孤帆の遠影碧空に尽き

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ドイツ  移民排斥の右派(極右)政党AfDの伸長 強まる警戒感 ナチスを連想させる移民追放謀議も

2024-01-23 23:19:16 | 欧州情勢

(ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のワイデル共同党首=2023年11月、ベルリン(EPA時事)【1月14日 時事】 ワイデル共同代表の最側近顧問が移民追放謀議に参加したとして抗議が強まっています。)

【初のAfD市長 秋の東独地域3州の州議会選挙では第1党予測も】
このところのドイツ国内政治に関するニュースの多くが移民排斥を掲げる右派政党(極右との評価も)「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持拡大に関するもの。

以前から旧東ドイツ地域で大きな勢力を有していましたが、昨年末には東部ザクセン州ピルナ(人口は約4万人)で初のAfDの市長が誕生して話題にもなりました。

****独東部、右派AfDの市長誕生へ ザクセン州ピルナ、移民排斥****
ドイツ東部ザクセン州ピルナで19日までに実施された市長選で、移民排斥を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の候補者が当選した。AfD候補の市長当選は初めて。AfDは政権への反発や増加する移民・難民への不満の受け皿として支持を広げている。

ピルナは人口約4万人の市。地元メディアによると、17日投開票の市長選でAfDが擁立した男性候補者が得票率38.5%を獲得し、中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)の候補者ら2人を破った。

2013年に発足したAfDは、難民流入に対する不安をあおり、17年の総選挙で第3党に躍進。経済が停滞する旧東ドイツで支持を固めてきた。過激派対策に当たる情報機関はザクセン州など一部地域でAfDを極右と位置付けている。

公共放送ARDの世論調査では今年6月以降、AfDは支持率でショルツ首相の社会民主党(SPD)を抜き、最大野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次ぐ2位を維持。郡長選や町長選でもAfDの候補者が勝利していた。【12月20日 共同】
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ピルナだけでなく、昨年後半はAfD候補の地方選勝利が相次いでいます。そしてその勢いは旧東ドイツだけでなく西部にも広がっています。

****伸長するドイツの右派政党 ナチスを経験した国で変化の兆しか****
ドイツで排外主義的な右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が存在感を増している。12月中旬には擁立候補が初めて市長選で当選。来年秋に旧東ドイツ地域で予定される三つの州議会選挙では第1党になる可能性も浮上する。なぜ右派政党が支持を広げているのか。

東部ザクセン州ピルナでは17日に市長選が実施され、AfDの擁立候補が38・5%の票を獲得。中道右派キリスト教民主同盟(CDU)の候補(31・4%)を上回って当選した。

AfDは今年半ば以降、首長選挙で相次いで勝利してきた。6月の東部テューリンゲン州の郡長選、7月の東部ザクセン・アンハルト州の町長選では、擁立した候補が続けて当選。AfDが郡や町の首長選挙で勝利するのは初めてで、行政を担う地域が増えている。

 ◇現政権への批判も追い風にして
AfDは2013年に結党。もともとは反ユーロなど経済政策を掲げていたが、15年に起きた欧州難民危機以降は反移民・難民を前面に出すなど、排外主義的な姿勢を鮮明にしている。旧西ドイツより所得水準が低い旧東ドイツを中心に支持を広げてきた。

最近も難民の急増やインフレを受け、ショルツ連立政権への批判の高まりを追い風にして、AfDの勢いは全国レベルへと広がりつつある。

旧西ドイツ地域ではヘッセン州の10月の州議会選挙で第2党に、バイエルン州でも第3党に躍進した。独公共放送ARDの12月の世論調査によると、AfDの支持率は21%でキリスト教民主・社会同盟(CDU・SSU)の32%に次ぐ2位。ショルツ首相の社会民主党(14%)を大きく上回った。

来年(2024年)秋には、郡長が誕生したテューリンゲン、市長を生んだザクセン、ブランデンブルクの旧東独地域3州で州議選があり、AfDが第1党になるとの観測も広がっている。

ドイツでは第二次大戦後、ナチスを想起させるとして右派政党が有権者から忌避されてきたが、AfDの伸長は変化の兆しとも見てとれる。その背後では同党が地方への浸透を見据え、巧妙な選挙戦略を練ってきたのだ。【12月30日 毎日】
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【景気が悪くなれば、「よそ者(移民)」への反発が強まる 政府の環境政策批判で地域に根ざした活動も】
AfD台頭の背景にはドイツ経済の不調があります。
“景気が悪くなれば、「よそ者(移民)」への反発が強まるのは世の常”ということでしょうか。

****景気悪化でEUの足を引っ張るドイツ 極右政党が市長選で勝利、第一党になる日も時間の問題か****
第4四半期に景気後退入りする可能性
(中略)ドイツの12月のPMI(購買担当者景気指数 企業の購買担当者らの景況感を集計した景気指標のひとつ 50を超えたら改善と答えた人が悪化の人よりも多かったことを意味する)は46.7と前月に比べて1.1ポイント低下した。

