
(新幹線唯一の海外輸出実績である台湾高速鉄道 実績が豊富な欧州勢、低価格の中国との厳しい受注競争にさらされています。 “flickr”より By 黃 基峰 https://www.flickr.com/photos/goldentime/2110427918/in/photolist-4duuGf-xQKZP-ky6wKP-6ACmJc-85kgSc-861RDF-pnHJFg-ag7SCX-BwRfA-nDFi4o-f5zmos-8xdhnE-xRrZy-4fUxbX-ag7TiV-xEyQF-xCHYh-JfRPx-85oq6G-nzimqy-atA7gj-85opQ5-sAiuh-sAiv4-sAivg-sAivG-sAiuv-dhtULg-kvnXoR-PBk7C-wQqKi-kvpzyA-dNz7Vz-jw1Ubc-sAiww-sAiuQ-sAiwk-sAiw2-jvZBXe-wQsw6-BoetW-Bomub-DbGpX-dhqSYs-dhssyt-dhsrXk-2RkGeo-BvpK9-dhtWsz-864X9C)
【インド:先行する日本 追い上げる中国】
新幹線開業50周年という節目の年にあたり、国内でも記念行事や特集TV番組など新幹線関連の話題を最近よく目にしますが、国際ニュースにおいても、世界各地で高速鉄道が計画されていることから、高速鉄道の話題をよく目にします。
背景には、日本にとって新幹線技術が数少ない海外輸出可能なビッグプロジェクトであり、景気の不透明感が増す日本経済打開の突破口になって欲しいという国内の希望があります。
ただ、当然に競合相手は多く、特に高速鉄道輸出に力を入れる中国との競合がいつも話題となっています。
安全性などの技術には自信を持つ日本の新幹線ですが、建設費の安さや国家をあげての取り組みを展開する中国は日本にとって強力なライバルとなっています。
まずはインド。
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インド国鉄はインド市民の足として重要な役割を果たすと同時に、物流手段としても重要なインフラとなっています。インド国鉄の1日当たりの輸送人員は2500万人以上、年間では72億人です。・・・・これまでインド国鉄が抱える数多くの問題の中でも、最大のものが近代化の遅れ。延伸も進んでいません。・・・・現在の鉄道はもはやパンク寸前で、経済を迅速に発展させるには不十分です。地形的な問題から鉄道が延びていない地域もまだあるため、こうした地域にも経済発展の恩恵を平等に受けられるよう、モディ政権は鉄道の敷設を進めていく予定です。・・・・【7月17日 東洋経済online】
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インド政府は、広大な国土の主要都市を7つの路線からなる高速鉄道で結ぶ計画を進めており、モディ政権は手始めに、最大の商業都市・ムンバイと西部の工業都市・アーメダバードを結ぶおよそ500kmの区間から整備を始める方針です。
****印の高速鉄道を受注せよ 日中が争奪戦****
インド初の高速鉄道計画をめぐり、日本と中国の間で受注争奪戦が繰り広げられている。新幹線の売り込みで先行する日本に対し、建設費の安さに加えて人材育成や技術移転などもセットにして働きかける中国が追い上げている。
勝敗の結果は、東南アジアなどインド以外の新興国での受注争いにも影響しかねない。政府が成長戦略で重視するインフラ輸出を軌道に乗せるため、官民一体となった「オールジャパン」の総合力が問われそうだ。
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■日本…事業化調査請け負い先行
インドの高速鉄道計画は7路線あり、ルートは未確定ながらも総延長は4700キロ近くと、東海道新幹線・東京-新大阪間(約515キロ)の4往復半あまりに相当する。
さらに既存の鉄道も高速化して、首都ニューデリーから西部の工業都市アーメダバード、インドの最大都市ムンバイをめぐり、南部のチェンナイと東部のコルカタを経てニューデリーに戻り、高速環状網で全土をつなぐ構想だ。
このうちJR東日本などが受注を目指しているのが、アーメダバードとムンバイを結ぶ約500キロの路線。JR東を含む鉄道事業者が出資するコンサルタント会社などの日本勢が昨年12月に事業化調査を請け負い、インド側と共同で需要予測や基本計画の策定を進めており、来年7月ごろをめどに結果をまとめる。(中略)
