(売り場の中心に置かれたばら売りの月餅【9月18日 レコードチャイナ】)
【「体力テスト」の滑稽さに、かつての文革とも通じる現実無視の教条主義の影も】
中国からは日々、いろんなニュースが届きますが、下記記事もそのひとつ。
スポーツ界の「笑える話」と言えばそれまでですが、根っこの部分で案外中国政治の根幹とつながっているかも・・・という印象も。
****「中国スポーツ界は終わり」の声も、有力選手を相次ぎ脱落させる“珍制度”に大ブーイング!*****
中国のスポーツ大会で新たに導入されている「体力テスト」の結果で成績を決める方式に、各方面から疑問の声が上がっている。
■アジア記録で1位も決勝に進めず?
発端は青島市で開催された全国水泳選手権だ。女子1500メートル自由形予選で、遼寧省の王簡嘉禾(ワン・ジエンジアハー)が15分45秒59をマークし1位になった。
これは、中国記録とアジア記録を塗り替えるものだったが、3000メートル走、懸垂、ベンチプレス、スクワット、などの10種目からなる「体力テスト」の成績が振るわなかったため決勝に進出できなかった。
ほかの種目でも同様の現象が見られ、傅園慧(フー・ユエンフイ)、于静瑶(ユー・ジンヤオ)、方[吉吉](ファン・ジャー)らはいずれも予選1位のタイムを出しながら「体力テスト」の成績によって決勝に進めず。男子50メートル自由形で中国記録をマークした余賀新(ユー・ホーシン)も例外ではなかった。
この大会では、予選の成績上位16人のうち体力テストの成績上位8人が決勝に進出すると規定されていた。
■各方面から疑問の声
王は予選のレース後、体力テストを重視していないわけではないとしつつも、「体力テストの結果で上位8人を決めるというのは、やはりやや思慮に欠けると思う」と遠回しに不満を表明した。
2016年リオデジャネイロ五輪での天然キャラでブレイクし、日本の番組にも取り上げられた傅は、SNSに「私が一生のうちに長距離走を走れる日が来るとは想像できない」と書き込み、くやしさをにじませた。
関係者からは「一番の問題は十把ひとからげにしているところ。科学的な基準を設けるべきだ。どの競技の選手も3000メートルを走らなければならないというのはおかしい。持久力を測るにはさまざまな方法がある」との声も上がった。
また、水泳選手からは「私たちにとって大切なのは脚の関節の柔軟性」「水中競技の選手なので陸上競技は得意ではない。マラソン選手が泳げるわけではないのと同じこと」との声も聞かれた。ある専門家は「テストの項目を細分化し、競技に応じたテストにすべき」との見解を示した。
■中国水泳協会は反論
選手らからの不満の声に対し、中国水泳協会の周継紅(ジョウ・ジーホン)会長は「中国水泳界がさらに高いレベルに行くためには、基礎と専門の両方が必要。中国の選手の短所を補い、世界における競争力を高めることが目的で、選手たちに身体能力と専門競技のいずれにおいても世界トップレベルになるよう奨励するものだ。今大会で初めて導入したが、この改革の方向性を堅持する」とした。
また、「多くの選手が体力テストで良い成績を残し、満点を出している選手もいる」と強調し、中国記録をマークした余について「去年の世界のランキングでは11番目の成績。世界大会で準決勝に入る実力があることを示しているが、決勝進出を保証するものではない」と説明した。傅らの記録についても評価する一方、「世界レベルとはまだ開きがある」とした。
■他の競技でも有力選手が次々脱落
「体力テスト」は競泳のほかにも、陸上、バレーボール、バドミントンなどの国内大会で採用されているが、やはり物議を醸している。
全国体操選手権の女子跳馬では、この「体力テスト」で基準をクリアできなかった選手が続出し、決勝に進出できたのはわずか5人。そのうちの1人は、決勝で助走から跳馬に手をつき、前方に一回転する「前転とび」という「最も簡単な技」で全国5位を獲得した。中国メディアの新浪新聞は「体力テストが滑稽な一幕を生み出した。全国大会でアマチュア演技」と痛烈に皮肉った。
また、南京市で行われたフェンシングの全国大会の女子エペでは、2019年の世界選手権団体優勝メンバー2人が「体力テスト」の「前屈」と「縄跳び」の成績に振るわなかったことでベスト8に入れず。同大会ではベスト16のうち体力テストの成績上位8人が競技に臨み、残りの8人は体力テストの成績で順位が決定した。
■ネットでは不満の声が多数
「体力テスト」による順位付けについて、ネットユーザーからは「明らかに問題があるルール」「天下に名をはせる滑稽さ。スポーツ選手が身体能力を競い合う」「こんなおかしな規定で一生を台無しにされる選手がかわいそう」「世界記録を破っても体力テストを通過できなきゃ試合に出られない。中国スポーツ界の謎」「こんなことを続けるようなら中国スポーツ界は終わりだ」など、反発する声が大半を占めている。
中には、「お聞きしますが、スポーツ関係の役人は体力テストを受けなくてもその職に就けるのですか?」とやゆするユーザーもいた。
なお、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)のランキングでは29日午前現在、「体力テスト」に関するワードが上位を占めている。【9月29日 レコードチャイナ】
