
(違法な“ブッシュミート”を運ぶ男性 中央アフリカ “flickr”より By Middle Africa http://www.flickr.com/photos/61727647@N03/5950772009/)
【エボラ出血熱は終結、しかしマールブルグ病(出血熱)が発生】
アフリカ・ウガンダで発生したエボラ出血熱については、8月1日ブログ「ウガンダ エボラ出血熱で14人死亡」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120801)で取り上げましたが、そのエボラ出血熱については、8月13日にはウガンダ保健省が感染拡大は食い止められたとみられると発表、9月3日にはWHOも今回の感染は終息したとみられると発表しています。
****ウガンダのエボラ出血熱が終息、死者17人 WHO発表font>****
ウガンダ西部で7月初めに発生したエボラ出血熱で、世界保健機関(WHO)は3日、新たな感染報告がここ1か月ないことから、今回の感染は終息したとみられると発表した。同国での死者は前回発表から1人増え、17人になった。
WHOは声明の中で、「ウガンダ・キバレ県でエボラ出血熱が新たに確認されたケースは2012年8月3日以降なく、感染拡大は終息へ向かっているとみられる」と述べた。
WHOによれば、これまでに報告された感染が確認された人や感染の疑いがある人は24人に上った。
エボラ出血熱が発生したウガンダ西部のキバレ県は、首都カンパラ(Kampala)から約200キロ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)との国境から50キロほどの距離にある。【9月4日 AFP】
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ただ、今度はエボラ出血熱によく類似したマールブルグ病(出血熱)の発生が報告されています。
下記は日本外務省の海外安全ホームページの記載です。
なお、マールブルグ病(出血熱)の致死率は80%ほどとも言われています。
****ウガンダ:マールブルグ病(出血熱)の発生 ****
2012年10月25日
1.ウガンダにおけるマールブルグ病(出血熱)の発生
在ウガンダ日本国大使館によれば,ウガンダ保健省は10月19日,ウガンダの首都カンパラ市の南西約410キロにあるカバレ県においてマールブルグ病(出血熱)が発生した旨発表し,10月22日現在, 確定例及び疑い例を含めた患者数が9名(うち確定例3名)報告されており,そのうち5名が死亡しています。
現在,ウガンダ保健省はタスクフォースを立ち上げ,世界保健機関(WHO)と協力し,感染拡大防止対策をとっています。
つきましては,ウガンダに渡航・滞在を予定されている方におかれましては,報道や在ウガンダ日本国大使館等から最新の関連情報を入手すると共に,別途渡航情報(危険情報)も確認の上,安全対策に努めてください。
2.マールブルグ病(出血熱)について
マールブルグ病(出血熱)は,マールブルグウイルスが引き起こす,致死率が非常に高い極めて危険な感染症です。
患者の血液,分泌物,排泄物などに直接触れた際,皮膚の傷口などからウイルスが侵入することで感染します。感染の拡大は,家族や医療従事者が患者を看護する際,あるいは葬儀で遺体に接する際に引き起こされる例が報告されています。感染予防のため,ウガンダ保健省は不必要な集会等にも近づかないように推奨しています。
また,自然宿主はオオコウモリであるとされており,このウイルスに感染したサルなどの動物に触れたり,食べたりすることによっても感染しますので,野生動物に接触したり,洞窟に入ったりしないように注意してください。
予防のためのワクチンは存在せず,治療は対症療法のみとなります。潜伏期間は3日から10日で,発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛・食欲不振などに始まり,嘔吐・下痢・腹痛などの症状があります。更に悪化すると,皮膚や口腔・鼻腔・消化管など全身に出血がみられる等し,死に至ります。【日本外務省 海外安全ホームページ】
