孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  大統領就任式を前に帰国表明の野党候補 圧力を強めるマドゥロ政権

2025-01-08 23:05:23 | ラテンアメリカ

(2025年1月7日、首都カラカスの兵士(車上)と民兵のメンバー(手前)。当局は首都カラカスで治安部隊の大規模な配備を実施しています。【1月8日 L'Opinion】)

【盗まれた選挙 居座るマドゥロ大統領】
昨年7月28日にベネズエラで行われた大統領選挙では、数々の失政、国民の不満にもかかわらず強権支配を続けるマドゥロ大統領が「勝利」したとして、選挙管理委員会や司法もこれを支持しています。

しかし、状況から判断する限り、選挙結果捏造疑惑は限りなくクロに近いように思えます。

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バングラデシュ・ハシナ政権のようにあっけなく崩壊する政権もあれば、一方でどれだけ国内外の批判にさらせれようが、強権的に、選挙結果を捏造しても居座る政権もあります。そのひとつが南米ベネズエラのマドゥロ大統領。

ベネズエラは長年、石油収入に依存し、原油価格が下落した後もばらまき政策を続けた結果、財政が破綻しました。一時は天文学的数字のハイパーインフレーションで市民生活は満足に食事もとれないほどに崩壊。その後も野党弾圧などを理由にアメリカから経済制裁を受け、外貨不足とインフレが常態化しています。

(中略)ベネズエラ大統領選挙(7月28日)では、マドゥロ大統領が選挙での敗北を認めるというサプライズは起きず、想定されたように結果を捏造して居座る構えを見せています。

マドゥロ政権の影響下にある選挙管理委員会は、全国から集めた投票結果を集計する際、野党側の立会人を排除して集計を進め、その結果、マドゥロ大統領の得票率は51・95%、無名だった野党候補ゴンサレス氏は43・18%と「マドゥロ勝利」を発表しています。

一方、野党側は各地で公表される票を積み上げてゴンサレス氏が7割を得票したと発表していますが、この数字は事前の世論調査や当日の出口調査とおおよそ一致するもので、選挙結果は政権側によって捏造されたものと思われます。【8月11日ブログより再録】
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野党側は、本来大統領選挙に出馬する予定だったものの、政権側に立候補を阻まれた“鉄の女”マチャド氏を戦闘に、抗議活動を展開。

****ベネズエラの〝鉄の女〟、「マドゥロ大統領勝利」抗議デモの先頭に 大統領選から1カ月****
南米ベネズエラの大統領選から1カ月が経過した28日、野党側は、不正集計の疑いが浮上した選挙管理当局による「マドゥロ大統領勝利」を認定した最高裁などに抗議する集会を各地で開いた。

「鉄の女」の異名を持つ指導者マリア・コリナ・マチャド元国会議員(56)が先頭に立ち、独裁色を強めるマドゥロ政権に退陣を迫ったが、政権交代の実現は難しくなっている。

マチャド氏は、マドゥロ氏が大統領に就任した2013年、「自由」を掲げて発足した政治団体「ベンテ・ベネズエラ」の創設メンバー。昨秋の予備選で約9割の票を得て野党統一候補となった。

しかし、マドゥロ氏の影響下にある最高裁は「汚職に関与した」としてマチャド氏を公職から追放。マチャド氏は、自らの出馬を断念し、今年7月の本選では元外交官のゴンザレス氏の支援に奔走した。

マチャド氏は、大統領選の結果について、野党側が全国3万の電子投票機の8割超から回収した開票記録に基づき、得票率67%のゴンザレス氏が、同30%のマドゥロ氏に勝利したと訴える。28日は首都カラカスの抗議集会で、「世界がベネズエラの声を聞いている」と支持者に訴え、政権交代の実現を呼びかけた。

これに対し、治安当局は28日、マチャド氏と一緒に集会に参加した野党側の幹部ピリエリ氏を逮捕。既にマチャド氏の警護責任者や弁護士も逮捕しており、マチャド氏への圧力を強めている。マチャド氏自身も、軍の離反を呼びかけたとして、ゴンザレス氏とともに捜査対象となっている。【2024年8月29日 産経】
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マチャド氏に変わって急遽出馬した野党候補のゴンサレス氏は、当局から逮捕状が出され、スペインへの出国を余儀なくされています。

