孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ開戦から3年 ロシアを支える北朝鮮と中国 中朝間には隙間風 したたかな中国外交も

2025-02-24 22:56:22 | ロシア
(平壌の金日成広場で行われたロシアのプーチン大統領を歓迎する式典。プーチン大統領の肖像画も掲げられた(2024年6月19日)【2月24日 文春オンライン】

【再び姿を見せた北朝鮮兵士 学習効果も】
ウクライナ軍が侵攻占領するロシア西部クルスク州に投入された北朝鮮兵士については、ドローンを使った戦闘に対応できず死傷者がいたずらに増加している、ロシア軍の弾除け、あるいは相手軍の攻撃場所特定のために無謀な突撃させられている、自国に残る家族の立場を考えてか捕虜となるのを防ぐため自爆する・・・等々が報じられてきました。

情報が限定されるロシア領内における秘密主義の北朝鮮軍の動向ということで、実際のところはよくわかりません。

****北朝鮮兵が「無謀な犠牲者」に ドローンの標的、ウクライナ戦争で4千人死傷か 手榴弾による自死も****
ロシアによるウクライナ侵略から24日で3年を迎えたが、2024年にロシア西部クルスク州に露軍側の応援部隊として投入されたのは、6千キロ以上離れた朝鮮半島から派遣された北朝鮮兵だった。

金正恩指導部はロシアからの外交・軍事上の見返りに期待しているとみられるが、北朝鮮兵は無人機(ドローン)などを駆使した現代戦に対応できず、犠牲者の報告が相次いでいる。

「ロシアはまともに(ウクライナ軍に対抗する)砲射撃をしてくれなかった。われわれは無謀な犠牲者になりました」。ウクライナ軍の捕虜となった20代の北朝鮮兵は、19日付の韓国紙・朝鮮日報でのインタビューで、北朝鮮兵が突撃部隊として最前線に配置された状況を証言した。

北朝鮮兵は約1万2千人が派遣されたとみられ、昨年11月以降、露極東地域などでの訓練を経てクルスクに動員されたことが確認された。米情報機関は、北朝鮮側がロシア派兵を発案したとみている。

当初こそ歩兵部隊は「最後の瞬間まで退却せず、激しく素早い」(ウクライナ軍関係者)と評価されたが、露軍との連携が十分ではなく、ドローン攻撃などの餌食になっている。英国防省の推計によると、1月中旬までに約4千人が死傷し死者は約千人に上った。

捕虜になったり、遺体の身元が特定されるのを回避したりするため、手榴(しゅりゅう)弾を顔付近で爆発させ自殺を図るケースも相次いでいるという。北朝鮮兵捕虜は「(朝鮮)人民軍では、捕虜になるのは変節(裏切り)のようなものだ」と証言。自殺を強いられる実情を明らかにしている。

韓国の情報機関、国家情報院によると、1月中旬以降、北朝鮮兵は対ウクライナ戦に参加していない。一時的な撤退とみられるが、米韓国防当局などは北朝鮮が追加派兵の準備を加速させているとの見方を示している。【2月24日 産経】
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“1月中旬以降、北朝鮮兵は対ウクライナ戦に参加していない”とのことでしたが、再び前線にあらわれたようで、しかも、これまでの戦闘からの学習成果も見られるようです。

****ウクライナ軍前線の兵士 “北朝鮮の部隊が再び前線に投入”****
(中略)ウクライナ軍が越境攻撃を続けるロシア西部クルスク州で戦闘を続けている前線の兵士がNHKのインタビューに応じ、一度撤退したとみられていた北朝鮮の部隊が再び前線に投入されたという見方を示しました。

ウクライナ軍の第95独立空挺強襲旅団の兵士で去年夏からロシア西部クルスク州で戦闘任務についているボロディミル・ネビル氏が、2月17日、前線からNHKのオンラインインタビューに応じました。

この中でクルスク州で一度撤退したとみられていた北朝鮮の部隊について、「1週間以上前から新たな兵士とともに戻ってきた」と述べ、再び前線に投入されたという見方を示しました。

そして「北朝鮮の部隊の戦術はロシアの戦術にどんどん似てきている。これまでより少人数のグループで、より分散して行動し始めている。ただ最も興味深いのは、ロシア軍が迫撃砲や重装備で北朝鮮の部隊を支援していないことだ」と述べ、ロシア軍と北朝鮮軍は連携ができていないとしています。

