(インド・ニューデリーで、マニプール州の暴徒による女性虐待動画に抗議する人々(2023年7月20日撮影)【7月21日 AFP】)
【女性を裸にし、街中を引き回す・・・背景に「指定部族」をめぐる部族衝突】
昨日ブログでは、「世界最大の民主主義国」とも言われるインドの「民主主義」への疑念、特に、ヒンドゥー至上主義を進めるモディ政権下で深まる多数派ヒンドゥー教徒と少数派イスラム教徒の分断・確執、そうしたインド国内の人権状況をインド取り込みのために“見て見ぬふり”をするアメリカの対応について取り上げました。
インドではかねてより、女性に対する暴力・レイプ事件が多発しています。
“インド国内には現在も出自の問題(カースト制度)が根強く、階層の高い男性による性的暴行が多く見られ、また当局による関心の低さが背景としてある”【ウィキペディア】
そうした女性への暴力に対し社会関心が高まったのが、2012年にニューデリーのバス車内で起きた女子大生への集団強姦事件でした。
“この事件では、ニューデリーで理学療法を学んでいた女子学生が、映画を見た帰りのバスの車内で、運転手を含む6人の男にレイプされ、鉄棒を性器に挿入されるなどの激しい暴行を受けた後、友人の男性とともにバスから突き落とされた。女性は内臓に重傷を負い、およそ2週間後に死亡した。”【2017年5月9日 HUFFPOST】
あまりの惨状に世論の批判が高まりましたが、その後も女性への性暴力事件は後を絶ちませんし、“当局による関心の低さ”もあって、表面化しないケーズが多いと推測されています。
上記2012年のバス車内集団強姦事件は被害者が大都会ニューデリーの女子大生ということで大きな関心を集めましたが、被害者が農村の低位カースト女性だったら警察も相手にせず表沙汰になることもない・・・のではとも懸念されます。
****「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街中を引き回す...悲惨な動画に怒りの声が殺到****
<女性2人が裸にされたうえ、体を触られながら引き回される様子を撮影した動画が2カ月以上経った今になって流出>
インド北東部のマニプール州で今年5月、女性2人が暴徒によって全裸にされたうえ、そのままの姿で体をまさぐられながら街中を引き回されるというおぞましい事件が起きた。7月19日にはこの様子を捉えた動画が流出し、インド全土から怒りの声が上がっている。
こうしたなか、同国のナレンドラ・モディ首相も、事件の背景にある同州で長引く部族間の対立について遂に沈黙を破った。モディは7月20日、議会での審議に先立ち、「マニプールの娘たちに起きたことは、決して許されないこと」だと述べた。彼がこの問題についてコメントしたのは、今回が初めてだ。
マニプール州では2カ月以上前から部族間の激しい衝突が続いており、事態は治まる気配がない。これまでに大勢の人が命を落とし、何千人もの人が住むところを追われているが、モディはこれまでこの問題について奇妙なほど沈黙を貫き、公の場で言及することはなかった。
こうしたなか、7月19日に問題の動画が流出した。5月4日に撮影されたこの動画には、マニプール州在住の2人の女性が暴徒たちに取り囲まれ、体を触られ、引き回された上に水田に連れていかれる様子が映っている。さらに現地の警察によれば、暴徒の集団は一連の騒動の中、女性たちの家族である男性2人を殺害したという。
2カ月以上前に撮影されていた動画
モディは「今回明るみに出たマニプール州での事件は、どのような文明社会にとっても恥ずべきものであり、この国の恥だ。全ての州首相に対して、特に女性に対する犯罪への対処や法律を厳格化するよう促したい。このような罪を犯した者は、この国のどこにおいても、処罰を免れることがあってはならない」と述べ、さらにこう続けた。
「罪を犯した者が、処罰を免れることはないと断言する。マニプールの娘たちに起きたことは、決して許されることではない」
マニプール州はインド北東部のミャンマーとの国境近くに位置しており、370万人が暮らしている。同州では5月に2つの部族――メイテイ族とクキ族――の衝突が勃発した。
