孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  少数民族共同蜂起「1027作戦」から1年 「ミャンマーのことを忘れたふりをしていないか」

2024-11-12 23:08:27 | ミャンマー
(ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン総司令官(左)と握手する中国の李強首相=6日、雲南省昆明(ミャンマー国軍提供 )【11月12日 時事】)

【国連特使 「忘れられた危機になる可能性がある」】
ミャンマーでは、昨年10月27日、中国国境に近い北東部シャン州でミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、タアン民族解放軍(TNLA)、アラカン軍(AA)が国軍を一斉攻撃し、拠点を多数奪った「1027作戦」から1年以上が経過しています。

その後も、各地の少数民族武装勢力及び民主派武装組織と国軍の間の戦闘が続いています。

戦況は国軍が劣勢に立たされていると見られ、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)が8月にはシャン州北部の最大都市ラショーを占領し、国軍が史上初めて軍管区の司令部を失うことになりました。

ラカイン州でもアラカン軍(AA)が大部分を支配下に置くなど、各地で武装勢力側が優位に立っています。

一方、兵力不足の国軍は、2月に徴兵制を開始。中国やロシアから戦闘機やドローン(無人機)の供与を受けて反撃し、市民の犠牲が増え続けています。

戦闘にいける残虐行為も指摘されています。

****首を切断、臓器も…ミャンマー軍“子ども含む民間人25人を虐殺”現地報道 国連機関「戦争犯罪は拡大」****
2021年のクーデター以降、軍と抵抗勢力による内戦状態が続くミャンマーの北部で、ミャンマー軍が子どもを含む民間人少なくとも25人を虐殺したと現地メディアが報じました。

ミャンマーの独立系メディアによりますと、今月9日以降、北部ザガイン地域にある複数の村をミャンマー軍が襲撃しました。軍は村々を空爆したり、放火したりして壊滅させたほか、民間人少なくとも25人を虐殺したということです。

犠牲者の中には、首などを切断されたり、臓器をえぐり取られたりして惨殺された人もいたほか、別の村では6歳の子どもが銃で撃たれ、死亡したということです。

シンクタンクの「ISPミャンマー」は23日、クーデター以降、民間人が虐殺される事件が65件を超え、1300人以上が死亡したと発表。虐殺のほとんどがミャンマー軍によるもので、ザガイン地域に被害が集中していると指摘しました。

また、国連が設置した「ミャンマーに関する独立調査メカニズム」の代表者は29日、国連総会の第3委員会で、「戦争犯罪や人道に対する罪は拡大している」と明らかにしました。

そのうえで、国際機関との連携を強化し、残虐行為の連鎖を断ち切る必要性を強調しています。【10月30日 TBS NEWS DIG】
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映画のランボー・シリーズでミャンマーを舞台にしたものがありました。主人公ランボーの無敵の強さには「そのなのある訳ない」と思いますが、国軍の残虐さは映画そのものかも。
国連特使は「忘れられた危機になる可能性がある」とも指摘しています。

****混乱続くミャンマー 国連特使が状況報告 軍のトップと会談も****
3年前、クーデターを起こした軍と民主派勢力などとの戦闘で混乱が続くミャンマーについて、国連の特使が状況を報告し、軍のトップとも会談したことを明らかにするとともに、「忘れられた危機になる可能性がある」として、和平プロセスを可能にする共通の土台を見いだす必要があると訴えました。

国連総会で人権問題を扱う第3委員会で29日、オーストラリアの元外相で国連でミャンマー問題を担当するビショップ特使が状況を報告しました。

このなかでビショップ特使は3年前のクーデター以降、激しい戦闘が続くミャンマーの現状について「忘れられた危機になる可能性がある」として強い懸念を示しました。

具体的には、軍による空爆や地雷などによる民間人の犠牲が急増しているほか、法の支配が失われるなか、ミャンマーが人身売買や麻薬の密造といった国際犯罪の温床になっていると指摘し、「世界的な影響はもはや無視できない」と述べました。

また、すべての利害関係者と関わりを持つ必要があるとして、民主派勢力だけでなく、詳細は避けたものの、軍トップのミン・アウン・フライン司令官ともネピドーで会談したことを明らかにしました。

ビショップ特使は、あらゆる暴力を停止しなければならないとしたうえで、「混乱のなかで和平プロセスの開始を可能にする共通の土台を見いださなければならない」と訴えました。【10月30日 NHK】
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【国内からは「ミャンマーのことを忘れたふりをしていないか」との国際社会への注文も】
ウクライナやパレスチナの紛争に隠れて「忘れられた危機になる可能性がある」との指摘ですが、ミャンマー国内からは国際社会に対し「忘れたふりしていないか」との厳しい指摘も。

****「ミャンマーのこと忘れたふりしていないか」 市民に銃向ける国軍を辞めた軍人たちは、日本に、世界に訴える****
クーデターを起こし、市民を弾圧するミャンマー国軍に反発し、抵抗運動に加わった軍人たちがいる。国軍は強硬姿勢をやめず、来年総選挙を実施して支配の正当化を目指す中で、どんな思いを抱いているのか。(北川成史、敬称略)

