(マレーシアのごみ廃棄場で、再利用できるプラスチックを探す男性【2018年11月21日 NATIONAL GEOGRAPHIC】)
【中国の輸入禁止で東南アジア諸国に流入する先進国のプラごみ】
以前も何度かとりあげたことがあるプラスチックごみによる海洋汚染(プラごみが溢れているのは途上国の陸上も同じですが、そうしたゴミが海洋に流れ出ると、人間を含む生物に大きな影響を及ぼします)に関して、最近、フィリピンとマレーシアから、「我が国はゴミ捨て場ではない!」といった同じ趣旨の問題提起が報じられています。
****フィリピン大統領、カナダに「宣戦布告」 ごみ輸出巡り****
カナダからフィリピンに輸送された大量のごみを巡り、フィリピンのドゥテルテ大統領がカナダに対して「戦争になる」と警告した。
ドゥテルテ大統領は23日、「多分来週にも、(ごみを)引き払った方がいいとカナダに警告する」と述べ、「彼らに対して宣戦を布告する」と宣言した。CNNフィリピンが伝えた。
CNNフィリピンによれば、2450トンのごみがコンテナ103個に収められ、2013〜14年にかけてフィリピンに輸送された。
コンテナにはリサイクル用のプラスチックと表示されていたが、フィリピン当局が点検したところ、リサイクルできないごみだったことが判明。輸送したカナダの民間企業が輸入通関手続きを済ませていなかったことから、不法輸入と見なされた。
コンテナの一部は今もマニラの港に置かれたままになっているという。
「彼らがなぜ我々をごみ捨て場にしているのか理解できない」とドゥテルテ大統領は訴え、自らカナダにごみを捨てに行ってもいいと発言、「ごみを帰国させる」と強調した。
フィリピンは何年も前からカナダに対し、自分たちのごみを引き取るよう求めていた。これに対してカナダのトルドー首相はかつて、「解決策を見つけるために努力する」と表明していた。
ごみの処理を巡る問題は世界的に深刻化しつつある。先進国はこれまで、リサイクル可能な廃棄物を海外に輸送して処理していたが、その状況は変わりつつある。【4月25日 CNN】
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****中国に拒まれ…欧米のプラごみ、マレーシアに流れて環境破壊****
2019年4月29日、環球網は、中国が外国からのごみ輸入を禁止したことで、欧米からのごみがマレーシアに大量に流れ込み、現地に環境破壊をもたらしていると報じた。
記事は米CNNが27日「中国が昨年1月に外国からのごみ輸入を禁止して以降、米国は大量のプラスチックごみをマレーシアに運ぶようになった。昨年1〜7月だけで、米国や英国から45万6000トンのプラスチックごみが輸入されたが、これはマレーシアが2016、17年の2年間に輸入したプラスチックごみの合計量に相当する。現地で処理可能な量をはるかに超えており、資格のない工場による無秩序なごみ処理方式により、現地の自然環境が著しく破壊されている」と伝えたことを紹介した。
そして、この状況に対してマレーシアのヨー・ビー・イン・エネルギー・科学・技術・環境・気候変動大臣が「われわれはバーゼル条約に基づき、不法なプラスチックごみをそのまま送り返している。これは第一歩に過ぎない。今後国内の港を全面調査し、不法行為を取り締まる」とコメントしたこととともに、同国政府がすでに今年1〜2月の間に140カ所の不法輸入ごみ関連工場を閉鎖に追い込んだとする同国華字紙・南洋商報による報道を伝えている。
さらに、CNNが「現在、環境保護意識の高まりに伴い、ますます多くの発展途上国が環境破壊を経済発展の代価にしなくなっている。マレーシアのほかにタイ、ベトナム、フィリピンなども外国ごみの輸入を制限または禁止する政策を続々と打ち出した」とし、仏AFPが「現在欧米やオーストラリアなどの先進国はごみのやり場に困っていると同時に、自国の高額なごみ処理コストにも直面しており、一部地域では埋め立て方式を再度採用し始めている。環境保護関係者は、プラスチックごみ問題を長期的に解決できる唯一の方法は、プラスチック製品の生産と使用を減らすことだとしている」と報じたことを紹介した。【5月4日 レコードチャイナ】
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フィリピンやマレーシアなど東南アジア諸国に欧米のプラごみが流れ込んでいるのは、世界の従来プラごみ処理を一手に引き受けていた感があった中国が、環境衛生意識の向上もあって、そのほとんどを輸入禁止にしたためです。
その時点で、今のようなプラごみの押し付け合いの状況が出現するであろうことは予測されていました。
