孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジョージア  政権のEU加盟交渉停止措置に対する抗議デモが続く 14日には大統領選挙で与党候補選出

2024-12-11 23:38:28 | 欧州情勢

(【12月4日 TOP WAR】 抗議デモ側が“花火”を撃ち込むといった記載をよく見ますが、通常の花火の他に上記のような手作り“バズーカ”花火もあるようです)


【親欧米派の野党指導者を相次ぎ拘束するなど、強硬姿勢を強める政権側】
旧ソ連構成国で、また、親ロシア勢力による未承認国家を抱えるジョージア(旧国名:グルジア)では、10月の議会選挙で勝利したと主張する政権与党「ジョージアの夢」が、11月28日にEUへの加盟交渉を4年間停止すると表明したことを受けて連日の抗議デモが行われています。抗議市民側は10月の選挙も不正があったとして認めていません。

政権与党「ジョージアの夢」はこれまではEU加盟を掲げてはいましたが、最近では「反スパイ法」とか「LGBT規制法」といったロシアに類似した法律を制定するなどロシアへの接近を強めています。

この政治混乱で、もし政権が崩壊するようなことになれば、かつてロシアを震撼させた民主化を求める市民による親ロシア政権が次々と崩壊した「カラー革命」、そしてウクライナ侵攻の背景ともなっている2014年にウクライナで起きた「マイダン革命」の再現とも。

12月14日は大統領選挙が予定されていますが、議員による間接選挙に変更されたため、与党側の候補の勝利が確実視されています。親欧米的な現在の大統領は10月の選挙に基づき発足した議会が非合法だと主張し、12月に大統領の任期が切れても職にとどまると宣言しています。

なお、ジョージアでは政治の主導権は大統領ではなく首相にあります。

このあたりの経緯・状況は12月1日ブログ“ジョージア EU加盟交渉を4年間停止決定で連日の抗議デモ 想起されるウクライナ「マイダン革命」”でもとりあげました。

その後の情勢ですが、シリアや韓国に関するニュースが溢れるなかで、ジョージア関連のニュースはほとんどみあたらず、どうなっているのかよくわかりません。

ひとつ動きが報じられているのは、政権側は親欧米派の野党指導者らを拘束するなど、露骨な力による対応を強めているようです

****「EU加盟」めぐり混乱続くジョージア 野党党首が殴られ意識失い拘束される****
EU=ヨーロッパ連合への加盟交渉をめぐりデモ隊と警察の衝突が続いているジョージアでは、野党の党首が警察に意識を失うまで殴られ、拘束される事態となりました。

ロシアの隣国ジョージアの最大野党「変革のための連合」の党首のニカ・グバラミア氏が3日、警察に拘束されたと報じられました。

野党系テレビ局が公開した動画には、意識を失ったグバラミア氏とみられる人物が数人の警察官によって車に引きずり込まれる様子が映っています。

ロシア寄りの立場を取る与党のコバヒゼ首相は、この件について「政府を打倒するためにデモでの暴力を煽った人物が対象」だと述べ、「弾圧というより予防措置だ」として警察の対応の正当性を主張しています。

首都トビリシでは、先月28日に首相が「EUへの加盟交渉を4年間停止する」と決定したことに対し、親EU派の市民が抗議デモを行い、警察との衝突が続いていました。

デモは6日間続いており、これまでに300人以上が拘束されたほか、けが人が100人以上出ているということです。【12月5日 TBS NEWS DIG】
***********************

****東欧ジョージア、親欧米派の野党指導者を相次ぎ拘束 抗議行動続く****
東欧のジョージアでは、欧州連合(EU)加盟交渉を停止する政府決定に抗議する親欧米派の野党指導者らが警察によって相次いで身柄を拘束された。地元メディアが内務省の発表として伝えたところによると、「暴動を組織し、扇動した」として7人が逮捕された。抗議行動は4日で7日目を迎えた。 

最大野党「変化のための連合」は、指導者の1人であるニカ・グバラミア氏(48)が首都トビリシで警察によって暴行を受け、意識不明のまま手足をつかまれて拘束されたとして、その際の映像を「X」に投稿した。