官民が連携して早くから新幹線の導入をインドに働きかけてきた日本勢は事業化調査も手掛け、通常なら建設工事の受注も有利な立場にある。
ただ、日印共同の調査では日本の新幹線が最適という結論になるとはかぎらず、国際入札となる可能性も排除できない。
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■中国…建設コストは新幹線の半分
ライバルとなるのはフランスなど欧州勢だけでなく、日本や欧州勢のノウハウを土台に改良したと主張する「独自技術」で急速に力をつけてきた中国だ。
ニューデリーで9月18日、インドのモディ首相と会談した中国の習近平国家主席は、今後5年間で200億ドル(約2兆1600億円)の投資に加え、インドの既存鉄道の高速化や新設の高速鉄道への協力を約束。モディ首相は「中国の参加を歓迎する」と表明した。
中国側は日本を強く意識しており、中国共産党系のウェブサイト「人民網日本語版」は今月13日付の記事で「価格と戦略面で中国が優位だ」と伝えた。
(1)走行距離や信頼性で日本に劣らない(2)材料費や人件費が割安で建設費が安い(3)広大な中国で建設と運営に成功し、技術の成熟度と安全性が高い-とアピールした。
3年前に浙江省温州市で起きた高速鉄道事故で多数の死傷者を出しており「成熟度と安全性」には疑問符がつくものの、費用が安いのは事実。建設コストは新幹線の半分程度ともされ、開業後の「運賃を低く抑えたい」(インド連邦議会のシン名誉議員)というインド側には魅力的だ。
さらに中国は運行技術や車両製造のノウハウを移転する「鉄道大学」をインドに設け、将来的には製造・開発拠点の現地化にも協力する構えをみせており、国内製造業の振興を掲げるモディ首相の心をくすぐる。
それでもJR東の冨田社長は「30~40年間のメンテナンスを含めると新幹線は高くなく、優れたオペレーションや、メンテナンスを切り札に勝ち抜きたい」と自信をみせる。
日本は運行実績や安全性で強みを持つが、インド以外への売り込みも見据えて「廉価版」の新幹線を用意するといった対抗策が必要かもしれない。
インドで日本勢が受注に成功すれば、三菱重工業や川崎重工業などの企業連合が請け負い、2007年に開業した台湾の高速鉄道以来、2例目の新幹線輸出となる。【10月26日 産経】
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なお、日本とインドが取り組んでいる大型プロジェクトとしてはデリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)もあります。
デリー(人口1,256万)とムンバイ(人口1,383万)とを結ぶ地域を日本における東京大阪間の「太平洋ベルト地帯」と見なし、物流インフラを整備した上で、周辺地域の諸都市で重点的な開発を進めていくというもので、デリー・ムンバイ間に貨物専用鉄道も建設します。
日本がすでに事業化調査を行っていることや、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)を進めていること、更には親日的と言われるモディ首相のこれまでも“前向き発言”などはありますが、新幹線はコスト的に高いこともあって、こればかりはふたを開けてみないと・・・という感もあります。
【成長するアジアで日中のさやあて】
インドの他、マレーシアとシンガポールを結ぶ路線も来年にも入札が予定されており、日本・中国・欧州勢の熾烈な競争が行われています。
2020年の開業を目指すクアラルンプールとシンガポール間の高速鉄道計画は、約350キロを1時間半で結び、総事業費は400億リンギ(約1兆3千億円)と見込まれています。
今後、開発が進む東南アジア地域の高速鉄道の先駆けともなります。
****アジア高速鉄道1万キロ計画始動 日中、売り込みに熱****
アジアで高速鉄道計画が実現へ動き始めた。マレーシアとシンガポールを結ぶ路線は来年にも入札を予定。インドやタイなど、構想段階も含めると計画の総延長は約1万キロに上る。
成長するアジアを舞台に、日本や中国などからの売り込み合戦が熱を帯びている。(中略)
計画には、中国やフランス、スペインなども関心を寄せる。
日本勢はJR東日本、住友商事、三菱重工業などが連携。(中略)
