テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ ピアノの音は 荒野に~

2023-04-14 22:05:15 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 よそうがいにィ~つらいィでスゥ!」

「がるる!ぐるるるがるぅ~!」(←訳:虎です!チクチクするぅ~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 黄砂の被害がけっこうキツくて、

 ますます目薬なしにはいられなくなりました。

 点眼をして充血が治まったら、

 さあ、読書タイムですよ。

 本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~♪

  

 

 

   ―― 『戦場のピアニスト』を救ったドイツ国防軍将校 ――

 

 

 著者はヘルマン・フィンケさん、

 原著は2015年に、画像の日本語版は2019年7月に発行されました。

 独語原題は『ICH SEHE JMMER DEN MENSCHEN VOR MIR』、

 『ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』と日本語副題が付されています。

 

 先日ご紹介しました『映画になった恐怖の実話』は、

 現実に起こった犯罪事件ばかりを収録した作品でした。

 ヒトの世の業を見せつけられるような

 暗いエピソードが続く中、

 荒野に射す一筋の光とも思えたのが……

 

「ぴあにすとォ……!」

「ぐるがるるぐる!」(←訳:彼に救いの手が!)

 

 ポーランド人のピアニスト、

 ウワディスワフ・シュピルマンさんの半生は、

 映画『戦場のピアニスト』によって

 広く知られるようになりました。

 

 この御本では、映画の終盤に登場し、

 シュピルマンさんを救ったドイツ人将校――

 ヴィルム・ホーゼンフェルトさんの生涯が、

 書簡、日記、当時の写真資料などから

 読み解かれてゆきます。

 

 そう、ピアニストのシュピルマンさんが実在の人物であったように、

 ホーゼンフェルトさんもまた、

 映画のために作られた架空のキャラクターではなく、

 実在の人物、だったのですが。

 

 ホーゼンフェルトさんの生涯は、

 映画の中で描かれた以上に過酷なものでした。

 

「げきせんちィ、なのでスゥ~…!」

「がるるぐるがる……!」(←訳:ロシアとの激闘……!)

 

 ポーランドは、不幸なことに、

 第二次世界大戦に於ける激戦地の一つとなりました。

 

 ほぼ廃墟と化した都市ワルシャワを

 国防軍将校の軍服に身を包み、

 部下が運転する車を悠然と走らせながら、

 ホーゼンフェルトさんが想ったのは。

 

 戦争の、むごさ。

 

「ひそかにィ、しずかにィ~…」

「ぐるるがるるる!」(←訳:始めていました!)

 

 自身が管轄する工場から

 迫害と暴力を排除し、

 助けを求めるポーランド人に通行証を与え、

 追われて地下室に隠れていた者を市街へ逃がし、

 食糧を与える。

 

 シュピルマンさんは、

 そうして”救われた者“のうちの一人にしか過ぎなかったのでした。

 

「でもォ、ちかづいてェきまスゥ!」

「がるる!」(←訳:敗戦が!)

 

 シュピルマンさんを救って程なく、

 ドイツ軍は撤退に取り掛かったものの間に合わず、

 ホーゼンフェルトさんはソヴィエトの捕虜となりました。

 

 かつてホーゼンフェルトさんに

 命を救われたポーランドの人びとは

 彼を救うべく運動するも、

 相手は、ソヴィエト――強権をふるう共産主義という、

 戦争に匹敵する怪物であったことがさらなる不幸でした。

 

 そしてシュピルマンさんは、

 誰が自分を助けてくれたのか、知らなかった――

 命の恩人の名前を、知らなかったのです。

 彼を救けたくても、手掛かりが、無い。

 恩人が救いを必要としていることも、分からない。

 

 ようやくホーゼンフェルトさんの名を知って後、

 シュピルマンさんは自伝を出版しました。

 そのときもまた、

 政治的な理由から

 ホーゼンフェルトさんの名前、

 ドイツ人であることを伏せるよう強制されたほど、

 “圧政“は続いていたのです。

 

「これがァ、せんそうゥ……!」

「ぐるる……」(←訳:泥沼だ……)

 

 かつては純粋なナチ讃美者だったホーゼンフェルトさんが、

 戦争の事実を知るにつれ、

 志を変え、思いを変え、行動を変え、

 辿り着いた場所。

 

 『戦場のピアニスト』ファンの方々には必読の

 “戦争の記録“です。

 戦火がおさまらぬ今だからこそ、

 どうか皆さま、ぜひ、一読を。

 

 

 

コメント
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