テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 王子を待つ《冬》 ~

2023-02-21 22:08:36 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 さいごまでェ、だいにんきィ~なのでスゥ!」

「がるる!ぐぅるるぅる~!」(←訳:虎です!シャンシャン~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 シャンシャンちゃんを乗せたトラックは

 大勢のファンさんが見守る中、空港へ……

 名残惜しいけれど、どうか元気でね、ありがとう、と

 私たちも感謝の気持ちを送りながら、

 さあ、ここからは読書タイムですよ。

 本日は、こちらの御本を、どうぞ~♪

  

 

 

   ―― ジェラール・フィリップ 最後の冬 ――

 

 

 著者はジェローム・ガルサンさん、

 原著は2019年に、画像の日本語版は2022年11月に発行されました。

 仏語原題は『LE DERNIER HIVER DU CID』、

 フランスの名優ジェラール・フィリップさんの

 “最後の日々”を追ったノンフィクション作品です。

 

「とにかくゥ、かッこいいィのでス!」

「ぐるがるぅ!」(←訳:美男だよう!)

 

 1950年代のフランスで

 最大の支持を獲得した俳優さん、といえば、

 ジェラール・フィリップさんでした。

 21世紀となった現在でも、

 ジェラールさんのお姿は

 『パルムの僧院』『赤と黒』『花咲ける騎士道』など

 映画作品で偲ぶことが出来ます。

 

 私ネーさがジェラールさんを知ったのは、

 ジェラールさんが画家モディリアーニさんを演じた

 『モンパルナスの灯』という作品がきっかけでしたが、

 もう本当にノックアウトされてしまいましたよ。

 

「あんまりィにてないィのにィ~!」

「がるるぐるがるる!」(←訳:本人と錯覚しそう!)

 

 その実力を疑うまでもない、

 超一流の役者・ジェラールさん。

 

 しかし、キャリアの絶頂期で彼を待っていたのは、

 急な病でした。

 

 この御本では、

 ジェラールさんが身体の不調を自覚して以降の出来事が

 ほぼ時系列に沿って記されています。

 それがまた、どうにも切なくて……

 

「はやくゥ、びょういんへッ!」

「ぐるる!がるる!」(←訳:検査を!手術を!)

 

 ええ、本文が始まるやいなや、

 私たち読み手はそう思い、はらはらさせられます。

 ただ……フランスは日本とは医療システムが異なるのか、

 時代性や技術の問題なのか、

 或いはジェラールさん御自身が検査を忌避したのか、

 結果から言えば……

 間に合いませんでした。

 

 いえ、急いで検査や治療をしたとしても、

 おそらく間に合わなかった……

 ジェラールさんを襲ったのはそういう病気だったようです。

 

「ただァもうゥ~…」

「がるる……」(←訳:ため息……)

 

 未来は無い?

 いいや、未来はきっとある。

 

 病気が進行する中でも、ジェラールさんはそう信じていました。

 でなければどうして、

 映画『モンテクリスト伯』出演を

 約束したりするでしょう?

 ローレンス・オリヴィエさん主演『ハムレット』の舞台を

 観るために英国へ旅したり、

 『ハムレット』仏訳版脚本を持ち歩いたりするでしょう?

 

「すごいィ~きゃくほんッ!」

「ぐるるるるるる!」(←訳:信じられないよ!)

 

 『ハムレット』仏訳版の脚本は、4種類。

 アンドレ・ジッドさん、マルセル・シュウォップさん、

 マルセル・パニョルさん、

 ピエール・レリスさんがそれぞれ仏訳した脚本って……

 私ネーさ、豪華さに目眩がしました。

 

 あのパニョルさんが翻訳した『ハムレット』!

 もしそれをジェラールさんが演るとしたら!

 観たい! なんとしても観たい~!!

 

「えんげきかいのォ、きせきィ?」

「がるる!」(←訳:至宝だ!)

 

 ジェラールさんが夢見た未来。

 実現しなかった未来。

 ジェラールさんのエドモン・ダンテスも、

 王子ハムレットも、

 叶えられることないまま、去ってしまいました。

 

 けれども、

 すべてが消えてしまったわけではありません。

 舞台俳優として、

 世界を魅了した映画俳優として、

 ジェラールさんの名は残ります。

 願わくば、永遠に。

 

 ジェラール・フィリップさん(1922~1959)。

 彼が過ごした《最後の冬》の記録を、

 皆さま、ぜひ。

  

 

コメント
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