(アメリカ・アリゾナ州で建設中の世界最大規模のメガソーラー 14年完成時には29万キロワットになるそうです。 今後の技術革新でエネルギー変換効率が上がれば、発電規模・コストの問題も改善するかも “flickr”より By 1010uk http://www.flickr.com/photos/tentenuk/8070639358/)
【「計画は止めない。設計作業は続けられる」】
“フクシマ”後の原発に対する姿勢は、安全性をどのように考えるか、代替発電の可能性とそのコスト、更には雇用・経済効果の問題などもからんで、それぞれの事情もあって一様ではありません。
一昨日のブログで、バルト三国のひとつリトアニアで14日、議会選挙と併せて日本の日立製作所が受注したビサギナス原発の建設の是非を問う国民投票が行われ、建設反対が約63%と賛成(34%)を大きく上回ったこと、これを受けて、議会選挙における建設反対派躍進と併せて、今後の原発建設計画に大きく影響しそうな状況であることを取り上げました。
しかし、議会選で第1党となった野党・労働党のウスパスキフ党首は、ビサギナス原発の建設計画を当面続行し、判断は先送りする考えを示しています。
“計画を当面継続して原発のコストや経済性を見極め、採算が合わないなら計画を中止し、有益と判断されれば国民投票を再び実施して是非を問う方針”【10月16日 毎日】とのことです。
労働党は今年6月の議会で、日立に建設事業権を与える決議を承認し、選挙前にも党首が国民投票での賛成を表明しています。
労働党との連立政権に加わると見られる野党第2党の社民党は、前政権下の与党時代に原発建設を推進した経緯はありますが、現在は建設反対の姿勢ですので、その意向がどのように反映されるかは不透明です。
なお、今回議会選で与党が劣勢となったのは、緊縮財政策への国民の反発が大きいとのことです。
****リトアニア野党「原発計画続行」****
14日に行われたリトアニア議会選(定数141)で、比例代表の得票率で1位になった野党、労働党のウスパスキフ党首が16日、露紙のインタビューに対し、日立製作所が建設を提案している同国北東部のビサギナス原発について、「計画は止めない。設計作業は続けられる」と答えた。議会選と同時に行われ、原発計画への反対が6割以上となった国民投票の結果についても、「これは国民の助言であって命令ではない」との考えを示した。
議会選では議席数71の小選挙区のほとんどで、各候補者が当選に必要な得票率に達せず、今月28日に行われる決選投票で各党の議席数が確定する見込み。次期内閣の連立の枠組みや原発計画をにらみ、今後、政党間の駆け引きが激化していくとみられる。【10月17日 産経】
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【「原子力発電の技術は、国内での利用にいまだ適していない」】
一方、シンガポールでは、原発導入を見送る方針が決められたことが報じられています。
****シンガポール、原発導入見送り リスク大きいと判断****
シンガポール政府は、検討を進めてきた原子力発電の導入を当面は見送る方針を決めた。電力のほぼ全てを火力発電でまかない、燃料を輸入に頼る現状からの脱却を目指していたが、リスクが大きいと判断した。
イスワラン第2貿易産業相が15日、国会で与党議員の質問に「原子力発電の技術は、国内での利用にいまだ適していない」と答えた。リー・シェンロン首相が2010年に「原発は選択肢」と明言し、建設の可能性を探る事前調査を進めたものの、東京電力福島第一原発の事故の後、国内で慎重論が強まっていた。【10月17日 朝日】
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【EU原発のストレステスト】
EUは、原発の安全評価(ストレステスト)を行いましたが、調査原発すべてに「安全上の欠陥」が見つかったとのことです。
****EU:原発補修に2.5兆円 稼働中134基、安全に問題****
欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は1日までに、原発の安全評価(ストレステスト)の結果、域内の全原子炉143基のうち稼働中の134基の原発すべてに「安全上の欠陥」が見つかり、福島第1原発並みの事故に対応できるようにするための改善費用が最大で計250億ユーロ(約2兆5000億円)かかるとの最終報告をまとめた。ドイツメディアが一斉に報じた。EU各国は金融・債務危機で財政が逼迫(ひっぱく)しており、安全確保に向け厳しい判断を迫られそうだ。欧州委は3日に最終報告を確認したうえで、18日からの首脳会議に提出する。
ドイツメディアによると、ストレステストで▽スウェーデンやフィンランドの原発で、全電源喪失から過酷事故に至るまでの時間が1時間もない▽フランスの原発の洪水・地震対策が不十分▽ドイツの原発に地震警報システムがない▽移動電源車が半数の国で未配備−−など、即座に閉鎖には至らないが重大な欠陥が「すべての原発」で見つかったという。
欠陥の改善には、1基あたり3000万〜2億ユーロ(約30億〜200億円)が必要で、EU全体で100億〜250億ユーロ(1兆〜2兆5000億円)が必要と試算した。
