孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  バイデン大統領 不法移民対策を強化 難民申請受理を停止し、メキシコ国境を事実上封鎖

2024-06-08 22:33:53 | 難民・移民

(【6月1日 FNNプライムオンライン】手前がアメリカ、向こう側がメキシコ(多分) 高さ9mのフェンスを超えて侵入しようとする不法移民 はしごを揺らし侵入を阻止する国境警備隊)

【増加する不法移民 市民生活を圧迫 高まる強い対応を求める世論】
アメリカ・バイデン大統領にとって増え続ける不法移民は再選を狙う上で最大の弱点となっています。

*****メキシコ越境“不法移民”増加の一途 米カリフォルニア州の国境を取材****
アメリカのバイデン大統領が、不法移民対策で事実上の国境封鎖を表明した一方で、メキシコからの越境者が増え続けていることが分かりました。

ソマリアから移民希望 アハメドさん(23)
「生きるため、ここまでたどり着きました。故郷はテロリストが支配し、国は何もしてくれません。故郷に未練はありません。ただ平和に暮らしたいだけです」

メキシコからの不法移民は、去年12月に30万人を超えて過去最多を更新するなど、異例の多さとなっています。

カリフォルニア州では、国境の壁をよじ登って越境する人が多く、支援ボランティアは9カ月連続で活動している状態です。

不法移民は拘束後に亡命申請をすることでアメリカに滞在できますが、新たな大統領令では申請が受理されず、即時送還となります。

11月の大統領選に向けて、バイデン政権は厳しい対応に転換した形です。【6月7日 テレ朝news】
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“バイデン大統領が、不法移民対策で事実上の国境封鎖を表明した”件については後述します。

アメリカを目指す移民からすれば、「もしトラ」が現実となればアメリカ入国は更に難しくなると想像されますので、トライするなら今のうちに・・・という発想にもなるでしょう。

増加する不法移民は単に「外国人嫌い」感情を刺激するだけでなく、これまで移民受け入れに寛容だったニューヨークなどの「サンクチュアリ・シティ(聖域都市)」にとっても重い財政負担となっており、市民生活を圧迫する事態となっています。

*****不法移民が一流ホテルに滞在。ニューヨークのホテル料金が過去最高の1泊4万5千円となった“不都合”な事実****
(中略)
高騰するニューヨークのホテル価格
ニューヨークの平均宿泊料金が1泊4万5,000円になり過去最高となりました。好景気で観光客で溢れているのでしょうか?

違うのです。 ご紹介するのは、ニューヨークタイムズ5月25日に掲載された記事です。

ニューヨークのホテルの平均宿泊料金は301ドルで、過去最高を記録している。その大きな理由とはホテルの5軒に1軒が避難所となっており、観光客の宿泊施設不足に拍車をかけている。

かつては高級ホテルだったところから、より質素な施設まで、何十軒ものホテルが観光客の立ち入りを禁止し、市と数百万ドルの契約を結んで移民だけを保護し始めた。ホテルは何万人もの亡命希望者にとって安全な避難所となった。

ニューヨークの観光シーズンのピークが始まろうとしている今、移民危機はニューヨークのホテル事情を劇的に変化させた。

市内にある約680のホテルのうち約135がシェルター・プログラムに参加している。その多くは観光客を惹きつける伝統的な場所に集まっている。

ミッドタウンのホテルには、劇場街の真ん中にある4つ星ホテル、ロウ・ニューヨーク・ホテルや、グランド・セントラル近くで100年以上の歴史を持つルーズベルト・ホテルなどがある。

2022年後半から、市はホテル業界団体と最大9億8,000万ドル(約1,470億円)の契約を結び、「サンクチュアリ・ホテル・プログラム」に基づいて移民を保護することを決定したホテルに報酬を支払う。

市当局によると、ホテルは部屋が埋まっているかどうかにかかわらず、1部屋1泊139ドルから185ドルを受け取り収入が保証される。

約6万5,000人の移民がホテル、テント寮、その他のシェルターに保護されているが、その理由はベッドを必要とする人にベッドを提供する市の法的義務である。

市は、移民危機に3会計年度で100億ドル(約1兆5,000億円)を費やすと予測している。参加ホテルで従来のホテルに戻ったホテルはひとつもない。

解説
アメリカには不法移民に対して寛大な政策をとるサンクチュアリ・シティ(聖域都市)があります。これらの都市は不法入国者の取り締まりを行う捜査機関である移民・税関執行局(Immigration and Customs Enforcement, ICE)の協力要請を受けません。 有名なのはニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴなどです。

特にニューヨークには「シェルターへの権利」という、屋根のない人は誰でも市からシェルターを借りる権利があるという条例があります。

当然、不法移民が大量に流入してきます。テキサス州のようにバスや飛行機で不法移民をニューヨークに送り込む州もあります。それでニューヨーク市内のホテルの5分の1がシェルターに使われているというのです。