市場は「48.2に改善する」と予測していただけにドイツ経済の不調が改めて認識された形だ。第3四半期のGDPも前期に比べて0.1%減少している。インフレが続く中、家計の節約志向が強まり、ドイツの内需が冷え込んでいることが災いしている。

ドイツ経済に対する海外の見方も厳しさを増している。独貿易・投資新興機関は「ドイツに進出する外国企業の数は今年、前年に比べて約2割減少する」との見方を示した(12月5日付ロイター)。

独大手ファンド運用企業ユニオン・インベストメントは「中国経済への依存度が高いことがドイツにとって重大なリスクになりかねない」と指摘している。

来年の予算編成に「違憲」の判断
ドイツ連邦銀行(中央銀行)は「GDPは今年0.1%減少する」としているが、来年(2024年)の見通しはさらに暗いと言わざるを得ない。11月15日、憲法裁判所から「違憲」の判断を下されたことで、ドイツ政府は来年の予算の編成に苦慮しているからだ。

問題になったのは、新型コロナ対策で未利用になった約600億ユーロ(約9.8兆円)を気候変動対策の基金に転用した2021年の補正予算だ。憲法裁判所はこの措置を基本法(憲法に相当)に違反すると判断した。

ドイツ政府は予算のうち未執行分の大半の財政支出を凍結し、補正予算の編成を余儀なくされた。来年の予算についても約170億ユーロ(約2.8兆円)の歳入不足となるなど大混乱に陥っている。

このことを重く見たドイツの主要経済研究所は、来年の成長予測を相次いで下方修正している。ドイツ経済研究所は12月13日「予算危機による不透明感で来年のGDPは0.5%減少する。最悪の場合、1%の減少もありうる」との悲観的な見通しを示した。

筆者が危惧しているのはドイツで不動産バブルが崩壊しつつあることだ。

独キール世界経済研究所によれば、ドイツの第3四半期の戸建て住宅価格は前年同期に比べて12%下落した。マンションなどの分譲物件も11%下落した。ドイツではベルリンやフランクフルトなどの主要都市で軒並み市況が悪化しており、市場関係者は「底が見えない」と警戒感を強めている(11月27日付日本経済新聞)。

不動産バブルの崩壊から長期の不況へ
(中略)30年前の日本のように、不動産バブルの崩壊は長期の不況をもたらす可能性が高いと言わざるを得ない。

景気が悪くなれば「よそ者(移民)」への反発が
「泣き面に蜂」ではないが、ドイツの政治家にとって移民の問題も悩みの種だ。

オランダで11月、「反イスラム」を掲げるウィ ルダーズ党首率いる極右の自由党が第1党に躍進した。「極右への追い風はさらに強まっている」と筆者は考えている。パレスチナ自治区ガザでの戦闘により、世界で発生する避難民の数が過去最大になることが見込まれている(12月13日付ロイター)からだ。

ドイツ公共放送連盟(ARD)と調査機関のドイチュラントトレンドによる毎月の世論調査(11月発表分)によれば、「次の日曜日に連邦選挙があった場合、どの政党に投票するか」の設問で、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)が22%で2位だった。

連立与党の保守系統一会派であるキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)が30%で1位だったものの、政権を担うドイツ社会民主党(SPD)は16%、緑の党は14%、自由民主党(FDP)は4%と低調だ。

景気が悪くなれば、「よそ者(移民)」への反発が強まるのは世の常だ。
12月17日、AfDの立候補者がドイツ東部ザクセン州ピルナ(人口は約4万人)の市長に当選した。AfDがドイツの市長選で勝利したのは初めてだ。「AfD旋風」はとどまるところを知らないといった印象だ。

政権与党に対する不満から、ドイツでは総選挙の早期実施を求める声が高まっている。ドイツで極右政党が第1党となるのは時間の問題なのではないだろうか。【12月20日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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上記記事にある“新型コロナ対策で未利用になった資金の転用に関する違憲判断”の影響で、ドイツ政府は12月17日から電気自動車購入時に支給される補助金を停止すると発表しました。突然の停止に批判が強まっており、また、既に苦境に立たされている自動車産業にとってさらなる痛手となると見られています。

こうした景気悪化に伴う反移民感情がAfD伸長の追い風になっているだけでなく、AfDは最近ではロシアによるウクライナ侵攻の影響などから、エネルギー価格が高止まりして経済が低迷するなか、政府の環境政策などへの批判も強めて支持を広げています。

たとえば地域で反対が根強い風力発電立地に反対するなど人々に寄り添う姿勢を見せて、有権者の間では自分たちの不満や意見を聞いてくれる・・・との評価もあるようです。こうした地域に根ざした活動もAfD伸長の理由になっています。

