孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエルのネタニヤフ首相訪米 オバマ大統領、直接交渉入りを支持

2010-07-09 23:33:49 | 国際情勢

(談笑しながらホワイトハウス敷地内を歩くイスラエル・ネタニヤフ首相とアメリカ・オバマ大統領 “”より By mjb_leo http://www.flickr.com/photos/35197642@N08/4770053439/

【オバマ大統領 イスラエルの主張を概ね支持】イスラエルは5月末のガザ支援船団強襲事件でトルコ人ら9人の死者を出し、国際社会からパレスチナ・ガザ地区の封鎖解除への圧力を受けている状況にあります。

そのイスラエル政府は5日、パレスチナ自治区ガザに対する境界封鎖緩和の具体策を発表しました。
食料や日用品の搬入を全面的に許可する一方で、武器や軍事転用可能な物資の搬入禁止は維持するもので、復興に必要なセメントなどの建築資材についても厳しい条件をつけています。
この時期の緩和策発表は、イスラエルのネタニヤフ首相が6日、アメリカ・ワシントンでオバマ大統領と会談する予定であるのを踏まえて、その会談直前にイスラエル側の「努力」をアピールする狙いがあるとみられていました。

一方、多くの死傷者を出したトルコはイスラエルに謝罪を要求、もし謝罪がなければ断交も辞さないとの姿勢を示していますが、これも、ネタニヤフ首相の訪米を前に、アメリカからのイスラエルへの圧力を期待したものではないかとの見方もあります。

****イスラエル:首相「米と友好」演出 大統領の支持引き出す*****
イスラエルのネタニヤフ首相は6日、オバマ米大統領とホワイトハウスで会談。関係が一時冷えきっていたオバマ大統領との3カ月半ぶりの会談で、ホワイトハウスの敷地を並んで歩くなど「友好」を印象づける演出に成功した。米の仲介で間接交渉が行われているイスラエルとパレスチナの中東和平問題でも、オバマ大統領から秋には直接交渉を始めたいという意向を引き出したことで得点を稼いだ格好だ。
占領地へのユダヤ人入植を巡り関係が悪化していた3月下旬の首脳会談で首相は、一緒に写真に納まる機会さえ与えられず、国内では外交の失敗との批判にさらされた。
友好演出の映像が公開されただけでも、最低限の成果を得たといえる。

一方、核兵器保有を強く疑われているイスラエルは5月末の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書で、中東非核地帯構想に向けた12年の国際会議への参加とNPT加盟を要求された。会談後の声明によると、オバマ大統領は首相に「イスラエルが孤立する可能性があれば、(12年の)会議が開かれる可能性は低い」とした上で、「国の規模、歴史的・地理的な位置付けや過去に受けた脅しを考慮すれば、独自の安全保障策が必要だと確信する」と伝えた。
イスラエル紙イディオト・アハロノトによると、核兵器保有を否定も肯定もしない同国の「あいまい政策」に対する大統領の支持を取り付けた内容だという。
同行している政府筋は同紙に、米大統領が過去にこれほど明確に支持表明したことはないと明かした。

オバマ大統領が中東和平で「秋には直接交渉に移行したい」との意向を示したのも首相の意向に沿うものだ。イスラエルは、直接交渉の方がオバマ政権からの圧力を受けにくく自国に有利だと見ている。さらに、直接交渉を始めてしまえば、9月下旬の入植地建設の凍結期限を延長しなくていいと考えているからだ。【7月7日 毎日】
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アメリカ大統領と並んで歩く姿などに一喜一憂するのは、日本も同じです。
やはり多くの国は、アメリカからどうのように扱われているのかが気になるようです。

記事にもあるように、今回の会談は中東和平の直接交渉についても、イスラエルの核兵器問題についても、概ねイスラエルの立場を支持する内容になっています。
“(オバマ)大統領は今年3月に行った首相との会談は完全に非公開とし、イスラエルが直前に発表した東エルサレムへの入植団地建設計画への不快感を示していた。 一転してイスラエルを厚遇する姿勢を示したのは、今秋の中間選挙を前に、ユダヤ系有権者にアピールする狙いがあると指摘される。”【7月7日 読売】

多くの国がアメリカの意向を気にし、アメリカ大統領は選挙対策を重視する・・・ということで、中東和平もそのような流れで動いていくのが現実のようです。

【隔たり大きく、困難な直接交渉開始】
アメリカはこれまでイスラエル、パレスチナの間に入って間接交渉を行ってきましたが、オバマ大統領は会談後「直接協議が凍結期限が切れる前に始まることを望む。直接協議が始まれば、関係者全員が大きな成果を期待できるような環境が醸成されるだろう」と、ヨルダン川西岸でイスラエルによる入植活動の部分凍結の期限が切れる今年9月までに、イスラエルとパレスチナとの直接交渉の再開を目指す考えを表明しました。

