孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フィリピン大統領選挙 シンデレラガールにダバオのダーティー・ハリー 副大統領にはマルコス長男も

2016-03-09 21:02:06 | 東南アジア

(フィリピン大統領選挙の主要候補 女性がポー氏ですが、誰が「ダバオのダーティー・ハリー」か?・・・まあ、顔を見ればわかりますね。【yoshi-jpnドットコム http://yoshi-jpn.com/3821/】)

孤児から大統領を目指すシンデレラガール・ポー氏
アメリカ大統領選挙の話題が連日数多く報じられています。
共和党の暴言を繰り返すトランプ氏、民主党の民主社会主義者を自称するサンダース氏という、これまで外部にいた異色(当初は“泡沫”とも見られていた)候補の快進撃・大活躍で、共和党は既存の党内主流派が危機的な状況に追い込まれています。

民主党も、特別代議員を含めた代議員獲得の仕組みからしてクリントン氏の逃げ切りは動かないでしょうが、やはり予備選挙等における一般有権者の多数から支持されないことには格好がつきません。今日もミシガン州で敗北したように、今のところまだサンダース氏を振り切れずにいます。

こうした現象の背景等についても詳しく報じられていますので、今日はその件はパス。

一方、フィリピンでも大統領選挙がスタートしており、5月9日に投票が行われます。
こちらも、アメリカに負けず劣らずユニークな候補がレースを引っ張っています。

アキノ大統領が後継指名したのは、マヌエル・ロハス前内務・自治相(58)。
祖父が元大統領、父が元上院議員という名門の出で、与党の組織力をバックに集票を狙う。だが、「庶民に冷たいエリート」とも称され、人気が伸び悩むとも。

野党陣営からはジェジョマル・ビナイ副大統領(73)が立候補しています。弁護士を経て金融街、マカティ市で市長を務めた。過去の汚職疑惑が取りざたされるが、貧困層から根強い支持を受ける。

こうしたエスタブリッシュな候補をおさえてレースの先頭を走るのは、教会の前に置き去りにされていた孤児から伝説的な映画俳優の養子となり、大統領の座を狙うまでに上り詰めたシンデレラ・ストーリーのグレース・ポー上院議員(47)。

彼女はその立候補資格が問題にされていましたが、なんとかハードルをクリアしたようです。

*****フィリピン大統領選】有力女性候補のポー氏、逆転で「失格」覆す 比最高裁****
フィリピンで5月9日に実施される大統領選の有力候補、グレース・ポー上院議員(47)が、国内居住期間などの要件を満たしていないとされた問題で、同国最高裁は8日、ポー氏に候補者資格があるとの判断を示した。

「失格」としていた選挙管理委員会の決定を覆す結果で、大統領選は4候補を軸とする選挙戦となることが決まった。

ロイター通信によると、最高裁は9対6で、ポー氏に資格があると認めた。国民的人気俳優を養父に持ち清廉なイメージがあるポー氏の人気は高い。ポー氏はAP通信に対し、「安心したが、これは始まりにすぎない」と語った。

大統領候補者は投票日からさかのぼって10年間、フィリピン国内に居住していることが必要だが、ポー氏は米国籍を取得していた時期もあるなど米国暮らしが長く、選管は期間が不足しているとして「失格」と判定。

また、生みの親が判明していないため、「生まれながらのフィリピン人」という条件も疑問視された。

ポー氏は、選管が昨年12月に出した決定を不服として最高裁に提訴し、資格問題が決着しないまま選挙戦に突入していた。

一方、反対陣営は最高裁の判断を不服として反発しており、混乱が終結するかは不透明。ポー氏以外では、ビナイ副大統領(73)や、ダバオ市のドゥテルテ市長(70)、ロハス前内務・自治相(58)ら3氏の混戦状態となっている。【3月9日 産経】
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アキノ大統領はマヌエル・ロハス前内務・自治相を後継指名していますが、当初はポー氏を副大統領として立候補させ、その人気を利用するつもりだった・・・というように、政策的にはポー氏はアキノ大統領と近いものがあり、ポー氏もそのことをアピールしています。

そのシンデレラ・ストーリーとクリーンなイメージで現在も最も高い支持率をキープしています。

ダークホースは「ダバオのダーティー・ハリー」】
もうひとり、アメリカ大統領選挙のトランプ氏にも匹敵するユニークな存在が、ミンダナオ島のダバオ市長で、歯に衣着せぬ率直な発言が人気を集めているる「処刑人」とも「ダバオのダーティー・ハリー」とも呼ばれるロドリゴ・ドゥテルテ氏(70)。

