孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南アフリカ  失業や犯罪の原因として暴力の対象となる近隣諸国からの移民

2024-11-04 23:15:32 | アフリカ

(2017年2月24日、南アフリカのプレトリアで、さまざまな地域の南アフリカ人が不法移民に対して抗議活動を行ったフォーリン・マーチで、デモ参加者と警察が衝突。警察は状況を鎮圧するためにゴム弾とスタン手榴弾を発砲した。【2017年3月20日 HUFFPOST】 

写真は不法移民抗議者と警官の衝突場面ですが、2017年という日時からわかるように、不法移民へ抗議・・・ときに嫌悪・・・ときに暴力は今に始まった話ではありません。)

【違法採掘移民への「兵糧攻め」】
つい先ほど目にしたニュース。

****金やダイヤモンドなど違法採掘する「ザマザマ」、南ア警察が「兵糧攻め」で565人拘束****
南アフリカの警察は3日、金鉱山などの廃坑を乗っ取って違法採掘する移民「ザマザマ」の取り締まりを行い、565人を拘束したと発表した。廃坑の出入り口を封鎖して水や食料の供給を妨げ、脱水症状や飢餓で地上に出てきたところを拘束したという。
 
警察は北東部オークニーの廃坑で数日間かけて取り締まりを行った。坑道に1000人近くがこもっているとみられ、地下生活を1年以上続けている人もいるという。昨年12月以降のザマザマ対策では、1万3600人以上が拘束され、3200万ランド(約2億7700万円)相当の未加工ダイヤモンドを押収した。

南アでは国内総生産(GDP)の2割超を占めていた鉱業が1980年代以降に衰退し、ザマザマが廃坑で違法に採掘するようになった。隣国モザンビークやジンバブエからの不法移民が多く、危険な労働環境で極貧の生活を強いられている。

ザマザマとはズールー語で「幸運への挑戦者」を意味する。治安悪化の要因とされ、今年5月の総選挙ではザマザマ対策が争点となった。

採掘された金の多くは、国際犯罪組織を通じて中東ドバイなどに送られているという。【11月4日 読売】
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違法採掘の問題はさておき、「兵糧攻め」と言えば多少聞こえはいいですが、“廃坑の出入り口を封鎖して水や食料の供給を妨げ、脱水症状や飢餓で地上に出てきたところを拘束”という場合によっては命の危険もある手段です。

こうした方法が許されるのは、一般的に南アフリカの治安は世界的にも極めて悪く、生ぬるいことはやっていられないということもありますが、特に対象がモザンビークやジンバブエからの不法移民が多いとなると、容赦なくなるのかも・・・・想像ですが。

【貧困に苦しむ黒人若者】
南アフリカでは、10月28日ブログ“南アフリカ  総選挙で想定以上に大敗した与党ANCは白人政党と統一政府  根深い人種間の分断も”でも取り上げたように、人種問題が当然ありますが、人種問題は底辺で暮らす黒人の生活が極めて苦しいという問題でもあります。

****「朝起きて盗んでの繰り返し」抜け出せない貧しさに若者が吐き出す怒り 南アフリカ総選挙 政治不信強まる“ボーン・フリー世代”が鍵****
シリーズ「現場から、」です。BRICS=新興5か国の一角として世界から注目される南アフリカで、きょう総選挙が行われます。今回、結果を左右するとされているのが、その多くが格差に苦しめられている若い世代です。

アフリカ有数の経済大国、南アフリカ。ところが、今も国民の6割が貧困ライン以下で暮らしています。

記者  「駅なんですが、数年前まで電車が運行していたんですけれども、レールや電線が盗まれる被害が相次ぎ、今は電車が運行できなくなっています」
新型コロナ以降、貧しさに追い打ちをかけられた市民による略奪が横行しました。

さらに、街を歩くと…
「(Q.何しているの?)食べ物を買うために、お金を稼ごうと思って」
まさに今、建物から鉄を剝がし、盗んできたという集団がいました。

「朝起きてはここに来て、盗んでの繰り返しです。仕事がないから」 「働いたことがないです。(Q.仕事を探そうとはした?)はい。でも見つからなかった」 「(Q.どうやって生計を立てている?)盗みです」

南アフリカの失業率は30%あまり。全員働き盛りの20代にもかかわらず、仕事がなく犯罪を重ねていると自白します。

南アフリカでは30年前、白人が黒人を差別し統治した「アパルトヘイト=人種隔離政策」が撤廃され、マンデラ大統領率いる初の黒人政権が誕生しました。

以来、与党ANCは国民の絶対的な支持のもと、政権を維持してきました。ところが、30年経った今も人口の1割が富の7割を独占するなど格差は解消されないまま。

国民の支持は失われ、今回の選挙でANCは初めて過半数割れする見通しが強まっています。

特にアパルトヘイト撤廃後に生まれた若い世代は、政治的に自由な「ボーン・フリー世代」と呼ばれ人口の半分にのぼりますが、マンデラ氏やANCに恩義を感じたことがなく、政治不信を強めています。

