(パレスチナ・ガザ北部で飢餓が差し迫っていると、国連が支援した調査が指摘している【11月13日 BBC】)
【アメリカ ガザ地区の人道状況を30日以内に改善させるイスラエルに要請 出来ない場合は一部武器支援停止も】
パレスチナ・ガザ地区の惨状は周知のところですが、アメリカがイスラエルに10月13日付けで書簡を送り、イスラエルが30日以内にガザの人道状況を改善させなければ、アメリカは対イスラエル軍事支援の一部を打ち切る可能性があると伝えていたことが10月15日に明らかになりました。
****アメリカ、イスラエルにガザ人道状況の改善要求 「30日以内」に対応なければ軍事支援停止も****
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナのガザ地区の人道状況をめぐり、アメリカがイスラエルに書簡を送り、同国が30日以内に改善させなければ、アメリカは対イスラエル軍事支援の一部を打ち切る可能性があると伝えていたことが15日、明らかになった。
13日付のこの書簡は、アメリカが同盟国のイスラエルに出した警告文としては最も強力なもの。イスラエルがガザ北部で新たな攻撃を開始し、多数の民間人が死傷していると報じられている中で出された。
書簡にはアメリカがガザの人道状況の悪化に深い懸念を抱いていると書かれている。また、イスラエルが先月ガザ北部と南部の間で、人道的な移動の90%近くを拒否または妨害したとしている。
イスラエルは書簡について検討中だとされる。同国はガザ北部での攻撃はハマス工作員を標的にしたもので、人道支援物資の流入を阻止してはいないとしている。
ガザ境界の検問所を運営するイスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は14日、国連の世界食糧計画(WFP)からの援助物資を積んだトラック30台がエレズ検問所からガザ北部へ入ったと発表した。
国連によると、ガザ北部に食料援助が届けられず、40万人のパレスチナ人の生存に不可欠な物資が底を尽きつつあった。こうした状況は2週間続いたが、エレズ検問所経由の物資搬入でそれを脱した。
アメリカはイスラエルにとって最大の武器供給源。イスラエル軍はこの1年、ガザでのハマスとの戦闘をめぐり、アメリカから供給された航空機や誘導爆弾、ミサイル、砲弾に大きく依存してきた。
書簡の内容
アメリカがイスラエル政府に宛てた書簡の内容は、米ニュースサイト「アクシオス」が最初に報じた。その後、米国務省も書簡の存在を認めた。書簡にはアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が署名している。
書簡には、「ガザにおける人道状況の悪化に対して米政府が深い懸念を抱いていることを強調し、この軌道を方向転換させるために今月中にイスラエル政府が緊急かつ持続可能な行動を取ることを求めるため、この書簡を記す」とある。
また、イスラエルの避難命令を受け、イスラエル軍が人道地区に指定しているガザ南部アル・マワシ地区には170万人のパレスチナ人が密集していると指摘。この狭い地区は極度の過密状態にあり、致死的な感染症が広まる危険性が高まっているとしている。さらに、人道支援団体はこうした避難民が生き延びるためのニーズに応えられていないと報告していると書いてある。
「我々はイスラエル政府による最近の行動を特に懸念している。商業的な搬入の停止、9月にガザ北部と南部の間で人道的な移動の90%近くを拒否または妨害、民生と軍事の両方に活用できるデュアルユースに対する過重な制限の継続、人道スタッフや輸送品に対する新たな審査・重い責任・税関要件の設定は、不法行為や略奪の増加とともに、ガザの状況を加速度的に悪化させ続けている」
書簡は、イスラエルはガザへの援助物資の供給を促進するための一連の具体的な措置を「今すぐ、30日以内に開始しなければならない」、そうでなければ「アメリカの政策に影響を与えることになりかねない」としている。
書簡には、アメリカの人道援助物資の提供を妨げる国に軍事支援を禁止する、アメリカの法律が引用されている。
アメリカ側は、イスラエルは冬の到来までに「ガザ全域であらゆるかたちの人道支援を急増」させなければならないとしている。これには1日あたり最低350台のトラックが四つの主要検問所と五つ目の新たな検問所を通過し、アル・マワシ地区にいる人々が内陸に移動できるようにすることが含まれる。
ガザ北部から南部への「民間人の強制避難がイスラエル政府の政策に含まれない」ことを再確認し、「ガザ北部の孤立」を終わらせることも求めている。【10月16日 BBC】