メイテイ族は州政府に対して、自分たちを就職などで優遇される「指定部族」のリストに含め、またクキ族が暮らしている山岳地帯の土地を購入できるようにするよう要求。クキ族がこれに抗議したことが両部族間の衝突に発展し、これまでに130人以上が死亡する事態となっている。さらに数千人が暴動によって避難を余儀なくされ、中には帰る家を失った人もいる。
警察によれば、2人の女性が暴徒によって裸で引き回される様子を捉えた動画は、部族間の衝突が暴動に発展した翌日に撮影された。マニプール州のある部族組織は、問題の女性2人はクキ族のコミュニティー出身だとしている。AP通信によれば、2人は現在、難民キャンプに身を寄せているということだ。
5月18日に警察に登録された犯罪被害証明書には、被害女性の家族も暴徒に襲われ、このうち男性2人が死亡したことが記されており、警察はレイプと殺人について、「身元不明の悪党」の仕業だとしている。
マニプール州のビレン・シン首相は20日、ツイッターへの投稿で、マニプール警察が「迅速に行動し、20日朝に1人目の容疑者の身柄を拘束した」と述べた。【7月21日 Newsweek】
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「指定部族」とは、文化的独自性,社会経済的後進性,隔絶度の高い社会的に劣後した状況にある集団で、「指定カースト」(不可触選民)とともに憲法で平等な権利保証と優遇措置を定めています。
****指定部族****
インドにおいてイギリス統治時代以降に少数民族集団を認定,保護するために定められた行政用語。インド憲法により,500以上の指定部族,約 5000万人が認定されており,人口に比例して議席などが割当てられる。中部と北東部の山岳地帯を中心として,全インドに分布するが,北インド平原部やインド半島部では少い。おもな民族集団はゴンド族,ビール族,コンド族,サンタール族などである。【ブリタニカ国際大百科辞典】
インドにおいてイギリス統治時代以降に少数民族集団を認定,保護するために定められた行政用語。インド憲法により,500以上の指定部族,約 5000万人が認定されており,人口に比例して議席などが割当てられる。中部と北東部の山岳地帯を中心として,全インドに分布するが,北インド平原部やインド半島部では少い。おもな民族集団はゴンド族,ビール族,コンド族,サンタール族などである。【ブリタニカ国際大百科辞典】
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優遇措置がある「指定部族」に対し、「指定」されていない部族が有利な権利を求めて「自分たちも“指定”して欲しい」と訴えることが多発していますが、今回の衝突もそうしたなかのひとつのようです。
今回事件は単なる女性暴力ではなく、そうした「指定部族」をめぐる部族衝突を背景としたものです。
事件そのものの残忍さ・おぞましさもさることながら、“(5月)両部族間の衝突に発展し、これまでに130人以上が死亡する事態となっている。さらに数千人が暴動によって避難を余儀なくされ、中には帰る家を失った人もいる。”という状況にありながら、警察も地方政府も、中央政府も何もしてこなかったということが大きな問題です。
事件が動画流出で表面化してようやく動き「迅速に行動し、20日朝に1人目の容疑者の身柄を拘束した」というのは笑止ですし、「マニプールの娘たちに起きたことは、決して許されないこと」と言うモディ首相もこれまで沈黙してきた点では同じです。(下記記事によれば“連邦政府はすぐに治安部隊や軍を派遣した”とのことで、何もしなかった訳ではないようです)
沈黙の背景には、今回事件の加害者側の多数派メイテイ族がヒンドゥー教徒で被害者側の少数派クキ族がキリスト教徒ということが関係しているのでしょうか?
【安易に乱用されるネット遮断】
そもそも、どうして2か月間も表面化しなかったのか?
「動画流出」というのは、何らかの情報隔離が行われていたのか?
