
(不人気なオバマ大統領に代って、民主党候補支援に奔走するミシェル夫人 “flickr”より By Brittany Rempe https://www.flickr.com/photos/b_rempe/15329056888/in/photolist-pmzqyh-pe3N3V-ppS5Lw-pe9j9q-pe8sGR-pe9jyo-pvmhGF-pAemC4-pybYFA-pAcBB3-piHspV-pybYQo-pAcA93-piHusx-pzh6Lh-pehhRi-pDtDHR-ptJc13-pegtRj-pehhEM-pvLq52-pDtyaM-piVdoo-pAH938-psvduh-pux6FF-poEhQm-pdFA4q-pDcqTR-pynSJP-pe8GJE-pe9hPb-pvAVR3-ptAu9Y-pvAQko-pe9fdE-pe9uJn-pe9kDj-pe8rRc-pe8KHW-pu7N64-puqPgP-pso6BJ-pupvi6-pzJiQL-pd1BCV-pny3qC-pG8ZKJ-pcMdei-pyAHgi)
【クリントン氏の“執着心”は?】
アメリカでは来月4日に中間選挙が行われ、上院議員のうちの3分の1、下院議員全員が改選となります。
中間選挙は次期大統領選挙の前哨戦でもあり、民主党の次期大統領候補の呼び声が高いクリントン氏も応援に走り回っているようです。
オバマ大統領が不人気なだけに、劣勢が伝えられる民主党候補からは引っ張りだことも。
****(岐路のアメリカ 2014中間選挙)大統領選にらみ応援 クリントン氏ら全米遊説****
11月4日に投開票される米中間選挙が佳境を迎える中で、2016年の大統領選挙に向けた動きも始まっている。クリントン前国務長官ら出馬が取りざたされる政治家は、大統領選挙もにらみつつ、応援演説のため全米各地を回っている。(中略)
クリントン氏は全国の民主党候補の陣営から引っ張りだこで、終盤は上院選の激戦州を集中して回っている。クリントン氏は、年明けには態度を表明すると明言している。
米メディアは2月ごろの出馬表明を予想していたが、中間選挙の結果次第では、出馬表明を年内に前倒しするという見方も出ている。
政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた各種世論調査の平均では、民主党の大統領候補として64%がクリントン氏を支持し、2位のバイデン副大統領(11%)、3位のエリザベス・ウォーレン上院議員(9%)を引き離している。
一方、共和党はランド・ポール上院議員、クリス・クリスティー・ニュージャージー州知事、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、ポール・ライアン下院議員らの名前が浮上している。支持率で突出した候補はおらず、指名争いの行方はまだ見通せない状況だ。
クリスティー知事は共和党知事協会の会長として、共和党の知事候補の応援や資金集めのため全米各地を精力的に回っている。ランド・ポール上院議員もすでに全米30州以上を回り、それぞれが大統領選挙に向けてアピールしている。【10月17日 朝日】
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クリントン氏が実際に次期大統領選挙に出馬するかどうかは、今回の中間選挙次第で、もし民主党が大敗して大統領選挙も厳しい・・・となれば出馬を取りやめる可能性もあるようです。
上下院とも共和党がおさえて、議会運営がますます難しくなる状況で、すでに一定に名誉もカネも手にしているクリントン氏が長丁場の大統領選挙を戦い抜くだけの大統領への“執着心”を持っているのか・・・・。
情勢如何では、“孫との時間を大切にしたい”という判断もあるかも。
アメリカの多大な影響を受ける外国からすれば、知名度も実績もあるクリントン氏には民主・共和両党のその他候補に比べ一定に安心感もありますが、いずれにしてもアメリカ国民の決めることです。
【上院 接戦州の結果次第 争点に浮上した「イスラム国」とエボラ出血熱】
その中間選挙の方は、一般的には以前から共和党優勢で、現在多数を確保している下院だけでなく、現在は民主党が過半数を制している上院でも共和党が過半数を獲得して、その意味では上下院のねじれはなくなるのでは・・・と言われています。
共和党が過半数奪還を目指す上院については、大方の州は優劣が既に明らかになっていますが、アラスカ、ノースカロライナ、コロラド、アイオワ、カンザスの5州が特に接戦州とされており、この5州にルイジアナ、アーカンソー、ジョージア、ミシガン各州を加えた9州の勝敗が注目されています。
“政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」のサイトによれば、非改選を合わせ共和党は46議席、民主党は45議席に届いており、過半数を確保するためには9州のうち5州で勝利する必要がある。共和党は6州で優勢としているが、勝敗がどちらに転ぶか微妙な「トスアップ」と呼ばれる状況にある。”【10月3日 産経】
共和党優勢が言われ続けるなかで、民主党の善戦を予想する調査もあるようです。