【高まる警戒感 「左派ポピュリスト」のライバル政党立ち上げの動きも】
ただ、ナチスを彷彿とさせるような極右勢力の拡大に対する警戒感も強まっています。

****潜在的ライバルは意外な勢力 伸長するドイツ右派政党に警戒も****
ドイツ国内で支持を広げる右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だが、勢力拡大を警戒する動きも目立つようになってきた。またライバルと位置づけられるような政党も出現する見通しだ。

東部のテューリンゲン、ザクセン、ザクセン・アンハルト3州では、12月までに各州の憲法擁護庁がAfD支部を「極右団体」に指定した。また連邦憲法裁判所がAfDの活動禁止を審査するように連邦参議院(上院)に求める嘆願書には、著名なテレビ司会者や作家ら40万6000筆を超える署名が集まった。

産業界からも、AfDの伸長は経済に悪影響を及ぼしかねないとの声があがる。排外主義的な主張が広がれば、外国人労働者のドイツ離れにつながり、労働力不足が深刻化するためだ。

ドイツ産業連盟(BDI)のジークフリート・ルスブルム会長は12月19日付の地元紙などで「経済にとっても、ナショナリズムへの逆戻りを想起させる政治運動は有害だ」と批判した。

新党結成に至るのか
AfDのライバルとなる可能性が指摘されているのは、政治的な立場を異にする左派勢力だ。

来年1月に新党を結成すると宣言したザーラ・ワーゲンクネヒト連邦議会議員(54)は、旧東ドイツ社会主義政党の流れをくむ左派党の人気女性議員だった。党執行部と対立し、10月に離党した。左派ながら、移民・難民の受け入れには懐疑的で、親ロシア的な立場でウクライナ支援を批判する「左派ポピュリスト」ぶりをみせている。

10月の世論調査では、新党を結成すれば、連邦議会で12%の支持を得られるとの推定結果も出された。新党は来年に予定される旧東ドイツ地域の3州の州議会選にも候補者を擁立する構えだ。

AfDの動向に詳しい政治学者ベンヤミン・ヘーネ氏は「ワーゲンクネヒト氏が実際に新党立ち上げに成功すれば、(同じポピュリスト政党に位置づけられる)AfDはおそらく来年の州議選での第1党争いからは脱落するだろう」と分析する。支持を広げてきたAfDだが、意外な対抗勢力から支持層が切り崩される可能性も出てきた形だ。【12月30日 毎日】
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【共同代表顧問が移民追放謀議に参加 強まる批判】
そもそも、そのナチスを連想させる過激な移民排斥に対する強い抗議も出ています。

****ドイツ、極右政党の移民政策に抗議広がる 数十万人がデモ****
ドイツ全土で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の移民政策に対する抗議デモが週末に行われ、数十万人が参加した。

デモはAfD幹部が外国出身者の国外追放などを議論する会合に出席したと報じられて以降、勢いを増している。

AfDは以前から反移民政策を掲げているが、調査ニュースサイトのコレクティブは「同化していない市民」を「北アフリカのモデル国家」に送還する案について報じた。一方、AfDはこの計画は党の方針ではないとしている。

21日のデモは、ベルリンやミュンヘン、ケルンに加え、ライプツィヒやドレスデンといったAfD支持者が比較的多い東部でも行われた。ミュンヘンでは参加者が想定以上となったため、予定よりも早くデモを終了した。警察によると約10万人が参加。主催は20万人が参加したとしている。【1月22日 ロイター】
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****極右政党、移民追放を謀議か ナチス想起に波紋広がる ドイツ****
(中略)調査報道団体「コレクティーフ」によると、昨年11月25日、東部ポツダムのホテルで、AfDのワイデル共同党首の最側近や連邦議会議員、起業家ら約20人が会合を開いた。

この中で、オーストリア出身の活動家が「マスタープラン」と称し、肌の色や出身地が異なり、「同化されていない国民」はドイツから追放可能とすべきだと主張。アフリカ北部に「モデル国家」を設けて200万人が移り住めるようにするアイデアを披露したという。

ナチスはマダガスカル島へのユダヤ人移送を実際に計画したことで知られる。またホロコースト(ユダヤ人大虐殺)が話し合われた会議の場所が、今回のホテルと近かったことも、臆測に拍車を掛けた。(後略)【1月14日 時事】
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北アフリカでドイツに縁がある地域となれば、20世紀初頭に「モロッコ事件」の起きたモロッコでしょうか。モロッコにはモロッコと反政府勢力が主権を争う「西サハラ」が存在しますが・・・

“この会合には保守野党のキリスト教民主同盟(CDU)の右派党員も参加したとされ、反移民感情の根深さがあらわになっている。”【同上】とも。

AfDは、会合は私的なイベントで出席者は個人の立場で参加し、党とは関係ないと説明しています。また共同代表は会合に参加した顧問との契約を解除したとのこと。

単に移民流入規制だけでなく、国内移民の「モデル国家」への追放というという話になると、ユダヤ人をマダガスカル島に送るというかつてのナチスの計画を連想させます。

このままAfDが勢力を拡大するのか、阻止すような動くが強まるのか・・・注目されます。
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