アジアでは、タイ軍事政権が国内2路線の事業を承認。ベトナムではハノイとホーチミン間の一部で部分着工する案が議論されている。インドでも西部のアーメダバードとムンバイ間で着工に向けた調査が進む。
米国やブラジルなどにも計画や構想はあるが、経済成長と人口増を背景にアジアに計画が最も集中。各国が売り込みに乗り出す。
ただ、日本は07年に開業した台湾に新幹線車両を輸出した以外の実績に乏しい。受注競争を優位に進めるために、車両だけでなく、運行支援や保守・点検も含めてアピールする。
アジアの高速鉄道計画をめぐって、攻勢を強めるのが中国だ。今年7月に完成したトルコの高速鉄道の建設に中国企業が参加。雲南省・昆明からラオス、タイを抜けてシンガポールに縦断する総延長3千キロの高速鉄道網を自国主導で建設する構想まで描く。
その足がかりとして、財政難のラオスに、7千億円の建設費の融資を検討しているとされる。7月にあったタイ軍事政権との戦略対話でも、タイ国内の高速鉄道網に強い関心を示した。
中国企業の建設費は日本の半分ほどとみられ、工期も短い。09年には武漢―広州間(1069キロ)を着工から4年半で開業させた。マレーシアの展示会でJR東日本よりも大きなブースを構えた大手鉄道車両メーカー、中国南車集団の関係者は「価格だけでなく、安全性でも負けない」と話した。
■カギ握る規格争い
鉄道インフラの輸出で、カギを握るのが、事業の実現可能性などを調べる鉄道コンサルタントだ。
日本や中国、欧州では信号や運行管理システムなどの規格が違う。欧州に多いコンサルタントは、欧州の規格に沿った調査をして事業計画を作りあげるため、「その規格で製品を提供する欧州メーカーが有利になる」(鉄道関係者)。
先行する欧州勢に対抗して、JR東日本なども鉄道コンサルタント会社を設立。インドやインドネシアの高速鉄道計画で調査業務を受託した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は15年に経済共同体の実現を目指す。国境をまたぐ鉄道整備も加速するとみられる。オーストラリア国立大のジェフリー・ウェイド客員研究員は「鉄道網が結ばれれば、規格や運行主体も各国間で統一される可能性がある。受注には各国の総合力が試される」と指摘する。【9月15日 朝日】
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成長するアジアを舞台に、日本や中国などからの売り込み合戦が熱を帯びています。
中国の海外建設で最初の高速鉄道路線となるトルコのアンカラ~イスタンブール高速線は今年7月25日に開業しましたが、中国企業が安価で落札する背景には、付帯事業トータルで利益を出していく方針があるようです。
****競争が過熱化すれば双方共倒れも****
トルコ以外でも、近年、中国中鉄や中国鉄建など中国の鉄道インフラ建設企業は海外で比較的大きなプロジェクトを受注している。
しかし、中国のメディアの報道によれば、赤字のケースが多い。その典型的な例が、41.53億元の赤字を出したサウジアラビアのメッカ巡礼鉄道である。
しかしながら、ある中国鉄建の事情に詳しい人によると、2009年2月に獲得できたこのサウジアラビアのプロジェクトでは、巡礼線周辺の付帯工事を請け負うことでトータルでは赤字から黒字への転換を実現できたという。
高速鉄道の敷設とともに、沿線周辺の土地開発、資源調査、港湾建設など付加価値の高い業務を請け負ったり、中国製車両を売ったりすることは、高速鉄道ビジネスを海外で展開する時の中国企業のビジネスモデルになりつつある。運営サービスを提供する中国企業も現れている。
中国高速鉄道ビジネスに関わっている中国企業にとって潤沢な外貨準備を利用できるのも強みのひとつである。
その意味では、海外での高速鉄道事業の展開にますます力を入れる中国企業は、海外を舞台にして日本企業との競争を過熱化させることが十分、考えられる。加熱化した競争で双方共倒れになる危険性も十分ある。
日中の高速鉄道会社同士がどのようにともに利益が確保できるというウィン・ウィン関係を樹立するのか、これからの大きな課題の一つになっている。【9月18日 DIAMOND online】
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なお、クアラルンプール―シンガポール間の高速鉄道については、シンガポール側からは“前向き発言”も出ているようではありますが、日本で開催された会議での発言ですから・・・・。