またチェルノブイリ原発事故(86年)を受けて合意されたはずの安全対策が実行されていない原発があったり、原子力規制当局の独立性が不十分だったりする国もあった。最終報告は、他国の専門家による安全性相互評価(ピアレビュー)の過程で、134基が置かれた68カ所の原発施設のうち24カ所しか調べられなかった限界点も自己批判した。【10月2日 毎日】
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【ドイツ:増大する家計負担、しかし、69%が「脱原発は正しい」】
その欧州で脱原発を進めるドイツですが、再生可能エネルギー普及のための賦課金が大幅に引き上げられ、家計の負担が増大することが問題となっています。
****脱原発の独、電気料金値上げへ…再生エネ負担増****
ドイツで、再生可能エネルギー普及のため消費者が負担している賦課金が、来年から約50%引き上げられることになった。
電気代は1世帯あたり年100ユーロ(1万200円)程度増える見通しだ。大幅値上げに野党は強く反発しており、来年秋の連邦議会選挙に向けて脱原発と再生可能エネルギー普及に伴うコスト増問題が争点となりそうだ。
大手送電会社が15日発表したところによると、賦課金額は、これまでの1キロ・ワット時当たり3・59セント(約4円)から5・28セント(約5円)に引き上げられる。年間電力消費量が3500キロ・ワット時の標準世帯の年間の賦課金負担は、125ユーロ(約1万2800円)から185ユーロ(約1万8900円)になる。
DPA通信によると、発電、送電コストにこの賦課金や環境税などを加えると、標準世帯が払う電気料金は、現在の年約900ユーロ(約9万1800円)から約1000ユーロ(約10万2000円)になる。【10月16日 読売】
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今回の賦課金引き上げは、中国企業の参入などで発電パネルの価格が大幅に下落したこともあって自然エネルギーの発電が増大し、11年には全発電量の20%に達し、電力買い取りに必要な費用が拡大したことが背景にあります。
それでもドイツ国民の“脱原発”志向は依然強いものがあるようですが、賦課金の負担を巡る不公平感も強まっているそうです。
****制度見直し論も ****
欧州連合(EU)統計局によると、ドイツの平均電気料金は100キロワット時あたり25.3ユーロで、EU27カ国平均の18.4ユーロを上回り、デンマークに次いで高い。ただ、脱原発と自然エネルギー中心の電力構造への転換に対する国民の支持は高いままで、今月の世論調査でも69%が「脱原発は正しい」と答えている。また、電気料金の値上がりについて、38%が「50ユーロ」、29%が「100ユーロ」を受け入れると答えた。
一方で、賦課金の負担を巡る不公平感も強まっている。自然エネルギー促進にかかる費用を電気利用者がみんなで負担しようというのが本来の趣旨。だが、「国際競争上不利にならないように」との理由で、鉄鋼や化学産業など大量の電気を使う企業への賦課金は割り引かれ、その分を一般家庭や中小企業が肩代わりしているからだ。
さらに、メルケル政権は昨年の脱原発決定後、電気料金上昇に不満をもらす産業界に配慮し、割引の対象となる条件を緩めた。その結果、割引を申請する企業が倍以上の約2千社に急増した。こうした仕組みを「不公正」だとして、返還訴訟を起こした企業もある。【10月16日 朝日】
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【「一般の人に原発反対の候補に投票しなければならないという勢いは感じられない」】
日本では、政府の「エネルギー・環境会議」が9月14日策定した革新的エネルギー・環境戦略では「2030年代の原発稼働ゼロ」を目指すとしていますが、産業界や原発のある自治体、更にはアメリカなどからの批判もあって、9月19日の閣議では、「新戦略を踏まえて、責任ある議論を行い、柔軟性をもって不断の検証と見直しを行いながら、遂行する」との方針を決定したものの、「30年代原発ゼロ」の文言は閣議決定には盛り込まれませんでした。
原発輸出や建設段階に入った新規原発建設の続行などもあって、必ずしもその方針は明快ではありませんが、「閣議決定の文書には入っていないが、(戦略は)閣議でオーソライズされた」(枝野幸男経済産業相)とのことですから、野田・民主党政権としては「脱原発」の方向で行く・・・ということのようです。
原発容認の自民党との違いをアピールしたい思惑もあるのでしょう。
さて、私が住んでいる鹿児島県薩摩川内市も九州電力の原発がすでに2基あり、現在点検停止中です。
3号機の建設計画もストップしています。
市民の考えも、「原発は怖い」という人から、「雇用・経済のために稼働してもらいたい」という人までさまざまですが、表だっては「反原発」「脱原発」の声は大きくなっていないように見えます。
先の県知事選挙でも「再稼働は安全性の確保が前提」とはしながらも、再稼働自体を否定はしていない現職が、反原発を掲げた新人候補を大差で退けました。川内でも、反原発候補が票を伸ばすというようなことはなかったようです。
現在、薩摩川内市を含む衆院鹿児島3区は、松下忠洋前金融相の自殺に伴う補選の真最中です。
