孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ問題  マクロン仏大統領との会談でプーチン大統領「これ以上緊張を高めない」との約束?

2022-02-08 23:16:47 | 欧州情勢

(ロシア大統領府は8日、プーチン大統領がフランスのマクロン大統領に、ウクライナ周辺で当面、新たな軍事行動を起こさないと約束したとする仏当局者発言は「正しくない」と否定した。7日の首脳会談、代表撮影。【2月8日 ロイター】)

【危機を声高に叫ぶアメリカ ロシア・ウクライナは慎重姿勢・・・という側面も】
“ロシアはウクライナとの国境沿いに10万人を超す軍部隊を集結させており、ウクライナ侵攻の可能性について西側諸国は懸念を強めている。ロシアは侵攻の可能性を否定しているが、安全保障上の要求が受け入れられなければ、何らかの軍事行動を取る可能性があると警告している。”【2月2日 ロイター】

ロシア・プーチン大統領はウクライナに軍事進攻するのか、しないのか・・・様々な推測がなされています。
ロシアにとって破滅的な軍事行動を起こしても何のメリットもない・・・とするものから、明日にも侵攻がありうるというものまで。中国との関係で、北京オリンピック閉幕後が危ないとする声も多くあります。

危険性を大きく取り上げている(ロシアなどからすれば「危機を煽っている」とも)のが東欧への派兵を進めるアメリカ。米国防総省の2日の発表によると、ドイツの駐留米軍から1千人をルーマニアに派遣、米本土の米軍基地から1700人をポーランド、300人をドイツにも増派するとのこと。

****ロシア全面侵攻へ兵力増強 2日でウクライナ首都制圧か 米分析****
米情報機関の分析によると、ロシアはウクライナへの大規模侵攻の準備を進めており、全面侵攻に必要な兵力の70%を既に国境地帯に配置済みだという。米当局者が明らかにした。

米当局者が最近、連邦議会や欧州同盟国に説明したところによれば、ウクライナとの国境地帯に集結したロシア軍兵士は11万人に上っている。兵力の増強が今のペースで続けば、2月半ばまでにはウラジーミル・プーチン大統領が全面侵攻を命じるのに必要な約15万人の兵力に達するとみられる。

ロシア軍が全面侵攻した場合、2日以内にウクライナの首都キエフは制圧され、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は失脚する恐れがあるという。

そうなれば、民間人2万5000〜5万人が死亡し、ウクライナ軍には5000〜2万5000人、ロシア軍に3000〜1万人の犠牲が出るだろうと米当局者は指摘。100万〜500万人の難民がポーランドなどへ流入しかねないと警告している。 【2月6日 AFP】
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****米高官、ロシア侵攻「明日かもしれない」 ウクライナ情勢****
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は6日、米ABCテレビのインタビューで、緊迫するウクライナ情勢について「ロシアのプーチン大統領がウクライナへの攻撃を命じる可能性は十分にあり得る」と述べた。時期については「早ければ明日かもしれないし、数週間後かもしれない」と語り、危機感をあらわにした。(中略)

また、ロシアと結束を深めている中国についても言及。ロシアが侵攻して、中国が支持していると見なされれば「中国も同様に何らかのコストがかかるだろう」とけん制した。(後略)【2月7日 毎日】
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まあ、誰も確証がない以上「明日かもしれない」のは事実ですが、それを敢えて口にすることは何らかの政治的意図があるとも推測され、口にすることで政治的影響を伴います、

興味深いのは、通常なら当事国がヒートアップし、関係国が落ち着かせる・・・という構図ですが、ウクライナ危機では逆になっています。

アメリカがヒートアップしているのに対し、ロシアは(実際の行動の方は相変わらず軍事進攻を疑わせるに十分なものですが)常に侵攻の可能性を否定していますが、直接の危機にさらされているウクライナも迷惑気な様子です。

****「緊張あおるのはやめよ」 ロシア、米に要求****
ウクライナ情勢が緊迫する中、米国が北大西洋条約機構軍増強のため東欧に米兵数千人を派遣すると発表したことを受けて、ロシアは3日、米国に対し、緊張をあおる動きは差し控えるよう強く求めた。
 