****ベネズエラ野党候補、スペインに出国 扇動容疑で逮捕状****
7月のベネズエラ大統領選に出馬した野党統一候補ゴンサレス氏がスペインに向け出国した。両国の当局者が7日、明らかにした。

ベネズエラ検察は2日、文書偽造や扇動などの容疑でゴンサレス氏の逮捕状を取っていた。マドゥロ政権が大統領選後の野党弾圧をさらに強めたことを意味する。

大統領選では選挙管理当局と最高裁がマドゥロ大統領の勝利を認定したが、野党が公表した集計ではゴンサレス氏が圧勝していた。(後略)【2024年9月8日 ロイター】
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マドゥロ政権と対立するアメリカは、政権側に野党勢力との対話を呼び掛けましたが、目立った成果は出ていません。

****ベネズエラ大統領に野党勢力との対話呼びかけ=米国務長官****
ブリンケン米国務長官は26日、ベネズエラのマドゥロ大統領に野党勢力との対話に応じるよう呼びかけ、米国はこうしたプロセスを支援する用意があると述べた。(中略)

ブリンケン氏は「われわれは、ベネズエラ国民の人権を守り、ベネズエラの民主的な未来の回復に向けた同国主導の包括的な取り組みを実現すべくここに集まっている。マドゥロ氏は野党勢力との直接対話に応じ、平和裏に民主主義を回復すべきだ。米国とそのパートナーはこうしたプロセスを全面的に支援する準備ができている」と述べた。

米国とアルゼンチンは国連総会が開かれているニューヨークでベネズエラ問題について話し合う会合を開き、31カ国から参加があった。しかし主要国は出席を見送り、ブリンケン氏の対話呼びかけを支持する共同声明にも調印しなかった。【2024年9月27日 ロイター】
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【野党候補ゴンザレス氏 就任式を前に帰国を表明 アメリカ・中南米各国を歴訪】
こうした経緯を経て、今月10日に大統領就任式が行われますが、出国したままの野党候補ゴンザレス氏は自分が大統領に就任すると動きを活発化させています。

*****ベネズエラで「大統領就任」=野党候補ゴンサレス氏が意欲****
7月のベネズエラ大統領選で主要野党の統一候補として出馬し、勝利したと訴えているゴンサレス氏は、10日までにスペイン紙パイスとのインタビューで、来年1月10日の大統領就任のため亡命先のスペインから母国に戻る考えを明らかにした。副大統領には選挙で支援を受けた野党指導者のマチャド氏を任命すると語った。
 
ゴンサレス氏は「700万人以上に選ばれた職務に就くため、ベネズエラに戻る決意だ」と表明した。同氏にはベネズエラ当局から逮捕状が出ているが、帰国しても逮捕されることはないと自信を示した。
 
大統領選を巡っては現職マドゥロ大統領が3選を宣言した。しかし、野党や米欧諸国などが求める詳細な開票結果の公表を拒否し、国内で反体制派を弾圧した。先進7カ国(G7)外相は先月、ゴンサレス氏の勝利を支持した。【2024年12月11日 時事】
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“帰国しても逮捕されることはないと自信を示した”という根拠は不明です。現状では帰国すれば逮捕されることが想定されます。

いずれにしてもゴンザレス氏は、支援を求めて中南米各国歴訪を開始しました。

****マドゥロ大統領3期目前に支援要請 ベネズエラ野党候補が中南米各国歴訪を開始****
昨年7月のベネズエラ大統領選で野党候補だったゴンサレス氏が4日、独裁色を強めるマドゥロ大統領の3期目就任式を10日に控える中、マドゥロ政権に批判的な中南米各国に支援を求めて歴訪を開始した。

最初の訪問国アルゼンチンで4日にミレイ大統領と会談後、米国も訪れてバイデン大統領に面会する方向で調整を進めていると明かした。

大統領選では、政権の影響下にある選挙管理当局が詳細な開票結果を示さずマドゥロ氏の勝利を発表。国際的な批判を集めている。

野党は独自集計でゴンサレス氏が勝利したと主張し、欧米も支持。ゴンサレス氏は政権の圧力から逃れるため選挙後にスペインに亡命したが、10日の就任式に合わせベネズエラに戻る意向を示している。その前にアルゼンチンやパナマ、米国などを訪問して支援を取り付ける狙い。

ベネズエラではゴンサレス氏に逮捕状が出され、政権は情報を提供した人に10万ドル(約1570万円)を支払うとしている。ゴンサレス氏は帰国すれば逮捕される可能性が高い。【1月5日 産経】
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アメリカではバイデン大統領と会談、バイデン大統領はゴンザレス氏を「次期大統領」と呼んで歓迎。

****亡命野党候補と会談=ベネズエラ政権の責任追及―バイデン米大統領****
バイデン米大統領は6日、2024年7月のベネズエラ大統領選の野党統一候補で、マドゥロ政権の弾圧によりスペインに亡命したゴンサレス氏とホワイトハウスで会談した。バイデン氏はゴンサレス氏をベネズエラの「次期大統領」と呼んで歓迎し、支持する姿勢を示した。

