時折のぞく陽と、キンと冷えた空氣のせめぎ合ふ日中、近所の軒先で蠟梅がだいぶ笑ふやうになった。その許に立つと豊潤な薫りに包まれて、いまが真冬であることをしばし忘れさせてくれる。住めば都、ここにあり。 . . . 本文を読む
千葉縣の浦安と云ふと、まず鼠國(DL)、海沿ひに續く工場と物流拠點、そして地下鐵東西線の車窓にいつまでも廣がる住宅地──現在では働く人々が寝に帰る町、と云った印象があるが、江戸時代には塩作りから始まった魚介類豊かな漁師町であり、戰後までは海苔作りも盛んな町であった面影が、浦安市郷土博物館に再現されてゐるとのことで、ひとつ出かけてみる。博物館の屋外展示がそれで、昭和二十七年頃の様子を移築や復元された . . . 本文を読む
二年ぶりに淺草公會堂の初春芝居へ出かけ、昼の部を觀る。歌舞伎の次世代を担ふ、かもしれない若手役者たちの修業の場であるこの興行も、今年から世代交替が行なはれ、その序幕が「繪本太功記 尼ヶ崎閑居」で開く。若手ならば一度は必ずどれかの役を經験しておくべき教科書的狂言なれど、近頃は珍妙な新作モノを先に經験するのが當世流らしい。(※八代目市川中車の武智光秀)それはさておき、出演者それぞれがいま持てる力を精一 . . . 本文を読む
今日は街なかで、やけに振袖だのスーツだのでめかし込んだ若モンを見かけると思ったら、“成人の日”云々。しかし、その風情が七五三の延長のやうで、あれで千歳飴を提げてゐても違和感がないナと思ったのは、それだけ私の眼と心が浮世の粉塵に晒されて濁ったからか。「ありゃ新成人ぢゃァねぇ、新生児だな」──嬉し樂しは今日(いま)だけ、頑張ることだ若モン!忘月忘日、道を複数で歩く高齢女性の一人が、「演歌 . . . 本文を読む
松の内の長期予報では、今日の東京圏は雪となってゐたが、幸ひ日中には日が差す時間もあり、まずは難を逃れたかと安堵する。しかし、それで氣を抜くと必ず四方のどこかより、次の難はやって来る。それは、さういふものなのだ。五年前、支那から渡来した人工疫病も、さうした“まさか”の隙に蔓延し、我々は日常を壊されたではないか。 . . . 本文を読む
今年最初の謠ひのラジオ放送で、觀世流梅若家の「繪馬」を聴く。伊勢神宮を舞薹に、前場(前半)では一年の晴雨を占ふ繪馬掛神事の様子が能樂得意の古歌に絡めて演じられ、後場(後半)は伊勢神宮の祭神である天照大神の神話──“天の岩戸傳説”がそのまま再現される。一つの場所で二つの噺が演じられる、視覺的な變化にも富 . . . 本文を読む
夏の炎暑には恨めしい太陽(ひ)の光りが、かう風の冷たい日中には戀い慕って明るい道ばかりを歩きたくなる。しかし私が本當に寒さを覺えるのは、いかにも寒々とした人の姿を目にしたとき。この季節に背中を丸めてゐると、それだけで素寒貧に見えてしまふ。ヒトのフリ見て我がフリなんとか。……だめ、だめ、寒い。暖かいあそこへ、逃げやう。 . . . 本文を読む
池上本門寺へ、新年の挨拶に伺ふ。これで新年を迎へたらやるべきことを、すべて済ませる。境内の一画で猿回しの大道藝をやってゐたので、自分も近いやうなことをやってゐることもあり、寒空の下で頑張ってゐることへの應援の氣持ちで、觀ていく。おかげで、小猿の愛らしく柔らかな姿に、狂言「靱猿」で繊密に描かれてゐる猿曳きの情愛はこれかと、藝そのもの以上の“心”を得る。 . . . 本文を読む
東京都中央區日本橋室町の、ガラス壁の谷間に敷かれた参道。私の背後の奥には、 なにかのお社がある。が、惹かれない。こゑが聞こえない。ニンゲンが“癒し”を計算して造った空間、そこにすでに、ウソがあるからだらう。私は自分の感覺を、信じる。これから厳しい寒波が到来云々、日本海側は大雪に警戒云々。たしかに夕方から都内でも、雪の前兆を思はすやうなキンキンに冷えた風が流れこんできた。一月も正月氣分 . . . 本文を読む
浮世では、2025年を「昭和100年」で盛り上げていかうと画策云々。大正天皇が即位十五年で崩御したのが12月25日、同日に摂政裕仁親王が即位して七日間だけ“昭和元年”になったのが1926年だから、まだ一年早いと思ふのだが、なんと云っても祝祭(おまつり)と言ひ訳と箔付けが大好きな現今人のことである、常に何かしらの“大義”がなければ落ち着いてゐられないのだらう。……私にはとても、昭和天皇 . . . 本文を読む
今日から氣持ちを“正月”から“一月”に切り替へて令和七年を生きていかうと張り切ってゐるところへ、JR線忘驛で見かけた令和八年のとんでもない予告状。やうするに、首都圏の運賃を特別に安く設定してゐた「電車特定區間」を廢止し、本来の運賃設定である「幹線」へ統ーすることで、さり気なく初乗りの十圓値上げ、また前回の値上げの巧い方便だった運賃上乗せの“バリアフリー料金”の廢止云々──首都圏の手輕な電車移動を助 . . . 本文を読む
五日にわたった正月氣分の〆に、回転壽司屋へ行く。好きなネタを好きなやうに食べて、また明日からの糧にする。あまりノンビリしすぎると、令和七年にやりたいことの日程を組むのが、億劫になっていけない。やはり五日間くらゐが、私にはちゃうどよいやうだ。 . . . 本文を読む
昨年正月と同じく、神奈川縣秦野市の出雲大社相模分祠へお参りする。三が日を過ぎたためか、混雑はおさまってゐたのがなにより。秦野は湧水の名所云々、境内の龍蛇神様がこの時期だけ公開云々、拝しに訪ねたものの、本當の關心は古への日本人が龍と蛇とを混同して認識してゐた名殘りを確かめることにあり。昨年末に觀た國立公文書館の企画展にて初めて氣付かされた歴史で、私などは學ん . . . 本文を読む
いまがどんな季節であるかを知らせるキンと冷えた曇天の昼前、久しぶりに少し離れた場所の公園を散歩する。芝生の廣場では凧揚げに興じる親子連れの姿あり、自分が遠い昔に忘れて来た傳統遊戯に、なにか落とし物を拾ったやうな思ひに嵌まる。いろいろな光景がもはや他人事(ひとごと)な氣持ちでぐるりとまわり、かつて小休止にちゃうど良かったカフェのあった跡で、小休止。若い男性店主がひとりで見事に切り盛りしてゐたカフェで . . . 本文を読む
今朝にブログが繋がらず、またなにか不具合が發生したな……、と思ってゐたら、やはり「DDoS攻撃」なるサイバー攻撃で回線が麻痺云々、昨年末にこのブログで、アクセス數を示す棒グラフが數時間にわたり上昇して帯状になってゐたことがあったが、あれも一種のサイバー攻撃だったのだらう。かうした不具合の事例は、數年前の年始にもあったと記憶してゐる。ニッポンの通信環境は防御がとても脆く、外敵からも簡單に攻撃されやす . . . 本文を読む