孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベトナム  バイデン大領訪問で米越関係強化 中国に対抗して、ベトナムを半導体制裁拠点に育成

2023-09-10 23:09:11 | 東南アジア

(バイデン米大統領(左)とベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長=10日、ベトナム・ハノイ【9月10日 産経】)

【インドネシアでのASEAN関連首脳会議を欠席したバイデン大統領 インドネシアで広がる波紋】
バイデン大統領はインドネシアで開催されたASEAN関連首脳会議を欠席してハリス副大統領が出席、ASEAN側には「軽視」された失望も広がっています。

特に、開催国インドネシア側には面子を潰された思いもあるようです。

バイデン大統領のASEAN「軽視」の背景には、ASEANには中国の影響力が強い加盟国もあって、結局中国対応で明確な姿勢を打ち出せないということもあるように推測します。

それ以外に、インドネシアのジョコ大統領の中国重視姿勢が影響しているとの指摘も。

****アジアの視線 インドネシアを待つ「外交的屈辱」 森浩****
(中略)
インドネシアはASEANが1967年に5カ国で発足した際の創設メンバーだ。東南アジア最大の2億7千万人超の人口を抱え、ASEANの盟主としてのプライドがある。奏功しているとは言い難いが、国軍がクーデターで実権を握ったミャンマー問題の解決に向けてリーダーシップを見せている。

ただ、これまでもバイデン政権のインドネシアを巡る対応は物議を醸したことがある。2021年7〜8月にかけ、オースティン米国防長官とハリス氏が東南アジア各国を歴訪した際、インドネシア訪問はなかった。「米国はインドネシアに不信感がある」という疑念は近年、インドネシアのメディア関係者らの間で強まっていた。

14年発足のジョコ政権は米国との関係を重く見る姿勢は示しつつも、外交関係の軸に据えたのは中国だ。インドネシアメディアによると、ジョコ氏は大統領就任以降、訪米3回に対し、訪中は6回。今年7月には中国・四川省で習近平国家主席と会談し、新首都建設への支援を要請した。

それにも関わらず、中国の覇権的な海洋進出は止まらず、インドネシア北西部ナトゥナ諸島周辺での中国船の活動は常態化している。

インドネシアにとり安全保障面での米国との連携強化は焦眉の急だが、ジャカルタ・ポストは、親中姿勢が米国との緊密化を妨げていると指摘し、「ジョコ氏は米国との関係を強固なものにできなかった自分自身を責めるべきだ」と苦言を呈した。(後略)【8月22日 産経】
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上記のインドネシア側の受け止め方が的を射たものかどうかはわかりませんが、やはりインドネシアはASEAN中心国であり、今後グローバルサウスをリードする国のひとつでもありますので、そのインドネシアとの関係がギクシャクするのはアメリカにとってマイナス面もあるかも。逆に、今後に向けてアメリカとして敢えて厳しい姿勢を見せたということでしょうか。

【バイデン大統領 中国に対抗すべく、ベトナム訪問で米越関係のグレードアップ図る】
一方、アメリカ・バイデン大統領が重視しているのがベトナムとの関係。

バイデン米大統領はインドで開催されていたG20を終えて、10日にベトナム訪問し、最高権力者のグエン・フー・チョン共産党書記長と会談します。

アメリカ政府によると、両国関係を新たに「包括的な戦略的パートナーシップ」に格上げすることで合意する段取りになっています。

****米越「戦略関係」に格上げへ 対中国、半導体で連携強化****
バイデン米大統領は10日、ベトナムの首都ハノイを訪問し、最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長と会談する。

バイデン政権はインド太平洋を重視しており、米高官はベトナムに向かう大統領専用機内で、首脳会談で両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすると明らかにした。

バイデン政権はアジアで影響力を強める中国に対抗し、半導体などの供給網再構築の一環としてベトナムとの戦略的連携を強化したい考えだ。

両国関係は「包括的パートナーシップ」だった。専門家らによると「戦略的パートナーシップ」を飛ばして格上げするのは異例の措置となる。

ベトナムは米中間でバランス外交を展開しつつも、南シナ海の領有権問題で中国とのあつれきは強まっている。ベトナムは半導体生産や人工知能(AI)分野に力を入れており、米国は同盟国や友好国と供給網を構築する「フレンド・ショアリング」で協力を目指す。