もはや戦争のようです。
毎年5,000億円の支出などとんでもない事です。一般市民からの大きな批判もあります。

民主党のエリック・アダムス市長もこの状況に困って、成人の移民を30日または60日後に市のシェルターから強制退去させる方針を決めました。

しかし追い出された(不法)移民はどこに行くのでしょうか?
ビザを申請して許可された合法移民は、正式な仕事もありますし財政基盤もしっかりしています。

しかし不法移民・難民には何もないのです。ギャングが甘い言葉でつけむでしょう。負の連鎖、拡大再生産です。
このままの状況が続けられない事は子供でも分かります。

バイデン大統領に課された大きな十字架です。(後略)【5月27日 大澤裕氏 MAG2NEWS】
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こうした事情を受けて、不法移民を強制送還すべしとの世論が強まっています。トランプ氏は再選されれば強制送還の可能性のある移民を収容する大規模施設を建設する方針だとも報じられています。

もっとも、米国民の過半は「強制送還するまでの間は収容所に入れろ」とまでは考えていないようです。「収容所」というものに対する大戦中の負の記憶などもあるのでしょう。

****米国民の半分、不法移民の収容所使用に反対=ロイター・イプソス調査****
ロイターとイプソスの最新世論調査によると、米国への不法移民を強制送還するまでの間、収容所に滞在させることに反対する人が米有権者の半分余りに上った。共和党の大統領候補指名が確実なトランプ氏が検討するより厳しい措置に米国民が懸念している可能性が示された。

調査では、収容所使用に反対と回答した登録有権者の割合は54%、賛成するとの回答は36%、10%が分からない、または無回答だった。

ただ、56%は不法移民の大半または全員を強制送還すべきと答えた。

11月5日の大統領選に向け、移民問題は共和党員を中心とする有権者にとって最大の争点。トランプ氏は、民主党のバイデン大統領に対抗する上で、不法移民の取り締まりを政策の中心に据えている。

米紙ニューヨーク・タイムズは昨年、トランプ氏は再選されれば強制送還の可能性のある移民を収容する大規模施設を建設する方針だと報じた。

トランプ氏は、米誌タイムとの4月のインタビューで、施設使用を検討するとしながらも、強制送還は迅速に行われるので「さほど必要にはならないだろう」と述べた。【5月21日 ロイター】
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【バイデン政権 強硬策に方針転換 “事実上の国境封鎖”】
こうした不法移民増加に対する厳しい世論が再選戦略の足かせになると判断したバイデン政権は、冒頭記事に“事実上の国境封鎖”とあるように、不法移民に対する強硬策に方針転換したようです。

****バイデン氏、不法移民抑制へ大統領令 「国境管理を強化」大統領選の最大争点で成果狙う****
バイデン米大統領は4日、南部メキシコ国境でビザ(査証)などの正規資格を持たない不法入国者が一定数を超した場合、難民申請の受理を停止して国境を一時的に〝閉鎖〟することを柱とする大統領令に署名した。

11月の大統領選で最大の争点となっている不法移民問題での取り組みをアピールする狙いがある。バイデン氏は同日の演説で、大統領令によって「国境管理を強化できる」と語った。

難民の法的地位に関する「難民条約」に基づく現行法では、越境時に拘束された不法入国者が難民申請の審査を申し立てれば、原則として審査結果が出るまで国内にとどまることができる。しかし近年は不法入国の急増で審査期間が長期化し、不法移民が実質的に野放しになっていた。国境地帯で拘束された不法入国者は2023年だけで約250万人に上る。

今回の大統領令は、1日当たりの拘束者数が2500人を超した時点で難民申請の受理を停止する内容。それ以降の拘束者は、親に伴われていない未成年者や人身売買の被害者などを除き、国外退去措置を受ける。1日の拘束者数が7日間連続で1500人を下回れば受理を再開する。合法的な入国や商業上の往来などは通常通りに認められるという。

不法入国での拘束者は現在、1日当たり約6000人に上ることもあり、米メディアによると大統領令はすぐにも発効。難民申請の受理を制限することで、不法入国を試みる人を抑制する効果を狙う。

ただ、今後は移民支援の慈善団体などが大統領令の差し止めを求めて提訴する可能性が高く、実効性は不透明だ。不法移民に強硬姿勢をとる共和党のトランプ前大統領も1期目に同様の大統領令を出し、司法判断で阻止された経緯がある。

不法移民問題を巡っては2月、バイデン政権と与野党の上院指導部が包括的な国境対策法案で合意した。しかし、11月の大統領選を前にバイデン氏が成果をあげるのを阻止したいトランプ氏が、自身に忠実な議員らに成立を阻むよう指示したことで、同法案は宙に浮いた状態にある。【6月5日 産経】
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【パレスチナ対応同様に、党内にも異論があり対応には苦慮する予想】
バイデン大統領はパレスチナ・イスラエル対応でも親パレスチナ世論の高まりと従来からの親イスラエル政策の間で板挟み状態になっていますが、不法移民対策でも上記の強硬策を歓迎する人々と厳しすぎるとの党内左派の間で苦慮することになりそうです。