****中国の「プラスチックゴミ輸入禁止」が世界にどれほどの影響を与えるのかが判明****
2017年末に中国はこれまで世界各国から輸入してきた廃プラスチックの輸入を禁止し、世界のゴミ処理・リサイクル事情に大きな影響を与えました。
新たな研究で、中国のプラスチックゴミ輸入停止に伴い、世界中で発生する「何らかの方法で処理する必要があるプラスチックゴミ」がどのくらいの量になるかが示されています。
中国はこれまで、国内の製造業の原料を補うために外国から資源ゴミを購入しリサイクルしてきました。(中略)しかし、2017年末から一部の資源ゴミの輸入を禁止しており、輸入元の国々では新しいゴミ処理の方法を見つけ出す必要性に迫られています。
そんな中、ジョージア大学が発表した新たな研究では、1988年から2016年までの中国のゴミ輸入のデータが解析された結果、研究者は「2030年までに行き場をなくしたプラスチックゴミは1億1100万トンに上るだろう」と結論づけました。これらのゴミはリサイクルや埋め立てなど、なんらかの方法で処理される必要があります。(中略)
研究チームによると、世界中で発生したゴミの5分の4は埋め立て地といった陸地にとどまり、10分の1は焼却されます。数百万トンのゴミは海へと流れ出て、リサイクルされるのは全体のほんの9%とのこと。中国は、2016年のリサイクル量の半分以上を自国で引き受けていました。
産業が発達し、環境や公衆衛生への影響が明らかになってきたため、中国は輸入する資源の内容を選択するという方向にありました。
2013年には食べ物・金属・汚染物質が未分類の場合は輸入しないということになり、輸入量が減少。この傾向は2017年になるまで続き、最終的にプラスチックゴミや未分類の紙類など24種類の廃棄物の輸入が停止されるとの発表に至ったわけです。
中国の措置は世界中に影響を与え、オーストラリアではリサイクル可能な廃棄物をリサイクする余裕がなくなり、埋め立て地に回すようになり、イギリスでは質の低いプラスチック素材が貯蔵施設に保管後焼却処理されていると伝えられています。
研究を行ったAmy L. Brooks氏はゴミを処理する方法を見つけ出す以前に、最初からプラスチックのストローやカップのような使い捨てのアイテムを使わないなど「ゴミを生み出さない方法」を取ることを推奨しています。
「これはあなたが取り得る方法のうち、もっとも容易なことです」「『そんな事では変わらない』と人々は感じると思いますが、何百万もの人々が行動を起こせば、確実に違いを生み出すことができます」とBrooks氏は語りました。
【2018年6月22日 Gigazine】
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行き場を失ったプラごみは、東南アジア諸国に流れ込むことになって、冒頭のフィリピン・マレーシアなどの怒りを招いています。ベトナムも昨年プラごみ輸入を一時停止しました。タイも2021年までに廃プラスチックの輸入を全面的に禁止する方針を掲げています。
****「世界の廃プラ処理場」は中国から東南アジアへ****
中国の輸入禁止によって、世界のプラスチックごみがあふれつつある
トランプ米大統領は先日、新たな海洋ごみ関連法の署名式典において、世界の海を汚している元凶としてアジアをやり玉に挙げた。彼は日本や中国を名指しし、「いくつもの国」がプラスチックごみを海に捨てるせいで、米国の西海岸にまでそれが漂ってきていると述べた。(参考記事:「海洋ゴミ、最も効果的な対策は?」)
「そのごみを除去する費用はわれわれが負担している。これは非常に不公平な状態だ」
トランプ氏はこう述べているが、海を汚しているプラスチックごみの責任は、アジアだけにあるわけではない。米国をはじめとする富裕国は、プラスチック廃棄物をリサイクル資源としてアジアに売却しているからだ。(参考記事:「プラスチックごみ問題、アジアの責任は?」)
自国で処理せず遠い国に運んでしまうという、富裕国にとって便利なこの図式はしかし、2017年1月に大きく変化した。プラスチックごみの最大の輸入国である中国が、リサイクル用廃棄物の購入をほぼ全面的に禁止したのだ。25年にわたって世界のごみを回収し続けてきた中国が、純度99.5%以下のプラスチック廃棄物の輸入を一切禁じるという決定を下したことで、2000億ドル(約22兆円)規模の世界のリサイクル産業は、大きく揺らいでいる。
ごみの輸出側の国々が新たな買い手を探しまわっている間、米カリフォルニア州や英国、オーストラリアなどでは、ごみが山のように積み上げられていった。
