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(コンゴ独立50周年を祝うパレード “flickr”より By British Embassy Kinshasa http://www.flickr.com/photos/bekinshasa/4748682319/)
【燃料火災で死者230人】
中部アフリカのコンゴ(旧ザイール)では、給油トラック追横転事故により、230名以上の死者が出ています。
****横転トラックが爆発、230人死亡 コンゴ民主共和国*****
アフリカ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部の村で2日、横転した給油トラックが爆発、炎が村に燃え広がり、230人以上が死亡、多数が負傷する事故が起こった。
2日の夜半、同国南キブ州のサンジュ村でトラックが横転、積載されていた石油をあさって集めようと、子どもを中心とする村人たちがトラック周辺に群がっていたところ火があがり、泥とわらでできたこの村の家々を飲み込んだ。
目撃した教師のトンド・サヒジラさん(28)は「みんな逃げようとしたが火につかまり、灰になってしまった」と語った。火はさらに、南アフリカで行われているサッカーW杯を観戦するために多くの人が集まっていた村の映画館に燃え移った。
約5万人が住むサンジュは同州の州都ブカブ南方70キロに位置し、ブルンジとの国境に近い。
サヒジラさんによると、トラックの運転手は自力で脱出した後に村人たちに、爆発する危険があるから急いで離れるよう警告した。しかし「石油が漏れだしていたのに、村人たちは言うことを聞かずに石油を集めようとやってきた。2、3分後に爆発が起き、トラックごとあっという間に炎に包まれてしまった」と言う。【7月4日 AFP】
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こうした事故はアフリカではときおり耳にします。
安全基準の甘さと道路事情の悪さが要因で、「アフリカではこの4年間にこの種の燃料火災が6回起きている」と、朝のTVで報じていました。
被害が拡大するのは、流れ出た油を持ち帰ろうと付近の住民が集まってくるためで、ナイジェリアなどでは石油窃盗グループがパイプラインを爆破して石油を盗む際に引火し、集まっていた住民が被害に巻き込まれる事件がしばしば起きています。
貧困と危険に対する認識のなさが被害を大きくしているとも言えます。
【豊富な地下資源が紛争を長期化】
そのコンゴですが、正直なところ、ジャングルとマウンテンゴリラ、そして果てしない内戦のイメージぐらいしかありません。
コンゴは金やダイヤモンド、更に希少金属(レアメタル)などの地下資源が豊富な国ですが、それが逆に災いとなって、武装勢力がその地下資源を資金源とし、周辺国もその利権を狙って介入し、内戦が長期化する形にもなっています。
独立直後のコンゴ動乱(1960~65年)、隣国ルワンダで起きた大虐殺の影響を受けた第1次紛争(96~97年)と第2次紛争(98~2003年)・・・と、コンゴの歴史は紛争・内戦の歴史です。
特に98年からの第2次紛争は、カビラ大統領のツチ軍人への弾圧などで反乱軍が東部で蜂起、ルワンダ、ウガンダ、ブルンジは反乱軍を、スーダン、アンゴラ、ジンバブエ、ナミビア、チャドは政府軍を支援、周辺諸国7ヶ国を巻き込み、アフリカの歴史上初めての世界戦争とも言われています。
2003年に一応の和平協定は結ばれたものの、強硬派フツが結成した武装勢力「ルワンダ民主解放勢力(FDLR)」、ローラン・ヌクンダ将軍が、ツチ系住民で構成する反政府武装勢力「人民防衛国民会議(CNDP)」、これら勢力とときに協調、ときに対立する政府軍やルワンダ軍など、更には隣国ウガンダのキリスト教原理主義勢力「神の抵抗軍(LRA)」の活動によって、犠牲者はその後も増え続けています。
****民間人1400人超殺害=コンゴ、武装勢力掃討で-人権団体*****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは14日、政府軍による反政府武装勢力の掃討作戦が行われているコンゴ民主共和国(旧ザイール)東部で、今年1月から9月までに女性や子供を中心とする民間人1400人以上が殺害されたとする報告書を公表した。
報告書は、政府軍と反政府勢力双方が民間人を相手の協力者とみなして殺害していると指摘。国連安保理に対し、民間人保護や治安確保の新たな方策を模索するよう求めた。【09年12月15日 時事】