「軍に入ったのは間違いだった」。国軍の元工兵コーテット(34)は悔やむ。ミャンマー北東部シャン州出身。高校卒業後、親の勧めで国軍に入った。10年以上のキャリアを重ねた2021年2月、国軍上層部はクーデターでアウンサンスーチー率いる「国民民主連盟(NLD)」から政権を奪い、市民の抗議活動を兵士に弾圧させた。「多くの市民が兵士の銃撃で殺された。受け入れられなかった」

◆「徴兵し、ろくに訓練せずに前線へ」
離脱兵を支援する組織にSNSで連絡し、21年9月に国軍を離れ、翌月、民主派の武装組織「PDF(国民防衛隊)」に加わった。
国軍と戦う中、2023年4月、東部カイン州で銃撃された。弾は左あごから左肩を貫通。隣国タイの病院で3度の手術を受けた。タイ国内にあるPDF隊員の療養施設で、回復を待ちながら、運営を手伝っている。

故郷のシャン州では今年7月、少数民族武装勢力「ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)」が、国軍の北東軍管区司令部を占拠したと発表した。ミャンマーに14ある軍管区司令部の占拠は過去に例がない。

「軍の衝撃は大きい。戦意を失い、弱体化している表れだ」とコーテットは指摘する。昨年10月以降、国軍は民主派や少数民族との内戦で劣勢にある。

今年2月には徴兵制実施を発表。離脱や死傷による兵力不足を補う目的のようだが、うまくいっていない。「徴兵し、ろくに訓練しないで前線に送っている。武器があっても戦い方が分からない状態。劣勢挽回のため各地で無差別に空爆している」とコーテット。「けがが治ったら前線に戻り、新しい国をつくるため、戦いたい」と話す。

◆「総司令官の権力保持のために戦っても命の無駄」
将校だったカウンサン(37)も昨年、国軍を離れた。「軍はやってはならない過ちを犯した」とクーデターを非難する。

ミンアウンフライン総司令官は、NLDが大勝した20年11月の総選挙での不正をクーデターの理由に挙げた。カウンサンは「あまりのうそに悲しくなった。軍人を含め大勢がNLDに投票したのは間違いない」と力を込める。NLD幹部を強引に拘束し、市民を弾圧する国軍上層部の手法に嫌気が差し、離脱。その後、国軍を抜けた兵士らの支援などに関わってきた。

「離脱は最近も収まっていない。タイの国境地帯に逃れた軍人だけでも、5000人ぐらいにはなっているだろう」とカウンサンは見積もる。「総司令官の権力保持のために戦っても命の無駄だと、みんな分かっているからだ」

◆「選挙に反対し、はっきりと市民の側を支援して」
国軍は20年の総選挙を無効とし、新たな総選挙を来年実施するため、10月、国勢調査を始めた。だが、民主派側が国土の6割以上を押さえたと主張する状況で順調に進んでいない。

カウンサンは国軍がもくろむ総選挙を「ヘビの脱皮と同じ。民政を装っても実態は軍支配のまま」と切り捨てる。「軍は選挙をやって新政権を作り、後ろ盾の中国などに認めてもらって統治を続けるつもりだ。だが、選挙を実施できるのは国土の半分以下だろう。正当といえる代物ではない」

そして日本を含めた国際社会に注文する。「ミャンマーのことを忘れたふりをしていないか。選挙に反対し、はっきりと市民の側を支援してほしい。曖昧な態度をとっていると、軍が勝手に政権をつくり、民主派や少数民族は受け入れず、内戦が長期化するだけだ」【11月11日 東京】
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【国軍 ASEANとの関係改善で支配の正統性を主張】
国軍は国内戦闘状況が思わしくないなか、国際的な連携で支配の正統性を示す狙いもあってか、3年ぶりにASEAN会合に出席しています。

従来から、ASEAN側が軍政トップのミミン・アウン・フライン総司令官を招待せず、ASEANとミャンマー国軍の間で出席に関して揉めていましたが、軍政は格下の代理派遣で妥協して歩み寄ったとも。

ミャンマーを含むASEANにおいては3年前に暴力の即時停止などを含む「5つの合意」がなされていますが、その合意が実行されていないことにAESEAN内部には強い不満があります。

****ミャンマーに「行動」要求=国軍代表が3年ぶり出席―ASEAN首脳****
東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が9日、ラオスの首都ビエンチャンで開催された。

クーデターを強行後、約3年ぶりに出席したミャンマー国軍の代表に対し、抵抗勢力との紛争解決で進展が見られないとして、一部首脳から「具体的行動」を求める声も上がった。

首脳会議には、ミャンマーからアウンチョーモー外務次官が出席した。ASEANは2021年のクーデター後、暴力の即時停止などの合意事項を実行していない国軍の首脳を主要会議から排除。反発した国軍は代表の派遣を見送ってきたが、抵抗勢力との戦闘で劣勢となる中、各国に譲歩する形で同次官を派遣した。

