(完成が延期され続ける青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場【2015年11月16日 Global Energy Policy Research】)
【プルトニウム受け入れ先の米南部サウスカロライナ州が輸送停止か行き先変更を要請】
核兵器は保有していない日本ですが、その原料となるプルトニウムは大量(48トン)に保有しています。
プルトニウムは核兵器に転用しやすいことから、2014年の核セキュリティーサミットでの日米の合意に基づいて、核兵器にできないように処理するためにアメリカに向けて搬送されています。
ただし全部ではなく、ごく一部、331キロ(原爆40発分に相当するとも)ですが。
危険物の処理に適した広大な無人の荒野を有し、核大国でもある受け入れ先アメリカは、こうしたプルトニウムについてあまり抵抗はないのか・・・と思ったら、やはり事情は日本とあまり変わらないようです。
受入地元には、なんだかんだ言いつつ、一度受け入れるとそのまま最終処分場にされてしまうのでは・・・という懸念があるようです。
****<プルトニウム船>輸送停止か行き先変更を 米州知事****
日本から米国に返還される研究用プルトニウムを積んだ輸送船が茨城県東海村から出港したことに絡み、受け入れ先となる米南部サウスカロライナ州のニッキー・ヘイリー知事は23日、連邦政府に対し、同州がプルトニウムの最終処分場になることに懸念を表明し、輸送停止か行き先を変更するよう要請した。
核兵器保有国で広大な国土を持つ米国でさえ、核物質処分には困難を抱える実態が浮き彫りになった。
毎日新聞が州政府から入手した米エネルギー長官宛ての書簡によると、知事は日本から331キロのプルトニウムが同州に向け輸送中だと指摘し、「同州が核物質の恒久的な廃棄場になるリスクがある」と警戒感を表明。そうした事態は「市民や環境の安全のため、容認できない」とし、「輸送を停止、または行き先を変更」するよう求めた。
輸送中のプルトニウムは純度が極めて高く、核兵器への転用が可能。日米両政府は2014年、核拡散の脅威を減らすため返還で合意していた。
プルトニウムは同州にある米エネルギー省の「サバンナリバー核施設」に搬入され、希釈した後、処分されるとみられる。
オバマ米大統領は今月末からワシントンで開く核安全保障サミットで成果として訴える見通しだ。
ただ、同州はプルトニウムが同施設内に置き去りにされないかを懸念。同省には州外の別の施設に移して処分する計画もあるものの、安全性への配慮から実現できるかが疑問視されている。
サバンナリバー施設には、冷戦終結後の核軍縮で核ミサイルから取り出されたプルトニウムが運び込まれており、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工する工場が建設中。
しかし、同省が費用高騰などを理由に建設中止を打ち出し、同施設がプルトニウムの最終処分場にされる恐れが強まったことにも、同州政府や住民らが反発している。
同州政府は今年2月に連邦政府を相手取り、建設継続と核物質の搬入停止を求める訴訟を起こすなど、連邦政府との対立が深まっている。【3月24日 毎日】
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【余剰プルトニウムについて高まる国際的懸念】
地元反対はあっても、すでに動き出している話ですし、政府間で合意した案件ですから、331キロが宙に浮くようなことはないでしょう。
問題は、日本に残っている大量のプルトニウムです。
****国内外に48トン 日本への国際的懸念なお****
近く米国へ返還 輸送専用船が東海村の港に
核兵器への転用が可能なプルトニウムが近く米国へ返還されることは、日本政府が使い道のない余剰プルトニウムの削減に向け、やっと一歩を踏み出したことを意味する。
しかし返還されるのは331キロ。国内外には約48トンのプルトニウムが残っており、「核武装」を懸念する国際的な批判は依然残りそうだ。
日本の核燃料サイクル政策は、原発から出た使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムをウランと混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を原発で使うプルサーマル計画によって、プルトニウムを消費する計画だった。
しかし、原発の再稼働は進んでいない。国内で現在稼働しているのは、プルサーマル発電ではない九州電力川内原発の2基だけ。プルサーマルの予定だった関西電力高浜3、4号機は、今月9日の大津地裁の運転差し止め命令を受けて停止した。同じくプルサーマルの四国電力伊方原発も、再稼働は今夏ごろになる見通しだ。
余剰プルトニウムについては国際的な批判が高まっている。トーマス・カントリーマン米国務次官補は17日の議会公聴会で「すべての国がプルトニウムの再処理から撤退すれば喜ばしいことだ」と指摘した。
オバマ政権内には、日本の核燃料サイクル政策が「核拡散への懸念を強める」として、反対する意見が根強く残る。【3月21日 毎日】
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プルトニウムを含めて、使用済み核燃料をどうするのか?・・・・日本が抱える大きな問題となっており、日本政府のやり方への批判が多々あります。
****田原総一朗:「使用済み核燃料」問題を議論しない原発再稼動は無責任だ****
使用済み核燃料の最終処分をどうするのか