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****住民321人殺害か=キリスト教原理主義勢力-コンゴ*****
アフリカ中部コンゴ民主共和国(旧ザイール)北東部の村々が2009年12月、隣国ウガンダのキリスト教原理主義勢力「神の抵抗軍(LRA)」に襲撃され、少なくとも321人が殺害されたとみられている。英BBC放送(電子版)が28日伝えた。多数の子供が誘拐されており、少年兵や性的奴隷にされたとみられている。【3月29日 時事】
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98年8月から約9年間で死者は、540万人(推計)に上るとも言われており、その犠牲者数は第二次大戦以降の紛争で最多とされています。
****世界の主な紛争地の推定死者数******
コンゴ民主共和国 540万人
イラク 50万人
スーダン(ダルフール) 30万人
ボスニア 6万人
コソボ 1万人
イスラエル・パレスチナ 8000人
(バージル・ホーキンス大阪大助教提供)【09年9月7日 毎日】
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宗派対立の泥沼と化したイラク内戦、世界最悪の人道危機と呼ばれるダルフールなどより、更に1桁多い犠牲者を出しています。
その紛争には子供たちも巻き込まれ、男子は「少年兵」として利用され、女子は性的虐待の対象とされています。
【「失われた半世紀」】
今年6月30日で、コンゴはベルギーからの独立50周年を迎えました。
****コンゴ民主共和国:独立50年「失われた半世紀」嘆く声も*****
中部アフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)が6月30日、ベルギーからの独立50周年を迎えた。記念式典にはベルギーのアルベール2世国王が参列し、カビラ・コンゴ大統領は両国の「連帯」を強調した。だが、混乱続きで国造りが進まない現状に在ベルギー・コンゴ人の間では「失われた半世紀」を嘆く声が多く、旧宗主国ベルギーの責任を問い直す動きも出ている。
コンゴはアフリカ有数の鉱物資源大国だが、1人当たりの国民所得が約150ドル(約1万3300円)の最貧国。カビラ大統領は首都キンシャサで開かれた記念式典で「巨体のコンゴは深い眠りから目覚めつつある」と国家建設に自信を示したが、ベルギー出身のデフフト欧州委員(通商担当)は発展の阻害要因に「汚職と統治の不在」を挙げる。
ブリュッセルでは6月30日、在ベルギー・コンゴ人数百人が独立50周年を「弔う」デモ行進を繰り広げた。主催者のアンリ・ムケさん(39)は「暴力が横行し、人権活動家が殺害されるコンゴに民主主義はなく、祝賀の時ではない。より民主的で、国民に治安改善をもたらす政府が必要だ」と主張する。
一方で独立直後の政治混乱の真相を問い直す動きも出ている。61年に暗殺されたルムンバ初代首相の3人の息子は当時、ベルギーの軍人・警官・役人だった12人を相手取り、暗殺への間接的関与を問う裁判を今年10月に起こす。クリストフ・マルシャン弁護士は「植民地支配の過去に光を当てるため独立50周年の今年を選んだ」と話す。
ベルギーは02年、当時の政府関係者らの「責任」を認め謝罪しているが、独立から半世紀経た今もコンゴ人の古傷は癒えていない。【7月1日 毎日】
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アフリカではコンゴを含む18カ国が、今年で独立50周年を迎えます。
オバマ大統領は、ワシントンで各国代表を招き記念行事を行うとか。
****アフリカ諸国独立50年で記念行事=8月にワシントンで主催―米*****
オバマ米大統領は25日、主要8カ国(G8)とアフリカ各国首脳との会合で、アフリカ18カ国が今年独立50周年であるのを受け、ワシントンで8月に記念行事を主催すると発表した。アフリカ諸国の若いリーダーを招き、安全保障や社会問題などをテーマに協議を行う。米政府高官が記者団に明らかにした。
オバマ大統領は会合の中で、自身のケニア人の父親が、アフリカから米国に渡った第1世代の一人だったと説明。当時は、アフリカ諸国で独立後の状況に失望といら立ちが高まっていたと指摘した上で、今こそアフリカ開発を軌道に乗せていく必要があると強調した。【6月26日 時事】
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開発が軌道に乗る国もあるのでしょうが、コンゴのように「失われた半世紀」を引きずる国もあります。
その道を分けたのは何だったのか?