喫茶 輪

コーヒーカップの耳

詩集『春雷』

2022-05-28 11:24:49 | 
牧田栄子さんの詩集『春雷』です。



澪標から2005年に発行されたもの。
「おもいでをありがとう」という詩があります。
←クリック。
震災の記憶が漂っています。切ないですね。

これは「やめた」。
←クリック。
最終行、「くやしいったらありゃしない」のユーモアに拍手。
わたし、詩の中のかすかなユーモアが好きなんです。

そして「予感」。
←クリック。
これは保育所勤務が終りに近づいたころの詩でしょうか。しみじみと読めます。
上記三つの詩は、ページが並んでいます。
どのページを開いてもいい詩が載っているというわけです。
それから私が感心したのは短詩の群れです。鮮やかな手つきで草花に命を与え、しかもユーモアを漂わせて。
牧田さんが「今村さんに読んでほしい」と言われたわけが分かります。

その短詩の中から一篇紹介しましょう。

   「ぶどう」
  薄い皮
  黒紫いろに渋い
  重い
  ふくらませたのは
  太陽か
  グルメか
  ひとつぶとれば
  エントリーぜんぶが
  はずれそう
  そのまえに
  話を聞こうか
  一番下のでっかいのから


あ、もう一つ。

    「貝のボタン」
  裁縫箱の引き出しで
  カタコト

  あの時代
  ネクタイするとき
  ひかっていた
  玄関を行く姿
  いつも
  新鮮だった
  やわらかな白い麻
  似合っていた

  引き出し開けるたび
  カタコト


この詩集の中で最もわたしが好きな詩です。

『コーヒーカップの耳』おもしろうて、やがて哀しき喫茶店。
コメント (1)
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