喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『安寿姫』だった。

2022-05-12 09:54:12 | 懐かしい話
昨日、柳人の中野さんが持ってきてくださった本『おまけの名作』(坪内稔典著)を読み始めた。



「カバヤ文庫物語」とサブタイトルがついている。
読み始めてすぐに「そうだったのか!」と思った。
←二段階クリック。
70年近くも昔のことが思い出されたのである。
こう書かれている。
《ガラスケースの菓子箱のなかに、ずらりと並んだ百冊を超す「カバヤ文庫」は、そのハードカバーゆえに…》と。
わたしはカバヤキャラメルをせっせと買って点数を集め「カバヤ文庫」を集めたのだったが、てっきりカバヤの会社に送って、郵送してもらっていたのだと記憶していた。
しかしこれを読むと違ったのだ。キャラメルを売っている店に置かれてあって、その中から選んだということ。
そこでありありと思い出した。
わたしが求めていたお店も忘れていたが、あれは用海小学校の西の安西さんという家だった。
そこが文房具屋さんをしていて、キャラメルなども置いておられたのだ。
ガラスケースだったかどうかは覚えていないけれども、店に置いてあったのだ。
それをわたしが選んでいるのを見た安西さんのおじちゃんが「これがいいぞ。悲しくて泣けるぞ」と言って、もらって帰ったのが、
『安寿と厨子王』だった。実際に悲しくて感動したのを今も覚えている。
後に原作の森鴎外の「山椒大夫」を読み直したのだが、カバヤ文庫ではダイジェスト版だった。
『安寿と厨子王』と書いたが、これも記憶違い。
この本の巻末に載っている「カバヤ文庫」書目一覧表には『安寿姫』と出ている。
昭和28年発行。わたしは四年生だ。
解説を書いている人が川田順だと。因みに川田順の直筆ハガキをわたしは所持している。

そうだった。入手したのは安西さんの店だった。
おじちゃんに勧められたのだった。
この安西さんのおじちゃんは父親の友人だったが、その後、わたしの人生の中で大きな影響を及ぼす人になる。
フルネームは「安西寿」。ある種のパワーのある個性的な人だった。
コメント
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