一方で北朝鮮の兵士はロシア製の兵器を利用するなど戦地での経験を重ねているとして「地上の兵士も司令部の将校もこの経験をほかの兵士や北朝鮮軍のほかの組織に広めていくだろう」と述べ、クルスク州での戦闘経験を持ち帰ることが北朝鮮軍のねらいだという見方を示しました。

北朝鮮軍の部隊をめぐっては、ゼレンスキー大統領が23日の記者会見でこれまでに死傷者が少なくとも4000人にのぼり、前線に1500人から2000人の兵士が補充されるという見方を示しています。【2月24日 NHK】
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“戦地での経験を重ねているとして「地上の兵士も司令部の将校もこの経験をほかの兵士や北朝鮮軍のほかの組織に広めていくだろう」”・・・・ロシア軍からの技術供与と併せて、ロシアに派兵した北朝鮮側の狙いの一つでもありますが、北朝鮮の対峙している韓国や日本にとっては懸念されることでもあります。

【弾薬を供給する北朝鮮抜きでは戦争ができなくなったロシア】
一方、兵士だけでなく、弾薬不足のロシアにとっては、北朝鮮からの武器・弾薬供給は戦闘継続にとって非常に重要になりつつあります。

*****ロシアの弾薬の半数は北朝鮮供与、弾道ミサイルも ウクライナ指摘****
ウクライナ軍の情報機関トップであるブダノフ国防省情報総局長は23日、ロシアがウクライナ戦争で必要とする弾薬の50%は北朝鮮から供給されていると指摘した。

ブダノフ氏は記者会見で、北朝鮮が170ミリ自走榴弾砲や240ミリ多連装ロケット発射システムもロシアに大量に供給し始めたと述べた。すでに弾道ミサイルも供給しており、2025年は148発を送る計画という。(後略)【2月24日 ロイター】
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この結果、「ロシアは“北朝鮮抜き”では戦争ができなくなった」との指摘も。

****年500万発もの砲弾を受け取り…ロシアは“北朝鮮抜き”では戦争ができなくなった《ウクライナ戦争 開戦から3年》****
(中略)東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏と、防衛省防衛研究所主任研究官の長谷川雄之氏の対談 から、北朝鮮によるロシア支援の現状について語られた一部を紹介します。
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北朝鮮からロシアへの武器輸出
――ロシアがウクライナ侵攻で使用している砲弾の6割が北朝鮮製だという情報もあります。戦費はロシアが負担していても、北朝鮮の砲弾がロシアを支えていると言っていいのでしょうか。

小泉 そう思います。今ロシアは年間1000万発大砲を撃つと言われていますが、ソ連時代の備蓄は使い果たしていますし、砲弾の新規生産能力は300万発から、多くとも450万発と言われています。ですから、残りの6割から7割はどこかから持ってくるしかない。

その「どこか」が、現状では北朝鮮になっていると言えます。具体的な供給数は、2023年は「およそ500万発」と韓国の国防大臣が語っていて、昨年も同じくらいではないかと思います。

北朝鮮がロシアに武器を供給していることは、私自身も衛星画像で見ていて、ルートや受け渡しが行われる場所もだいたい分かっています。(中略)アメリカや韓国、NATO諸国、日本も当然ルートはチェックしている。どれくらい北朝鮮から武器が渡ったかは、かなり正確に把握されていると思います。

――ウクライナは、これまで北朝鮮からコンテナ2万個分の弾薬と武器がロシアに送られたと言及しています。その中身は、500万発を上回る砲弾、また「火星11」系列の新型弾道ミサイルが100発以上含まれているとしていますが、そもそも、なぜロシアと北朝鮮はこのような形で接近してきたのでしょうか。

小泉 ロシアが北朝鮮抜きでは、今のような規模の戦争ができなくなったからです。もともと戦争には、他国の援助が必要となりますが、北朝鮮以外の国からの援助はあまり芳しくない。

たとえばイラン。戦争の初年からイランに弾道ミサイルの提供を求め続けているのですが、これは断られ続けています。

一方でインドは、ロシアに弾薬をこっそり売ってはいるのですが、ウクライナに対しても弾薬を売っている。お金が手に入ればそれでいいという、非常に節操のないことをしているのがインドです。

