
(インド・カルナータカ州のハッサンでヴァーダをテイクアウトした際の包装と袋 3月6日)
【各地でプラスチック袋の使用禁止などの取り組みも】
正直に言うと、私はゴミの分別にあまりきちんとは取り組んでいません。特に、お菓子やインスタント麺の袋とか、豆腐のパックなど、プラスチック容器ごみを分別せずに生ごみと一緒に・・・。
そんな私でも、今年3月に南インドを旅行した際に、都市部の空き地、農村の畑や道路わきに、地面を覆い隠すほどに放置されたプラスチック容器類・レジ袋などを見ると、「これは何とかしないと・・・」と思ったりもしました。
そんな旅行中にカルナータカ州のハッサンという街で、地元でヴァーダと呼んでいるインド版ドーナッツみたいなものをテイクアウトとしたところ、ポリエチレンのレジ袋ではなく、新聞紙で包んだ(紐も紙紐だったようにも)ヴァーダを紙素材の不織布のような袋にいれてくれたのが非常に意外でした。
はっきり言って、非常に安い食べ物を提供している質素な店で、そんな環境意識が高い系の店とも思われませんが、実際は非常に高い意識をもっているのか、それとも当局の規制があるのか、あるいは単に価格的に安いので使っているのか・・・そのときはわかりませんでした。
今日、たまたま下記記事を目にしました。どうやらインド・カルナータカ州ではプラスチック容器類の使用が完全に禁止されているようです。それで・・・・。
****世界各国6カ所でプラスチックが使用禁止に!****
プラスチックが使用禁止になったというニュースが世界各地から届いています。
アメリカ、インド、モロッコなどの国のいくつかの自治体では、完全にプラスチックを使用禁止に、またはポリエチレンのような特殊な形でのプラスチックの使用を禁止することで、プラスチック汚染問題に制御をかけています。
1 インド カルナータカ州
2016年3月、インドのカルナータカ州政府は、プラスチックの使用を完全に禁止にしました。問屋も、小売店も、貿易業者も、プラスチック袋、プラスチック皿、カップ、スプーン、ラップといったプラスチック製品を使用したり、売ったりすることができなくなっています。
禁止措置が実施されてから4カ月で、州都のバンガロールでは3万9,000キロもの違法なプラスチックが押収されました。そして、その措置を徹底しながらも、マイクロビーズ(洗顔料や歯磨きなどにスクラブ剤として使用されるマイクロプラスチック)の使用も禁止にしています。GO!カルナータカ州!(後略)【2017年12月27日 GREENPEACE】
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記事では、インド・カルナータカ州のほか、アメリカのサンフランシスコ、ロサンゼルス、ポートランド、ホノルルなど、タスマニアのコールズベイ、エチオピア、フランス、モロッコの同様の取り組みが紹介されています。
イギリスでは、ペットボトルなど使い捨て飲料容器にデポジット制度を導入する計画が発表されています。デンマーク、スウェーデン、ドイツではすでに実施されているとか。
****英、使い捨て飲料容器にデポジット制度導入へ****
英国の環境・食料・農村省は28日、ごみの量を減らすため、ペットボトルなど使い捨て飲料容器にデポジット制度を導入する計画だと発表した。
イングランドで販売される飲料のプラスチック、ガラス、金属製の使い捨て容器に預託金(デポジット)を課す方針で、制度の具体的なあり方については今後諮問するという。
英国で使われるプラスチックボトルは年間130億本と推定されている。マイケル・ゴーブ環境・食料・農村相は、「今すぐこの脅威に対処し、リサイクルされない大量のプラスチックボトルを減らすことが非常に重要だ」と述べた。
同省によると、同様の制度はデンマーク、スウェーデン、ドイツですでに導入されており、空のボトルを返却すると最高で25ユーロセント(約32円)が払い戻される仕組みになっている。
英国は2015年にほとんどの店舗でレジ袋1枚につき5ペンス(約7円)を課金する制度を導入している。政府によるとこれによってレジ袋の消費が90億枚削減されたという。【3月28日 AFP】
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レジ袋やペットボトルに関するこの種の話は最近よく見聞きします。世の中の流れですが、それだけプラスチック容器等の環境負荷の問題が深刻化していることを示してもいます。