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は記者会見で「われわれは米国側に対し、欧州大陸で緊張をあおらないよう常に求めている」ものの、「遺憾ながら、米国はそうし続けている」と述べた。
 
ペスコフ氏は今回の米兵派遣について「言うまでもなく、これらの措置は緊張緩和を目指したものではない。逆に緊張激化につながる動きだ」と指摘。だからこそ、ロシアがNATOの東方拡大と米兵派遣を憂慮するのは「ごく当然で、完全に正当性がある」「ロシアが自国の安全と利益を守るために講じるいかなる措置も理にかなっている」と主張した。
 
欧米諸国は、懸念されているウクライナ侵攻を抑止するため、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の側近への制裁を示唆するなど、外交努力を強化している。一方ロシア側は、侵攻の意図を強く否定している。 【2月3日 AFP】
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****ウクライナ外相「終末論的な予測信じるな」…ロシアの侵攻で「5万人死亡」報道に反論****
ウクライナのドミトロ・クレバ外相は6日、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合、多くの死者や難民が発生する可能性があると米紙などが報道したことを受け、「終末論的な予測を信じるな」と自身のツイッターに投稿し、冷静さを保つよう国民に呼びかけた。
 
ロシアの軍事的圧力で不安が高まる中、ウクライナ政府は、国民がパニックを起こし混乱が深まることを懸念している。クレバ氏は、「ウクライナ(政府)は、あらゆる状況に備えている」と述べ、米欧諸国から支援を受けていることも強調した。
 
米紙ニューヨーク・タイムズなどは5日、ロシアがウクライナに侵攻すれば、最大で市民5万人が死亡し、500万人が難民になる恐れがあるとの米当局の試算を報じた。【2月7日 読売】
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アメリカとしては、対ロシアの話以外に、十分な対応をとらないままロシアの軍事進攻を許したとなると国内的にその責任・指導力を問われかねないということで、状況は十分に認識し対応をとったという事実を作っておきたい・・・という思惑もあるのかも。

【首脳外交を活発化せせる独仏】
こうした状況で、独仏の首脳外交も活発化しています。自国の目と鼻の先で戦争が起こるかもしれない、その結果、制裁発動などで甚大な影響を欧州各国は受けるのですから当然でしょう。

****ロシア侵攻抑止へ首脳外交活発化 仏独、緊張緩和を模索****
ロシアによるウクライナ侵攻を抑止するため、欧米の首脳外交が活発化している。

米国はロシアがウクライナ国境周辺で戦力を増強し続けていると警告を発し、対話を重視するフランスとドイツは訪ロの直接首脳外交を展開。緊張緩和の糸口を見いだせるか「今後数日が左右する」(フランスのマクロン大統領)可能性がある。

マクロン氏は8日、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談。ウクライナ東部の紛争解決に向けドイツ、ロシア、ウクライナとの4カ国協議の進展を模索する。
 
ドイツのショルツ首相は14日にウクライナ、15日にロシアを訪問する計画だ。【2月8日 共同】
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とりわけ活発に動いているのが、メルケル後の欧州を牽引する立場にあると自任するフランス・マクロン大統領。
上記ウクライナのゼレンスキー大統領と会談に先だって、7日にはロシア・プーチン大統領と会談しています。

このマクロン大統領との会談で、プーチン大統領は核戦争の可能性について言及しています。

****仏露首脳、対話継続で一致も残る隔たり プーチン氏は核戦争に言及****
緊迫するウクライナ情勢を巡り、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領が7日、モスクワで会談した。緊張緩和に向けた対話の継続では一致したが、ロシアが求める北大西洋条約機構(NATO)不拡大などの主要問題では隔たりが大きく、プーチン氏はロシアとNATOの核戦争になれば「勝者はいない」と言及し、露側の要求を認めるよう迫った。
 
仏大統領府によると、5時間以上に及んだ会談では、ウクライナ国境周辺に集結するロシア軍部隊の配置▽ウクライナ東部で続く親露派武装勢力と政府軍の紛争の和平交渉▽欧州の安全保障――に関して広範な対話を始めることが合意された。
 
会談後の共同記者会見でマクロン氏は「地域の安定のために新たなメカニズムを作る必要がある」と訴え、「今後数日間が鍵を握る」との考えを示した。マクロン氏は8日にウクライナも訪問する予定で、その後再びプーチン氏と電話協議をすることでも一致した。