そんな中、安定的にロシアだけの肩を持ち、かつロシアと同じ152ミリ口径の弾を何百万発も提供してくれる国は、北朝鮮以外にはないんですね。北朝鮮はもともと、海外のさまざまな国に旧ソ連口径の弾を売るビジネスをやっていたようなので、彼らにしてもロシアはビジネスの相手にはまさにうってつけです。加えて、北朝鮮は軍事的、政治的な後ろ盾としてロシアを利用して、より国力を強化させたいという思いもあったでしょうね。

北朝鮮からロシアへの武器輸出
――ロシアと北朝鮮のお互いの利害が一致している印象ですね。

小泉 ただ、それがこれから先も続く恒久的なものになっていくかはわからない。同じ社会主義国家とはいえ、冷戦期からソ連と北朝鮮はお互いに不信感を持ちあっていた。

そもそも北朝鮮は、中国とソ連の間を行ったり来たりして、冷戦後もそうした流れは続いていました。ウクライナ戦争を機に、露朝が一枚岩になるわけではないと思うんです。それは中露、中朝の関係も同じで、ガチッとした一枚岩の同盟をそもそも彼らは想定していないし、そうなる気もないでしょう。その時々の状況に合わせて、同盟相手を組み替えていくイメージだと思います。

長谷川 中露と露朝、その2つの関係性だけでもだいぶ違うと思います。中露の場合は2000年代初頭から対テロの演習をしたり、海軍の合同演習をしたりして、ある程度は関係性の積み重ねがありましたよね。近年では、2018年のロシア東部軍管区におけるボストーク演習に中国が部隊を派遣するなど、中露の軍事関係は制度化しています。

一方、ロシアと北朝鮮両軍はそうした積み重ねが乏しい、というかほぼなかった。また、両国ともにトップに権力が集中していて、労働者派遣などの除いて人的交流もあまり見られなかった。

両国とも、特殊な国際環境にあるからこそ急速に接近しているが、また国際環境が大きく変わった場合には、果たして持続可能性があるのかどうか。
(この対談は1月15、16日に配信された「文藝春秋PLUS」オリジナル動画をテキスト化したものです)【2月24日 文春オンライン】
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【中国は経済でロシアを下支え 鵜停戦への関与を目指してウクライナ・欧州にも接近】
昨年12月5日には北朝鮮の朝鮮労働党機関紙はロシアとの有事の際の軍事的な支援などを明記した包括的戦略パートナーシップ条約についてモスクワで批准書を交換したことを報じています。

こうした北朝鮮のロシア接近、両国の蜜月ぶりは、やはりロシアを支援してきた、そして北朝鮮を中国と韓国・アメリカとの間の緩衝地帯ぐらいにしか考えていない中国にとってはやや苛立たしい面もあるようで、ロシア・北朝鮮・中国の三国がまとまって協調体制をとる・・・という状況にはないようです。

****中朝に「隙間風」 翻弄される市民は…****
(中略)
2024年は中朝国交樹立75周年の節目の年で「友好の年」と定められていましたが、中国税関の発表によりますと、北朝鮮との輸出入額は前年比5%減と停滞。北朝鮮がロシアに兵士を派遣するなど軍事的な関係を強めたことで、中朝関係が冷え込んだとも指摘されています。

影響はさらに広がっています。2016年に運営が開始された中朝貿易区。いち早く電子商取引が導入され、注目されました。しかし、中朝を結ぶ新しい橋が開通しないことに加え、コロナ禍などもあり、中朝間の貿易環境は年々、厳しさを増しているといいます。(後略)【1月25日 テレ朝news】
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中国はアメリカとの関係や国際的立場もあって、表向きは中立を維持し、もろ手をあげてロシアを支援・・・と言う訳ではありませんが、実質的には特に経済面でロシアを支える状況にあります。

****ウクライナ侵攻から3年 中国がロシア経済支える構図鮮明に 2024年 中国とロシアの貿易総額が過去最高を記録*****
中国とロシアの去年(2024年)1年間の貿易総額がおととし(2023年)に続き、過去最高を更新したことが分かりました。ウクライナ侵攻から3年を迎えるなか、中国がロシア経済を引き続き下支えしている構図が改めて鮮明になっています。

中国税関総署の発表によりますと、2024年のロシアとの貿易総額は2023年よりもおよそ2%増加し2448億ドル、およそ37兆円と過去最高を記録したことが分かりました。中国がロシアから輸入した天然ガスは前の年より25%増え、およそ80億ドルとなっていて、原油は3%増のおよそ624億ドルに上っています。