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「本当かね?」と思えるほど、「笑える話」です。
“ネット上でも「中国のスポーツ管理当局に存在する形式主義、官僚主義がまた露呈した」などの批判が出ていると記事は伝えている。”【9月29日 レコードチャイナ】とも。
「基礎と専門の両方が必要。中国の選手の短所を補い、世界における競争力を高めることが目的で、選手たちに身体能力と専門競技のいずれにおいても世界トップレベルになるよう奨励するもの」という中国水泳協会の主張には一理あります。
一理ありますが、その一点でもって複雑多岐な現実すべてに網をかけてしまう粗雑な思考に、私は文化大革命の粗暴さを連想しました。
(習近平周辺は、再評価したがっているようで、評価に揺らぎがみられますが)今では否定されたことになっている文化大革命にしても、主導した毛沢東・四人組にも一定の理念はあったでしょう。
ただ、その理念を絶対視し、それにそぐわない現実をすべて否定・破壊しようとした教条主義・原理主義が、あの悲劇を生みました。
何かその文革の誤り・滑稽さと同じようなものを今回の「体力テスト」に感じた次第です。
【変わらない中国 変わる中国 ここが変われば・・・】
以下、最近目にした中国発の興味深いニュースをいくつか。
先ず、「いかにも中国らしい・・・」と思わせる、従来からあるネガティブイメージがいまだに現実にそんざいすることを示すニュース。
****砂にはまった車を助けようとしたら全力で阻止された理由とは―中国****
2020年9月14日、中国メディアの澎湃新聞は、旅行客を罠(わな)にはめるための公衆トイレについて紹介する記事を掲載した。
記事によると、甘粛省敦煌市に、旅行客を罠にはめるための公衆トイレがある。このトイレは道路から少し離れた所に設置してあり、途中は砂地になっている。トイレに行くために車が砂地に入ると、深い砂にはまって出られなくなり、ロープでけん引する際に多額に費用を請求するのだという。
中国版ツイッター・微博(ウェイボー)にこのトイレについての動画が投稿された。動画を撮影した男性は、ちょうど通りかかった時にトイレに行こうとして砂地にはまったキャンピングカーを見かけたのでけん引ロープで引っ張ってあげようとしたが、その場にいた作業員数人に阻止された。
けん引フックにロープを引っかけても、作業員によってすぐに外されてしまっている。作業員はこの男性に「救援証を出せ」と要求。男性は「救援するのに証書が必要なのか?」と反論している。さらに作業員は「わが社にはわが社の決まりがある」と主張している。
作業員は警察に連絡するなどと言っていたが、1時間たっても警察官が来ないため、この男性は通報したふりだったと判断。結局、この男性がけん引ロープでキャンピングカーを引っ張り上げたという。
同市公安局は15日、この件で5人を逮捕したと発表。北京青年報の以前の報道によると、国道215号線のこの場所では、これまでも多くの旅行客が「罠」にはまっており、ある旅行者によると、店のけん引に同意しないとトイレの鍵を渡してくれないのだという。【9月17日 レコードチャイナ】
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トイレに行く車が砂地に入るように「罠」を仕掛け、救出の牽引に法外な料金を要求する・・・という悪質な手口ですが、昔の川渡しの雲助のようなことが今も行われているとは・・・さすがに中国でもこれは犯罪行為であり、逮捕されたようですが。
カネが儲かるなら何をしてもかまわないというネガティブな職業意識のひとつの表れでしょう。
エジプトのピラミッド観光のラクダでも、法外な料金を要求し、払わないと客をラクダから降ろさない・・・といった類が行われていました。
結果、誰もラクダに乗らなくなって、自分たちの首を絞める結果にも。(もっとも、今は、コロナで客そのものがいなくなりましたが)
中国人に関してはメンツにこだわり、見栄を張るといういうネガティブイメージもありますが、こちらは最近変化も見られるようです。
****高級包装の月餅が「寵愛を失う」、ミニ月餅が人気に****
中秋節(旧暦8月15日、今年は10月1日)が近づき、今年は「節約を励行し、浪費に反対する」という社会の気風の中、月餅を製造する企業では、味の争いのほか、包装の小型化や簡素化もマーケティングの焦点となり、包装やサイズなどに到るまで倹約の気風を表しています。
各大型スーパーでは、ばら売りや小型パッケージの月餅が売り場の中心を占め、注目を集めています。これらの月餅はさまざまな味があり、コストパフォーマンスが高いことから、大人気ということです。
ばら売りの月餅が人気である一方、多くの店では有名ブランドの月餅ギフトセットの売れ行きはあまりよくありません。
スーパーのショッピングアドバイザーは、「伝統的な月餅は120〜150グラムで、1個全部食べると、数回分の食事のカロリーになるため、若者たちは小さくてさまざまな食感の月餅をより好んでいる。1個全部食べてもしつこくない」と述べています。【9月18日 レコードチャイナ】
