孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  時を超えて人々を魅了する「アジャンタ」壁画

2016-02-24 02:13:56 | 南アジア(インド)

(「アジャンタ石窟群」第1窟の憂いをたたえた「蓮華手菩薩」は、アジャンタ石窟壁画のなかでも最高傑作と評され、1949年に焼損した法隆寺金堂の勢至菩薩像に影響を与えたといわれています。)

現実世界では・・・・
インドを旅行中です。

連日取り上げている、デリー近郊での低位カースト優遇策に関する暴動は沈静化に向かっていると報じられています。

ただ、現地の方に訊くと、衝突はジャイプールに広がっているとか、「死者が19人」というのも公式発表であり、土に埋められ「失踪者」扱いされる者が大勢いるとか・・・穏やかならざる話も聞きます。

本当のところはわかりませんが、公式発表が信用されていないということが問題です。
日本や欧米とは違い、ここはインドですから・・・・

****インド首都で水不足深刻化=暴徒が水路破壊、復旧2週間*****
インドの首都ニューデリーが水不足にあえいでいる。近郊で発生したカースト集団による暴動で、人口約1700万人を抱える首都に水を供給していた水路の一部が破壊され、政府当局は23日、復旧に最大2週間を要するとの見通しを発表した。数千世帯への水道水供給が停止しており、当局は節水を呼び掛けている。

隣接するハリヤナ州で発生したデモは、公務員就職や大学入試での優遇措置を求めて暴徒化。幹線道路や線路を遮断して放火を繰り返した上、首都への水供給の約45%を担っていた水路を破壊した。

州政府が「デモ隊の要求を受け入れる」と約束したため、暴動は沈静化に向かっている。一時は水不足が原因で休校を決めたニューデリー市内の学校も授業を再開。

しかし、治安回復の遅れで水路復旧は進まず、浄水場の稼働率は5割程度にとどまっている。【2月23日 時事】 
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世界に目を向けると、シリアでは、実効性が伴うかどうかはわかりませんが、停戦の話も動いています。
南シナ海では、中国がレーダー施設を建設し軍事化を進める一方、アメリカの地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の韓国配備を巡って、中国と米韓の綱引きも・・・などいろいろあるようです。

アジャンタ・・・・時を超えて
そうした世俗の話から離れて、人類の歴史にかかわる浮世離れした話を。

昨日のエローラ石窟寺院群に続いて、今日は「アジャンタ石窟寺院群」を観光してきました。
エローラは仏教、ヒンズー教、ジャイナ教が混合した遺跡ですが、アジャンタは純粋に仏教遺跡です。

*****アジャンター石窟群****
アジャンター石窟(寺院)群とは、インドのマハラーシュートラ州北部、ワゴーラー川湾曲部を囲む断崖を550mにわたって断続的にくりぬいて築かれた大小30の石窟で構成される古代の仏教石窟寺院群のことをいう。【ウィキペディア】
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開窟年代は、前期(第1期)と後期(第2期)に区分され、前期は紀元前1世紀から紀元後2世紀、後期は5世紀後半から6世紀頃とされています。

昨日紹介したエローラの「カイラーサナータ」がそのスケールの大きさで見る人々に迫るのに対し、アジャンタは壁画に残された時間を超えた優美さで人々を魅了します。

それにしても、特別な保存措置を行った訳でもないのに、1500~2000年の時を経て、鮮やかな色彩が残っているのが不思議でもあります。

観光客がもっと少なくて、「喜多郎」(若い方はご存知ないでしょうが)の音楽でも流れていたら、現実世界を忘れて天女が舞う世界に浮遊してしまいそうです。

5000年前のドレス

(5000年前のものと判明した「世界最古のドレス」【2月23日 NATIONAL GEOGRAHPIC)】)

「人類の歴史」を感じる話題がエジプトからも。

****世界最古のドレス、5000年前のものと判明****
20世紀初めにエジプトのある墓地で見つかった麻のドレスが、新たな分析により5000年以上前のものであることがわかった。織物の衣服としては、これまで見つかった中で最古のものだ。縫い方もプリーツの付け方も美しく、当時の社会の繁栄を物語っている。

「タルカン・ドレス」と呼ばれるこの衣服が発見されたのは奇跡と言っていい。植物の繊維や動物の皮で作られた古代の衣料は、ほとんどが崩れてばらばらになってしまうからだ。(中略)

このドレスと近い年代のもので、現代まで残っている衣服は数えるほどしかなく、それも、単に体に巻き付けたり、体を緩やかに覆ったりするものばかりだ。

一方、このタルカン・ドレスは、古代のオートクチュールといえる。腕にぴったり添う袖とVネックの首元、幾重もの細かいプリーツがあしらわれたデザインは現代に通じるものがあり、もし百貨店に並んで売られていても違和感はないだろう。

これほど細部まで手の込んだドレスは、専門の職人でなければ作れなかったはずだ。そうした職人が存在したということは、既に豊かで階層化の進んだ社会ができていたはずだ。事実、5000年前のエジプトには、ちょうど、1人の支配者の下に初めて統一された王朝が登場していた。

ひじや両脇にあるしわからは、このドレスが単に儀式のために作られたのではなく、実際に着用されていたことがうかがえる。(中略)

こんなドレスを着られたのは、上流階級の人々だけだっただろう。(後略)【2月23日 NATIONAL GEOGRAHPIC】
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“腕にぴったり添う袖とVネックの首元、幾重もの細かいプリーツがあしらわれたデザイン”・・・とても5000年前のものとは思えません。

日本は縄文時代ですが、早期の縄文土器に繊維を押し付けた跡が見られたり、旧石器時代に衣服を縫ったであろう針が発掘されていることから、縄文人も早い段階から服を着ていたであろうと推測されているようです。土偶も筒状の上着と、ズボンをはいています。

もちろん、胸元に幾重もの細かいプリーツといったものではなかったでしょうが。

古代の遺跡や文物を見ると、文化というものがある地域で突然のように開花し、やがて時の流れの中に消えていく、そして別の地域で別の文化が・・・・という文化の不均一性を感じます。

その意味では、現代はかつてないほど文化の均一化が進行している時代のようにも。
ただ、そうした流れに伴って、より直接的な均一化を求める「難民・移民」が押し寄せたり、欧米的な価値基準で進む均一化に対し、イスラムなどのアイデンティティを重視する反発も起きたり・・・といった問題も生じます。
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