一方で、ロシアが求めるNATOの不拡大には「欧州の基本的な権利は制限しない」と否定的な立場を明示し、「いま緊張が一層高まっているが、これは誰の得にもならない」とロシアに緊張緩和を呼びかけた。
 
これに対し、プーチン氏は「まだ話すのは早いが、マクロン氏の提案にはさらなる共同作業の基盤となり得るものがあった」と会談内容に一定の評価を与えた。

ただ、NATOの東方拡大には「断固として反対する」と主張。「ウクライナがNATOに加盟し、(ロシアが強制編入した)クリミアを軍事力で取り戻そうとすれば、欧州諸国は自動的にロシアとの紛争に巻き込まれる。ロシアは核大国の一つだ」としたうえで、「マクロン氏もこれを望んでいないし、私も望んでいない」と述べた。
 
フランスはドイツと共にウクライナ東部紛争の和平交渉を仲介している。マクロン氏は2015年2月に結ばれながらも実現していない停戦合意の履行に向け「努力を続ける」と表明。一方でプーチン氏はウクライナのゼレンスキー政権が「合意の破棄に向かっている」と批判し、同政権に圧力をかけることを求めた。【2月8日 毎日】
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【マクロン・プーチン会談での「新たな軍事行動を起こさない」とは? 「これ以上緊張を高めない」との約束とは?】
ここから先がよくわからなくなるのですが、フランス政府当局者は、この会談でプーチン大統領がウクライナ周辺で当面、新たな軍事行動を起こさないことに同意した。またベラルーシで軍事演習を行っているロシア軍は、演習後撤退する・・・と明らかにしています。

****ロシア、新たな軍事行動起こさず プーチン氏が同意と仏当局者****
仏ロ首脳会談後にフランス政府当局者が匿名を条件に明らかにしたところによると、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ周辺で当面、新たな軍事行動を起こさないことに同意した。

ウクライナとの国境付近のベラルーシで軍事演習に参加している部隊を演習終了後に撤退させることにも同意したという。

プーチン大統領はフランスのマクロン大統領と6時間にわたって会談。プーチン氏は会談後の会見でこうした譲歩の姿勢は示していなかった。ロシアが実際にこうした確約をしたのか、ロイターは確認が取れていない。(後略)【2月8日 ロイター】
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****ロシア、軍事行動巡る仏当局者発言を否定 「緊張緩和は必要」****
ロシア大統領府は8日、プーチン大統領がフランスのマクロン大統領に、ウクライナ周辺で当面、新たな軍事行動を起こさないと約束したとする仏当局者発言は「正しくない」と否定した。(中略)

(ベラルーシで演習参加のロシア軍については)ペスコフ報道官は、具体的な日程は示さず、演習終了後に部隊はロシアの基地に戻ることになると述べた。また、部隊がベラルーシに駐留するとはだれも言ったことはないと指摘した。【2月8日 ロイター】
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“ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ周辺で当面、新たな軍事行動を起こさないことに同意した”・・・フランス側が全く根も葉もないことを明らかにすることもないので、何等かの発言はあったのでしょう。

ただ、それがこれまでの「ウクライナへの侵攻の意図はない」というロシア側主張をなぞるものに過ぎないのか、それ以上の意味合いを持つ発言だったのか・・・そこらはわかりません。

マクロン大統領は・・・

****これ以上緊張高めないと約束とマクロン氏****
フランスのマクロン大統領は8日、ウクライナ情勢を巡り、ロシアのプーチン大統領から「これ以上緊張を高めない」との約束を7日の会談で取り付けたと明らかにした。フランスのメディアが伝えた。【2月8日 共同】
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プーチン大統領がしたとされる「約束」を文字通り信用していいのかどうか・・・単なる外交的表現に過ぎないのか・・・

マクロン大統領は自身の大統領選挙を控えて、外交的「成果」を誇示したい思惑もあるでしょうから、どこまでその発言を信じていいのやら迷うところです。

【アメリカとの足並みが揃わないドイツ・ショルツ首相】
ロシアからの天然ガスパイプラインが制裁の主要項目にもあがっているドイツは、ロシアとの交渉以前に、同盟国アメリカとの足並みに調整に苦慮しています。アメリカ側には煮え切らないドイツの姿勢に苛立ちも。

