テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― ひっそり、夜のミュゼから ―

2019-04-16 22:09:18 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 ぐすんッ、かなしいィでスよゥ~…」
「がるる!ぐるるる^…」(←訳:虎です!寂しいよ~…)

 こんにちは、ネーさです。
 パリのノートルダム寺院で火災というニュースに
 朝から打ちのめされました……
 私ネーさ、ノートルダムのガーゴイル君が大好きなんです。
 数々の小説作品にも登場しているガーゴイル君が
 どうか無事でありますようにと祈りながら、
 本日の読書タイムは、
 “かけがえのないもの”をテーマにしたこちらの御本を、
 さあ、どうぞ~!

  



       ―― 京都東山 美術館と夜のアート ――



 著者は高井忍(たかい・しのぶ)さん、2019年1月に発行されました。
 東京・上野のあたりを東日本の“美術館のメッカ”とするなら、
 西日本では――

「ここォでスねッ!」
「ぐるるがる!」(←訳:京都の東山!)

 京都府京都市の、地下鉄東山駅から
 歩いて10分とかからない場所に、
 平安神宮の大鳥居を挟むようにして
 新旧ふたつの美術館が向かい合っています。

 SF映画に出てきてもおかしくない近未来風フォルムの、
 国立近代美術館――
 通称《キンビ》。

 対照的にレトロなデザインの、
 赤レンガの洋館が市立美術館――
 通称《イチビ》。

 そして、この物語の主人公さんは、
 《イチビ》の若き女性警備員さんです。

「さいきんッ、おおいィのでスゥ!」
「がるるぐるるるる!」(←訳:女性の警備員さん!)

 美術館で働きたい!
 というのが、
 神戸静河(かんべ・しずか)さんの
 かねてよりの希望、でした。

 ええ、そうなんです。
 名画や彫刻に囲まれてのお仕事は
 お似合いだね~!いいところに就職できたね!
 と静河さんの友人たちは祝福してくれましたが、
 職種を聞いて目をパチクリさせるのです。

 警備員さん……?
 ガードマンってこと……?
 お人形さんみたなルックスの、
 細っこくて、大人しいタイプなのに、
 警備員なんて、大丈夫……?

「いまのォところはァ~」
「ぐるがるるぅる!」(←訳:全然だいじょぶ!)

 警備員さんとはいえ、
 警備のお仕事イコール荒事(あらごと)ではありません。

 美術館の建物内部の保全、点検、
 行列の整理、お客さんの案内、
 迷子ちゃんの保護、夜勤の係さんとの引継ぎや、
 落し物があれば事務室で保管し、
 建物の外――敷地内を巡回して、
 異常がないか、チェックする。

「いちにちじゅうゥ、おおいそがしィ!」
「がるるるるぐる!」(←訳:お疲れさまです!)

 暑さがこもる、京都盆地の夏の宵。

 静河さん、いつもはまっすぐ家に帰る……ところを、
 今日は同僚の葉月(はづき)さんと一緒に
 お芝居を観に行く約束をしていました。

 お芝居の会場は美術館のご近所でしたから、
 事務所に手荷物を預けていたふたりは、
 観劇後、広い敷地を横切って
 夜の美術館へと
 気分よく歩いて、歩いて……あ?

「むむゥ! あやしのォ、ひかりィ!」
「ぐるがぅるるる!」(←訳:外灯じゃないよ!)

 庭園の外灯とは違うその光は、
 小さく、赤く、
 幾匹ものホタルが群れているかのよう……?

 明らかな“異常”事態に、
 ふたりの頭の中に警戒警報が鳴り響きます。
 
 あの光の、正体は……!

「かッ、かくにんッ、しまスかッ」
「がる~っる!」(←訳:そ~っと!)

 ……と、
 緊張と緊迫に満ち満ちたシーンをご紹介いたしましたが、
 表紙の可愛らしいイラストから推察できますように、
 美術館運営の裏側を描く連作ミステリは
 のんびりしたい連休にぴったりの
 “知力”派短編4作品で構成されています。

 次代へと受け継がれゆく美しいものたちが
 暫しの眠りに就く夜、
 ひっそりと行き過ぎる不思議な出来事の物語を、
 活字マニアの皆さま、ぜひ。
 
 
コメント
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