「こんにちわッ、テディちゃでス!
つつじィにィ、ぼたんッ!」
「がるる!ぐるるる~!」(←訳:虎です!藤の花も~!)
こんにちは、ネーさです。
初夏めいた気温のせいでしょうか、
お花さんたちがパパパパーン!と咲き競っていますね。
たっぷり目の保養をした後は、さあ、読書タイムですよ。
本日は、こちらの御本を、どうぞ~♪
―― 江戸のかほり ――
著者は藤原緋沙子(ふじわら・ひさこ)さん、
編者は菊地仁(きくち・めぐみ)さん、
2022年12月に発行されました。
『藤原緋沙子傑作選』と副題が付されています。
2002年にデビューした著者・藤原さんは、
2022年に作家生活20周年を迎えました。
この御本は、
《隅田川御用帳》
《橋廻り同心・平七郎控》
《藍染袴お匙帖》
《浄瑠璃長屋春秋記》
という、藤原さん著作の人気のシリーズから
短編1篇ずつを選んで構成したアンソロジー作品です。
「おえどォ、でスねェ~」
「ぐるがるるる!」(←訳:町のざわめき!)
縁切り寺の御用宿を舞台とする《隅田川御用帳》、
お江戸では珍しい女性の医師さんが主人公の《藍染袴お匙帖》、
行方不明の妻を探す浪人さんを主役とする《浄瑠璃長屋春秋記録》、
とシリーズの特色がそれぞれに異なる中で、
私ネーさが感心させられたのは、
《橋廻り同心・平七郎控》シリーズ。
「えどのォまちをォ~まもりまス!」
「がるぐる!」(←訳:特に橋を!)
江戸の町を守る同心さん、といえば、
十手をかざし、盗人たちと闘って捕まえて、と
治安の維持が職務のお役人さんが有名ですが。
立花平七郎(たちばな・へいしちろう)さんは、
定橋掛(じょうはしがかり)、
通称を橋廻り(はしまわり)という、
木槌(きづち)を手にして
江戸の町を見回るお役人さん、なのです。
川にかかっている橋に、
壊れたり、傷んだりしている箇所はないか。
橋のたもとの広場を不法に使う者はいないか。
川の整備に問題はないか。
などなど、橋と川にかかわる案件を
担当する要員な訳で。
「せきにんッじゅうだいィ~でスよゥ!」
「ぐるるるがるるぐるる!」(←訳:お江戸は水の都だもん!)
21世紀の現代と違って、
昔むかしの江戸の町は、
天然の河川と大小の運河が縦横に走る水運の都。
平七郎さんたちが管理している江戸の橋の数は、
なんと、125にも上ります。
まことに責任重大な、
“町を守る“お仕事です、けれど、も……
十手を持つ定町廻り(じょうまちまわり)を
花形とするなら、
橋廻りは閑職。
バカにされやすいお役目、なんですよねえ。
「むむゥ~…くやしいィ~!」
「がるるる!」(←訳:ぷんすか!)
今日もまた、平七郎さんたちは
定町廻りの役人たちから
ちょっとした嫌がらせを受けました。
橋げたの下に浮かぶ木切れの間に、
白い手が、ちらほら。
ああ……これは。
「あわわわッ!」
「ぐるるるがる~…!」(←訳:南無阿弥陀仏~…!)
いわゆる“土座衛門“を、引き上げて、
番屋へ運んで検死をしたら、
橋廻りは首を突っ込むな、と言われ。
しかも、
遺体の死因をろくに調べようとせず。
「むむゥ、それはァ~ひどいィ!」
「がっるるるるぐるるがる!」(←訳:怒っていいぞ平七郎さん!)
怒る、というより、
《謎》を放っておけない質の平七郎さんは
密かに調へ始めます。
哀れな遺体が橋の下に流れ着くまでに、
いったい何が起こったのか――
橋廻り、という役職から見えてくる、
江戸の町を、安寧を守ろうと努めた多様な職と、人びと。
新鮮な驚きをもたらしてくれる江戸のものがたり4選は、
時代小説好きな方々に、
歴史好きな活字マニアさんに、おすすめですよ。
お堀や橋脚、
忙しく川面を行き交う荷船を思い浮かべながら、
ぜひ、一読してみてくださいね~♪