*****バイデン政権が移民に寛容から「国境閉鎖」転換、なぜ 党内で反発も****
バイデン米大統領(民主党)は4日、南部のメキシコとの国境で、不法越境者の亡命申請を事実上禁止する大統領布告を出した。

11月の大統領選に向けてトランプ前大統領(共和党)から「国境の混乱」を追及される中、「国境閉鎖」に方針転換することで批判をかわす狙いがある。しかし、移民に寛容な姿勢を一転させることで、民主党左派から反発を招くリスクもはらんでいる。(中略)

 ◇世論調査、国境対策を支持しない69%
「トランプ氏は国境問題の解決を望まず、私を攻撃するために問題を利用しようとした」。バイデン氏は4日の演説で、国境問題の責任はトランプ氏にあると主張した。今年2月にバイデン政権と連邦上院の共和党が国境管理の強化策で合意した際、トランプ氏の横やりで破談になった経緯が念頭にある。

過去最多ペースで不法越境が続く中、「我々は国境問題の責任を共有している」と強調し、政権だけの「失政」だとは認めなかった。

しかし、世論は政権の対応に問題があるとみている。AP通信などの3月の世論調査では、69%が「バイデン氏の国境対策を支持しない」と回答した。

また、マーケット大学の5月の調査では、「最も重要な争点」として経済(36%)に次いで国境問題(20%)を挙げた有権者が多かった。「どちらが移民・国境政策にうまく対応できるか」との質問では、トランプ氏(52%)がバイデン氏(25%)を圧倒した。

国境問題が再選に向けた足かせになる中、バイデン氏は「国境閉鎖」というインパクトのある対応で局面の打開を図った形だ。

国境では従来、不法越境した後に亡命を申請すれば、審査中は米国内で仮放免されるケースが多かった。収容施設に余裕がないことが背景にあり、放免後は実質的に不法移民として米国内に滞在できた。しかし、今回の措置では亡命申請自体を受け付けず、出身国などに強制送還することになる。

ただ、不法越境者は世界各地から押し寄せており、予算や人員の制約から、送還が円滑に進まないとの懸念が出ている。

メキシコは、自国とキューバ、ベネズエラ、ハイチ、ニカラグア出身の越境者の送還は受け入れることに同意した。しかし、最近は中国など中南米以外の出身者が増えており、どう対応するのかは不透明だ。

トランプ氏の陣営は4日、「バイデン氏は実効性のない政策を発表することで、国境を安全にするふりをしているだけだ」と批判した。

 ◇民主党左派から反発も
寛容な移民政策を求める民主党左派からも反発が出ている。民主党のパディーラ上院議員は声明で「バイデン大統領は米国の価値を損ない、迫害や暴力を逃れてきた人たちに米国に逃れる機会を提供する義務を捨てた」と批判。

人権団体「米自由人権協会」(ACLU)は「亡命申請の法的な権利を厳しく制約する措置だ」と批判し、訴訟を起こす方針を示した。民主党左派は政権のパレスチナ情勢への対応にも不満を募らせており、今回の措置で離反が進む恐れがある。【6月5日 毎日】
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【欧州でも強まるより厳格な移民対応を求める声 ドイツでは凶悪犯罪を起こしたらアフガニスタンでも国外退去措置】
移民増加への批判の高まりはアメリカだけでなく欧州でも同様です。

不法移民をアフリカ・ルワンダに移送する形でカネで外国にしょりさせようというイギリス・保守政権の対応はこれまでも取り上げたことがありますが、メルケル前首相以来寛容な対応をとってきたドイツでも。

****ドイツが移民政策で強硬姿勢、凶悪犯罪を起こしたら国外退去措置を強化…ショルツ首相表明****
ドイツのショルツ首相は6日の連邦議会演説で、凶悪犯罪を起こした外国出身者の国外退去措置を強化する意向を表明した。

欧州議会選では右派勢力が「反移民」を唱えており、「移民問題で厳しい姿勢を取るよう首相に圧力がかかっていた」(米紙ポリティコ)との見方が出ている。連立与党内には「基本的人権の侵害につながる」との異論もある。

西部マンハイムで5月末、アフガニスタン出身の男(25)が集会を刃物で襲い、5人が負傷、警官1人が死亡する事件を受けたものだ。

男は2014年に難民申請を却下されたが、個別事情が考慮されて国外退去を「猶予」されていた。正規の滞在資格がないまま退去を猶予されてドイツに在留する難民不認定者らは約19万人。16年にはチュニジア出身者がベルリンのクリスマス市にトラックで突っ込み60人超を死傷させるテロを起こした。

ショルツ氏は「ドイツで保護を受けている人物による凶悪事件に憤慨する。凶悪犯罪者はシリアやアフガニスタンであっても送還されるべきだ」と訴えた。祖国で迫害される恐れなどから強制送還の対象としていない国の出身者でも例外としない考えを示したものだ。【6月7日 読売】
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