『持統天皇と男系継承の起源』 ――古代王朝の謎を解く (ちくま新書) 新書 – 2021/5/8
武澤 秀一 (著)
5つ星のうち4.2 12個の評価
amazon 登録情報
出版社 : 筑摩書房 (2021/5/8)
発売日 : 2021/5/8
新書 : 298ページ
女神アマテラスとして振る舞い、世襲継承の天皇制を創出した女性天皇の時代に、なぜ「男系継承」の慣例が生じたのか? 平城京の三次元的考察とともに謎を解く。
菅首相が自民党総裁選不出馬を発表した(9月3)、日には読了していたと思う。
持統天皇、天智天皇、天武天皇あたりの歴史には興味がありwikipediaを引きつつけっこう熟読したので名瀬の書店で買ってからもだいぶ時間がたった。
総裁選の報道では、候補者にたいする質問で外交安全保障 原発などとならんで、
なぜか皇位継承のあり方で女系天皇の是非に対する見解が求められている。ということでタイムリーではあった。
著者は建築家で、伊勢神宮の建築の研究がきっかけで持統天皇に興味をもったという。
この問題では及び腰になりがちな歴史学者が書く本より断定的で面白い。ややマニアックな感じがする部分もあるのだが、それも刺激的だ。
不改常典のくだりはスリリングですらあり、やや力づくな感じもするが、学者のあいだでの通りはどうなのだろうか。
不改常典(ふかいのじょうてん、ふかいじょうてん)は、707年以降江戸時代までの日本の天皇の即位の詔でたびたび参照された法で、天智天皇が定めたとされるものである。天智天皇が「改めるまじき常の典と定め賜ひ敷き賜ひた法」というくだりから、学界で不改常典と呼ばれる。
近現代史は、学校で尻切れになって今一つ、と言われるのに対し、古代史(通常、古墳時代もしくは飛鳥時代から平安時代中期または後期まで)は固有名詞はよく思い出せるが、人物像や、その繋がりはよくわからないということがある。
書店には 「女帝の古代王権史」 (ちくま新書) 新書 – 2021/3/8
義江 明子 (著)
5つ星のうち4.5 21個の評価
古代史ものは今ブレイク中らしい。
本書は持統天皇に注目することで、古代史に斬新な視点で古代史そのものへの興味をかきたててくれる。
なぜ持統天皇(女性 百人一首の歌でも有名)なのか、は、目次を見れば想像がおおよそつくかもしれない。
プロローグ―アマテラスと「男系」の溝
第1章 女性を始祖とする王朝への五つの視点
第2章 神話と結びつく“持統王朝”
第3章 天皇制の礎―恒久の都と更新の思想をつくる
幕間 世襲王権はいつから、そしてどのように?
第4章 平城京遷都は「男系」継承への道
第5章 「男系」継承の樹立と“持統王朝”の終わり
エピローグ―「黒作懸佩刀」の話はどこまでほんとうなのか?
もう一人の重要人物は持統天皇に重用された藤原不比等であろう。
藤原不比等は、天智天皇から藤原氏の姓を賜った藤原鎌足の子。
持統天皇(鵜野讃良皇女・うののさららのひめみこ)は、645年に天智天皇として生まれる。
645年といえば大化の改新、乙巳の変(いっしのへん)の年。
中大兄皇子・中臣鎌足らが蘇我入鹿を宮中にて暗殺して蘇我氏(蘇我宗家)を滅ぼした政変。
中大兄皇子とはのちの天智天皇。
wiki 白村江の戦い(はくすきのえのたたかい、はくそんこうのたたかい)は、天智2年8月(663年10月)に朝鮮半島の白村江(現在の錦江河口付近)で行われた、百済復興を目指す日本・百済遺民の連合軍と、唐・新羅連合軍との間の戦争のことである。
そして持統天皇の説明で欠かせないは、
古代日本最大の内乱である壬申の乱(じんしんのらん)672年
天智天皇の子・大友皇子と天智の弟・大海人皇子(後の天武天皇)間で起こった皇位継承をめぐる争い。
この戦いで勝利した大海人皇子(後の天武天皇)は持統の夫である。
(天武天皇と持統天皇は叔父と姪の関係)
藤原 鎌足(ふじわら の かまたり)は、飛鳥時代の貴族・政治家。中臣御食子の子。母は大伴智仙娘。日本の歴史における最大氏族「藤原氏」の始祖。中臣鎌足は現代まで続く「藤原姓の祖」
藤原不比等は、天智天皇から藤原氏の姓を賜った藤原鎌足の子である。
持統天皇に重用された藤原不比等が、持統の死後、皇室には王朝を自分の血で乗っ取る沈黙のクーデターを皇位の男系継承という手段で遂行するとは。自分を登用し才を愛でた持統天皇を裏切って一族の繁栄を追求した不比等
天孫降臨神話とともに成立した<持統王朝>p16x持統天皇は中継ぎではない
天皇を「男系男子」で通し、そこに藤原氏の娘を継続的に入内させて天皇を生み出してゆく、という大方針P257
藤原氏の藤原氏による藤原氏のための平城京(4章3節)への遷都 は圧巻
男系継承の確立にむけて平城京の東宮(皇太子の宮)と不比等等邸の間に指呼の関係を築いた
聖武・藤原氏と長屋王の確執+
長屋王は対立する藤原四兄弟の陰謀といわれる長屋王の変で自殺した。
複雑と思っていた、女系と男系。完全に理解したと思っていたが本書では少し見方がちがうような。文武、元明、元正、聖武
なかなか一筋縄ではいかない皇位継承問題とその解決方法。
ニュース記事から抜粋
岸田文雄前政調会長は9日、女系天皇に関し「反対だ。今、そういうことを言うべきではない」と述べた。
高市早苗氏は総裁選への立候補を表明した8日の記者会見で「男系」の重要性を訴えた。「皇統については男系男子ということで大切に、長年にわたって守り抜かれてきたものだ」と主張した。
出馬の意向を固めている河野太郎規制改革相は同日の記者会見で女系天皇に慎重な姿勢を見せた。「男系で続いてきているというのが日本の天皇の一つのあり方だ」と話した。
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