****ドイツ首相、バイデン氏と足並み揃わず ロシアとのパイプライン閉鎖で****
バイデン米大統領とドイツのショルツ首相が7日、米ホワイトハウスで会談し、ウクライナ情勢での共同戦線をアピールしながらも、ロシアから天然ガスを供給するパイプライン閉鎖を巡る行き詰まりを露呈した。

バイデン氏は会談後の共同記者会見で、ロシアがウクライナに侵攻したらパイプライン「ノルドストリーム2」のプロジェクトはとん挫すると明言した。米政権高官によれば、パイプラインの閉鎖はドイツ側との重要な協議事項になっている。

一方、ショルツ氏はプロジェクトの名称にすら言及せず、侵攻があった場合にパイプラインを閉鎖するとの約束を改めて避けた。

ショルツ氏はその後CNNの番組に出演し、米国と足並みをそろえると繰り返し誓う一方で、ノルドストリーム2に対する方針を明示しなかった。

ショルツ氏は「我々はすべての措置で団結する」「我々が今日ロシアに対して示す強い答えは、ウクライナに侵攻すればとても高い代償を払うということだ」と述べた。

ノルドストリーム2はウクライナ経由ではなくバルト海の海底を通るパイプライン。ドイツはロシアへのエネルギー依存度が高く、厳しい制裁措置を科しながら冬季に石油や天然ガスの閉鎖リスクを避けるのは難しい状況となっている。

ショルツ氏は記者会見で、ノルドストリーム2停止に向けた具体的な準備に触れず、対ロシア制裁で共同歩調をとると述べるにとどめた。バイデン氏もドイツの支援なしでパイプラインを止める方法について質問に答えず、「我々はそれができると約束する」とのみ答えた。

ドイツはウクライナへの殺傷能力のある武器の供給を避け、侵攻が起きた場合の具体的な制裁案を示す様子もない。ウクライナには数千個のヘルメットを供給するのみで、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のエストニアがドイツ製榴弾(りゅうだん)砲をウクライナに輸送することも許可しなかった。米国など同盟国によるNATO東側境界の部隊強化にも参加していない。

ロシアに対する抑止策を示す上で、こうしたドイツの後ろ向きな姿勢は米当局者の一部にいらだちを募らせている。バイデン氏が先月、「小規模な侵攻」が起きた場合にNATO加盟国間で対応に意見の相違が起きる可能性に言及したのも、ドイツとの関係をほのめかしている。

一方、ある米政権高官はドイツの姿勢に対する懸念を鎮めたい姿勢を示し、NATO各国はそれぞれの持つ強みを交渉にもたらすと述べた。

米国は欧州に向けられるエネルギー供給の代替策を見つけようと急いでいる。アジアや中東、国内の供給者に当たっているが、実際に確保できたのかは不明。

一方でショルツ氏は、自党の首相経験者のロシアエネルギー産業との緊密なつながりにも直面している。シュレーダー元首相はノルドストリーム2の取締役会のメンバーで、先週にはロシアの国営ガス会社ガスプロムの役員にも指名された。

16年間政権を担ったメルケル前首相の不在も大きい。ロシアが2014年にウクライナに侵攻した際は、メルケル氏がプーチン氏と西側同盟国の間で中心的な役割を担った。だが、今回それを担うのはフランスのマクロン大統領だ。週に数回プーチン氏と会話し、バイデン氏とも6日夜にこの1週間で3回目となる電話会談を行った。7日にはモスクワを訪れ、今週後半にはウクライナの首都キエフに入る。

ショルツ氏に対しては、この緊張が高まる時期に対応が見えないと国内からも批判が上がっている。ショルツ氏は今月ロシアとウクライナを訪問する予定だが、そうした批判を振り払う狙いがあるものとみられる。【2月8日 CNN】
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ウクライナへの支援がヘルメットというのは笑えますが、まあ、台湾を巡って中国との緊張が極限状態になったときアメリカにせっつかれる日本の立場をを考えると、ドイツ・ショルツ首相の胸中も察することもできます。
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