◎すべて彼女のために(仏Pour elle 英Anything for Her 2008年 フランス)
人間は愛する者のためにどこまで法を犯す覚悟ができるのか?
という主題なんだけど、
まあなんとも簡潔な主題と題名と粗筋だこと。
けど、
ヴァンサン・サンドンが国語教師という知的な職業人ながらも、
うだつのあがらなそうな風采の中年男であり、腕力にも自信のないことに対して、
ダイアン・クルーガーのほぼ完璧といっていいほどの美貌と繊細さは、
夫をして妻を救うために人生を賭けさせるだけのものがあると、
観る者におもわせてしまう演出力には感服するほかない。
とはいえ、
出だしの濡れ場は必要といえば必要なんだけど、
不可欠かといえばそうでもないような気もするし、
このあたりは、フランス映画だからええやんって詞に集約させる。
また、途中の、
チンピラを殺害してまで目的を渡航費を得ようとするのは、
う~ん、どうしたもんだろね~とおもっちゃうんだけど、
このあたりも、フランス映画だからええやんって詞でかわすしかないな。
でも、そんなこまかいことはどうでもよくて、
全編を通して、
その疾走感と緊迫感と哀惜感に、
なみなみならないものがあったことは、事実だ。