迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

価値相應。

2019-10-27 16:58:00 | 浮世見聞記
隣り町のリサイクルショップへ、貰ひ物の服と靴を出してみる。

大きな袋いっぱいに詰めたものが、総額¥220也!



複数の上着がまとめて“一点”となってゐるところに、商売人魂があるやうだ。


應対に出た店員は、あくまで気さくで、感じが良い。

お客がわめく買取金額の不満を躱すための、鎧なのだらう。


そもそも自分にとって価値の無くなった物を出すのだから、これくらゐが相應なのではないか?



なにやら面白いやうな、可笑しいやうな気持ちで受け取った小銭を懐へ仕舞ひ、最後まで丁寧な店員に送り出され、近くの公会堂に立ち寄る。


今日はホールでピアノの発表会が行なはれてゐるらしい。

ロビーの長椅子で退屈さうな顔をしてゐる“関係者”たちを見て、普段のレッスンより発表会のはうが張り合ひの無いものだ、と思ふ。


さういふ自分も、来週にはここの舞台で現代手猿樂を舞ふ。

客席の高齢者たちは転々バラバラにお喋りに興じてゐて、

でもそんな和やかさが面白くて可笑しくて──


さう言へば。

これだけは絶対に触れたくないと思ふ扇が、箪笥の底へ押し込んだままになってゐた。


南無三!


あれこそ、不要の服に混ぜてリサイクルショップへ出してしまふのだった……。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 現世を面白く思ふ法。 | トップ | 八千草薫さん、すい臓がんのため死去... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。