外交筋によると、会議では「国軍はもっと紛争解決に向けて具体的に行動するべきだ」と迫る首脳もいた。厳しい非難を受け、ミャンマー側が「穏やかな言葉遣い」を促す場面もあったという。

また、首脳会議では、事態打開に向けて非公式協議を開くことを確認。ミャンマーの隣国タイの提案に基づき、今年と昨年、来年のASEAN議長国にタイも加わった協議が12月に開催される。【10月9日 時事】 
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【中国とも関係強化 一方で、中国に対する攻撃も】
国軍は中国との関係強化を目指しています。

****ミャンマー軍政と協力強化=中国首相、国軍トップと会談****
中国の李強首相は6日、雲南省昆明でミャンマー国軍トップのと会談し、両国の関係発展と協力強化で合意した。総司令官の訪中は2021年のクーデター後初めて。

中国外務省によると、李氏は両国の戦略協力の深化を望むとした上で「ミャンマーの政治的和解を支持している」と強調。情勢の安定化と民政移管プロセスを着実に進めるよう暗に促した。

ミンアウンフライン氏は、中国による支援への謝意を表明し、自国内で活動する中国人の安全確保に努めると応じた【11月7日 時事】 
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中国は国軍とのつながりと同時に、少数民族側とも密接な関係があるとされていますが、ミャンマー国内の安定、一帯一路事業の推進を求めています。

ただ、中国が前面にですぎると、標的とされることにもなります。上記記事にあるようにミンアウンフライン総司令官が“中国人の安全確保”に言及したのは下記事件を意識したもの。

****ミャンマーの中国総領事館で爆発、建物損傷 内戦状態…国軍は「テロリストの犯行****
ミャンマー第2の都市、中部マンダレーにある中国総領事館で18日夕に爆発があり、建物の一部が損傷した。死傷者はなかった。国軍が19日に発表し、AP通信などが報じた。

民主派系メディア「イラワジ」は、手榴(しゅりゅう)弾による攻撃と報道。国軍は「テロリストによる犯行」とみている。

2021年のクーデター以降、国軍が全権を掌握しているミャンマーでは、民主派や少数民族の武装組織による国軍への抵抗運動により、各地で内戦状態が続いている。

隣国の中国は、国軍との関係を強化し、和平協議を仲介。同国の王毅共産党政治局員兼外相は今年8月、ミャンマーを訪問し、国軍が実施するとしている総選挙を支援すると表明していた。

北部の一部武装勢力は中国と良好な関係にあるとされ、国軍支持者の間にも中国への批判がある。イラワジは、軍政トップのミンアウンフライン総司令官が近く、クーデター後初めて訪中すると報道している。

東南アジア諸国連合(ASEAN)は今月9日にラオスの首都ビエンチャンで開いた首脳会議で、ミャンマー情勢に関する合意文書を採択。国軍と民主派や少数民族など紛争当事者間の信頼を醸成して対話を実現するため、中国やインドなど「近隣国」に協力を求めることを盛り込んだ。【10月20日 産経】
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“ミャンマー軍事政権は爆発の原因については「調査中」としていますが、現地の独立系メディアは当局者の話として、「手りゅう弾が投げ込まれた」と報じていて、目撃証言などから、軍事政権を支持する民兵組織が関与した可能性があるとの見方を伝えています。”【10月21日 TBS NEWS DIG】

その後の情報(犯人の逮捕・確定など)は知りません。

****国軍トップ、近隣国首相と会談 正統性をアピール―ミャンマー****
ミャンマーの実権を握る国軍トップのミンアウンフライン総司令官が、中国訪問を終えて帰国した。滞在中は李強首相に加え近隣国のタイ、ラオス、カンボジアの首相と会談し、国軍による統治の正統性をアピールした。

「中国との友好関係が強化された」。ミャンマー国営紙は11日、前日に帰国したミンアウンフライン氏の訪中の成果を誇示した。同氏はメコン川流域6カ国の首脳会議などに出席するため、5日から中国を訪問していた。

2021年のクーデター後、ミンアウンフライン氏の訪中は初めて。国軍はミャンマーで中国の影響力が強まることを警戒していたが、昨年10月に本格化した少数民族武装勢力との戦闘で劣勢となる中、少数民族側にも影響力を持つ中国との距離を縮めている。

中国では李強首相やタイのペートンタン首相、ラオスのソンサイ首相、カンボジアのフン・マネット首相と個別に会談し、国軍が来年11月に実施を予定している総選挙などについて協議した。

暴力の即時停止といった合意事項の大半を履行せず、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議から排除されているミンアウンフライン氏にとって、国軍による統治への理解を訴える貴重な機会となった。

総選挙は民主派を排除した上で行われ、国軍は親軍派政党を通じて権力を掌握し続ける考え。ただ、抵抗勢力との戦闘が激しい地域での実施は困難とみられ、実現するかは不透明だ。【11月12日 時事】
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