【シエラレオネの「クリーニングデー」】
もっと能動的に、現在すでに放置されているゴミを国民みんなで取り除こう・・・との試みも。
アフリカ西部のシエラレオネで3月行われた大統領選の決選投票の結果、かつて軍事政権を率いたジュリウス・マーダ・ビオ氏が当選を果たしました。
1996年に軍事政権のトップとして国政を担った経歴を持つビオ氏ですが、就任早々に「クリーニングデー」なる取り組みを導入しています。
****国民総出で清掃、シエラレオネで初の「クリーニングデー」****
西アフリカのシエラレオネで5日、全国民が一斉に清掃に取り組む初の「クリーニングデー」が実施された。
「クリーニングデー」は、ジュリウス・マーダ・ビオ新大統領が、衛生環境の改善と公務員の業務従事率の向上を目指した政策の一環として新たに導入した。
首都フリータウン最大のスラム街クルーベイでは、男女数百人が排水路が詰まる要因となっている家庭ごみやプラスチックごみを取り除く作業にあたる姿がみられた。
住民の男性によると、あまりに大量の家庭ごみが投棄されるので、排水路は常に詰まった状態で、雨が降ると洪水が発生するという。
ビオ大統領によると「クリーニングデー」の実施日時は毎月、第1土曜日の午前7時から正午まで。
また公務員や政府閣僚については午前8時半から午後4時45分までを就業時間とし、大統領と副大統領が抜き打ち検査を行う。定刻どおりに勤務しなければ、懲戒処分や即時解雇もあり得るという。【5月6日 AFP】
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ビオ新大統領の政治姿勢は知りません。「クリーニングデー」も単なる“パフォーマンス”なのかも。
まあ、“パフォーマンス”であったにしても、こうした方面に目を向けること自体は非常に評価されるべきものでしょう。
【海洋汚染も深刻化 「太平洋ゴミベルト」 深海にも】
プラスチックごみについては、地上の環境問題もさることながら、海洋汚染も深刻さを増しています。
****海洋汚染が深刻なノルウェー、捕まえたタラのお腹の中にペットボトル****
ノルウェー国営放送局(NRK)の8日の報道によると、同国出身のある男性が西部の海岸で捕まえた12キログラムのタラの腹部から、ペットボトルが出てきたという。
この事件はプラスチックが海洋生物に危害を加えることをはっきりと示していた。新華網が伝えた。【4月12日 Record china】
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****クジラの胃に30キロのごみ、消化できず死ぬ スペイン****
スペイン南部ムルシア州で、海岸に打ち上げられて死んだマッコウクジラの胃の中から、重さ約30キロ弱のプラスチックごみなどが見つかった。
胃の中のごみはプラスチックやビニールが中心で、ロープや網なども混じっていた。州当局はこれをきっかけに、ビーチの清掃キャンペーンを開始。州の予算や欧州連合(EU)からの補助金も使って、一帯のビーチの清掃に乗り出す。
ムルシア州の環境保護当局は、「プラスチックごみが世界中で野生生物を脅かしている。多くの生物がごみに絡まったり、大量のプラスチックを飲み込んだりして死んでいる」と指摘する。(中略)
世界経済フォーラムによると、海上を漂流するプラスチックごみは既に約1億5000万トンに達している。これに加えて、毎年800万トンが海洋に投棄される。
先月公表された報告書によれば、海のごみの70%は生物分解できないプラスチックやビニールが占める。その量は今後10年で3倍に増える見通しだ。
プラスチックごみは野生生物を窒息死させるほか、食物連鎖に入り込んで海洋生物を有害物質で汚染させ、人間の食卓にも到達する。【4月12日 CNN】
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北太平洋上には「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる、日本の面積の4倍以上のゴミ集積エリアがあり、現在も急速に拡大しているとか。
****プラスチックだらけ! 世界中のごみが流れ着く「太平洋ゴミベルト」は本当にひどかった****
Kevin Loria
「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる160万平方キロメートルを超える北太平洋上の海域には、大きな潮の流れに乗ってプラスチックごみが集まってくる。
オランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ」の研究者たちは、飛行機を使って上空から観察したり、ボートを使ってこの海域を調査した。
その結果、この海域に漂うプラスチックごみの量が急増し、これまで考えられていたよりも16倍多い可能性があることが分かった。
海に捨てられたり、川から海に流れ出た全てのプラスチックごみは、その場で沈むか潮に流される。こうしたプラスチックごみの大半は、最終的に「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる大きな海域へと運ばれる。
その大きさは、スペインの面積の3倍以上、トルコあるいはアメリカ・テキサス州の2倍以上だ(日本の面積の4倍以上)。
そして、科学誌『サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)』が掲載したオーシャン・クリーンアップと協力する研究者の調査によると、太平洋ゴミベルトは急速に拡大、より多くのプラスチックごみが集まってきているという。
これまで考えられていたよりも16倍以上多い可能性がある。
太平洋ゴミベルトは上空から一見すると、ただの大海原のようだ。しかし実際には、世界中のごみが集まってきている。
これらのごみは、海の生き物にからまったり、それを食べ続けることで、生き物の命を奪ったり、わたしたちの食料供給に影響を及ぼすほど体内に蓄積されている。
プラスチックは毎年、3億2000万トン以上生産されている —— 相当量が最終的に海に行き着き、その大半は太平洋ゴミベルトのような海域にたまっているのだ。(後略)【4月1日 BUSINESS INSIDER】
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プラスチックごみは海洋表面だけでなく、深海にも及んでいます。
****深海1万メートルにプラごみ汚染 使い捨て製品、生態系懸念****
レジ袋のような使い捨てプラスチック製品が水深1万メートルを超える場所にまで到達するなど、プラスチックごみの汚染が深海に及んでいるとの調査結果を国連環境計画(UNEP)と日本の海洋研究開発機構のグループが5日までにまとめた。
UNEPは「貴重な深海の生態系に悪影響を与える懸念もある」と警告。各国に使い捨てプラスチック製品の生産や消費の削減を促すとともに、深海を含めた海のプラスチックごみの監視体制を強化することを提案した。
グループは、海洋機構の有人潜水調査船「しんかい6500」などの調査で映像や画像に写ったごみの情報をまとめたデータベースを利用した。【5月5日 共同】
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【生態系・人体への影響が懸念されるマイクロプラスチック】
更に、近年問題視されているのが、大きさ5㎜以下のプラスチック“マイクロプラスチック”。
“マイクロプラスチック”は、海水中の油に溶けやすい有害物質を吸着させる特徴を持っていて、100万倍に濃縮させるという研究結果も出ていて、生態系への影響が懸念されています。
****マイクロプラスチックの発生源と疑われているものは複数存在する****
工業用研磨材、(角質除去タイプの)洗顔料、化粧品またはサンドブラスト用研削材などに直接使用するために生産されるマイクロプラスチック、または多種多様な消費者製品を生産するための前段階の原料(ペレットまたはナードルと呼ばれる)として間接的に使用するために生産されるマイクロプラスチック("一次マイクロプラスチック")。マイクロビーズとも呼ばれる。
特に海洋ゴミなどの大きなプラスチック材料が壊れて段々と細かい断片になる結果、環境中に形成されたマイクロプラスチック(いわゆる"二次マイクロプラスチック")。
この崩壊をもたらす原因は、波などの機械的な力と太陽光、特に紫外線 (UVB) が引き起こす光化学的プロセスである。
家庭での衣類の洗濯による布からの合成繊維の脱落。下水道に流れ込む洗濯排水中のマイクロプラスチック粒子と環境中のマイクロプラスチックの組成との比較により、1 mm未満の粒径のマイクロプラスチック汚染の大半が脱落した合成繊維から構成される可能性があることが示唆されている。