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華美・無駄な高級月餅の需要が減ったのは、まっとうな流れでしょう。
「節約を励行し、浪費に反対する」・・・・8月16日ブログ“中国 メンツ文化を改善できるか、習近平主席指導の「光盤(皿を空にする)運動」”で取り上げた流れにも共通する風潮でしょうか。
光盤運動もいい話だとは思います。もっとも、食糧危機に備え節約を奨励する「内向き」に習近平主席の基本的性向を見る向きも、鄧小平なら輸入拡大を奨励しただろうと。
それはともかく、お上が「節約」奨励、「浪費」反対などと言い出すと、庶民の生活を束縛する息苦しさも出てきます。やはり、このあたりも習近平主席の「文革」評価・再現ともつながるものがあるのかも。
9月26日ブログ“中国 日本への関心の高さをうかがわせる「怪しい日本街」”で、取り上げ忘れた記事。
中国人の日本への最近の高評価の大きな要素に、日本社会の「清潔」があることを取り上げ、中国でも最近は街は綺麗になったことこと、ただし、自分で綺麗にする意識には欠けていることなどにも触れました。
下記記事はそうした中国の「清潔さ」に関する現状を示すものでしょう。
****なぜ日本にはコインランドリーがあるの? 「他人が使った洗濯機は汚くないの?」=中国報道****
コインランドリーといえば、かつては洗濯機のない単身者や学生が利用するというイメージだったが、最近ではカフェが併設されているおしゃれな空間や、ガソリンスタンドに併設されたコインランドリーもあり、ずいぶんと様変わりしたようだ。
すっかり魅力的になった日本のコインランドリーだが、中国人には抵抗があるようだ。中国メディアの百家号は19日、日本のコインランドリーについて紹介する記事を掲載した。中国ではほとんど見かけないため珍しく思ったようだ。
記事の中国人筆者は、中国人なら普通「他人が使った汚い洗濯機で洗いたくない」と考えるもので、だから中国ではコインランドリーが普及しないのだと分析。これは、「他人の使ったものは汚いもの」という固定概念によるようだ。
中国では、自分のものは大切に使うが、そうでなければきれいに使わないので、公共の場所がすぐに汚れたり壊れたりする傾向がある。
しかし日本人は、他人に迷惑をかけないことを重視するので公共の場所も自分の家と同じように、時にはそれ以上にきれいにしようとするものだ。
だからこそ、日本旅行に来た中国人が、口をそろえて日本の公共トイレはきれいでトイレットペーパーさえ盗まれていないと感嘆するのだろう。公共の場所は汚いと相場が決まっている中国とは大違いだ。(後略)【9月23日 Searchina】
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こおあたりの公共物をきれいに・大切に使うということが実現できるようになれば、本当に「中国は変わった」ということにもなり、マクロ的には世界をけん引する立場も実現できるようになるのでしょう。
自分のものしか大切にしない、公共トイレが汚い国が、いくら世界平和、共存共栄を訴えても白々しいものがあります。
【どうしてこんな間違いが?】
最後に、「どうしてこんなことが?」という奇妙な話題。
****「習近平氏娘の熱唱動画」は誤り、実際は日本の有名人*****
中国の習近平国家主席の娘、習明沢さんが米ハーバード大学の2014年の卒業式で歌っているという動画がフェイスブックで600回以上シェアされている。しかし、この動画は2008年からネット上にあり、歌っているのは日本人の歌手だ。
8月30日にフェイスブックに投稿されたこの動画は、9月に入った時点で再生回数が677回を超えていた。
投稿には、「習近平氏の娘、習明沢さんは2010年から2014年までハーバード大に在籍か?」「非常に優秀で、大学卒業まで習主席の娘とは確認されていなかった」といった内容が繁体字中国語で書き込まれている。
さらに、大学の卒業式では、母親譲りの美声でコニー・フランシスさんの歌「ボーイ・ハント(原題:Where the Boys Are)」を披露したと書かれている。
中国の国営メディア、中央人民放送によると、明沢さんは1992年生まれで、習近平主席と歌手の彭麗媛夫人の一人娘。フェイスブックと、ユーチューブに投稿された同じ動画にも同様の説明が書き込まれている。
だが、この説明は誤り。
キーワード検索をしたところ、日本の歌手で女優の西田ひかるさんが歌っている同じ動画が見つかった。2008年7月に「where the boys are - 西田ひかる」というタイトルでユーチューブに投稿されている。
ただし、米誌ニューヨーカーによると、明沢さんが2014年にハーバード大学を卒業したのは本当。そのときは違う名前を使用していたと同誌は報じている。 【9月19日 AFP】
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一体どうして西田ひかるが習近平の娘になったのでしょうか?
不思議な間違いもあるものです。
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