに注目されるのは覇権主義的行動や人権問題など、
軍事、経済両面で懸念が広がる中国への対応。
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