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アメリカはこの書簡を公表するつもりはなかったとしています。当時最終盤を迎えていた大統領選挙を考えると、イスラエルに対し軍事支援の一部停止も辞さないような内容は不都合と考えたのでしょうか。
期間の設定も投開票日をまたぐ形になったのも大統領選挙への影響を考慮してのことでしょうか。
ただ、本気で非公表にするつもりなら、すぐに一部報道機関に内容が漏れるというのも・・・どうでしょうか。
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(上記【BBC】の続き)
米国務省のマシュー・ミラー報道官は15日、米ワシントンでの記者会見で、当該書簡は「非公開の外交的コミュニケーションであり、公表するつもりはなかった」と語った。
「(ブリンケン)長官はオースティン長官とともに、ガザへの援助レベルを回復させるために再び変更を加える必要があるとイスラエル政府に明確にすることが適切だと考えた」
イスラエル側が人道援助へのアクセスを改善しなかった場合にどのような結果が起こりうるかについては、ミラー報道官は推測を避けた。
「米軍の援助を受ける側が恣意(しい)的にアメリカによる人道援助の提供を拒否あるいは妨げるようなことはない。このことは法律で定められており、我々は当然、法律に従う。しかし我々が望むのは、我々が示したような変更をイスラエルが行うことだ」
30日間という期限については、11月5日に控える米大統領選とは関係がないとし、「異なる問題に取り組むための時間を与えるのがふさわしい」やり方だと述べた。
イスラエルは以前から、ガザへ届けられる援助物資や人道支援の量を制限してはいないと主張しており、それらが供給されていないのは国連機関に問題があるからだとしている。また、ハマスが援助物資を盗んでいるとも非難している。ハマス側はこれを否定している。
5月にイスラエルがガザ南部ラファで地上攻撃を開始する前、ジョー・バイデン米大統領は2000ポンド爆弾と500ポンド爆弾の輸送を初めて停止し、イスラエルに全面攻撃を思いとどまらせようとした。
しかし、バイデン氏は直後に、米議会共和党やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からの反発に直面した。
この停止措置は7月に部分的に解除され、その後は実施されていない。(後略)【10月16日 BBC】
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これに関し、EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は17日、「今のペースで死者が出れば、1カ月の間にあまりにも多くの人々が死亡することになる」として、アメリカが1か月の猶予を設けていることを批判しています。【10月17日 ロイターより】
【改善の様子なく、悪化するガザ地区の状況】
10月13日付けの書簡でしたが、その後もガザの状況が改善したという情報は目にしていません。むしろその惨状を伝えるものだけです。
****ガザ、飢餓のリスク続く 「最悪のシナリオ」懸念=国連IPC分析****
国連の「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」は17日、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザでは地区全体が依然として飢餓の危機にさらされ、緊急レベルにあるとの分析結果を公表した。イスラエル軍の激しい軍事作戦が懸念を強め、人道支援活動が妨げられていることが要因にある。
ガザ地区約230万人の住民の184万人が深刻な食料不安に直面し、そのうち13万3000人が最も深刻な「壊滅的」レベルにあるとした。6月の報告からは減少したものの、今後数カ月の間に倍増するとみられている。5月以降、ガザ地区への食料の流入が増えたが、9月に人道支援が再び縮小し始めたと指摘した。
IPCは「ガザ地区全体で飢餓のリスクが続いている。最近の敵対行為の高まりを踏まえると、最悪のシナリオが現実となるのではないかという懸念が高まっている」と記した。
IPCによると、イスラエルがこのほど出したガザ地区からの退去命令で人道支援活動が中断され、度重なる避難によって食料や水、医薬品へのアクセスや対応が悪化している。24年9月─25年8月に小児の急性栄養失調が6万件発生すると推定されている。