****頻繁なインドのネット遮断、女性の人権侵害を助長****
インドでは先週、北東部マニプール州で武装した男たちの間を2人の女性が裸で無理やり歩かされ、暴行を受けている動画がソーシャルメディアに出回った。州政府がそれまで3カ月近くにわたってインターネットの接続を遮断していたため、5月4日に起きたこの忌まわしい事件がようやく明らかになった。当局は捜査を進めており、複数の男を逮捕したとしている。
州政府は5月3日にネットの接続遮断を開始したが、うわさやデマを抑え、少なくとも125人が死亡した部族間の暴力的な衝突を鎮めるためにもこうした措置が必要だったと主張する。
しかし人権活動家らは、これまでインド国内で最も長かった同州のネット遮断によって、当局や報道関係者は、その多くが女性に向けられる人権侵害に気づきにくくなるという弊害が鮮明になった、と批判した。
メガラヤ州の日刊紙の編集長で、人権保護にも取り組むパトリシア・ムクヒム氏は「ネット遮断がなければ、このような動画は2カ月余り早く公開され、この恐ろしい事態にも迅速な対応が可能だったし、ほかの同じような事件の発生を阻止できたはずだ」と憤る。
ムクヒム氏は「ネット遮断自体が人権侵害で、人々の自由を抑圧し、暴力事件のニュースを封じ込め、犯罪者を野放しにすることになる」とトムソン・ロイター財団に語った。
ヒューマン・ライツ・ウオッチ(アジア)のアソシエートディレクター、ジェイシュリー・バジョリア氏は、ネット遮断が女性の安心できる環境を損ない、彼女たちの移動の自由を制限すると指摘。マニプールの女性に対する恐るべき暴力の動画がソーシャルメディアに投稿されたことでようやく当局が対応に動いた点から見ても、犯罪の情報伝達や証拠提示の上でネットの重要性が証明されたとの見方を示した。
マニプールの裁判所が州政府に「限定的な形」でネット接続を再開するよう命じた後、政府は25日に「条件付き」でブロードバンド通信サービスの遮断を解除した。
ただ、ソーシャルメディアのウェブサイトや公衆無線LAN、VPN(仮想プライベートネットワーク)、移動インターネット回線など多くの人が利用している通信手段はまだ止められたままだ。
<農村部や社会的弱者に打撃>
デジタル人権団体アクセス・ナウによると、インドは2022年まで5年連続世界で最もネット遮断回数が多い国だ。
インド最高裁は20年に、遮断には公式な命令が必要との判断を示したが、しばしばこれが守られず、期限も定められないケースが見受けられる。
アクセス・ナウは5月のリポートで「当局はネット遮断の根拠の1つとして暴力発生を挙げるが、遮断によって暴力が減少した証拠はなく、むしろかなりの程度でその逆が起きている」と分析した。
マニプール州のケースでは、5月3日に少数部族クキ族が多数派のメイテイ族と同じ待遇を求める抗議デモに端を発した暴力事件がネット遮断へとつながった。
連邦政府はすぐに治安部隊や軍を派遣したものの、緊張状態は収まらず今も時折、殺人や暴動が発生している。
デジタル人権団体ソフトウエア・フリーダム・ローセンターのデータに基づくと、この北東部地域はインドで最も開発が遅れ、ネットのアクセスは不安定で遮断も頻発する。
一方インドはより多くのサービスがデジタル化されており、ネットが使えなくなると農村部や社会福祉に依存する脆弱なグループが特に大きな痛手を受ける、とヒューマン・ライツ・ウオッチとインターネット・フリーダム・ファウンデーション(IIF)は最近のリポートで明らかにした。
<とてつもない犠牲>
インド当局はネット遮断に加え、特定のウェブサイトをブロックしたり、ソーシャルメディア企業にコンテンツの削除を命じたりもしている。アクセス・ナウの調査では、インド政府が発出したソーシャルメディアの投稿やアカウント削除命令件数は昨年7000件近くと、21年の6000件から増加した。
インド国民の大半で、特に農村部で利用されているスマートフォンでネット接続ができなくなるのが問題だ。
ヒューマン・ライツ・ウオッチとIIFのリポートからは、これによって農村部女性の教育や生活に深刻な悪影響が及ぶことが分かる。