使用済み核燃料とは、原発を燃やした後に残るウラン燃料のことで、プルトニウムを含む。使用済み核燃料は、すでに国内で1万7000トンまで溜まっている。これをどう処理するのか、全く見当がついていない。
小泉純一郎元首相は原発反対を主張していたが、その理由もここにある。彼は2013年8月にフィンランドのオルキルオト島にある使用済み核燃料の最終処分場「オンカロ」を視察した。
オンカロでは、地下400メートルに使用済み核燃料を長期保存する。ただ、これが無害化するのに10万年もの月日を要するという。だが、10万年という長い期間、地層が安定し続けるという保証はない。
そもそも日本には、オンカロのような最終処分場がないが、仮に長期保存できたとしても無害化には気の遠くなる年月が必要だ。小泉さんはこの話を聞いて、「原発は危険だ」と考え、原発反対を主張しだした。
国が打ち出している「核燃料サイクル」という政策に従えば、使用済み核燃料は青森県六ケ所村の核燃料再処理工場で再処理され、燃料として再利用できるはずだった。
だが、日本原燃は昨年11月、使用済み核燃料再処理工場の完成時期を2016年3月から18年度上期に延期することを決めた。これは22回目となる延期だ。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料工場については、2017年10月予定を19年度上期に延期した。
相次ぐ延期で「核燃料サイクル」のメドが立っていないというのが実情だ。【3月3日 日経Biz COLLEGE】
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【外交カードとしての「プルトニウム」 行き詰まる核燃料サイクル】
問題が微妙なのは、日本の「核燃料サイクル」が行き詰っているという現実問題だけでなく、中国などが批判するように「日本は将来の核保有のために余剰プルトニウムを大量に保持している」ということも、あながち完全には否定しきれないものがある・・・という話が絡んでくるためです。
****日本が核武装? 世界が警戒するプルトニウム問題****
「日本が保有する核物質は核弾頭1000発以上に相当する。安全保障と兵器拡散の観点から深刻なリスクを生んでいる」
「日本の原発再稼働と使用済み核燃料再処理工場計画は、世界を安心させるのではなく事態を悪化させる行動だ」
「核兵器を保有すべきだと日本の一部の政治勢力が主張し、核兵器開発を要求している。世界は日本を注意すべきだ」
中国の傅聡軍縮大使は10月20日、国連総会第一委員会(軍縮)で演説し、日本の原子力政策を批判した。
中国の核弾頭の保有数は14年のストックホルム国際研究所の報告によれば、約250発と世界第4位(1位露8000発、2位米7300発、3位仏300発)。そしてアジアの安全保障に脅威を与えている。彼らが日本の原子力政策を批判する資格はない。
しかし言うことにも一理ある。日本の保有する核物質プルトニウムの先行きが、不透明になっている。日本は48トンのプルトニウム(所有名義は各原子力事業者)を保有。
プルトニウムは数キロで核弾頭が作れる。この消費のめどが立たず、世界の安全保障とエネルギーの一部専門家の間で懸念を持って注目されている。
世界は日本を「潜在的核保有国」とみる
そして2018年には、余剰プルトニウムを日本は持たないことを定めた日米原子力協定の期限が切れる。
米国は核兵器を拡散させないために、他国にプルトニウムを持たせない政策を行っている。しかし米国は、日本が同盟国であり高度な核技術を持つため、発電や研究に使うプルトニウムの使用を認めてきた。
ところが日本がプルトニウムを減らせない。米議会や安全保障の研究者の間には、それを懸念する声が出ている。
この協定は一般にそれほど知られていないが、日米の原子力での協力を約束した重要な外交上の取り決めだ。中国が日本のプルトニウムを公の場で責め立てることは、この協定の交渉に揺さぶりをかけ、日米同盟にくさびを打ち込もうとしているのだろう。外交巧者の中国政府は、日本の痛いところを突いてきた。
「日本が核武装する」。日本人の大半はこうした話を荒唐無稽と思うかもしれない。ところが、世界では「日本は潜在的な核保有国だ」と性悪説で見ている。
日本原燃(青森県六ヶ所村)の再処理工場では、ウラン燃料の濃縮施設が稼働し、使用済み核燃料の再処理施設がほぼ完成している。(中略)
原子力の〝裏〟の顔、平和利用
原子力の利用は、〝表〟の原子力発電という平和利用の側面だけではない。軍事利用という〝裏〟と密接に絡み合っている。
日本原燃は民間の株式会社だが、世界の安全保障にも、日本の国策とも関係している。この施設にはIAEA(国際原子力機関)の査察官が常駐している。そして濃縮、再処理の双方で、要求があればいつでも原燃は施設を公開する取り決めだ。
濃縮とは、発電用の核燃料のために、高度な技術を使って核分裂反応を起こしやすいウラン(U235)を製錬されたウランの中から集めること。しかし、過度に濃縮するとウラン型原爆の材料になってしまう。そのために、国際機関が監視している。
そして再処理の施設も重要だ。日本は約40年前、「核燃料サイクル」を打ち出した。
使用済み核燃料は、使用後に変成する物質はわずか全体の5%程度だ。その大半を再利用して核燃料として再利用する。そしてプルトニウム、使えない物質を分離する。