ベトナム戦争を経て両国は1995年に国交正常化し、武器関連の禁輸措置を段階的に緩和してきた。【9月10日 共同】
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「包括的パートナーシップ」「戦略的パートナーシップ」「包括的戦略パートナーシップ」の違いはよくわかりませんが、両国関係のレベルが更にグレードアップされたということでしょう。

岸田首相が出席して9月6日に開催された日本とASEANの首脳会議においても、日ASEAN包括的戦略的パートナーシップ(CSP)を立ち上げる共同声明が採択されています。

なお、ベトナムはこれまでロシアや中国を「包括的戦略的パートナーシップ」に位置づけ、アメリカとの関係はこれより劣後していました。中国への対抗を念頭に、アメリカはかねてよりベトナム側に、関係の格上げを働きかけていました。

ベトナムは経済面での中国との関係は深いものの、南シナ海領有権をめぐって中国と厳しく対峙する関係にあり、アメリカとの関係強化は中国を牽制するものともなります。

【訪問直前に、ベトナムとロシアの関係の強さを示す秘密裏の武器取引計画ニュースも】
ただ、これまでも度々触れてきたように、現実重視のベトナム外交はしたたかな側面があり、必ずしもアメリカとの関係にのめり込んでいる訳でもありません。

そのあたりの“したたかさ”はロシアとの関係でもあきらかになっています。

****ベトナムがロシアと秘密裏に武器取引計画 シベリアの合弁会社経由で 米紙報道****
アメリカのバイデン政権が対中国を念頭に関係強化を目指すベトナムが、秘密裏にロシアから武器輸入を計画していたとアメリカメディアが報じました。

ニューヨーク・タイムズによりますと、入手したベトナム政府の内部文書に、ロシアから秘密裏に武器を購入する計画が記されていたということです。

文書は今年3月付けで、計画はアメリカの監視を逃れるためにシベリアにあるベトナムとロシアの合弁会社を経由して支払いを行い、ベトナムの軍装備を近代化させるという内容だったとしています。

また、文書には武器の取引が両国間の「戦略上の信頼関係を強化する」と記されていたとも伝えていますが、実際に取引が行われたかは分かっていません。

バイデン大統領は中国に対抗するために10日にベトナムを訪問し関係強化を図ろうとしていますが、ベトナムとロシアの結び付きの強さが明るみになったことで、アメリカ側への取り込みが一筋縄ではいかないことが浮き彫りになった形と言えそうです。【9月10日 テレ朝news】
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バイデン大統領訪問直前にこういう情報が公開されるというのは、たまたまでしょうか、何か裏の動きがあるのでしょうか・・・わかりません。ドラマならいろんなシナリオが考えられるところですが。

ベトナムとしては南シナ海への中国進出に対抗するためにはアメリカを利用したいけど、アメリカと中ロの対立構図には巻き込まれたくない・・・というのが本音でしょう。

アメリカとしてもそれは承知の上で、更にそのベトナムを自陣に引っ張りこめるか・・・というところ。

【アメリカはベトナムを半導体生産拠点に成長させる狙い ただし、深刻な技術者不足も】
その関係強化の中心に位置づけられているのが“半導体生産”。

アメリカは中国に絡む供給リスクへの備えとして、ベトナムを半導体の生産拠点として急成長させる計画のようです。しかし、このプランを進める上でベトナムの慢性的な技術者不足が重い課題に浮上しています。

****米が狙うベトナム半導体拠点化、技術者不足が重い課題*****
バイデン米大統領は9月10日からベトナムの首都ハノイを訪問する。両国関係の本格的な強化が狙いで、半導体が議論の焦点になる見込み。米政権関係者によると、バイデン氏はベトナムの半導体生産強化に向けた支援策を提示する予定だ。

友好国で供給網を完結させる「フレンドショアリング」構想に戦略的な半導体産業が組み込まれていることは、米国がベトナムの共産主義指導者を説得し、正式な関係強化への同意を求める重要な動機の1つとなっている。ベトナム政府は当初、中国の反発を恐れ、米国の求めに応じることに消極的だった。

