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善魔

2014年05月15日 15時22分44秒 | 邦画1951~1960年

 ◇善魔(1951年 日本)

 三國連太郎、デビュー。

 作品中の新米記者三國連太郎の役を演じたことで、

 そのまま芸名になったという記念すべき作品ながら、

 ちょっと中途半端な印象の残る作品な気もするんだよね。

 主人公の森雅之がなんとも消化不良な役回りで、

 正義感はあるし、社会の矛盾を糾弾しようとしてるのに、

 愛人なのか彼女なのかわかんないけど、

 ともかくさほど愛しているともおもえない小林トシ子と、

 つかずはなれず、粘着感ありありの関係を結び続け、

 そのじめじめした性格のとおり、

 大学時代に惚れていた淡島千景が官僚の妻になってるのに、

 それでも忘れられずにいたところ、

 疾走別居とかいうニュースを手にするや、

 部下の三國連太郎を遣って取材させるんだけど、

 それはなにも官僚のスキャンダルを暴こうとするんじゃなくて、

 あくまでも自分のためで、あわよくばモノにしたいような感じが濃厚に漂う。

 これが善魔っていうには、あまりにもしょぼいんだけど、

 一方、三國連太郎の相手役になる淡島千景の妹役桂木洋子は、

 黒澤明の『醜聞』とおんなじで清純無垢かつ病身薄幸の可憐な美少女なんだけど、

 彼女が死ぬことがクライマックスにもってきてる以上、

 どうしてもこのカップルに物語の比重が掛かってくる。

 なんというのか、物語の構成がちょっとまずったんじゃないかって気もするわ。

 ただ、岸田國士の原作を読んでないから、

 脚本がよくなかったのかどうかってところはよくわからない。

 まあ、森雅之が、正義を旗印にしてそのとおりに行動しながらも、

 愛欲ばかりはどうにもならないっていう葛藤に苛まれるなら、

 もうすこし惹かれるものがあったかもしれないんだけどね。

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