4名の候補のうち反原発を掲げるのは、支持が限定される共産党候補のみ。自民党候補は原発容認ですし、民主党からの支援を受ける国民新党も「原発を完全にゼロにしてしまうのは現実的ではない」という立場ですから、有力候補の間では原発問題は争点となっていません。
****総選挙前哨戦、語られぬ原発 衆院鹿児島3区補選告示****
松下忠洋前金融相の死去に伴う衆院鹿児島3区補選が16日告示された。選挙区には九州電力川内(せんだい)原発(薩摩川内市)があり、昨年3月の原発事故後、立地地域では初の国政選挙だ。民主、自民両党は次期衆院選の前哨戦と位置づけるが、争点となるべき原発問題が語られることはない。28日に投開票される。
■民主、地元世論に「葛藤」
16日の野間健候補の出陣式。応援弁士の安住淳民主党幹事長代行は原発問題には一切触れなかった。
民主党は2030年代の「原発ゼロ」を掲げ、次期衆院選での争点化を狙う。だが、安住氏は記者団に「エネルギーの問題は大変難しく、国民が深く考えていただくテーマ。それだけをもってわかりやすい争点化をしようというのは乱暴な議論だ」と強調した。
人口約10万人の薩摩川内市にある川内原発1、2号機は現在停止中。ふだんは従業員や協力会社員ら約1100人が働き、13カ月に1度の2~3カ月間の定期検査には、その倍近くに膨らむ。地元の川内商工会議所は定期検査の経済効果を約6億円と試算。市にとって主力産業の一つだ。
3日には川内商議所が九電に早期再稼働を要請したが、苦情の電話は3件だけ。幹部は「原発は経済的にもかなり貢献しているので、市民に認知されている」という。川内原発の取引業者は「運転停止で売り上げが2割、数百万円落ちた」と再稼働を求める。
7月の鹿児島県知事選では現職が反原発を掲げた候補を破って3選。今回の補選でも有権者に「脱原発」の機運は乏しい。
反原発運動に身を投じた俳優の山本太郎さん(37)は、同日選になった薩摩川内市長選の候補者に推されたが、断った。首長として原発を止められるかもしれないと考えたが、講演会に招かれてこの地を訪れ、「どう転んでも勝てない」と肌身に感じたという。
「多くの方々が原発に関係している仕事をしている。大差で負けると『脱原発』の動きはこの国で終わったとされかねない」
首相官邸前のデモにあわせ、金曜の夕方に薩摩川内市内の九電営業所前で続けている原発反対の抗議行動も、12日の参加者は13人。多いときは40人はいたが最近は徐々に減っている。地元の反原発団体のリーダー鳥原良子さん(63)は「私たちは原発反対の人を支持したいが、一般の人に原発反対の候補に投票しなければならないという勢いは感じられない」と話す。
野間氏を公認した国民新党の自見庄三郎代表は「原発を完全にゼロにしてしまうのは現実的ではない」との立場。民主党は友党に配慮せざるを得ない事情も重なる。閣僚の一人は「民主党として『原発ゼロ』を訴えられないのは厳しい」と危機感を募らせる。
補選で「脱原発」を掲げるのは、4人の候補者のうち共産党公認の大倉野由美子候補だけだ。大倉野候補は16日、「この夏も電力は足りた。原発から再生可能エネルギーに転換を図るべきだ」と訴えた。(後略)【10月17日 朝日】
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“九電営業所前で続けている原発反対の抗議行動”というのは知りませんでした。九電営業所は自宅のすぐそばなのですが・・・・。まあ、原発地元の雰囲気はそんなところです。
【太陽光パネル約4600枚を設置し、総出力は約1100キロワット】
薩摩川内市では、原発だけでなく、流行りのメガソーラーも完成しました。
****メガソーラー発電所:薩摩川内に完成 300世帯の電力賄う****
南国殖産の子会社「九州おひさま発電」(鹿児島市)が薩摩川内市寄田町に計画していたメガソーラー発電所が完成し、5日、完工式が現地で開かれた。
この寄田発電所は、九州電力川内原発に近い1万8000平方メートルの敷地に太陽光パネル約4600枚を設置し、総出力は約1100キロワットで、約300世帯の電力を賄えるという。
完工式には岩切秀雄・薩摩川内市長らも出席し、送電開始のセレモニーも行われた。同発電所には、太陽光発電システムなどについての屋外説明パネルも設置されており、同発電の社長も務める永山在紀・南国殖産社長は「エネルギー教育の一助になれば」と話していた。【10月6日 毎日】
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そのうち、見学に行きましょう。
ただ、実用性という観点で言えば、1万8000平方メートルの敷地を使って“総出力は約1100キロワット”というのは、あまり効率がよくありません。停止中の原発1,2号機はそれぞれ89万キロワット、計画中の3号機は159万キロワットと桁違いです。再生可能エネルギーの現実的課題です。
なお、アメリカ・アリゾナ州では20万キロワットのメガソーラーが稼働を始めたそうで、14年の完成時には29万キロワットになるそうです。
つい先日、グランドキャニオンなどのアリゾナ州に行ってきましたが、あれだけの広大な未使用地があれば、超特大メガソーラーも可能でしょう。
もっとも、狭い日本でも、岡山の塩田跡地(400ヘクタール)を使った25万キロワットのメガソーラーが計画されているそうです。
川内原発を巡る市民感情事情,よく分かりました.