例えばインドでカシミールに次いでネット遮断が多い北西部ラジャスタン州は、州政府の雇用保障プログラムの下で働く人の過半数を女性が占め、勤怠管理と賃金支払いはデジタル化されているため、しばしば起きるネット遮断のせいで多くの女性が仕事にならないか、賃金を受け取れない、とヒューマン・ライツ・ウオッチのバジョリア氏は説明。「ほとんどの女性は社会的、経済的に(発展から)置き去りにされた家庭の出身で、ネットが使えなくなれば状況がさらに悪化してしまう」という。
マニプール州の非営利開発団体で働くニングルン・ハンガル氏は、同州におけるネット遮断は女性が家族とワッツアップで気軽にやり取りし、ニュースのチェックやスマホ決済をするのが不可能になることを意味すると話す。
ハンガル氏はネットが遮断され在宅勤務ができなくなった後、13時間かけて隣のアッサム州に働き場所を移したが、彼女と違って移動もままならない女性の場合は、厳しい環境に置かれる。「より多くのうわさやデマが飛び交い、何が本当か確かめるすべもない」という。
「女性たちは孤立し、安全を脅かされていると感じ、とてつもない犠牲を強いられている。ネットが全面的に再開された際には、もっと多くの暴行や虐待の事件が明るみになるのは間違いない」と同氏は警告している。【7月30日 ロイター】
州政府は5月3日にネットの接続遮断を開始したが、うわさやデマを抑え、少なくとも125人が死亡した部族間の暴力的な衝突を鎮めるためにもこうした措置が必要だったと主張する。
しかし人権活動家らは、これまでインド国内で最も長かった同州のネット遮断によって、当局や報道関係者は、その多くが女性に向けられる人権侵害に気づきにくくなるという弊害が鮮明になった、と批判した。
メガラヤ州の日刊紙の編集長で、人権保護にも取り組むパトリシア・ムクヒム氏は「ネット遮断がなければ、このような動画は2カ月余り早く公開され、この恐ろしい事態にも迅速な対応が可能だったし、ほかの同じような事件の発生を阻止できたはずだ」と憤る。
ムクヒム氏は「ネット遮断自体が人権侵害で、人々の自由を抑圧し、暴力事件のニュースを封じ込め、犯罪者を野放しにすることになる」とトムソン・ロイター財団に語った。
ヒューマン・ライツ・ウオッチ(アジア)のアソシエートディレクター、ジェイシュリー・バジョリア氏は、ネット遮断が女性の安心できる環境を損ない、彼女たちの移動の自由を制限すると指摘。マニプールの女性に対する恐るべき暴力の動画がソーシャルメディアに投稿されたことでようやく当局が対応に動いた点から見ても、犯罪の情報伝達や証拠提示の上でネットの重要性が証明されたとの見方を示した。
マニプールの裁判所が州政府に「限定的な形」でネット接続を再開するよう命じた後、政府は25日に「条件付き」でブロードバンド通信サービスの遮断を解除した。
ただ、ソーシャルメディアのウェブサイトや公衆無線LAN、VPN(仮想プライベートネットワーク)、移動インターネット回線など多くの人が利用している通信手段はまだ止められたままだ。
<農村部や社会的弱者に打撃>
デジタル人権団体アクセス・ナウによると、インドは2022年まで5年連続世界で最もネット遮断回数が多い国だ。
インド最高裁は20年に、遮断には公式な命令が必要との判断を示したが、しばしばこれが守られず、期限も定められないケースが見受けられる。
アクセス・ナウは5月のリポートで「当局はネット遮断の根拠の1つとして暴力発生を挙げるが、遮断によって暴力が減少した証拠はなく、むしろかなりの程度でその逆が起きている」と分析した。
マニプール州のケースでは、5月3日に少数部族クキ族が多数派のメイテイ族と同じ待遇を求める抗議デモに端を発した暴力事件がネット遮断へとつながった。
連邦政府はすぐに治安部隊や軍を派遣したものの、緊張状態は収まらず今も時折、殺人や暴動が発生している。
デジタル人権団体ソフトウエア・フリーダム・ローセンターのデータに基づくと、この北東部地域はインドで最も開発が遅れ、ネットのアクセスは不安定で遮断も頻発する。