ロイターはグバラミア氏が暴行を受けたかどうか独自に検証できなかった。ただ、同党が投稿した映像では、グバラミア氏は拘束された際に体を動かす様子が見られなかった。

警察は他の野党指導者も拘束しており、これまでに拘束された指導者は少なくとも6人に上っている。当局は指導者らの自宅を家宅捜索し、エアライフルや火器などを押収した。

政府がEU加盟交渉を突如打ち切ったことに対する抗議行動は数千人規模となっており、警察が放水銃や催涙ガスでデモ隊を排除している。

コバヒゼ首相は記者会見で、野党勢力に対する弾圧だとの声が上がっていることについて「弾圧ではなく阻止だ」と主張した。【12月5日 ロイター】
*****************

【今も続く抗議行動 14日の大統領選挙を控え「今後何日かが正念場」】
上記は12月4頃の状況ですが、その後、政権側の力の行使が強まる中で抗議デモはどうなったのか? 続いているのか? あるいは政権によって鎮圧されたのか・・・・報道は多くはありませんが、その後もデモは続いているようです。

****ジョージア争乱、与党支持者がデモ隊を暴行か、警察の取り締まり激化***
◎デモ隊は与党「ジョージアの夢」がEU加盟交渉の中断を決めたことに憤慨し、国会周辺で抗議デモを続けている。

2024年12月8日/ジョージア、首都トビリシ、政府与党に抗議する人々(AP通信)ジョージアの首都トビリシで8日、政府与党に抗議するデモが行われ、数万人が参加した。トビリシでのデモはこれで11日連続となった。

警察は国会議事堂周辺にバリケードを設置し、デモを抑制するため、武力行使を強めている。
機動隊は連日、放水砲や催涙ガスを使用してデモ隊を解散させている。

AP通信によると、中央大通りにバリケードを設置した市民と機動隊が衝突し、数十人が逮捕されたという。

7日夜のデモでは地元テレビ局のレポーターと同僚が覆面をした集団に殴られた。その様子を記録した映像はSNSで拡散した。警察はコメントを出していない。

殴られたレポーターはAPの取材に対し、「与党の支持者とみられる覆面をした男たちがデモ参加者に暴力を振るうところを撮影した際、押し倒され、地面に叩きつけられた」と語った。

レポーターの同僚は頭を負傷。カメラを奪われたという。
このテレビ局は与党「ジョージアの夢」が機動隊と支持者による暴力を容認していると非難したが、政府はこの主張を否定した。

デモ隊はジョージアの夢がEU加盟交渉の中断を決めたことに憤慨し、国会周辺で抗議デモを続けている。
ジョージアの夢は10月26日の議会選(一院制、定数150)で過半数を獲得。野党とズラビシュヴィリ大統領は政府がロシアの協力を得て票を操作したと主張し、議会をボイコットした。

与党がEU加盟交渉の中断を決めて以来、抗議デモは激しさを増し、一部の暴徒と機動隊が衝突する事態となっている。

8日のデモ行進でも警察に向かって花火を撃ちこんだ男性が機動隊に殴られ、連行された。
APによると、少なくとも10人以上のカメラマンや記者が暴動に巻き込まれ、そのうち何人かは意識不明の状態で入院しているという。

7日夜にはジョージアの夢の事務所に入ろうとしたデモ参加者2人が正体不明の覆面をした男たちに殴られ、軽傷を負った。【12月9日2 KWP News】
*********************

****グルジアの抗議行動は13日目の夜に入り、EUは「措置」を脅かす****
トビリシ (AFP) – 欧州連合(EU)がデモ参加者に対する当局を罰する可能性があると警告した後、火曜日、何千人もの親ヨーロッパ派の抗議者がグルジア政府に対して13日連続で反発した。

EUとグルジアの国旗を振り、大声でクラクションや笛を吹き鳴らしながら、デモ隊は議会の外に集まり、選挙が争われた後、EU加盟の推進を棚上げするという政府の決定に対する怒りを声に出した。(後略)【12月10日 FRANCE24からの自動翻訳】
*********************

自動翻訳ですのでよくわからない点はありますが、少なくとも抗議行動が続いているようです。
14日は大統領選挙で、おそらく与党候補が間接選挙で選ばれると思われますので、混乱が拡大することも想定されます。

下記は11日掲載の記事で「今後何日かが正念場だ」とありますが、何日の状況をもとにしたものかは定かではありません。

****親ロシア与党vs親EUの市民...ジョージアはロシアの「衛星国」になるのか? 「西側の決断」が鍵を握る****
<不正が疑われる議会選挙後に、与党がEU離れを鮮明にして市民の怒りが爆発>
ジョージアは今、岐路に立たされている。不正選挙の疑いが指摘されている10月の議会選で勝利した与党「ジョージアの夢」がEU加盟交渉を中断すると発表。多くの市民がこれに反発し、大規模な抗議デモが全土に広がっている。

