「こんにちわッ、テディちゃでス!
よそうがいにィ~つらいィでスゥ!」
「がるる!ぐるるるがるぅ~!」(←訳:虎です!チクチクするぅ~!)
こんにちは、ネーさです。
黄砂の被害がけっこうキツくて、
ますます目薬なしにはいられなくなりました。
点眼をして充血が治まったら、
さあ、読書タイムですよ。
本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~♪
―― 『戦場のピアニスト』を救ったドイツ国防軍将校 ――
著者はヘルマン・フィンケさん、
原著は2015年に、画像の日本語版は2019年7月に発行されました。
独語原題は『ICH SEHE JMMER DEN MENSCHEN VOR MIR』、
『ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』と日本語副題が付されています。
先日ご紹介しました『映画になった恐怖の実話』は、
現実に起こった犯罪事件ばかりを収録した作品でした。
ヒトの世の業を見せつけられるような
暗いエピソードが続く中、
荒野に射す一筋の光とも思えたのが……
「ぴあにすとォ……!」
「ぐるがるるぐる!」(←訳:彼に救いの手が!)
ポーランド人のピアニスト、
ウワディスワフ・シュピルマンさんの半生は、
映画『戦場のピアニスト』によって
広く知られるようになりました。
この御本では、映画の終盤に登場し、
シュピルマンさんを救ったドイツ人将校――
ヴィルム・ホーゼンフェルトさんの生涯が、
書簡、日記、当時の写真資料などから
読み解かれてゆきます。
そう、ピアニストのシュピルマンさんが実在の人物であったように、
ホーゼンフェルトさんもまた、
映画のために作られた架空のキャラクターではなく、
実在の人物、だったのですが。
ホーゼンフェルトさんの生涯は、
映画の中で描かれた以上に過酷なものでした。
「げきせんちィ、なのでスゥ~…!」
「がるるぐるがる……!」(←訳:ロシアとの激闘……!)
ポーランドは、不幸なことに、
第二次世界大戦に於ける激戦地の一つとなりました。
ほぼ廃墟と化した都市ワルシャワを
国防軍将校の軍服に身を包み、
部下が運転する車を悠然と走らせながら、
ホーゼンフェルトさんが想ったのは。
戦争の、むごさ。
「ひそかにィ、しずかにィ~…」
「ぐるるがるるる!」(←訳:始めていました!)
自身が管轄する工場から
迫害と暴力を排除し、
助けを求めるポーランド人に通行証を与え、
追われて地下室に隠れていた者を市街へ逃がし、
食糧を与える。
シュピルマンさんは、
そうして”救われた者“のうちの一人にしか過ぎなかったのでした。
「でもォ、ちかづいてェきまスゥ!」
「がるる!」(←訳:敗戦が!)
シュピルマンさんを救って程なく、
ドイツ軍は撤退に取り掛かったものの間に合わず、
ホーゼンフェルトさんはソヴィエトの捕虜となりました。
かつてホーゼンフェルトさんに
命を救われたポーランドの人びとは
彼を救うべく運動するも、
相手は、ソヴィエト――強権をふるう共産主義という、
戦争に匹敵する怪物であったことがさらなる不幸でした。
そしてシュピルマンさんは、
誰が自分を助けてくれたのか、知らなかった――
命の恩人の名前を、知らなかったのです。
彼を救けたくても、手掛かりが、無い。
恩人が救いを必要としていることも、分からない。
ようやくホーゼンフェルトさんの名を知って後、
シュピルマンさんは自伝を出版しました。
そのときもまた、
政治的な理由から
ホーゼンフェルトさんの名前、
ドイツ人であることを伏せるよう強制されたほど、
“圧政“は続いていたのです。
「これがァ、せんそうゥ……!」
「ぐるる……」(←訳:泥沼だ……)
かつては純粋なナチ讃美者だったホーゼンフェルトさんが、
戦争の事実を知るにつれ、
志を変え、思いを変え、行動を変え、
辿り着いた場所。
『戦場のピアニスト』ファンの方々には必読の
“戦争の記録“です。
戦火がおさまらぬ今だからこそ、
どうか皆さま、ぜひ、一読を。