****シンガポール、日本の新幹線採用に前向きな姿勢****
新幹線やリニアなど日本の高速鉄道技術の普及に向けて議論する高速鉄道国際会議(読売新聞社など後援)が22日、都内で開かれた。
席上、シンガポール陸上交通庁のチュア・チョン・ヘン副長官が、マレーシア政府とクアラルンプール―シンガポール間(約300キロ・メートル)で検討している高速鉄道計画について「新幹線は我々が求めている高速鉄道システムに該当すると思っている」と述べ、新幹線システムの採用に前向きな姿勢を示した。
マレーシア陸上公共交通委員会の開発責任者、アズミ・アブドゥル・アジズ氏も「日本の姿勢を評価している」と述べた。(後略)【10月22日 読売】
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【中国、アメリカの計画にも攻勢】
アジア以外では、アメリカの高速鉄道計画にも日本・中国ともに意欲を見せています。
****中国の高速鉄道輸出、米国に攻勢かける=中国メディア****
中国メディア・第一財経済日報は23日、中国の鉄道車両メーカー・中国南車が米国カリフォルニア州の高速鉄道建設への入札意向書を提出したと報じた。(中略)
同州では1980年代からサンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道構想を持っていたが、資金難により約30年間棚上げ状態となっていた。
それが動き出したのは2006年以降のことで、当時同州知事だったシュワルツェネッガー氏がプロジェクトの支援者を探すべく中国、日本、韓国の高速鉄道に試乗したこともある。
10年には中国南車がGEと高速列車を含む交通車両製造の合弁企業設立で合意したが、高速鉄道が環境破壊を招くという懸念があったため計画は今月15日に現地の裁判所が許可を下すまでまでとん挫していた。
高速鉄道建設プロジェクトはサクラメントからサンフランシスコ、シリコンバレーを通ってロサンゼルス、サンディエゴへと続く。全24駅が設けられる予定で、2029年の開通後にはサンフランシスコ―ロサンゼルス間が現行の9時間よりはるかに短い3時間足らずで結ばれることになる。
記事は、このプロジェクトには日本や欧州からも関連メーカーが競争に参加することになると予測した。
また、中国南車を含む中国の企業連合体が先日、メキシコの高速鉄道プロジェクトで唯一の入札者となったことも紹介、実際に受注すれば時速300キロメートルの中国製高速鉄道列車が初めて国外に出ることになると併せて伝えた。【10月26日 Searchina】
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昔から計画はあるのですが、アメリカも連邦政府・カリフォルニア州ともに財政事情が厳しいので、実現はどうでしょうか?
基本的に車社会であるアメリカで鉄道に関する合意を得る難しさもあります。
【北京-モスクワ間が2日間】
最近の中国とロシアの接近という国際情勢を反映した計画もあります。
****ロシアの「高速鉄道プロジェクト」に中国企業が参加=中国メディア****
中国の李克強首相はこのほどロシアを訪問し、中ロ両国はロシアの高速鉄道プロジェクトに中国企業が参加することで合意した。中国メディアの京華時報は17日、ロシアの首都モスクワとカザンを結ぶ高速鉄道が、国境を超えて中国の北京市とも結ばれる可能性があると伝えた。
記事は、モスクワ-カザン間の高速鉄道が開通した場合、両都市間の所要時間は11時間30分から3時間30分まで短縮される見通しと伝えたほか、北京市まで延伸するとなれば、北京-モスクワ間の鉄道による所要時間は従来の片道6日間から2日間にまで短縮されると報じた。
北京-モスクワ間はすでに空路が存在することについて、「鉄道は大量の旅客だけでなく、大量の貨物も輸送できる」として北京-モスクワ間が高速鉄道で結ばれることの意義を強調。さらに、西アジアや欧州に向けての貨物輸送も可能になるとし、中国の輸出産業にとっても有益だと主張した。(後略)【10月21日 Searchina】
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北京-モスクワ間はやはり飛行機を使ったほうがいい距離に思われますが、寝台高速鉄道になるのでしょうか?座ったままで2日間というのも大変です。
とにかく話題花盛りの高速鉄道です。