孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

香港「中環(セントラル)占拠」の不明瞭な印象

2014-10-02 23:14:48 | 東アジア

“flickr”より By El Mundo Economía & Negocios https://www.flickr.com/photos/apoyopublicacion/15390402776/in/photolist-prZQy1-ptKDmx-pcxSCP-pcLpi2-prwXnW-pthH9r-pc5Dej-psdezh-pufo5B-pufnhz-pufkMk-ptY6g4-ptY7Fi-pcKwML-pufnMn-pcKXxq-ptY7cn-pcKvW7-pcKbgK-ptRpGk-pcKPGL-pufcnp-pufd9p-pcKoJG-pcKmF3-pudr17-psd4YU-pcK4dB-pudrAA-pudpy9-pudoWY-puff3K-pudsF1-pthH7T-psd3NY-pcKRey-psd71Q-pudt1E-pcK2Jz-pcL4Na-pcKn1G-pcK3jn-pcL7Rp-pcKncd-pcKMKQ-pcKkdH-psdmX3-pcL5y9-pudHwU-pufuZi)

行動エスカレートの動きも 「警察は絶対に座視しない」】
香港の市民・学生による選挙制度民主化を求める「中環(セントラル)占拠」は5日目になりましたが、事態が動いていません。

抗議デモ側は、選挙制度改革はもちろん、梁振英行政長官の辞任についても何も回答を得られないことにいらだちを強めており、行動のエスカレートも示唆しています。

一方、9月28日のデモ隊への催涙弾使用で批判を浴びたことで、治安当局は前面に出ることを控えてきましたが、事態がエスカレートすれば強制排除を辞さないという姿勢を強めています。

****デモ隊の強制排除示唆=香港の占拠5日目****
香港行政長官の選挙制度民主化を求める民主派デモ隊は占拠5日目の2日も、政府本部がある香港島中心部の金鐘(アドミラルティー)などで占拠を続けた。

香港政府はデモ隊の強制排除を強く示唆する声明を発表。警察スポークスマンも政府機関を包囲する民主派の動きに対し、「警察は絶対に座視せず、断固として法律を執行する」と警告した。

政府声明は民主派の幹線道路占拠について「政府には警察本部、政府本部、行政長官弁公室(官邸)などの政府機関を守り、その正常な運営を回復する責任がある」と強調。「市民が(政府の対応を)理解するよう希望する」とした上で、政府機関前の道路に集まっているデモ隊に対し、解散を呼び掛けた。

警察スポークスマンは「治安に対する重大な脅威だ」と民主派の動きを非難。「警察はこのような暴力行為を絶対に容認しない」と強調した。

民主派は2日未明、梁振英行政長官の辞任を求めて、政府本部近くの長官弁公室前でも座り込みを開始。民主派系の学生団体、香港大学生連合会(学連)の幹部は、政府機関包囲など街頭行動をエスカレートさせるための準備だと説明した。

学連は1日、梁長官が2日夜までに辞任しない限り、行動をエスカレートさせると警告したが、政府側は拒否している。【10月2日 時事】 
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中国国慶節である10月1日の記念式典では、香港政府トップの梁振英行政長官は「異なる人々が異なる考えを持っていることは理解できるが、市民による直接選挙がないよりは、あるほうがよく現行の間接選挙で行政長官を選ぶより、すべての有権者で選ぶほうがいいに決まっている」と述べ、制度の改革に理解を求めています。【10月1日 NHK】

中国・撤回の意思なし 本土への波及を警戒しつつ、対応策を探る
決定権を持つ中国政府がデモ隊の要求に応じる意思は全くないのは当然のところで、デモ隊は社会秩序を乱す違法行為であり、欧米の言及は内政干渉であるとの姿勢を明らかにしています。

****米に言動慎むよう要求=香港情勢で中国外相****
中国外務省は2日、王毅外相の米国での一連の会談内容を発表した。それによると、香港情勢に関し、王外相は「米国は言動を慎み、中国の内政に干渉しないとの約束を守り、外部に誤ったシグナルを発しないよう要求する」と述べた。

王外相は「現在の事態の核心は一部の者が繁華街で違法集会を企て、社会秩序を深刻にかき乱していることだ」と主張、デモは少数の者による違法行為との認識を示した。【10月2日 時事】 
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中国が一番気にしているのは、香港の混乱が本土へ波及することです。ネットなどにおいても厳しい情報統制を敷いて、本土への影響を阻止しようとしています。

****<香港>本土へのデモ波及 中国政府が神経ピリピリ****
香港の次期行政長官選挙の制度改革に抗議する大規模デモが拡大する中、中国政府が中国本土へのデモの波及に神経をとがらせている。

国内メディアのデモ報道も統制しており、国内の民主化や政治改革の動きを刺激しかねない事態とみて警戒を強めている。

中国は国慶節(建国記念日)に伴う連休中だが、香港メディアによると、中国当局は1日から香港への新たな団体旅行用の通行証発給を停止。
既に旅程が決まっている観光客については、旅行会社にデモ現場に近づけさせないように通知を出した。

