
大日川で、思わず話し込んでしまった愉快なおばさんと出会った。
この季節は、柿を並べてこの店で商いをしている。
神社の銀杏を見に来たことを話すと、「賀名生の里 歴史民族資料館」の裏の山道が、黄色と赤の絨毯を敷いたような道になっていることなど、話してくれた。
帰りには、是非そちらによって帰るようにと、車の置き場所なども教えてもらう。


花梨が、無造作に置いてある棚に、八つのビンが並んでいる。
「これも、売り物?」
「いいや、これは、自慢の焼酎付けや。見てもらうように並べてあるんやで。山で採ってきたものばっかりや」
ウメ ユスランメ ジュウヤク ビワ ヨモギ カリン ゴウヤ ナベタタキ ブルーベリー クズの花
サンシュウの実 ユズ ムカゴ レイシ・・・
ビンに漬けてある中身と、体にどういいのかを説明してくれた。
「毒になるものを採って来ることはないの」
「そんなん、心配いらん。皆、これで調べるから」

おばさんが机の中から出して見せてくれたのが、この本である。
山を歩きながら、採集したものを、名前と効用や処理の仕方など、皆この事典で調べているのだという。
「まぁ、先生やな、この本は」と大事そうに花梨の上に置いた。