この状況は2014年にウクライナで起きた「マイダン革命」を想起させる。ウクライナでも当時のビクトル・ヤヌコビッチ大統領がEUに背を向け、ロシアに擦り寄ったことで市民の怒りが爆発した。

治安当局は治安部隊を投入し、放水砲や催涙ガスを使用。ジャーナリストや活動家を逮捕するなど強権的な手法でデモを抑え込もうとしている。

親ロシアの「ジョージアの夢」は、選挙戦中にはEU加盟を推進すると約束していた。前党首で首相のイラクリ・コバヒゼはなぜ突然、22年に始まったEU加盟交渉を28年末まで凍結する方針を打ち出したのか。

理由は不明だが、旧ソ連崩壊時の混乱に乗じて蓄財した資産家で、与党の創設者でもあるビジナ・イワニシビリの意向が働いているのは確かだろう。

交渉中断を発表した11月28日の声明で、コバヒゼは自国を脅迫したとしてEUを非難した。同日、欧州議会は10月に行われたジョージアの議会選の投票プロセスは「自由でも公正でもなかった」と結論付け、選挙結果を無効とする決議を採択した。

それにより12月にはEU側からジョージアとの加盟交渉が打ち切られる見通しとなり、コバヒゼは相手が言い出す前に「交渉お断り」を宣言したのかもしれない。

西側の決断が鍵を握る
あるいは意図的に市民を挑発し、デモの鎮圧を口実に反政府派を一掃しようとした可能性もある。だとすれば、その読みは甘かったようだ。抗議デモはジョージア史上最大規模の広がりを見せている。

市民は自主的にデモに参加。中心となる指導者や政党は不在だが、デモの波は首都トビリシだけでなく、他都市や村々にまで広がっている。草の根レベルの運動がここまで広がったことが、EU加盟を望むジョージアの人々の揺るぎない決意を物語る。

政府機関の内部にもデモを支持する動きがある。国防省、外務省、司法省などの官僚が相次いでEU加盟交渉の中断に抗議する書簡に署名。ジョージアの国連大使も辞任した。

ジョージアの国家元首であるサロメ・ズラビシビリ大統領はEU加盟を推進する立場で、市民のデモを支持。公正な選挙を実施して有権者の意思を反映した新政権を発足させようと国民統一評議会を立ち上げた。

だが大統領の権限は限定的で、この試みを成功させるにはEUと米政府が強力かつ迅速に後押しする必要がある。

今後何日かが正念場だ。コバヒゼ政権が力ずくでデモを抑え込めば、EU加盟の望みが断たれるばかりか、この国の民主主義が崩壊しかねない。

ロシアはルーマニア、ブルガリアに次いでジョージアと、近隣諸国に次々に自国寄りの政権を打ち立てようとしている。西側がこれを阻止するには、独自の戦略が必要だ。

目下のターゲットはジョージア。ここ数日の西側の決断次第で、ジョージアの民主主義が強化され、親EU色が一層強まるか、権威主義に急傾斜し、ロシアの「衛星国」となるかが決まる。【12月11日 Newsweek】
*********************

前述のように上記記事が何日の状況をもとに「今後何日かが正念場だ」と言っているのかはわかりません。

ただ、繰り返しになりますが14日に大統領選挙が行われ、政治の主導権を持つ首相、その首相を支える議会に加えて大統領も与党側がおさえるという事態になれば、政権側の抗議活動に対する攻勢も強化され、政権の体制も堅固なものになると思われますので、今日11日においても「今後何日かが正念場だ」と言っていいと思われます。

なお、ロシアは常々、中東欧諸国の「民主化」は欧米の介入によるものだと主張していますが、“この試みを成功させるにはEUと米政府が強力かつ迅速に後押しする必要がある”とあるように、そうした欧米の介入は事実でしょう。

ただ、欧米の介入はあくまでも市民の自主的な動きを補助するもので、欧米が作り出したものではないでしょう・・・どうかな?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シリア  大量に押し寄せる... | トップ | インド  アメリカの「上か... »
最新の画像もっと見る

欧州情勢」カテゴリの最新記事