この人については、ずいぶん以前になりますが、2008年7月11日ブログでも取り上げたことがあります。
当時の記載です。

****ダバオのダーティー・ハリー****
まだ治安が不安定なミンダナオ島ですが、ミンダナオ島の中心都市ダバオ(人口130万人、世界最大の行政面積を持つ都市)だけは全く別世界で、首都マニラなんかよりはるかに治安がいいそうです。

それには理由があって、「処刑人」とも「ダバオのダーティー・ハリー」とも呼ばれるドゥテルテ・ダバオ市長が私的な“殺人課”を有しており、殺人・強盗・麻薬などに関係した者を次々に“処刑”しているからだそうです。

在フィリピン日本国大使館によると、“麻薬関係者や重犯罪者がバイクに乗った何者かに銃殺されるという所謂「即決殺人」による事件が2003年は91件、2004年には 80件近くが発生し・・・”とのこと。

以前は夜になると市長自らバイクにまたがって“治安維持”に活躍していたとか。

このドゥテルテ市長の活動で、ダバオの治安は非常によく保たれており、市民からは絶大な支持が寄せられているそうです。また、アロヨ大統領の信任も厚く、大統領の要請を受け、誘拐・麻薬対策特別委員会の顧問に就任しています。

実際、ドゥテルテ市長の仕置き人的な“処刑”で治安が保たれている訳ですから、きれいごとばかりも言えません。
ただ、こういう形でしか治安回復できないというのは、正直残念な思いもします。【2008年7月11日ブログより再録】
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“市長時代、噂(たぶん事実)では、大型バイクで犯罪組織に殴りこみショットガンをぶっ放したとか、ヘリで犯罪集団の車を追跡して、上空からマシンガンを乱射して、車をハチの巣にしたとか、型破り過ぎる大統領候補です。”【yashinoki さんのブログ http://t2mary.blog.so-net.ne.jp/2015-12-10】とも。

yashinoki さんのブログで紹介されているマニラ新聞WEB版では以下のようにも。

****次期大統領選 立候補を届け出たダバオ市のドゥテルテ市長、警官による容疑者射殺を容認****
次期大統領選(2016年5月)への立候補を届け出たミンダナオ地方ダバオ市のドゥテルテ市長は9日、当選した場合も、警官による容疑者射殺を容認する考えを強調した。首都圏のラジオ局DZMMの取材に答えた。

さらに、容疑者射殺の違法性をめぐって警官が訴追されたり、遺族から告訴された際には、「(告訴などが)警官に対する嫌がらせだった場合には、弁護士を付けて支援する」と警官を擁護するという。

一方で、悪徳警官による犯罪が多発する問題に関しては、「誘拐事件などに関わった警官には死んでもらう」と語り、安月給などから犯罪に手を染める警官らを「死の恐怖」で抑え込む考えを示した。

アロヨ前政権下に廃止された死刑制度についても、大統領に就任した場合、殺人、レイプ、人身売買、薬物事犯など重大犯罪を対象に復活させたいという。

フィリピンでは、多くの犯罪者が銃器類で武装し、対抗しようとした警官に射殺されたり、違法捜査や警官の事件関与を隠ぺいするため、容疑者が殺害されるケースが少なくない。

また、捜査の不十分さや違法捜査などのため、起訴に至らなかったり、公訴棄却になることも多く、「逮捕後に釈放されるぐらいなら現場で射殺を」と警官を容疑者殺害に駆り立てる要因の一つになっている。

一方、ダバオ市では、犯罪に関与した疑いのある人物を殺害する処刑団が1990年代から暗躍。

ドゥテルテ市長は今年6月、処刑団との関係を「私が処刑団だ。犯罪者を皆殺しにすることで、ダバオ市は世界屈指の安全な街になった」と初めて認めた。

大統領選との関連でも「私が大統領になれば、国民を不幸にする人間を皆殺しにする。(処刑される)人数は5万人、10万人に増え、(遺体の遺棄で)マニラ湾の魚は肥え太るだろう」と発言した。

これに対し、国際人権団体は「警官や地元政治家らで構成される処刑団によって殺人が計画的に実行されている」と指摘。

治安対策を理由に、処刑団の存在と訴追手続きを経ない超法規的殺人を正当化する同市長を批判。
市長の刑事責任追及を求める声もくすぶり続けている。【マニラ新聞WEB版】
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随所に射殺、殺す、皆殺し・・・といった言葉が溢れるドゥテルテ市長です。

