◎みえない雲(DIE WOLKE 英題The Cloud 2006年 ドイツ)
1986年にチェルノブイリで放射性物質漏洩事故があって、
それをもとに1987年、ドイツでヤングアダルト向けの小説が出た。
これがさらに漫画化され、映画の原作にもなるんだけど、
ちょっと民度っていったら怒られるかもしれないが、
さすがにドイツはちゃんとしてるとおもった。
日本が舞台だったら、
こういう小説は出せたところで読者は限られるだろうし、
さらにいえば、テレビドラマ化なんてことはまずもって考えられない。
映画になったとしても、観客はやはり限られちゃうだろう。
で、日本では、小説も漫画も出版され、映画も公開された。
反響はどうだったかといえば、まあ、そんなところだ。
原子力発電所が放射性物質の漏洩事故を起こさないという絶対的な保証はない。
漏洩した放射性物質を大量に含んだ雲が町や野を覆って雨を降らせ、
これによって被曝した人々が大量に出、
つぎつぎに悲惨な結果を迎えることだってありえる。
ちなみに、
主演したパウラ・カレンベルクは、
チェルノブイリ事故のとき、胎児だったそうだ。
美しく健康的な外見ながら、
心臓に穴が開いた状態で生まれ、片方の肺はなかったらしい。
でも、がんばって映画の主演を果たしてる。
原作は、ドイツ児童文学賞を受賞し、
映画は、ドイツ映画賞2007で最優秀青少年向け青春映画にノミネートされた。
ドイツでは、
制作者側も観客側もきわめて冷静で、
原子力に対して賛成とも反対ともこの映画を核にして声高な議論はないはずだ。
それでいい。
映画は、
原子力発電所の事故にたまさか巻き込まれてしまった人々の悲劇を、
淡々と追いかけているだけなんだから。
受賞についても、製作についても、感想についても、
すべてをひっくるめて、さすが、ドイツだ。
できれば、日本でもヒットしてほしかったんだけど、
なんで、そうならなかったんだろね?