香港経済にとって重要な中国人観光客を止めることで圧力を強めるとともに、中国人観光客がデモの影響を受けないようにするための措置とみられる。(中略)

また、中国本土では、インターネット上などで香港のデモ支持を表明した民主活動家など10人以上が中国当局に拘束されたり、警告を受けたりしている。

デモでは催涙ガスを避けるための雨傘が抗議活動の象徴として伝えられるが、中国版ツイッター「微博」では「雨傘革命」などのキーワードが検索できなくなるなど、ネット上の規制も強化されている。

北京では、香港のデモを伝えるNHKの海外向け放送が再三中断されているほか、米CNNや英BBCの放送も遮断され、主要紙もほとんど報道していない。

当局が国内への波及を懸念し、報道を規制している模様だ。中国指導部には民主化を求める学生らを軍が武力鎮圧した天安門事件(1989年)の苦い経験があり、国際世論の動向も見極めながら対応策を探っているとみられる。【10月2日 産経】
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香港市民内部に混乱への批判も
香港市民のなかも、中国に批判的な者、選挙制度民主化に関心がある者だけではなく、中国との関係を重視する者、政治的な問題より円滑な経済活動を重視する者も多くいます。
混乱が続くなかで、市民から占拠デモに対する批判も出てきています。

****ツアー客激減…香港民主化デモ「5600億円の損失」報道も****
香港で「真の普通選挙」を求めて幹線道路を占拠した民主派の街頭デモは2日、開始から5日目に入った。香港紙の中には、占拠による経済損失は約400億香港ドル(約5600億円)に達すると報じるものもあり、香港経済への影響を懸念する声が出始めた。(後略)【10月2日 産経】
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何を求めて、どこまでやるつもりなのか・・・
いくら香港当局、梁振英行政長官に抗議しても彼らに決定権がないこと、多少の抗議行動を行ったぐらいでは決定権を有する中国政府に撤回の意思がないことは最初から明らかで、今回抗議行動が何を求めて、どこまでやるつもりなのか・・・個人的には、ややすっきりしない感もあります。

このままデモ隊、治安当局の双方が行動をエスカレートさせることがなければ、おそらく抗議行動は何ら成果をえられないまま、次第にエネルギーを失っていくでしょう。2011年アメリカの「ウォール街を占拠せよ」運動のように。

一方、事態がエスカレートすれば、中国政府が事態を座視することはないでしょう。
従前から“戒厳令”云々の発言も中国側から出されていますが、そうしたことが現実のもとなるでしょう。

万一、天安門事件の再現のような事態になっても、市民を助けてくれる勢力はありません。
欧米は厳しく非難するでしょうが、中国を相手にそれ以上のアクションは起こせないでしょう。

抗議行動に駆り立てられた香港市民・学生の気持ちは理解できますが、残念ながら満足する結果を得ることは難しいと思われます。その意味でもすっきりしない感が消えません。

唯一可能性のある出口は、梁振英行政長官の進退でしょう。
デモ隊側からすれば、非民主的な選挙制度を受け入れ、催涙弾を使用した強制排除を行ったことへの責任として、中国側からすれば、事態を混乱させた責任として、行政長官、もしくはその身代わりの辞任という形で収拾を図るというものです。

****習主席の決断がカギ=香港デモの事態収拾*****
香港民主派が行政長官の選挙制度民主化を求めて、幹線道路を占拠している事態をいつ、どのように収拾するかは、習近平中国国家主席(共産党総書記)の決断に懸かっている。

香港は一国二制度の下で外交・国防以外の「高度な自治」が認められているが、選挙制度や政府高官人事に関する実質的権限は中国指導部にある。

習主席は党中央国家安全委員会など新しい指導機関を次々に設けて、自らトップを兼務。個人的権力集中を進めており、国家の基礎を成す一国二制度の問題についても主導権を握っているとみられる。

中国全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は8月末、2017年の長官「普通選挙」から民主派を事実上排除する決定を採択。民主派は撤回を要求しているが、中国側は既に撤回はあり得ないことを何度も明言している。

香港政界の事情に詳しい消息筋は「本来は梁振英行政長官が辞任すべきところだが、長官はスケープゴートを探すだろう」と述べ、スケープゴートになる可能性がある高官として、政府ナンバー2の林鄭月娥政務官(閣僚)や曽偉雄警務局長(警察庁長官に相当)を挙げた。ただ、高官の辞任は中国指導部の承諾が必要だ。

03年に国家安全法反対の50万人デモが起きた際は、政府が法案を撤回、担当閣僚の保安局長が引責辞任して、ようやく事態が収拾されている。【10月1日 時事】 
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デモ隊側も要求を当初の選挙制度民主化から梁振英行政長官の辞任に変更しているようにも見えます。

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ある市民は「運動は特定の個人や団体が指導するものではない」と主張。別の市民は「中環(セントラル)占拠」発起人や学生団体のスローガンが「真の(長官)普通選挙実現」から「梁振英(長官)辞任」に変わったと指摘し、「運動は変質し始めている」と不満を漏らした。【10月2日 時事】
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そもそも、中国主権を認めるのか・・・
そもそもの話をすれば、中国の主権を認める「一国二制度」のもとでは、現在の中国の基本理念が香港側にも一定に反映されるのはやむを得ないことのようにも思えます。