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また、ウガンダのエボラ出血熱は終息しましたが、隣国コンゴでも発生しています。
****ウガンダの隣国コンゴでもエボラ出血熱発生、10人が死亡 WHO****
世界保健機関(WHO)は21日、アフリカのコンゴ(旧ザイール)でエボラ出血熱のため10人が死亡したと発表した。
WHOによれば、20日の時点で同国東部のオリエンタル州で2人の感染が確認され、13人に感染の疑いがあるとされていた。死者10人のうち8人は同州イシロ地区の患者で、うち3人を医療従事者が占めるという。
同国保健省は特別チームを立ち上げて感染対策に乗り出し、WHOや国連児童基金(ユニセフ)、国境なき医師団、米疾病対策センター(CDC)の協力を得て対応に当たっている。
オリエンタル州と国境を接する隣国のウガンダでは、7月初旬以来、24人がエボラ出血熱に感染または感染した疑いがあり、このうち16人が死亡。衛生当局が対応に乗り出し、WHOは同国と国境を接する各国に対して警戒を呼びかけていた。ウガンダで感染が確認されたのは、8月4日に隔離された患者が最後だという。
WHOによれば、コンゴとウガンダで発生したエボラ出血熱はそれぞれウイルス株が異なることから、関係はないとみられる。エボラ出血熱のウイルスには5種類の株が存在する。いずれも感染力が高く、体液などを通じて身体感染する。
エボラ出血熱のウイルスは1976年にコンゴで初めて見つかった。感染すると発熱、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛などの症状が出て、口腔部や消化管からの出血を伴うこともある。【8月22日 CNN】
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エボラ出血熱にしても、マールブルグ病(出血熱)にしても、感染ルートは確定はしていませんが、コウモリが自然宿主ではないかと推定されています。
コウモリから感染したサルを食べたりすることでも感染するようです。
【増大する“ブッシュミート”需要】
上記コンゴ民主共和国(旧ザイール)の隣国であるコンゴ共和国において、“ブッシュミート”(サル・ワニ・カメなどの野生動物の肉)が広範に食されている状況が報じられています。
****食い尽くされる、森の動物〈地球異変〉****
アフリカ中央部のコンゴ共和国。北部のヌアバレ・ヌドキ国立公園を中心に3カ国にまたがる熱帯林が7月、世界遺産に登録された。評価されたのはゴリラやゾウなど多くの野生動物が暮らす豊かな生態系だ。ところが、この豊かな森の動物が食い尽くされつつある。
■市場に並ぶ、ワニ・カメ・サル…
熱帯林が広がるこの国では、牧畜ができる土地はほとんどない。野生動物の肉は「ブッシュミート」と呼ばれ、昔からたんぱく源のひとつになってきた。だが、それは自家消費分だけ。動物の数のバランスが保たれ、持続可能な利用だった。それが2000年前後に一変した。
内戦が終わり人口が急増。この10年間で約100万人増えた。11年の人口は約410万人。木材を輸出するために熱帯林の伐採が進み、道路が奥地まで延びる。ブッシュミートがその道路を通って運ばれ、都市で大量消費されるようになった。
熱帯林の真ん中にある町ポコラの中央市場を訪れた。店先にはダイカー(ウシの仲間)やワニ、カメなど様々な野生動物が積まれていた。女性店主が刃渡り30センチを超す包丁を振るってさばく。中でも目に付くのはサルだ。サルの解体が始まるとあたりに独特の臭いが広がった。
市場に並ぶブッシュミートは違法だ。売買目的の狩猟は禁じられている。それでも密猟者は森の奥まで入って獲物を仕留め、市場へ運ぶ。政府やNGOはそれを次々と摘発。しかし、密猟は後を絶たない。ニシローランドゴリラやマルミミゾウなど絶滅危惧種の肉も並ぶ。
国連食糧農業機関(FAO)によると、周辺6カ国で消費されるブッシュミートは推定年間約500万トン。1990年代の4倍以上の量だ。アフリカの熱帯林での狩猟は、野生動物を絶滅に追い込まずに持続可能に利用できるレベルの6倍以上という。