取り出したプルトニウムは高速増殖炉の核燃料で使う。高速増殖炉では、使うと化学反応で核物質が増える。その増分を使いさらに発電をすれば、永遠にエネルギー源に困ることはない。無資源国日本のエネルギー問題が解決すると期待された。
こうした核燃料サイクルを持つのは核保有国のみだ。しかし日本は米国や各国との交渉で、平和利用に徹することを宣言して、これを行うことを認められた。
プルトニウムは核兵器の材料になるため、国際的に抑制が求められている。しかし日本はそれを高速炉で使うこと、情報をすべて公開することを前提に、抽出を許されている。
40年前の政府広報や、新聞記事を見ると核燃料サイクルは、「夢のエネルギーシステム」などと、日本中から期待されていた技術体系だった
行き詰まった核燃料サイクル
ところが核燃料サイクルをめぐる状況は暗転する。高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)は複雑な構造から運用がうまくいかず、再開はかなり難しい。しかし、ここにつぎ込まれた国費は1兆円とされ、やめるとなれば責任問題が浮上する。
また六ヶ所の再処理工場も停まっている。計画が遅れたが、稼動のメドがついたところで、東日本大震災と福島原発事故が発生した。原子力規制の体制が大幅に見直され、今はその基準作りで竣工は延期された。ここにも、主に電力会社の負担だがすでに約1兆円、建設費用がかかっている。
再処理をすることは、日本の原子力の活用にとってプラスの面がある。ウラン調達の必要は減る。また使用済み核燃料の再加工によって最終的に処分する核のゴミは7分の1以下に小さくなる。量を減らすことは、その最終処分を多少は容易にするだろう。
増えてしまう日本のプルトニウム
ところが、この六ヶ所村の再処理工場が稼働し始めると、年数トンのプルトニウムが抽出されてしまう。それを減らすめどが立っていない。
国は、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)として既存の原発でプルトニウムを使う予定だ。またMOX燃料を専門に使うJパワーの大間原発(青森県大間町)が、国の支援を一部受けて建設中だ。
しかし、これらの手段を使ったとしても最大限でプルトニウムを年6トン前後しか減らせないという。今ある48トンのプルトニウムはなかなか減らせない。
筆者は六ヶ所村の核燃料再処理工場のほぼ完成した巨大な工場を見て、これを動かさないという選択肢はありえないと、思った。この施設をつぶすと、原燃、また支援者の各電力会社に巨額の負担がのしかかり、結局、金銭的な損害が増えてしまう。
核燃料サイクルをめぐる問題で、対外関係、費用、実効性などの論点すべてを、即座に満足させる答えは、今のところ見当たらない。
外交カード「プルトニウム」の危険な発想
自民党のエネルギー政策に詳しいある国会議員に、核燃料サイクルの行く末を、聞いたことがある。
「六ヶ所再処理工場はできてしまった以上、稼働するべきです。そして情報を公開して核武装の野心はないと世界に示し、プルトニウムを使う高速炉研究を進め、軽水炉でMOX燃料を使って、常識的な先延ばし政策しかないでしょう」と、困っていた。
そして気になることを言った。「現時点で核武装を本気で考える人は自民党内にはなく、政界にも、石原慎太郎さんなど限られた人しかいません。しかし私は反対ですが、本音では『プルトニウムを一定量持ち続け、将来の外交カードとして残しておきたい』という考えを持つ政治家は党内にいるようです。国防の観点から、将来、自衛のための核兵器保有に動ける選択肢を残すということです」。
日本の核武装論は、中国からの安全保障上の脅威が高まる中で、「力には力で」という外交論の上ではありえる考えかもしれない。しかし、原子力の平和利用を誓い、唯一の被爆国である日本の核兵器廃絶の目標に反する。その議論は国際的な懸念も深めてしまう。
筆者は、核燃料サイクルとプルトニウム問題について、国民が関心を向け議論をするべきであると考えている。重要な問題なのに、日常から離れすぎているためか、それほど関心が深まらない。
そしてプルトニウムでは、MOX燃料として既存の原発で使うことを前提に、その削減計画を早急につくることが必要だ。
「李下に冠をたださず」とことわざにいう。日本がこのままでは核兵器の保有の問題で、国際的に「痛くもない腹を探られかねない」のだ。【2015年11月24日 石井孝明氏 Newsweek】
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おそらく、『プルトニウムを一定量持ち続け、将来の外交カードとして残しておきたい』というのは、歴代政権に根強くある考えでしょう。
昨今の東アジアの情勢を考えると、安全保障対策としてあながち否定できない考えではあります。
ただ、それにしても48トンものプルトニウムは必要ないでしょう。国際社会の警戒心を高めるだけです。
『プルトニウムを一定量持ち続け、将来の外交カードとして残しておきたい』という話はさておいても、国際社会が懸念を深めるなかで、余剰プルトニウム削減に道筋をつける必要があります。
しかし「高速増殖炉もんじゅ」は実用化がほぼ断念されており、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料の使用も目途がたたない。
六ヶ所村の再処理工場が稼働し始めると、プルトニウムは更に増えてしまう・・・ということで、有効な策が見いだせないのが現実です。
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