インドネシアやタイ、ベトナム、マレーシアなどで操業している東南アジアのリサイクル業者がその一部を買い取ったが、かつて中国が引き受けていた恐ろしいほどの量をカバーすることは到底できなかった。(参考記事:「使い捨てプラスチックの削減を、米版編集長が声明」)
「わたしの国を先進国のごみ捨て場にするのはごめんです」と語るのは、マレーシアのエネルギー・技術・科学・気候変動・環境相であるイェオ・ビーイン氏だ。
ナショナル ジオグラフィックの取材に対してイェオ氏は、米国への苦言を呈している。「自分のごみは自分の裏庭で処理すべきでしょう。それがリサイクルできないごみであればなおさらです」
うずたかく積もるごみの山
海洋に蓄積されるプラスチックごみは増え続けており、その現状は、廃棄物の未来に関する2つの暗い予測にも現れている。世界銀行の予測によると、地球上のごみは今後30年間で70%増加するという。また、驚くべき勢いで増加するプラスチックの生産量(中略)は、途上国の処理能力を超えている。
つまりこの先、ごみ問題は悪化の一途をたどるということだ。(参考記事:「【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚」)
アジアがごみを出しているというトランプ氏の主張にも、理がないわけではない。2015年に初めて行われた世界のプラスチックごみの量に関する調査では、毎年平均850万トンが海へ流出しており、海に面した192カ国のうち、最もプラスチックの排出量が多いのは中国であることがわかった。
また中国以外の上位19カ国中、11カ国がアジアの国々だった。(参考記事:「南太平洋の無人島にゴミ3800万個、日本からも」)
2017年に学術誌「ネイチャー」に発表された、プラスチックを最も多く海に運んでいる川に関する調査では、上位20本中15本がアジアの川だった。そのうち6本が中国の川だった。
プラスチック汚染に関して、アジアが重大な問題を抱えているのは確かだろう。しかし、ごみをアジアに輸出し続ければ、状況はさらに悪化するばかりだ。(参考記事:「人体にマイクロプラスチック、初の報告」)
2017年6月に学術誌「Science Advances」に発表された研究によると、輸入したプラスチックごみのせいで、中国国内で排出されるプラスチックごみは毎年平均12%増加しているという。(参考記事:「太平洋ゴミベルト、46%が漁網、規模は最大16倍に」)
NPO「国際環境法センター」の最高責任者キャロル・マフェット氏は、中国がごみの受け入れを禁じたことをきっかけに、「米国には自国のプラスチック問題に対処する能力があるという神話の嘘が暴かれました」と話す。
「これまでわが国ではごみを輸出することでごみ問題を解決してきました。輸出してしまえば、プラスチック問題は脇に追いやられ、目に見えなくなります。この事実はまた、これがアジアだけの問題ではないことを示しています」 【2018年11月21日 NATIONAL GEOGRAPHIC】
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プラごみの持って行き場に困っているのは欧米だけでなく、日本も同様です。
****中国のごみ輸入禁止で日本はプラスチックごみに埋もれている―露メディア****
2018年10月24日、中国メディアの環球網によると、ロシア政府系テレビ局「RT」のニュースサイトは21日、「中国が海外からのごみ輸入をストップした後、日本は自分たちがプラスチックごみに埋もれていることに気付いた」とする記事を掲載した。
記事は「中国が海外からのごみ輸入をやめたことを受け、世界中の国々が廃棄物の増加に苦しみ始めている。日本は、リサイクル産業の深刻な負担が伝えられる最新の国になっている」とし、「昨年、150万トンのプラスチックごみの約半分を中国に輸出していた日本では現在、ごみがますます高く積み重なっており、地方自治体の多くがこの問題に対処するために苦労している」とした。
記事は、中国のごみ輸入規制を受け、日本の環境省が今週発表した産業廃棄物の処理業者と業者を監督する都道府県や政令指定都市などを対象に行った調査結果を紹介。
102の地方自治体の約4分の1が、業者に保管されている量が「増加した」と回答し、基準を超える量を保管していたケースもあること、日本国内の廃棄物処理費用が跳ね上がったことを受け、少なくとも34の地方自治体がプラスチックごみの新たな輸出先を見つけられないと回答したこと、プラスチックごみの受け入れを制限しているか制限を検討中と回答した業者が全体の34.9%に上ったことなどを伝えた。(後略)【2018年10月25日 レコードチャイナ】