****オバマ政権は「レームダック」だが、民主党が中間選挙で善戦の予想****
・・・・ワシントン・ポストの世論調査機関「エレクション・ラボ」とバージニア大学政治センターなどが予想したものによれば、共和党有利と見られてきたコロラド、アイオワ、カンザス、ノースカロライナ各州で、民主党候補の支持率が大幅に改善しているという。
既に逆転し、当確ラインに入ってきているというから、残り二ヵ月を切った今、選挙の行方は俄然混迷し始めた。
民主党上院候補が善戦している理由は民主党系のリベラル派選挙資金団体「スーパーPAC(政治活動委員会)」が現在までに二千五百万ドルを集め、劣勢だった民主党候補に多額の選挙資金を拠出しているためだという。
「大規模なキャンペーンで候補者の名前と政策を浸透させている」(カール・ローブ元大統領副補佐官)ことが奏功しているのだ。(後略)【選択 10月号】
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最新のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが共同で実施した世論調査によれば、“情勢は非常に流動的で、しかも上院選と知事選で接戦が続いているとあって、両党の専門家らは予期せぬ結果になる可能性もあるとみている。”とのことです。
****米中間選挙、共和党やや優勢も予断許さず=WSJ/NBC調査****
米中間選挙を11月4日に控え、共和党が依然として民主党への優勢を保っていることが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とNBCニュースが共同で実施した世論調査から判明した。
ただ、有権者の関心が異常なほど低いことや政治指導部への不信感、争点に対する有権者の心理の変化などで先行きは不透明だ。
ここ数年の傾向と異なり、投票日が近づいても選挙運動に対する有権者の盛り上がりは欠けている。米国が誤った方向に進んでいると考える有権者の割合は、中間選挙の年として過去最高水準に達した。
かつてはヘルスケアなど国内問題に焦点が当たっていた選挙の争点も、数カ月前までは重要視されていなかった国際危機の発生で次第にブレてきた。
世論調査では共和党が議会を制する方が良いと答えた割合が46%、民主党が44%となった。
この結果を受け、民主・共和両党の世論調査の専門家は、どちらも共和党が上下両院を制すると予想している。
ただ、情勢は非常に流動的で、しかも上院選と知事選で接戦が続いているとあって、両党の専門家らは予期せぬ結果になる可能性もあるとみている。
共和党のわずかなリードは、オバマ大統領の支持率低迷と同時進行している。調査に回答した有権者のうち、オバマ氏の外交政策を支持する割合は31%と就任以来の最低を記録。外交政策の不支持率は61%だった。
2010年の中間選挙では共和党が下院の過半数を獲得したが、この直前の世論調査では共和党の支持率50%に対して民主党が43%だった。半面、今年の調査では共和党のリードが一段と縮まっている。
また、今回の世論調査では回答者の半数が共和党にネガティブな印象を持っていることが判明した。これは9月よりも悪い水準で、昨年秋に政府機関が閉鎖されたときに記録した過去最悪の水準に近づいた。
投票まであと数週間と迫った今、「ワイルドカード」になり得るのは急浮上中の国際問題だ。中間選挙で有権者が重視する争点の中ではイラクやシリアでの「イスラム国」との対決が第3位になっており、雇用創出やワシントンでの党派対立よりも上位に位置している。
今回の調査では、イスラム国掃討に向けた地上軍投入に対する支持が高まっていることも明らかになった。イスラム国への軍事作戦は空爆に限定すべきだと答えた有権者は35%、地上軍も同時展開すべきだとの回答は41%に上った。1カ月前の調査では空爆限定が40%、地上軍派遣が34%だった。
エボラ出血熱の発生に対する回答者の関心は特に高く、エボラウイルスについて見聞きしたと答えた有権者は98%に達した。これはWSJ/NBC調査が追跡した主要ニュースに対する関心度の高さで過去最高水準となる。
今回の調査は有権者1000人を対象に10月8~12日にかけて実施された。この調査期間中、米テキサス州ダラスで女性看護師がエボラウイルスに感染したとのニュースが伝わった。
イスラム国とエボラ熱という注目トピックスが浮上したことで、どんな要素が残り3週間の選挙戦を方向付けるのか一段と捉えにくくなった。
もう一つのワイルドカードで、有権者の政治不信を示す兆候として、民主・共和以外の第3党の候補者が存在感を増すことが挙げられる。(中略)
これは有権者の政治不信を如実に表している。議会の支持率は12%と、過去最低に並んだ。機会があれば第3党に投票すると回答した有権者は8人に1人に上る。(後略)【10月16日 WSJ】
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「イスラム国」とエボラ出血熱の状況次第では大きく選挙の行方が左右されることになりそうです。
アメリカ国民は空爆というアメリカの力を持ってしても好転しない「イスラム国」問題に苛立ちを強めているようです。
オバマ大統領はこれまで地上軍派遣は再三否定していますが、選挙戦終盤で地上軍派遣を決めれば大統領・与党民主党の支持が上がるということでしょうか?ただ、それでは、イラク・アフガニスタンからの撤退を進めてきたオバマ大統領の方向性が根底から揺らぎます。