今回の報告は9月30日─10月4日の分析に基づいており、足元で起きている最新状況を反映していない。
国連の人道支援機関は、10月2日─15日までにガザ北部には食料援助はほとんど入らず、配布できる食料は枯渇寸前だと指摘。燃料不足も深刻化しており、大半のパン屋は数日で閉店を余儀なくされる恐れがあるとしている。【10月18日 ロイター】
ガザ地区約230万人の住民の184万人が深刻な食料不安に直面し、そのうち13万3000人が最も深刻な「壊滅的」レベルにあるとした。6月の報告からは減少したものの、今後数カ月の間に倍増するとみられている。5月以降、ガザ地区への食料の流入が増えたが、9月に人道支援が再び縮小し始めたと指摘した。
IPCは「ガザ地区全体で飢餓のリスクが続いている。最近の敵対行為の高まりを踏まえると、最悪のシナリオが現実となるのではないかという懸念が高まっている」と記した。
IPCによると、イスラエルがこのほど出したガザ地区からの退去命令で人道支援活動が中断され、度重なる避難によって食料や水、医薬品へのアクセスや対応が悪化している。24年9月─25年8月に小児の急性栄養失調が6万件発生すると推定されている。
今回の報告は9月30日─10月4日の分析に基づいており、足元で起きている最新状況を反映していない。
国連の人道支援機関は、10月2日─15日までにガザ北部には食料援助はほとんど入らず、配布できる食料は枯渇寸前だと指摘。燃料不足も深刻化しており、大半のパン屋は数日で閉店を余儀なくされる恐れがあるとしている。【10月18日 ロイター】
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****イスラエル、ガザ物資輸送路遮断 食料搬入手続きを停止=関係筋****
イスラエルは、パレスチナ自治区ガザへの食料搬入を行う業者による要請の処理を停止した。これによりガザ地区の食糧の大半を過去6カ月間にわたり供給してきた輸送経路が遮断されることになる。複数の情報筋が明らかにした。
イスラエルの公式データをロイターが分析したところ、今回の決定により、ガザ地区への物資の搬入量は戦争開始以来最低水準となっていることが分かった。
イスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、十分な支援物資がガザ沿岸地区に届き、イスラエルが人道援助の流入を阻止しないよう全力を尽くしていると説明。イスラエルが物資供給を妨害しているとの主張を否定している。
COGATの統計によると、10月1─16日にガザ地区への援助物資と商業物資を含む物資輸送量は、1日平均トラック29台分にまで減少している。
食糧供給に携わる2人の関係者によると、商業輸送を停止した理由は、イスラム組織ハマスが輸入品から収入を得ていることをイスラエルが懸念しているたためという。
ハマスの報道官は、同組織が食料を盗んだりそれを収入源にしたりすることはないとし、ガザ地区に援助物資を確実に配給しようと努めていると言明した。【10月18日 ロイター】
イスラエルの公式データをロイターが分析したところ、今回の決定により、ガザ地区への物資の搬入量は戦争開始以来最低水準となっていることが分かった。
イスラエルの占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、十分な支援物資がガザ沿岸地区に届き、イスラエルが人道援助の流入を阻止しないよう全力を尽くしていると説明。イスラエルが物資供給を妨害しているとの主張を否定している。
COGATの統計によると、10月1─16日にガザ地区への援助物資と商業物資を含む物資輸送量は、1日平均トラック29台分にまで減少している。
食糧供給に携わる2人の関係者によると、商業輸送を停止した理由は、イスラム組織ハマスが輸入品から収入を得ていることをイスラエルが懸念しているたためという。
ハマスの報道官は、同組織が食料を盗んだりそれを収入源にしたりすることはないとし、ガザ地区に援助物資を確実に配給しようと努めていると言明した。【10月18日 ロイター】
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かりに“ハマスが輸入品から収入を得ている”ということであったにしても、商業輸送を停止してガザ住民の飢餓状況を更に悪化させることが許されるのか?
イスラエルにとって「人命」というのはイスラエルユダヤ人のものだけであり、パレスチナ人の命はその範疇に入らないのか?