一方インドはより多くのサービスがデジタル化されており、ネットが使えなくなると農村部や社会福祉に依存する脆弱なグループが特に大きな痛手を受ける、とヒューマン・ライツ・ウオッチとインターネット・フリーダム・ファウンデーション(IIF)は最近のリポートで明らかにした。
<とてつもない犠牲>
インド当局はネット遮断に加え、特定のウェブサイトをブロックしたり、ソーシャルメディア企業にコンテンツの削除を命じたりもしている。アクセス・ナウの調査では、インド政府が発出したソーシャルメディアの投稿やアカウント削除命令件数は昨年7000件近くと、21年の6000件から増加した。
インド国民の大半で、特に農村部で利用されているスマートフォンでネット接続ができなくなるのが問題だ。
ヒューマン・ライツ・ウオッチとIIFのリポートからは、これによって農村部女性の教育や生活に深刻な悪影響が及ぶことが分かる。
例えばインドでカシミールに次いでネット遮断が多い北西部ラジャスタン州は、州政府の雇用保障プログラムの下で働く人の過半数を女性が占め、勤怠管理と賃金支払いはデジタル化されているため、しばしば起きるネット遮断のせいで多くの女性が仕事にならないか、賃金を受け取れない、とヒューマン・ライツ・ウオッチのバジョリア氏は説明。「ほとんどの女性は社会的、経済的に(発展から)置き去りにされた家庭の出身で、ネットが使えなくなれば状況がさらに悪化してしまう」という。
マニプール州の非営利開発団体で働くニングルン・ハンガル氏は、同州におけるネット遮断は女性が家族とワッツアップで気軽にやり取りし、ニュースのチェックやスマホ決済をするのが不可能になることを意味すると話す。
ハンガル氏はネットが遮断され在宅勤務ができなくなった後、13時間かけて隣のアッサム州に働き場所を移したが、彼女と違って移動もままならない女性の場合は、厳しい環境に置かれる。「より多くのうわさやデマが飛び交い、何が本当か確かめるすべもない」という。
「女性たちは孤立し、安全を脅かされていると感じ、とてつもない犠牲を強いられている。ネットが全面的に再開された際には、もっと多くの暴行や虐待の事件が明るみになるのは間違いない」と同氏は警告している。【7月30日 ロイター】
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なお、マニプール州政府はモディ政権与党のインド人民党ですが、人民党関係者は、人民党以外の州政府のエリアではもっと女性暴力事件が多いと主張し、動画が議会開催直前に公開されたのは政治的目的のためだとも主張しています。
【「債務奴隷」問題】
インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュなど南アジアでは、借金を返すために債務者が強制労働に従事する「債務奴隷」というものが存在します。
****「債務奴隷」11人救出、鎖でつながれ無給で井戸掘り インド****
インド国家人権委員会は26日、鎖でつながれて1日12時間無給で井戸掘りに従事させられていた債務労働者11人が救出されたと発表した。
債務労働は「債務奴隷労働」とも呼ばれ、債務者は借金を返すために強制労働に従事しても、その間に利息が膨れ上がっていく。
NHRCによると、西部マハラシュトラ州で強制労働に就かされていた11人のうち、1人が鎖を外して逃げ出し、「虐待」が行われていると警察に通報。17日に残り10人も解放された。
NHRCは、11人は逃げられないように鎖でつながれ、12時間無給で井戸掘りをさせられていたと説明。食事は1日1回しか与えられず、排せつも作業現場でさせられていた。
警察は4人を逮捕したが、NHRCは救出と加害者の逮捕だけでは済まず、1976年の債務労働制廃止法に「甚だしく違反している」と指摘している。
債務労働に関する一連の規制は、起訴されるケースがほとんどなく、債務者は利益の最大化を図るため有名無実化している。活動家によれば、インドの債務労働者は約1000万人に上っている。