同氏は討論会で「多くの汚職がフィリピンを包んでいます。 ドラッグや汚職を全ての取り締まりを3~6ヶ月間で達成してみせます。」とも発言しています。処刑団をフル稼働させるのでしょう。

確かに治安は劇的に改善するかもしれませんが、それでいいのか?という疑問も。

映画スターのイメージを売り込んで当選したエストラーダ元大統領のように、フィリピンの大統領選挙は人気投票的な面がありますので、ドゥテルテ市長の躍進もあり得ます。

PulseAsiaが2月15日から17日まで18歳以上の有権者1,800名を対象に行った調査では、支持率1位はポー氏の26%。続いてビナイ氏25%、ドゥテルテ氏21%、ロハス氏21%だったようです。

大統領候補の討論会から1週間後の2月24日~3月1日実施された調査では、1位はポー氏 26%、2位はドゥテルテ氏 24%、3位はビナイ氏 23%、4位はロハス氏 22%と大混戦のようです。

まだまだ、これから数字は大きく動くと思われます。

マルコス長男は副大統領候補 イメルダ夫人はご不満
一方、副大統領候補にもユニークな存在が。
かつて「ピープルパワー革命」でフィリピンを追われた故マルコス元大統領の息子、マルコス・ジュニア上院議員(通称ボンボン)です。

****マルコス一族、復権の動き=比革命から30年****
マルコス長期独裁政権を民衆が倒したフィリピンの「ピープルパワー革命」から30年の節目となる25日、マニラ首都圏でアキノ大統領が出席し、記念式典が行われた。革命後、同国では民主化が進展したが、追放されたマルコス一族の「復権」も目立っている。

アキノ大統領は、暗殺されてマルコス打倒運動の契機になった元上院議員が父、革命で大統領に就任したコラソン・アキノ氏(故人)が母という「革命の申し子」。

式典では「マルコス時代をフィリピンの『黄金時代』と呼ぶ人がいるが、それは取り巻きにとって、そうだっただけだ」と演説し、再評価の動きをけん制した。

マルコス元大統領(故人)は1965年から約20年にわたって独裁体制を敷いたが、86年の民衆による反政府運動や国軍幹部の決起で退陣に追い込まれ、米国に亡命。その後、フィリピンでは軍将校によるクーデター未遂事件がたびたび起きたものの、大統領の直接選挙が定着するなど民主化は進んだ。

ただ、貧困や汚職がいまだにはびこり、革命を直接知らない若年層が増加したことを背景に、マルコス一族の「復権」も進む。

ファーストレディー時代のぜいたくな生活が批判を浴びたイメルダ夫人は夫の死後帰国し、現在は支持者の多いルソン島北部を基盤に下院議員を務める。

息子のマルコス・ジュニア氏(通称ボンボン)も上院議員で、5月の大統領選では副大統領に立候補。最新の世論調査では首位に立っている。【2月25日 時事】 
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もっとも、イメルダ夫人は息子が大統領ではなく、副大統領に立候補したことに、いたく落胆しているとか。
フィリピンの副大統領は実権がなく、大統領と政党が異なる場合は干されてしまいます。

****フィリピンのイメルダ夫人、副大統領選に出馬の息子に「落胆****
フィリピンのイメルダ・マルコス元大統領夫人(86)は、息子のフェルディナンド・マルコス・ジュニア上院議員(58)が、来年5月の選挙で「副大統領」を目指すことに落胆を隠せないようだ。夫と同じく国家のトップに就いてほしいと長年願ってきたからだ。

ィリピンを約20年間統治した故マルコス元大統領の一人息子である同議員は、今週、次期副大統領への立候補を表明した。

「ボンボン」の愛称で知られる同議員は7日、「母は私が3歳の頃から大統領になることを望んでいた。その落胆はいかばかりか想像してほしい」と記者団に語った。だがいまは「機が熟していない」という。

イメルダ夫人はかつて、膨大な靴のコレクションなどぜいたくな暮らしぶりで知られた。夫人からのコメントは得られなかった。【2015年10月7日 ロイター】
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故マルコス大統領の家族は「革命」から5年後に帰国。
イメルダ夫人は95年に下院議員に当選、長女アイミーは北イロコスの知事を務めており、現上院議員のボン・ボンが副大統領ともなれば、フィリピンを石もて追われたマルコス家は完全復活です。

イメルダ夫人と言っても、若い人には「誰、それ?」といったところでしょうが。
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