【「将軍たちの計画」】
この間、イスラエルはガザ北部への攻撃を強めています。
“ガザ北部で病院攻撃、イスラエル「テロ標的」 全域で72人死亡”【10月26日 ロイター】
このガザ北部への攻撃は、住民を強制退去させ、残った者はハマス及びその関係者として殺害し、北部へのイスラエル軍常駐を目指す・・・・という計画ではないかとも見られています。退役したイスラエル軍司令官らが提案した計画で「将軍たちの計画」と呼ばれていますが、イスラエル政府はそうした計画の実行を否定しています。
アメリカの要請については“イスラエル政府は半ば無視”とも。どうせイスラエル全面支持のトランプ氏が勝つので、バイデン政権の要請など無意味・・・ということでしょうか。
****ガザ北部再攻撃、死者千人 包囲1カ月、軍駐留視野か****
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部を再び集中攻撃している。北部ジャバリヤ周辺を1カ月以上、地上部隊で包囲し、支援物資の搬入を遮断。千人以上が死亡したとみられ、住民多数が避難を強いられている。今後のイスラエル軍の駐留も視野に、住民を強制的に退去させているとの見方も出ている。
米国は10月中旬、ガザの人道状況改善措置を30日以内に取るよう求めたが、イスラエル政府は半ば無視。危機的状況だ。
イスラエル軍は昨年10月の戦闘開始以降、ガザ北部で地上作戦を繰り返してきた。今回の作戦は今年10月6日に始め、ジャバリヤや北方ベイトラヒヤも包囲。10月中旬にイスラム組織ハマスの最高指導者シンワール氏を殺害後も攻撃の手を緩めず、国連によると約10万人がジャバリヤ周辺から南方のガザ市に逃れた。
イスラエル軍はガザ市以北への物資搬入を認めず、ロイター通信はジャバリヤ周辺に1カ月以上、物資が届いていないとする住民の話を伝えた。【11月8日 共同】
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****ガザ人道支援、北部住民に届いてないと米政府 包囲をけん制****
米国務省のミラー報道官は28日、パレスチナ自治区ガザ北部ジャバリアで人道支援が必要な人に届いていないとし、受け入れられない状況との見方を示した。
「ジャバリアの人々に必要な食料や水、医薬品が届いていない」とし、「状況が変わることを望む」と述べた。
パレスチナの緊急当局によると、ジャバリア、ベイトラヒヤ、ベイトハヌーンでは約10万人が医療や食料供給を受けられずに孤立している。3週間にわたるイスラエル軍のガザ北部攻撃で緊急サービスの活動が停止しているという。
ミラー氏はガザ北部を包囲したり、民間人を飢餓に陥れたり、ガザ全体から北部を切り離したりするようないかなる試みも明確に拒否すると断じた。
ブリンケン米国務長官は ガザ北部から避難するよう民間人に指示した上で、同地域を閉鎖された軍事区域に指定するという、退役したイスラエル軍司令官らが提案した計画について、イスラエルとの協議で問題提起した。ミラー氏によると、イスラエルはそうした計画は実施していないと述べたという。
ただ、米当局者によると、ブリンケン氏は米国がガザの人道状況改善に向けた措置を30日以内に講じるよう求めた先の書簡で示した条件をイスラエルが全て満たすには至っていないと警告したという。【10月29日 ロイター】
「ジャバリアの人々に必要な食料や水、医薬品が届いていない」とし、「状況が変わることを望む」と述べた。
パレスチナの緊急当局によると、ジャバリア、ベイトラヒヤ、ベイトハヌーンでは約10万人が医療や食料供給を受けられずに孤立している。3週間にわたるイスラエル軍のガザ北部攻撃で緊急サービスの活動が停止しているという。
ミラー氏はガザ北部を包囲したり、民間人を飢餓に陥れたり、ガザ全体から北部を切り離したりするようないかなる試みも明確に拒否すると断じた。
ブリンケン米国務長官は ガザ北部から避難するよう民間人に指示した上で、同地域を閉鎖された軍事区域に指定するという、退役したイスラエル軍司令官らが提案した計画について、イスラエルとの協議で問題提起した。ミラー氏によると、イスラエルはそうした計画は実施していないと述べたという。
ただ、米当局者によると、ブリンケン氏は米国がガザの人道状況改善に向けた措置を30日以内に講じるよう求めた先の書簡で示した条件をイスラエルが全て満たすには至っていないと警告したという。【10月29日 ロイター】