おそらく、中国側としては、一人一票を認めたことは「一国二制度」のもとでの香港の高度な自治に十分に配慮したものであり、それ以上の要求は納得できない・・・という思いがあるのではないでしょうか。

もしどうしても欧米的な民主主義を実現したいなら、今になって要求しても遅すぎる、本来はイギリスから中国への香港返還がなされる前に声を上げるべきだった・・・という感があります。

中国を批判するイギリスにしても、いくら“50年間は・・・”と言ったところで、返還したら当然に中国の体制に組み込まれていくことは明らかであり、それを承知で(スコットランドのように)住民の意思を確認することもなく返還を行い、今になって何を言っても・・・という感もあります。

今回抗議行動を見ていてすっきりしない理由のひとつは、抗議行動を行っている者が中国主権をどのように考えているのかよくわからない点にあります。

もし、中国の主権を否定する、我々は中国人ではないと言うなら、話はすっきりします。

****香港デモ「自分が中国人だとは思わない****
イギリス統治時代を知らない香港の若年層が中国を最も嫌う理由

香港の次期行政長官選挙への中国の「介入」に反発する抗議デモは、香港島の中心にあるビジネス街を次々に占拠して香港全域を飲み込む勢いだ。

今では香港社会のさまざまな年齢層の人たちが参加しているが、当初、デモは若者主導で始まった。これはイギリス統治時代を覚えていない香港の若い世代が、ますます中国への不信感を抱いていることを示している。

中心部の商業地コーズウェイベイでデモに参加していた31歳のアシュリー・オ―は、電話取材に対して「香港は香港、中国は中国だ。我々住民が、もっと香港の行政に発言権を持つべきだ」と、語った。

今回の抗議デモは、17年に実施される香港行政長官選挙に関して、親中派が多数を占める「指名委員会」の過半数の推薦を受けた人物だけに立候補者を制限するという、中国の全国人民代表大会(全人代)の決定に反発して起きた。

しかしその背景は根深い。97年に香港が返還された当初、中国共産党は「一国二制度」を掲げ、香港の政治、経済、法制度には50年間、手を付けないと約束した。実際にはその後の17年間、たびたび香港の住民は中国政府の介入に反発してきた。

最近では12年、香港の教科書に共産党寄りの歴史を記載する「愛国教育」に反発する学生運動が拡大し、香港政府が政策を撤回している。

「愛国教育」反対運動の成功は、学生運動グループ「スカラリズム」の活動の大きな原動力となっている。グループのリーダー、17歳のジョシュア・ウォンは、今回の抗議運動で中心的な役割を果たしている。

中国側の決定に反発していた民主派団体「オキュパイ・セントラル(中環占拠)」は、当初金融街・中環の占拠を中国の建国記念日にあたる10月1日の国慶節に実施する計画だった。

しかし先週、「スカラリズム(Scholarism)」をはじめとする学生グループが抗議デモを始めたため、「オキュパイ・セントラル」もそのままデモに参加した。

「参加しているのは普通の学生で、活動家ではない」と香港大学の元研究者のトレイ・メネフィーは言う。「この年代は(中国への)抵抗感を共有している」

先月、香港大学が発表した意識調査によると、18〜29歳の回答者のうち75%が中国政府への不信感を持ち、85%が「一国二制度」を信用していないと答えた。同様の不信感は50歳以上の回答者では、それぞれ41%と42%と低かった。

抗議デモでは、中国の国旗が上下逆さまに掲げられている。地政学的にも経済的にも世界情勢を揺さぶるほどの大国に、飲み込まれまいとする若者たちの無言の抵抗だ。

「今の学生は標準中国語の学習を求められた最初の世代で、本土の文化や政治に強い抵抗感を持っている」と、メネフィーは言う。「年配の世代よりよく分かっているだけに、反発が強い」

さらにデモに参加する若者にとっては、アイデンティティーの問題も重要だという。31歳のオーはこう語った。「自分たちが中国の一部とは思っていない。自分が中国人だとは思わない」【10月1日 Newsweek】
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「自分たちが中国の一部とは思っていない。自分が中国人だとは思わない」・・・・話は非常にすっきりしますが、これが前面にでれば、中国側の反応は明らかです。結果も明らかです。

追加
****<香港>デモ緊迫…行政長官官邸前に学生2000人****
・・・・民主派の学生らは2日未明、香港トップの梁振英(りょう・しんえい)行政長官の辞任を求め、金鐘(アドミラリティ)地区にある行政長官弁公室(官邸)前にも押し寄せ、座り込みを始めた。(後略)【10月2日 毎日】
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*****催涙弾・ゴム弾を搬入=デモ隊鎮圧想定か―香港長官官邸****
香港の公共ラジオRTHKは2日、警察筋の話として、警察が行政長官弁公室(官邸)に催涙弾とゴム弾を運び込んだと伝えた。官邸周辺の道路を占拠する民主派デモ隊の鎮圧を想定しているとみられる。【10月2日 時事】
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