こうした世代から支持を集めるのが、黒人によるポピュリズム政党「経済的解放の闘士」。

経済的解放の闘士 ンドロジ議員 「EFFは抑圧に耐えてきた人たちの味方です」
白人の土地の強制収用など過激な公約を掲げ、世論調査では支持率は最大野党「民主同盟」に続きます。

今回、初めて投票するという若者に話を聞くと…

初めて投票する人 「多くの人が仕事に就けず、寝る場所や食べるものすらない状況です。そんなのはもう終わるべきなんです。(Q.ANCには投票しない?)投票しないです」 「絶対にありえません」

希望の選挙から30年。若者の選択が注目されます。【5月29日 TBS NEWS DIG】
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【失業・犯罪の原因として暴力の対象となる近隣国からの移民】
南アフリカに限った話ではありませんが、こういう“寝る場所や食べるものすらない”という苦境は移民への攻撃になりがちです。「あいつらがいるせいだ」と。

南アでは、人種問題で苦しむ一方で、同じアフリカの外国人に対する嫌悪が非常に強い国です。

*****外国人嫌悪で南アのミスコン辞退、ナイジェリアで再挑戦の大学生****
南アフリカで激しい外国人嫌悪と中傷によってミスコンテストの出場辞退を余儀なくされた女性が今週、ミス・ユニバースのナイジェリア代表に選ばれるかもしれない。

大学で法学を学ぶチディマ・アデッチーナさんは、南アフリカの最大都市ヨハネスブルク郊外のソウェトで、ナイジェリア人の父のもとに生まれた。

だが、アデッチーナさんがミスコンテストに出場すると、インターネットを中心に反外国人感情が露呈。閣僚さえもが騒動に加わり、アデッチーナさんの母親が素性を偽った可能性があるとする政府調査の結果まで発表された。アデッチーナさんは「家族の安全のため」に辞退することになった。

そうした中、ミス・ユニバースのナイジェリア代表選考会の主催者が救いの手を差し伸べた。
ミス・ユニバース・ナイジェリア創設者のガイ・マレーブルース氏はAFPに対し、「世界は人種差別に満ちあふれている」「私たちは互いに争うべきではない。私はアフリカ、黒い大陸の団結を望んでいる」と語った。(後略)【8月28日 AFP】
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ミスコンテストの出場辞退ならまだいいですが、もっとむき出しの暴力も。

****南アフリカ:襲撃に怯えるジンバブエ移民ら****
4月上旬、南アフリカのヨハネスブルグ北部、ディープスルートで自警団による移民襲撃が繰り返され、ジンバブエ人1人が死亡した。当局は、自警団の暴力から移民を保護する対策を強化しなければならない。

数人の移民がアムネスティに語ったところでは、今、多発する犯罪や増加する失業が移民のせいにされており、移民を敵視する自警団にいつ襲われるかもしれない恐怖の中で生活しているという。

自警団は、「移民の排除は地域社会から犯罪をなくすため」と主張する。当局によれば、3つの自警団によって少なくとも7人が殺された。

シリル・ラマポーザ南アフリカ大統領は、移民、特にジンバブエ人が、自警団の襲撃対象になっているという認識を示している。実際、自警団による移民襲撃は、ディープスルートだけでなく、南アフリカ全体に広がりつつある。

ここ数カ月、ヨハネスブルグのソウェトやヒルブロウでも移民を狙った極めて組織的な襲撃事件が起こっている。

襲撃が続いていることは、警察当局の無策と、襲撃に対する政府内の問題意識の欠如を浮き彫りにしている。いずれの事件も、未然に防止することはできたはずだ。

殺害
ヨハネスブルグで7人が殺害された複数の襲撃がきっかけに、反移民の自警団に対する抗議が始まった。

社会不安が広がる最中、ジンバブエの男性が、自警団から要求された身分証明書を見せることができなかったため、焼き殺された。この殺害をめぐり、犯人が逮捕されたかは明らかになっていない。

その後、ラマポーザ大統領は、相次ぐ襲撃事件の対応に警察力を増強すると約束し、また、外国籍の人たちへの暴力や脅しをやめるよう市民に呼びかけた。

「もはや安心して暮らせない」
ジンバブエやモザンビークから来た人たちは、アムネスティに「大変な恐怖の中で暮らしている」と話す。警察や自警団に、理由や権限もなく身分証明書の提示を要求され、日常的に身の危険を感じているという。(中略)

襲撃の被害者を含む移民の人たちは、昨年末に特別在留許可の期限が切れた後、大統領に「身の安全を保障し、ちゃんとした身分証明書を出してほしい」と訴えてきた。

またモザンビークからの移民は、「自警団に犯罪者扱いされるのが辛い。家族のために働いているだけ。祖国を出たのは、国内の状況が厳しかったから」と話す。

移民への襲撃が始まったのは2008年だが、その年だけで60人以上の移民が犠牲になった。以来、移民襲撃は毎年発生してきた。アムネスティは、南アフリカ政府に対し移民への暴力追放に向けた政策を立て、加害者が罪を問われない状況に終止符を打つことを繰り返し求めてきた。

