
ここは月に一度通院しているA医院の待合室である。
宮沢賢治の「あめにもまけず」の詩が、額に入っている。
大抵は読書をしながら待っているが、この日は本を持っていくのを忘れたので、順がくるまで、何度も読み返しながら待っていた。
ドクターとの出会いは、1昨年の冬であった。
正確には、電話でお話したのだが・・・
その年は、インフルエンザの流行が多く、注射の薬が不足と言われた年だった。友人がしてきたと聞いて、すぐに電話で申し込んだ。
ところが、その医院には、もうなかった。電話の前で寡黙になってしまった私に、N医院に3人分くらい残っているからすぐ行くようにと言って下さった。
お陰で、この年予防注射を受けることが出来た。
Aドクターの心配りに感謝の気持ちでいっぱいだった。

その後、急な血圧の上昇で体調を崩した時から、ずっとAドクターのお世話になっている。
寒い寒い日曜日18日の夕方、どうも体調がおかしい。
我慢できないこともないが、食欲もなくふらつく。
日曜日の事だし、医院は休診である。
手持ちの薬を飲んでもいいか不安であったので、とにかく電話をした。
呼び出し音が何度か続いた後 「転送します」のメッセージがあった。今度は呼び出し音が変わったので、転送先の呼び出しだと暫く待ったが反応がない。
やはり、先生は、お留守なのだと受話器を置いた。
と、電話のベルである。しかもAドクターの声「どうしました?」
状態を話した。血圧の数値も心配するほどでないとの事で、丁度翌日が薬を貰いに行く日なので、来院するようにと、親切に対応してくださった。
心理的に安心できたのか、すぐに床に就いた。
一番不安な時、すぐ対応してくれる先生と繋がっていることがどんなに心丈夫であるか,この時、痛切に感じると共にA先生への信頼と感謝の気持ちがさらに深まった。