両国の本格的な関係強化により、ベトナムの半導体産業には数十億ドル規模の新規民間投資のほか、一部の公的資金も流れ込む可能性がある。

しかし関係者によると、ベトナムの半導体産業は熟練した技術者が少ないことが急速な発展にとって大きな障害になりそうだ。

米国・ASEANビジネス評議会ベトナム事務所のVu Tu Thanh代表は、「実働可能なハードウエア技術者の数は、数十億ドル規模の投資を支えるのに必要な数をはるかに下回っており、今後10年間で必要とされる水準の10分の1程度に過ぎない」と述べた。

1億人の人口を抱えるベトナムは、半導体セクターで必要な熟練技術者の数が5年後に2万人、10年後には5万人に膨らむと見込まれるが、今は5000人ないし6000人しか育っていないという。

またRMIT大学ベトナム校でサプライチェーン(供給網)に関するシニア・プログラム・マネージャーを務めるフン・グエン氏は、熟練した半導体ソフトウェア技術者の供給が不足するリスクもあると指摘した。

<中国の優位>
ベトナム政府の統計によると、同国の半導体業界の対米輸出額は年間5億ドル余り。現状ではサプライチェーンの後工程、つまり組み立て、パッケージング、試験に重点が置かれているものの、設計などの分野も徐々に拡大している。

米政府はベトナムの半導体産業のどの分野に優先的に取り組むかを明らかにしていないが、米国の業界幹部は後工程が重要な成長分野だと指摘した。

計画を練る上では中国の存在感が大きい。ボストン・コンサルティング・グループの分析では、2019年には世界の半導体後工程の40%近くが中国にあり、米国の割合はわずか2%だった。中国が軍事活動を活発化させ、紛争への懸念をあおっている台湾は27%。

つまり半導体セクターにおいて組立部門は製造部門に次ぎ業界で最も地域的な集中度合いの高いセクターのひとつで、中国がこれほど支配的な地位を占めている分野は他にない。

米半導体大手インテルはベトナム南部で15年ほど前から半導体の組み立て、パッケージング、試験を行う世界最大級の工場を運営してきたにもかかわらず、ここまで中国への集中が進んだ。

ただ、米半導体大手アムコーがハノイ近郊に半導体の組み立てと試験を行う最新鋭の巨大工場を建設する、と先月ハノイを訪問したイエレン米財務長官が明らかにするなど、ベトナムへの関心は高まっている。

とりわけ米国が自国の半導体生産を強化する狙いで導入したCHIPS法に盛り込まれた5億ドルの資金のかなりの部分がベトナムに向かえば民間投資はさらに増えるだろう。

RMIT大学ベトナムのフン氏は、米国はベトナムの半導体原料、特に中国に次いで世界第2位の埋蔵量を持つと推定されるレアアースの供給を強化することにも関心があるかもしれないとみている。

ベトナムは小規模な半導体設計分野にも企業が進出している。米半導体設計ソフトのシノプシスが事業展開しているほか、同業のマーベルが世界トップクラスの拠点建設を計画している。またベトナムは半導体製造装置メーカーからの関心も集めている。

<求人>
しかし、熟練技術者の不足に適切に対応しなければ半導体産業の野望は夢物語に終わり、ベトナムはマレーシアやインドといったアジア地域の競争相手に対してより弱い立場に置かれるかもしれない。

関係者に話を聞くと、インテルは熟練技術者の数を増やすよう当局に繰り返し要請している。

消息筋によると、インテルは今年に入り、ベトナムでの事業規模を現在の15億ドルから2倍近くに拡大することを検討した。ただ、6月に同社は欧州での大規模な投資を発表しており、その後もこの計画が継続しているかどうかは不明だ。インテルはコメントの求めに応じなかった。

アムコーはベトナムのウェブサイトで約60件の求人をかけており、そのほとんどが技術者とマネジャーだ。

米国・ASEANビジネス評議会のThanh氏によると、技術者不足対策として国内の熟練技術者が十分に増えるまで、外国人技術者の労働許可証の発行規則を緩和することが考えられる。しかしそのためには法改正と行政手続きの迅速化が必要で、ベトナムではこれは容易なことではないというのが関係者の見方だ。

ホワイトハウスは声明で、バイデン氏はベトナムの指導者と既存の訓練イニシアティブを拡大するような労働力開発プログラムについて話し合うつもりだと説明した。【9月2日 ロイター】
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