今回、ラマポーザ大統領が、昨今の襲撃殺害事件を強く非難したことは評価したい。今こそ大統領は、自警団の暴力から移民を保護する具体的な対策を実行し、この憎むべき犯罪を起こした者が必ず法の裁きを受けるようにしなければならない。

背景情報
ジンバブエからの移民は、特別在留許可を発給された上で南アフリカに長年暮らし、働いてきた。だが、反移民感情の圧力に屈した政府は昨年末、在留許可の更新を突然取りやめたため、移民は不法滞在の状況に陥った。

移民排除で組織化する自警団は、#PutSouthAfricaFirst(南アフリカ人第一)などのハッシュタグを使い、ジンバブエや他の国から来た人たちで昨年末に特別在留許可の期限が切れた人たちを標的に襲撃してきた。

その後、政府は方針を転換し、ビザ申請により在留資格を取得できるようにするため、今年末までの在留を認めた。とはいえ、正規の身分がないことに変わりなく、移民は襲撃を受けやすくなっている。

今年2月、ヨハネスブルグの南の町ソウェトと、ビジネスの中心地ヒルブローでも襲撃事件があったが、警察はその場にいたにもかかわらず、取るべき対応を取らなかった。【2022年4月22日 アムネスティ国際ニュース】
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外国人襲撃の加害者は、刃物や棒など身の回りの品を凶器に集団で暴力を行使するようです。一方、標的となるのはモザンビーク、マラウイ、ジンバブエなど近隣国出身の人々である場合が多く、更に西アフリカからやってきたナイジェリア人も襲撃対象にされることが増えています。

世界銀行の2018年の統計によると、南アフリカの移民数は現在約404万人と推定され、総人口約5800万人の7%近くに達しています。国別ではモザンビーク約68万人、ジンバブエ約36万人、レソト約31万人など近隣国出身者が多数を占めており、その多くが鉱山、プランテーション農場、飲食店、建設現場で働いており、富裕層家庭の庭師やメイドとして働いている人も多くいます。

【自らの失政の責任を移民になすりつける政府・政治家】
移民など外国人への暴力は単に自警団や貧困層によるものではなく、「外国人が仕事を奪っている」などと、そうした外国人嫌悪を煽っている政治家の責任もあります。政府・政治家が自分たちの失政を外国人のせいにしている側面も。

****南アフリカ:外国人嫌悪を助長する政府****
南アフリカではこの数週間、移民、難民、庇護希望者への暴力が多発し、外国人が経営する店舗や事務所が略奪や放火される事態が続いている。

特にヨハネスブルグとプレトリアの2都市では、ナイジェリア人をはじめとする外国籍の人たちが経営する複数の事業所が狙われ、在庫や備品類など数百万ドル(数億円)相当が灰になった。

この1週間では、ヨハネスブルグなど各都市で地元住民と移民らの衝突で、確認されただけでも5人が死亡した。
当局は、こうした事態を予測できなかったわけではない。

移民、難民、庇護希望者は、何年にもわたり「外国人」として敵視されてきた。その背景には、恥知らずな政治家たちが、「外国人が仕事を奪っている」などの悪質な強弁を繰り返し、社会問題を取り上げてはその原因を移民らに転嫁し、移民らを格好のスケープゴートに仕立て上げてきたことがある。

2016年、ヨハネスブルグ市長は、「外国人が町を乗っ取り、犯罪を増やしている」と移民らを犯罪者呼ばわりしたし、昨年には、内務大臣が、医療費の負担増の矛先を移民らに向けた。

2008年、市民と移民らの衝突で、60人余りが亡くなった。移民らに対する大規模な排斥の始まりだった。政府がこの時、憎悪問題の根絶に向けて、加害者を処罰するなど適切な対応を取っていれば、事態は変わっていたはずである。

今日の事態は、移民、難民、庇護希望者に対する犯罪に手を打ってこなかった結果である。犯罪を放置してきたことで、移民ら弱者が、ますます無防備な状況に置かれている。

さらに、政治家らが、犯罪の増加、社会保障費の負担増、違法ビジネスの横行などの原因を移民らに転嫁したことで、外国人嫌悪は深まり、衝突が激化した。

事態の収束に向けて、政治家や関係当局は、政治的理由で問題の矛先を移民らに向け、彼らの排撃に油を注ぐのはやめ、人権と法の支配が根付く国家を目指すべきである。

また、難民、庇護希望者、移民らの安全を保障する政策を実施し、襲撃問題に終止符を打たなければならない。そのためにはまず、過去の憎悪犯罪の容疑者を処罰し、再犯への道を断つことである。【2019年9月11日 アムネスティ国際ニュース】
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