エボラ出血熱も厄介です。
アメリカ国内で発症した最初のリベリア人男性を最初誤診して帰宅させたこと、院内での二次感染が相次いでいること、二次感染した看護師の女性が、症状を訴える前日に航空機に乗っていたことなど、封じ込め対策がうまくいっていないことへの批判が高まっています。
両問題とも現状では野党側に有利に思えますが、単にアメリカの選挙の行方という話にとどまらず、世界にとっても重要な問題であり、また別の機会に取り上げます。
【下院 「ゲリマンダー」と棲み分けが招く硬直化】
話をアメリカ中間選挙に戻すと、下院の方は共和党が過半数を維持することが確実ですが、“無風区”が増加しているという選挙の中身に問題があるようです。
****(岐路のアメリカ 2014中間選挙)下院選、無風区ばかり 共和党、過半数維持の可能性****
11月の米中間選挙で全議席が改選される下院(定数435)で、無風の選挙区が極端に多い。特定の政党に有利な区割りが多いことが背景にあり、結果として下院は共和党が過半数を維持する可能性が高い。
「機能不全」と言われ、記録的な不人気となっている議会は、選挙後も構成があまり変わらないかもしれない。
■有利な区割りへ政党関与
フロリダは、全米でも民主、共和両党の支持層が拮抗(きっこう)している州だ。大統領選のときも、勝敗を決定づける州として注目される。
しかし、今回の下院選は低調だ。全米の選挙情勢を分析しているバージニア大によると、州内の27選挙区のうち16選挙区が「確実に共和党」、9選挙区が「確実に民主党」または「おそらく民主党」で、「接戦」は2選挙区しかない。(中略)
背景として、「ゲリマンダー」という特定の政党に有利になるように線引きした選挙区の影響が指摘される。
4区も、民主党支持者が多く住むジャクソンビル市内をくりぬいて除いたような不思議な形。対照的に民主党現職が安泰とされる5区はジャクソンビルから南に200キロ以上、細長く続く。
米国では州に、区割りの線引きの権限がある。こうした問題は以前から指摘され、フロリダでは10年に「区割りは中立にしなければならない」という州の法律が住民投票で成立した。
だが、新法の下でできた区割りもいびつだ。
市民団体が起こした訴訟で裁判所は「中立な第三者が決めているように見せながら、実際には政党がかかわっていた」と認定。5区など一部の区割りを無効とした。
判決を受けて区割りは見直されたが、抜本的な是正にはなっていない。訴訟に携わってきたパメラ・グッドマンさん(58)は、州内の有権者登録は民主党員の方が多いのに、州内選出の議員は、連邦議会でも州議会でも共和党の方が多いことに首をかしげる。「フロリダは有権者が議員を選んでいるのではなく、議員が有権者を選んでいる。民主主義の反対だ」
■信条似た人、集まる傾向
下院選では、ほかの州でも無風区が目立つ。バージニア大の分析では、全米435議席中、民主党または共和党が「当選確実」なのは376議席と8割以上。「接戦」は13選挙区だけだ。(中略)
理由として全米で「ゲリマンダー」が行われていることが指摘されるが、それだけでは説明できないという意見もある。
ジャーナリストのビル・ビショップさんは「似たような政治信条の人が好んで近くに住む現象が全米で進んでいる」。この現象を分析した著作「ザ・ビッグ・ソート」は反響を呼んだ。
共和党支持者は家と家の間が離れ、自家用車が使いやすい郊外を好む。一方、民主党支持者は住宅が近接し、公共交通機関が充実している都市部を好む傾向があるという。
他党の支持者を含めて幅広く支持を求める「中道」の候補は減っている。むしろ、現職たちは予備選で自党の候補に負けることを恐れる。
今年も共和党の下院ナンバー2だったエリック・カンター前院内総務が「移民政策などでオバマ政権と妥協しようとした」と批判され、予備選で無名の挑戦者に敗北した。
■ねじれ議会、低い支持率
相手党の支持者にアピールする必要がないため、両党の議員にはともに歩み寄るメリットはなく、議会で法案が通りにくくなっている。
特に現在は下院で共和党、上院で民主党が過半数を握る「ねじれ」で、議会は機能不全を指摘される。11年から13年の2年間の会期で成立した法案の本数は、第2次世界大戦後で最少だった。
有権者はこんな政治状況に不満を募らせており、ギャロップ社が9月に行った世論調査では議会への支持率は14%。低いとされるオバマ大統領の支持率43%よりもずっと低い。
だが、無風の選挙区が多く、現職の大半は来年以降も議員を続けることになりそうだ。(ジャクソンビル=中井大助、ワシントン=大島隆)【10月16日 朝日】
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選挙区の区割りは日本でも揉める問題ですが、民主主義の旗を振るようなアメリカで「ゲリマンダー」が横行する現状にはややあきれる感もあります。
「ゲリマンダー」や棲み分けによって、“相手党の支持者にアピールする必要がないため、両党の議員にはともに歩み寄るメリットがない”ということで、身内に受けがいい強硬論に走ってしまう・・・といった政治傾向が、現在のアメリカ議会の機能不全の根底にあるようで、選挙結果よりもそのことの方が深刻な問題です。