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自分の出したごみは自国で処理する・・・というのは当然のことです。
処理しきれないなら、使用量を減らすしかありません。(原発も同じ問題を抱えています)
【使用量を減らす取り組み】
ゴミ処理がある程度行われている日本・欧米にあっては、“プラスチックのストローやカップのような使い捨てのアイテムを使わない”といったプラごみ減量が必要になってきますが、東南アジアなど、ごみ処理が十分に行われていない国あっては、まずゴミ処理システムを構築し、そこら中にプラごみが散乱している現状を是正する必要があろうかと思います。
いずれにしても、プラごみ減量は世界的な流れとなっています。
****使い捨てプラ禁止正式承認 EU議会、21年法制化へ****
欧州連合(EU)欧州議会は27日、使い捨てプラスチック食器や発泡スチロール容器を禁止する新規則案を正式承認した。
加盟国でつくる閣僚理事会の承認を経て同案は成立。2021年までに加盟国で法制化される。
規則原案を策定したEUの行政執行機関、欧州委員会は、実現すれば欧州の海岸を汚すごみが70%減ると推計している。
昨年12月に欧州議会と加盟国側が基本合意した内容を可決した。新規則案には29年までにペットボトル回収率90%を達成することやペットボトルの原料に回収ボトルの素材を25年までに25%、30年までに30%以上用いることも盛り込まれた。【3月28日 共同】
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回収されたゴミで見ると、世界的には捨てられたプラスチックの約80%がリサイクルされず、廃棄されています。
プラスチック製品は金属製品と異なり、価値が低く、不純物が多く、さまざまなポリマーが混ざり合っており、現実問題としてリサイクルがビジネス的に成立しにくい面があります。
そのため多くが廃棄されたり、かつては中国などへ輸出されたりということにもなります。
リサイクルが困難なら、使用料を減らすしかないという話にもなるようです。
(個人的には、焼却してしまえばいいのでは・・・とも思うのですが。高温焼却すればダイオキシンの問題もクリアできると聞いていますので。「リサイクル=善、焼却=悪」という信仰に近い発想もいかがなものかとも)
一方、回収されないプラごみとしては、ポイ捨てによるものの他、ゴミ箱からあふれ出して風に飛ばされたり雨に流されるもの、人工芝の劣化による破片、タバコのフィルターのようなものがあるようです。
【対応が遅れる日本】
ゴミ分別には熱心な日本ですが、プラごみに関してはやや取り組みが遅れています。
****「プラスチックごみ」対策意識が低い日本の現状****
(中略)
プラスチックごみの国際動向
生態系への悪影響が可視化されるに伴い、海洋プラスチック問題に関する国際動向も活発化している。
持続可能な開発目標(SDGs)の目標の一つには、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」と掲げられている。
2018年6月、カナダで開催された先進国首脳会議(G7サミット)では、「海洋プラスチック憲章」が採択された。これは海洋プラスチック問題に対して、プラスチックの使用量を削減するなど世界各国に具体的な対策を促すもの。しかし、アメリカと日本は署名を拒否し、波紋を広げた。
拒否した理由について環境省は、数値目標が義務的かつ期限のあるものだったことを挙げ、「産業界と条件調整を行う時間が足りなかった」と説明している。
これに対して、前出の高田教授が「使い捨てプラスチックの削減は、2017年の国連海洋会議などでも提案されており、『時間がなかった』というのは言い訳に過ぎないのではないか」と指摘するなど、批判の声もある。
いずれにしても、多くの国が使い捨てプラスチックの規制に動くなか、日本はプラスチックごみの問題において“後進国”とされている。その背景には、これまでプラスチックごみ問題が、日本国内で深刻に捉えられていなかったことがある。(後略)【4月27日 東洋経済online】
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正直なところ、個人的には現状のゴミ分別についても、あまり熱心な方ではありません。この上にプラごみもいろいろうるさくなったら・・・という思いはありますが、そうも言ってはいられない現状もあるようです。
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