国際NGO野生生物保護協会(WCS)のメンバーで、コンゴ北部で保護活動を率いる西原智昭さん(50)は警告する。「野生動物は木々の種を運ぶなど森にとっても重要。動物の減少は森そのものの存続の危機だ」
(中略)
■「牛肉はない 鶏肉は高い」
世界遺産の森を抱えるサンガ州の州都ウエッソの中央市場。市場の入り口に、ブッシュミートの売買を戒める巨大な啓発看板があった。だが、そんなことはお構いなし。ブッシュミートが山積みになった売り場には、通路をふさぐほどの人だかりができていた。
ブッシュミートは内臓からしっぽまでぶつ切りにされ、ひとつかみ250CFAフラン(約40円)で売られていた。場所にもよるが、ブッシュミートは1キロあたり1千CFAフラン(約160円)程度。輸入品の牛肉は1キロあたり約2千CFAフラン(約320円)と値段は約2倍だ。平均的な労働者の1カ月の所得は十数万CFAフラン(約2万円)。人々は安いブッシュミートを選ぶ。
森の奥地の村に行けば行くほど、牛肉や鶏肉の流通は減っていく。世界遺産エリアの中心のヌアバレ・ヌドキ国立公園に近いカボ村。メレリオン・コランティンさん(34)はここで夫と子供4人で暮らす。「村の市場で牛肉は見たことがない。鶏肉はたまに見かけるが高い。ブッシュミートを買うしかないのよ」
森の伐採が進むと、奥地には伐採会社の作業員の町ができる。そこでも新たに安い肉の需要が生まれる。ブッシュミートへの依存度は高まるばかりだ。
WCSが2011年、ヌドキ国立公園を中心とした熱帯林で野生動物の痕跡を調べた。ダイカーなどの有蹄(ゆうてい)類のふんなどは06年の調査と比べ、すべての地域で減少。とくに新たに伐採が始まった地域では4分の1に激減していた。
新たな問題も浮上している。隣国の中央アフリカやカメルーンからの密猟者だ。まだ野生動物が豊かなコンゴ共和国の森へ国境を越えてくる。エコガードのパトロールは追いついていけない。
国際的な流通も拍車をかける。国連環境計画(UNEP)のまとめでは、05年に英国の空港で乗客の荷物から2万5千個ものブッシュミートが押収された。08年のパリの空港での調査では、毎週5トンものブッシュミートが密輸されていると推定される。
このままでは世界遺産の森は、動物の姿の見えない「うつろな森」になってしまう。「ブッシュミートの問題は野生動物の保護だけでない」。アフリカ中央部の熱帯林で民俗学的調査を続けてきた市川光雄京都大名誉教授は指摘する。「そこで暮らす人々の代替たんぱく源をどうするかを考えなければ解決に向かわない」
インド・ハイデラバードで開催され、20日に閉幕した国連の生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)でブッシュミート問題が取り上げられた。野生動物の持続可能な利用を促す勧告を採択し、国連食糧農業機関(FAO)などと協力して国際的に途上国を支援することを決めた。 【10月29日 朝日】
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こうした“ブッシュミート”の食習慣と、マールブルグ病(出血熱)やエボラ出血熱などの熱帯地域特有の疾病との関連についてはよく知りませんが、一般論としては、人間の活動エリア拡大によって野生動物との接触が濃密・広範囲になるにつれて、そうした野生動物が保持している疾病の人間への感染の危険性も増すのではないかと思われます。
注目されるのは、上記のような森林への人間活動の侵入、“ブッシュミート”大量消費といった事態の背景に、内戦終結による人口増加があるということです。
もちろん内戦終結は喜ばしいことですが、その結果として人口増加が森林破壊・野生動物乱獲をもたらし、一方で増大した人々の暮らしはなかなか改善されないという状況は憂慮すべきことです。
内戦終結はゴールではなく、国民生活改善のスタートにすぎないのですが、現実には権力争いや利権獲得に奔走して国民生活を顧みない(その余裕と能力がない)ような政権もあるように見えます。