また、中国自動車流通協会によりますと、2024年、ロシアへの自動車の輸出台数はおよそ116万台と前の年(2023年)よりおよそ25万台増加しました。

欧米諸国のロシアに対する経済制裁の影響で日本や欧米の自動車メーカーが相次いで撤退したことを受け、その空白を中国が引き続き埋めている形です。

ウクライナ侵攻がはじまる前の年(2021年)の中国とロシアの貿易総額は1469億ドル、およそ22兆円でしたが、以降、毎年過去最高を更新。去年(2024年)までに1.6倍になっていて、ロシア経済を中国が下支えしている構図が改めて鮮明になっています。【2月24日 TBS NEWS DIG】
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政治的にもロシアと連絡を取っているようです。

****中露首脳が電話会談 ウクライナの和平交渉について協議か 中国国営メディアが伝える****
中国国営中央テレビ(電子版)は24日、習近平国家主席が同日、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行ったと伝えた。同日でロシアのウクライナ侵略から3年となる中、米露両国が主導している戦争終結に向けた和平交渉について中露両首脳間で協議したとみられる。

習氏とプーチン氏は、1月21日にもオンライン形式で首脳会談を行っている。追加関税を発動するなど対中圧力を強めているトランプ米政権への対応についても、意見交換を行った可能性がある。

中露首脳が1月21日に行ったオンライン会談では、国際社会で両国が共同歩調をとる方針を改めて確認。戦略的な意思疎通を継続することで一致していた。【2月24日 産経】
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ただ、中国は最近のトランプ仲介にあってはやや影が薄い。
それでも、中国は単にロシア下支えに埋没する考えはないようで、ウクライナ・欧州にも接近しているとか。このあたりが中国のしたたかなところ。

****ウクライナ和平交渉、「仲介役」自任してきた中国は関与できず…欧州・ウクライナに接近****
中国の 習近平(シージンピン) 政権は、ウクライナでの停戦に向けた米国とロシアの協議を支持する姿勢を示しつつ、和平交渉に中国が関与できない状況を懸念している。米露の急接近に反発するウクライナにも配慮を見せ、欧州との関係改善を探る戦略も垣間見える。

「中国は、最近の米露協議を含め、和平に向けたあらゆる努力を支持する」
中国の 王毅(ワンイー) 外相(共産党政治局員)は20日、南アフリカ・ヨハネスブルクでの主要20か国・地域(G20)外相会合で、こう述べた。

中国は天然ガス輸入などでロシアを支える一方、北朝鮮軍の派兵にまで発展した紛争の影響が北東アジアまで波及することは懸念していた。

露側の意向をくんでウクライナ側に譲歩を迫りそうな米国のトランプ大統領の姿勢は望ましいはずだが、これまで新興・途上国「グローバル・サウス」を巻き込んで和平案を提案するなど「仲介役」を自任してきた経緯もあり、和平交渉への関与を強く望んでいる。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは今月、関係筋の話として、数週間前から中国当局者が仲介者を通じ、トランプ政権に米露首脳会談の開催と停戦後の平和維持活動に関する提案をしていたと報じた。米側の反応は不明だが、中国側が軍の参加を想定しているとの見方もある。

一方で、中国は米露協議から外されているウクライナにも接近を図っている。王氏は15日、ドイツ・ミュンヘンでウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官、アンドリー・シビハ外相と会談し、「中国はウクライナを友人、パートナーと見ている」と呼びかけた。ウクライナ大統領府によると、王氏は「ウクライナは和平交渉の当事者となるべきで、欧州の参加も重要だ」と強調した。

王氏は今月の外遊でドイツのほか、英国やアイルランドを訪問し、欧州各国の外相らと会談した。ウクライナ問題でロシアに融和的な米国との溝が広がる欧州を取り込む狙いがあるとみられる。

一連の外遊を終えた王氏は22日、中国メディアの取材に「中国はウクライナ危機の当事者ではないが、傍観することはない」と述べ、今後も関与していく構えを示した。【2月24日 読売】
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アメリカがトランプ外交に特化して多くの場面から撤退しつつある今、これだけ幅広い外交を展開できるのは中国だけに思えます。やはり20年後は中国の時代かも。
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