大統領選を巡っては、現職マドゥロ氏が3選を一方的に宣言。米国を含む先進7カ国(G7)は、過半数の得票を得たとしてゴンサレス氏の勝利を支持すると表明していた。【1月7日 時事】 
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アメリカはマドゥロ政権に対する新たな制裁を導入するとの情報も。

****米、ベネズエラに新たな制裁発動へ 8日にも=アクシオス記者****
米政府は今週、ベネズエラのマドゥロ政権に対する新たな制裁を導入する見通し。米ニュースサイト、アクシオスの記者が7日、米当局者2人の情報としてXに投稿した。

米国務省が8日に第1弾の制裁を発表する可能性があるという。【1月8日 ロイター】
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ただ、これ以上アメリカが制裁を導入してもマドゥロ大統領が「じゃ、私やめます」とはならないですし、また、どうやってゴンザレス氏がベネズエラに帰国するのかも不明です。

ベネズエラ政府は、バイデン大統領がベネズエラの民主主義を侵害する「暴力的なプロジェクト」を支援するのは「グロテスク」だとする声明を出しています。
一方、南米パラグアイがゴンサレス氏を「当選者」と認め、これに反発するベネズエラはパラグアイと断交する事態に。

****ベネズエラ、パラグアイと断交=野党ゴンサレス氏は米大統領と会談****
ベネズエラ政府は6日、パラグアイとの断交を決めたと発表した。パラグアイが、昨年7月のベネズエラ大統領選で野党統一候補だったゴンサレス氏を「当選者」と認めたことに反発した。

選挙では独裁色を強めるマドゥロ大統領が勝利を宣言したが、詳細な開票結果を公表しておらず、ゴンサレス氏も当選を主張。マドゥロ政権が3期目に入る今月10日を前に、緊張が高まっている。
 
パラグアイのペニャ大統領は5日、ゴンサレス氏とオンラインで会談。6日の声明で同氏を次期大統領と認定した上で、ベネズエラ外交団に「48時間以内の国外退去」を命じた。

これに対し、ベネズエラは「国際法や内政不干渉の原則を無視している」と猛反発。関係を断ち、外交官を直ちに引き揚げると表明した。

支持を求めて米州を歴訪しているゴンサレス氏はスペインに亡命しているが、10日の就任式に合わせて帰国し、大統領に就く意向を示している。6日には米ワシントンでバイデン大統領と会談。「(ゴンサレス氏勝利が)平和的な民主統治への復帰を通じて尊重されるべきだ」との見解で一致した。【1月7日 時事】 
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【就任式を前に圧力を強める政権側】
また、詳細は不明ですが、ゴンサレス氏は帰国の意向を表明してから数日後に義理の息子が誘拐されたと明らかにしています。

****ベネズエラ野党指導者、義理の息子誘拐されたと指摘-帰国意向表明後****
昨年7月のベネズエラ大統領選で野党統一候補として出馬し、スペインに亡命したエドムンド・ゴンサレス氏は、7日に首都カラカスで義理の息子が誘拐されたと語った。帰国の意向を表明してから数日後だった。
  
(中略)同氏はX(旧ツイッター)への投稿で、子供を学校に送りに行くところだった義理の息子が「黒いフードをかぶった男らに捕まり」、車に乗せられたと指摘した。
 
首都では緊張が高まっている。政府は帰国すればゴンサレス氏を逮捕すると警告しているが、同氏は大統領に就任するため10日にベネズエラに戻ると表明。カベロ内相はゴンサレス氏拘束につながる情報に10万ドル(約1580万円)の懸賞金もかけた。(後略)【1月8日  Bloomberg】 
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ベネズエラでは野党勢力は、治安部隊が法律を尊重していないという立場から、逮捕に「誘拐」という言葉を常用していますので、民兵組織による拘束なのかも。

マドゥロ大統領は国家軍事警察計画を「発動」しましたが、当局は既に首都カラカスで治安部隊の大規模な配備を実施しています。【1月8日 L'Opinionより】

野党指導者のマチャド氏は、「政権の工作員が私の母の家を取り囲んだ」とXに投稿し、母親への嫌がらせを非難しています。【同上】

10日の大統領就任式を前にいろんな方面でざわつき始めています・・・・が、何度も繰り返すように、野党候補ゴンザレス氏が無事に帰国できる目途はたっておらず、マドゥロ大統領がこのまま3期目に入るというのが現実でしょうか。
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