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【国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のイスラエル国内での活動禁止】
イスラエル議会は、ガザで人道支援を行っている国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)についてハマスと関連があるとして国内での活動を禁じる法案を可決。これによりイスラエルと調整ができなくなり、事実上ガザへの物資支援がストップします。
*****ガザの人道危機、さらに深まる恐れ…イスラエルがUNRWAの活動禁じる法案可決****
イスラエル国会は28日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の国内での活動を禁じる法案を賛成92、反対10の賛成多数で可決した。90日以内に施行される。
UNRWAは、戦闘が続くパレスチナ自治区ガザで人道支援を行っている。支援にはイスラエル側との調整が欠かせず、活動禁止でガザの人道危機がさらに深まる恐れがある。
イスラエルは、昨年10月のイスラム主義組織ハマスによる越境攻撃にUNRWAの職員が関わっていたとして解体を求めていた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「テロ活動に関与した職員は責任を負わなければならない」とX(旧ツイッター)に投稿し、活動禁止の正当性を強調した。
UNRWAが陸路でガザに物資を搬入する際には、隣接するイスラエル当局との調整が必要となる。イスラエルでUNRWAの活動が禁じられると事実上、物資支援が困難になる。イスラエル当局とUNRWA職員の接触も禁じられた。
UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は「法案はガザの人々の苦しみを深めるだけだ」とXで非難した。【10月30日 読売】
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この法案については、国連安保理の全15理事国が法案の可決に懸念や非難を表明しています。
国連で中東和平を担うトル・ウェネスランド特別調整官は国連総会の決議に基づきUNRWAが設置されたことを踏まえ、イスラエルによる「一方的措置は国連を弱体化させ、国際法を後退させる恐れがある」と非難し、撤回を求めました。
アメリカはUNRWAとハマスの関与に関するイスラエルの判断を擁護しつつ、、「UNRWAは重要な使命を果たしている」として法案可決に懸念を示しました。【10月30日 読売より】
11月12日には、ガザ北部でイスラエルによる攻撃の激化により人道危機が深刻化している状況を受け、国連安全保障理事会が緊急会合を開催。イスラエル軍の妨害で救援物資が届けられず、「(飢餓より深刻な状況になる)飢饉が差し迫っている可能性が高い」と報告されました。イスラエルは「ガザに飢餓はない」と否定しています。
アルジェリアのベンジャマ国連大使は「文字通り人々を飢え死にさせている。餓死させることを戦争の手段として明確に用いており、戦争犯罪に値する」と糾弾。
イスラエルのダノン国連大使は、「飢饉が迫っている根拠はない。唯一あるのは政治的偏見だ」と述べ、イスラエルへの中傷だと反論しました。ガザには支援物資を積んだ数十台のトラックの運搬を日々許可していると強調。人々に物資が行き渡らないのはハマスなどが略奪しているためだとこれまで通りの主張を繰り返しています。
【アメリカ 状況は限定的ながら改善 武器供与もこれまで通り継続】
そして、猶予期間1か月が経過して・・・
****バイデン政権は最後に飢餓直前のガザを見捨て、人道支援よりイスラエルへの武器輸出を優先した****
(中略)
バイデン政権は11月12日、イスラエルがガザへの人道援助活動を許可したため、状況は限定的ながら改善したと発表した。状況が改善しなければ削減すると言っていたイスラエルへの武器供与も、これまで通り継続することにした。
一方、人道支援団体からの最新の報告書によれば、ガザの状況は、13カ月に及ぶ紛争のどの時点よりも悲惨なことになっている。
米国務省のベダント・パテル副報道官は記者団に対し、人道支援に対するイスラエルの姿勢は最近になって最近になって改善したとはいえまだ十分ではないし、継続しなければならないが、アメリカは「イスラエルがアメリカの法律に違反しているとは考えていない」と述べた。