最近数十年間の世界のプラスチック消費量の増加により、マイクロプラスチックは全世界の海洋に広く分布するようになり、その量は着実に増大している。【ウィキペディア】
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マイクロプラスチックは北極海に浮かぶ海氷中にも蓄積されており、地球温暖化で海氷の融解が進むと重大な水質汚染源となる可能性があるとも指摘されています。
****北極海氷にマイクロプラスチック蓄積 「重大な汚染源」に、独研究****
北極海に浮かぶ海氷中にマイクロプラスチック(微小なプラスチック粒子)が「憂慮すべきほど」蓄積していると警告する研究結果が24日、発表された。地球温暖化で海氷の融解が進むと重大な水質汚染源となる可能性があるという。
独アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所の研究チームは、2014年から2015年にかけて砕氷観測船ポーラーシュテルンに乗船して3回の北極海調査航海を実施。この調査中に収集した海氷サンプルに17種の異なるプラスチック粒子が含まれていることを発見した。
見つかったプラスチック粒子には、レジ袋や食品包装、船の塗料、漁網、合成繊維のナイロンやポリエステル、紙巻きたばこのフィルターなどに由来するプラスチックが含まれていた。(中略)
英南極調査所の海氷物理学者、ジェレミー・ウィルキンソン氏は、英サイエンスメディアセンターへのコメントで、マイクロプラスチックが「今や世界の海洋の表層水中の至る所に存在する」ことを今回の研究は示唆しており、「影響を免れている場所など、どこにもない」とした。(中略)
■悪影響は?
そして特に懸念されるのは、粒子のサイズが小さいことだ。研究チームによると、一部の粒子は直径が11マイクロメートルで、人毛の直径の約6分の1しかないという。1マイクロメートルは1000分の1ミリ。
論文の共同執筆者でAWIの生物学者のイルカ・ピーケン氏は、このことが意味するのは、魚が常食とする小型甲殻類などの「北極海に生息する微小な生物でも容易に体内に摂取できる恐れがあるということ」だと指摘する。
その上で「マイクロプラスチックが海洋生物にとって、また最終的には人間にとってどれほど有害なのかは、まだ誰も確かなことは言えない」と話した。(中略)
太平洋北東部の海水がベーリング海峡を通って流れ込むカナダ海盆で採取したサンプルは、包装材に用いられるポリエチレンを多く含んでいた。
論文執筆者らはこの分析結果から、この地域のマイクロプラスチックが主に「太平洋ごみベルト」に由来するものだと結論づけた。大量のプラスチックごみが渦巻いているこの海域は現在、フランス、ドイツ、スペインの国土面積の合計を上回る範囲に及んでいる。
また研究チームによると、プラスチック粒子は海氷内に2〜11年間とどまるという。
この2年から11年という期間は、海氷がロシア東部シベリアや北米北極圏の海域から南へ移動し、デンマーク領グリーンランドとノルウェーの間のフラム海峡に到達するのに要する時間に相当する。
海氷は同海峡で融解する一方、北方の海域では新たな海氷が形成されるが、このサイクルは地球温暖化によって加速される。
■水道水やボトル入り飲料水にも
英ニューカッスル大学の海洋学者、ミゲル・アンヘル・モラレス・マケダ氏は、別の解説記事で「北極の多年海氷の融解が気候変動によって加速することは、北極海を覆う海氷中に蓄積された大量のプラスチックが海水柱中に放出されることに合理的に帰着すると考えられる」と述べている。
また最近の別の研究では、人間が貝類や甲殻類、水道水やボトル入り飲料水などに含まれるマイクロプラスチックを摂取しているとの警告がなされている。こうしたマイクロプラスチックの健康リスクに関しては、まだ不明なことが多い。【4月25日 AFP】AFPBB News
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やや、希望が持てる話題としては、プラスチック類を分解する生物や酵素の研究も進められていることでしょうか。
“プラスチックを消化分解する酵素、研究過程で偶然作製 米英チーム”【4月17日 AFP】
“「プラスティックを食べる幼虫」は、環境汚染対策の切り札となるか?”【2017年5月15日 WIRED】
当然ながら、使用量をコントロールする、使用したものについては処分をきちんと行う・・・・そうした取り組みが重要です。