NHRCは、今回の雇用主は債務者に対し、3、4か月後に解放される際に「さらなる虐待を受けるよりは、賃金を要求せずに逃げ出した方がまし」と思わせるような過酷な条件での債務労働を「常習的に」行っていたと指摘している。 【6月27日 AFP】
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****債務奴隷とは*****
(中略)債務奴隷とは、主に借金を返済するために拘束され働かされている人々のことである。では、どのようにして債務奴隷となってしまうのだろうか。
例えば医療費、葬儀、失業に伴う収入源の損失などで自力では払えないような出費が必要となった時、貧困状態にある人々は自分や家族の労働と引き換えにお金を借りざるを得ない場合が多い。
一度借金を抱え、高い利子をつけられたり少ない賃金で働かされたりしていく中で、例え最初に借りた金額が比較的に少額であったとしても、返済が終わらずそのまま債務奴隷となってしまうのである。雇用主は利益を得るために人々を債務奴隷として長い期間とどまらせようとする。(中略)
では、債務奴隷となった人々はどのような状況に置かれるのだろうか。債務を抱えた個人が強制労働をさせられたり、債務者本人の代わりに子供が労働力として送り込まれたりと債務奴隷にも様々なケースがある。
中でも債務者本人だけでなくその家族までもが強制労働に巻き込まれるケースは少なくない。例えば雇用主が一方的に決めた一日の労働ノルマが多すぎることで、その達成のために子供を含む家族も労働せざるを得なくなってしまうのだ。
それだけでなく、借金が代々受け継がれることで何世代にもわたって搾取が続いていくケースも多い。またそれ以外にも、雇用主らによる脅迫や虐待、レイプ、劣悪な労働環境による栄養失調やその他の健康被害など、二次的な問題が起こる場合が決して少なくない。
さらに債務者たちは奴隷状態から脱出することが非常に難しい。その理由として、強制労働から抜け出したとしても代わりの雇用がない可能性が高いということがある。
社会全体の失業率が高いことから、抗議行動などをして立ち退きや失業に遭い生活の基盤を失うかもしれないという不安を抱え声を上げることができない労働者も多い。
強制的な労働を強いられる中で本来主張できるはずの労働者としての権利を知る余裕がない場合や、子供のときに家族の債務状況によって債務奴隷となり基本的な教育を受けられないまま大人になる場合も見られる。
また、もし労働者が債務奴隷から抜け出すために逃亡すれば、処罰のために雇用主によって民間の刑務所のような場所に収容され、さらにひどい扱いを受けることもあるのだ。
このとき雇用主だけでなく、一部の警察が債務奴隷から逃れようとした労働者を雇用主の下に戻したり、一度解放された労働者の拘束を手伝ったりするケースもある。
国際労働機関(ILO)の調査によると、このような債務奴隷は世界中に800万人ほどいるとされ、パキスタンの他にインド、バングラデシュ、ネパールで特に多く見られる。国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、パレルモ議定書(では、債務奴隷制度を人身売買の一形態である犯罪として扱うことが求められている。しかし、国際的な取り決めにもかかわらず債務奴隷制度は根強く残っているというのが現状である。(後略)【2021年8月26日 GLOBAL NEWS VIEW】
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最初のマニプール事件や多くの女性暴力事件でも、「債務奴隷」問題でも、警察・行政が黙認あるいは加担しているところが問題の根深さを示しています。
今回は取り上げなかった絶対的貧困の問題やその他問題を含め、インドが抱える「闇」は深いものがあります。
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