「私たちはイスラエルに合格点を与えているわけではない」とパテルは述べた。「私たちは人道的状況の全面的な改善を望んでいる。こうした措置によって、今後も改善が進み続けることが可能になると考えている」
アメリカはイスラエルにとって最大の同盟国であり、最大の軍事援助国だ。国際人道支援団体がイスラエルはガザでの人道的アクセスの拡大を求めるアメリカの要求に完全に応えていないと述べているにもかかわらず、アメリカは武器輸出継続の決定を下した。
専門家は、ガザ北部の一部はすでに飢餓状態に直面している可能性がある、と警告している。(BBCの報道によれば、イスラエル軍が包囲するガザ地区で1日にトラック350台分が必要とされる支援物資も、まだ1日平均40台分ほどしか入っていない)。
バイデン政権は10月、ガザのイスラム組織ハマスとレバノンのイスラム過激派組織ヒズボラに対する攻撃を実施するイスラエルに対して、ガザへの食糧と緊急支援物資の輸送を大幅に増加させなければ、軍事援助を削減する可能性があると伝え、その期限を11月12日としていた。(中略)
オックスファム、ノルウェー難民評議会、セーブ・ザ・チルドレンなど8つの人道支援団体が11月11日に発表した報告書によると、イスラエルはアメリカが求めた基準を満たしていなかった。【11月13日 Newsweek】
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イスラエルは、ガザに運び込まれる支援物資の量を大幅に増やしたと主張しており、“1日平均40台分”云々の数字は不正確だとしています。また、支援物資の搬入が進まないのは武装組織が略奪しているためだとも。
“BBCのガザ特派員を2009~2013年に務めたジョン・ドニソン記者は、ジョー・バイデン米大統領の任期が残り少なくなり、パレスチナ人4万3000人以上の命が失われた現在の状況で、米政府がイスラエルへの武器の供給を打ち切ることはないだろうとみている。”【11月13日 BBC】
アメリカの要請は何だったのか? 大統領選挙におけるアラブ系有権者を意識したものだったのでしょうか? ハリス氏が勝っていたら、イスラエルへの対応も変化した?・・・それも民主党のイスラエル支持を考えるとありそうにないですが。
【トランプ2.0ではイスラエル全面支援 国際法より聖書が優先】
いずれにしても、今後のトランプ2.0の対応はバイデン政権に比べ“すっきり・明確”になります。イスラエル完全支持という形で。
****トランプ氏、駐イスラエル大使にハッカビー氏 ヨルダン川西岸入植を擁護****
トランプ次期米大統領は12日、マイク・ハッカビー元アーカンソー州知事を駐イスラエル大使に選出したことを明らかにした。
トランプ氏は声明で「マイクは長年にわたる偉大な公僕、知事であり、信仰の指導者でもある。彼はイスラエルとイスラエル国民を愛し、イスラエル国民も同様に彼を愛している。中東に和平をもたらすため、精力的に取り組むだろう」と述べた。
現アーカンソー州知事のハッカビー氏の娘、サラ・ハッカビー・サンダース氏は第1次トランプ政権で大統領報道官を務めた。
ハッカビー氏はキャリアを通じてイスラエルを強く擁護しており、ヨルダン川西岸地区に対するイスラエルの主張についても認める姿勢を示している。
イスラエルのネタニヤフ首相は長年、米国の福音派キリスト教徒との関係強化に努めてきた。ハッカビー氏の起用はそうした取り組みの歓迎すべき集大成になる。
ハッカビー氏はヨルダン川西岸へのイスラエルの入植を支持しており、2017年には、ヨルダン川西岸のエルサレム東郊にあるイスラエル最大規模の入植地で定礎式を行ったこともある。
当時、ハッカビー氏はCNNの取材に、「入植」という言葉の使用を拒絶する考えを表明。ヨルダン川西岸を示す聖書の言葉を使い、「ユダヤ・サマリア地区に対するイスラエルの権利は証明されていると思う」「ヨルダン川西岸地区などというものは存在しない。ユダヤ・サマリア地区だ。入植地も存在しない。これはコミュニティーであり、地域であり、街だ。占領などというものは存在しない」と述べていた。【11月13日 CNN】
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21世紀の国際関係において、最も影響力が大きい国家アメリカが、イスラエルの入植を違法とする国際司法裁判所の判断、それに基づく国連決議よりも、聖書の記述を重視するとは・・・・頭がクラクラする感も。
キリスト教福音派など宗教保守派が動かすアメリカ政治の在り様を見る思いも。