(膨大な費用を投じて遷都された首都アスタナ 背景のタワーはアスタナを象徴する建造物「バイテレック」。カザフ語で「高いポプラの木」を意味するそうです。ここにはナザルバエフ大統領の黄金の手形もあります。
なお、アスタナは、国際コンペで1位に選ばれた日本の建築家・黒川紀章氏の都市計画案に基づき開発が続けられているとか。【ウィキペディアより】
写真は“flickr”より By Martin Solli http://www.flickr.com/photos/tidsrom/3149105644/ )
【長期政権で強まる個人崇拝】
中東・北アフリカで吹き荒れる強権政治に対する国民の抗議行動は、同じく強権支配国家の多い中央アジア・カザフスタンまでは及んでいないようです。
なお、カザフスタンは、採掘量が世界第10位以内に達する地下資源が9つも存在する(2002年時点)そうで、世界2位のクロム、3位のウラン、そのほか亜鉛、マンガン、鉛、ボーキサイト、銀、銅、石炭、リン鉱石・・・。
原油の産出量も世界シェアの1.1%。【ウィキペディアより】
ありとあらゆるものが地下に眠っている、“宝の山”の国です。
****カザフ現大統領の圧勝確実、さらに長期政権へ 3日投票****
中央アジアのカザフスタンで3日、前倒し大統領選の投票がある。ソ連崩壊前から20年以上にわたり同国を率いるナザルバエフ現大統領(70)が圧勝する見通しだ。当選を決めれば任期はさらに5年延び、個人崇拝色がいっそう強まる可能性がある。
ナザルバエフ氏を除く候補者は3人だが、いずれも最近まで、国民投票によるナザルバエフ氏の任期延長に賛成していた人物。欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視団は、選挙戦に競争原理がみられないと指摘。野党は不出馬で、ボイコットを呼びかけている。前回2005年の大統領選では、ナザルバエフ氏は91%以上を得票した。
次回大統領選は本来は12年の予定だったが、代わりにナザルバエフ氏の任期を20年まで延長する国民投票の実施を求める動きが、議会や国民の間から出た。
実際はナザルバエフ氏による独裁継続のための茶番劇とみた米欧から「民主主義の後退だ」との批判が沸く中、ナザルバエフ氏は国民投票を拒否し、前倒し大統領選に踏み切った。選挙綱領では政治システムの現代化を掲げ、議会や政党、地方自治体の役割を高めると主張している。
07年には同氏に限って憲法の3選禁止規定が除外され、昨年は「国民のリーダー」の称号が与えられた。豊富な天然資源を背景に中央アジアの地域経済大国に導き、昨年は初のOSCE議長国を務めて国際的な存在感を誇示。米欧の反応をうかがいながら長期政権の足場を固めている。【4月2日 朝日】
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ナザルバエフ氏は、ソ連崩壊時の1991年に独立宣言したカザフスタンの初代大統領に就任。
95年には、国民投票によって任期を2000年まで延長。さらに07年には上記記事にもあるように、ナザルバエフ氏に限り大統領の3選禁止規定を除外する権限を議会が承認。昨年6月には「国民のリーダー」という称号が与えられています。
この時も、大統領は表向き拒否しましたが、議会に差し戻さなかったため、法律は発効しています。
ナザルバエフ氏の任期を20年まで延長する国民投票の実施を求める動きについては、任期延長を求める理由としては、「大統領選への参加は、大統領の仕事の妨げとなる」「建国者で国民のリーダーでもある大統領の歴史的使命実現のための条件づくり」などが挙げられているとも報じられていました。この国民投票実施に必要な20万人を上回る300万人以上の署名が集められたそうですが、さすがにナザルバエフ氏もこれは避けて、代わりに大統領選挙前倒しに踏み切ったという経緯です。【1月14日 朝日より】
【理性を曇らせる錯覚と過信・思い込み】
昨年12月には、欧米と旧ソ連の56カ国が加盟する全欧安保協力機構(OSCE)の11年ぶりの首脳会議を首都アスタナで議長国として開催し、国威発揚を狙ったナザルバエフ大統領ですが、冒頭演説で、セミパラチンスク核実験場を閉鎖し、核弾頭を撤去したことに触れ、「核なき世界」の実現を呼びかけました。
“だが、20年以上も権力の座にあるナザルバエフ大統領が、人権・民主主義を掲げるOSCEの議長を務めたことには、人権団体から「最大のパラドックス」と批判が出た。折しも、内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した米外交公電で、大統領の娘婿が誕生日に英歌手エルトン・ジョンさんを招いて私的なコンサートを開くなど、一族の豪勢な生活ぶりも暴露された。”【10年12月6日 毎日】
会議自体は、“グルジア紛争などを巡る対立で予定された行動計画の採択は見送られ、多くの首脳は閉幕を待たずに早々と帰国した。3日未明の総括会見で、「歴史的な成功」を強調するナザルバエフ大統領の言葉がむなしく響いた。”【同上】というものでした。
古今東西、長期政権・個人崇拝の弊害を示す事例は山ほどあるにもかかわらず、なぜ権力者は権力の座に固執するのでしょうか?
現在の体制で甘い汁を吸っている周辺の取り巻き・関係者の思惑もあるのでしょうが、権力者自身「自分だけは他の事例とは違う」という錯覚、「自分がこの国を一番うまくリードできる」という思い込みがあるのでしょう。