その占領地での新たなユダヤ人入植地建設計画の凍結については、ネタニヤフ首相は延長しない考えを明らかにしています。
****イスラエル:入植地建設凍結、9月以降は解除--首相示唆****
スラエルのネタニヤフ首相は8日、米ニューヨークで講演し、占領地での新たなユダヤ人入植地建設計画の凍結を、9月下旬以降は解除する意向を示唆した。パレスチナは中東和平交渉を行う前提条件として「完全凍結」を求めており、建設が再開されれば強く反発するのは必至だ。
首相は講演で、凍結延長の意思を問われ、「もう十分にやったと思う」と答えた。7日に放映された米CNNとのインタビューでは、「入植にかかわる問題は、最終的地位にかかわる(直接)交渉で話し合われる」と語った。
【7月9日 毎日】
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しかし、パレスチナ側は、イスラエルによる入植活動の継続が状況を困難にしていると批判し、直接協議を受け入れる姿勢は示していません。
“(パレスチナ)自治政府のナビル・アブ・ルデイナ報道官はAFPの電話取材に対し、アッバス議長は(国境問題や安全保障などの)主要問題に関する間接交渉に進展がなければ、直接交渉に移行できないと語った。”【7月7日 AFP】

中東和平交渉を行う前提条件として「完全凍結」を求めるパレスチナ側との隔たりは大きく、事態の進展は難しそうです。
アッバス議長としては、イスラエル側の主張に沿う形での交渉に入れば、その弱腰の姿勢についてパレスチナ内部からの批判を免れず、ただでさえ弱まっているファタハ・自治政府への信頼を失うことにもなります。

【「一方的独立」を排除しない・・・】
アッバス議長の後継者として有力視されているバルグーティ氏(現在、イスラエルに拘束中)は、交渉が失敗したら「一方的独立」の可能性のあるとしています。
****和平失敗なら一方的独立も=議長最有力後継候補と書面会見―パレスチナ*****
パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの有力幹部マルワン・バルグーティ氏(51)が21日までに、獄中で時事通信の書面インタビューに応じた。米国が仲介する中東和平の間接交渉について同氏は「イスラエルの極右政権との交渉では、いかなる成果も得る可能性はない」と否定的な見方を表明。間接交渉が失敗に終われば「イスラエルの占領下であっても、パレスチナ国家を樹立する」ことも選択肢だとし、「一方的独立」を排除しない意向を示した。
 反イスラエル闘争(インティファーダ)を指揮したことで知られるバルグーティ氏は2002年にイスラエル当局に逮捕され、現在も服役中だが、アッバス・パレスチナ自治政府議長の最有力後継候補とされる。強硬姿勢を取るイスラエルのネタニヤフ政権に対する強い不満と同時に、現状打開にはパレスチナ側から新たな行動を起こす必要があるとの認識を示した格好だ。
バルグーティ氏は和平交渉が進まない現状について、イスラエル側にアパルトヘイト(人種隔離)政策を終結させたデクラーク南アフリカ共和国大統領(当時)のような平和のためのパートナーがいないためだと説明。今後は「非暴力の民衆闘争」によってイスラエルの占領を終わらせ、独立を目指すべきだと主張した。【6月22日 時事】
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イスラエルとガザ地区を実効支配するハマスの間では捕虜交換の話が出ています。
06年6月25日にハマス側に拘束されたイスラエル軍兵士ギラド・シャリト曹長(当時は伍長)の解放を要求するイスラエルに対し、ハマス側はイスラエルに収監されているパレスチナ人囚人1000人との「交換」を要求しています。

これ以上シャリト曹長の問題を未解決にできない国内事情があるネタニヤフ首相は1日、テレビ演説で「家族と痛みを分かち合いたい」と話し、交換に応じる意思を表明しています。
しかし、イスラエル側が「第一級のテロリスト」と呼ぶ一部パレスチナ組織幹部らの釈放は拒絶する構えです。特にパレスチナ解放機構(PLO)の「次期指導者」と期待され、パレスチナ人の間で人気が高いバルグーティ氏の釈放については応じないとみられています。
表向きはともかく本音としては、ファタハ・自治政府と対立するハマスも、バルグーティ氏の釈放が認められないことは歓迎しているのではないでしょうか。

コメント
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