水納島のパーラーで、「沖縄そば一つ。」を頼んだ。
店のおじさんと何やら話し込んでいた人が、私の声に振り返った。
「あれ、○○さん!」と、随分驚いた表情。
「転勤が急だったので、挨拶も手紙だけで失礼しました。」
彼は、かりゆしの仕事姿。私は、すっかり水着姿。
親しくお世話になった方でしたが、一か月前に横浜への急な転勤(内示は1週間前)でご挨拶もできずにいたところ、水納島で再開するとはさぞ驚かれたと思う。
水納島でちょっと問題が起きているという。
夏場のシーズンになると、青いパラソルが数多く並んでいる。
船が着く度に、海水浴客に呼びかけ、青いパラソルを無料で貸すグループがいる。
「向こう(地元)は1000円も取りますからね。こちらは無料ですよ!」
こっちは、5月の水納島。
青いパラソルは無く、島の人たちが有料で貸し出しているパラソルがチラホラ。
水納島では、島の人たちが、海水浴客の安全を守るために、船が着くたびに海水浴客へ注意事項を伝え、監視員を配置している。救助用のボートも、浮き輪が流されたときの水上バイクも、島の人たちが全て負担して運営している。海岸の清掃も島の人たちが頑張っている。
パラソルやライフジャケットの貸出料金は、観光客の安全確保に必要な収入源なのだ。
島に着いた海水浴客の安全のため、注意事項を説明している島の人たち。干満やゆっくりとした潮の流れがあること、浮き輪やボールが風で流されたとき無理せずに知らせてほしいなど親切だ。
ところが、ここ数年、儲かる夏場だけ島外のグループがやって来て、無料で青いパラソルを配布する。その後、この青いパラソルを目印に店の人がやってきて、高額のマリンスポーツや飲食物の勧誘を行う仕組み。島の人たちは困っているようだ。
夕方になり、最終の船が出た後は、島のおばあが貝殻屋の店じまい。
貝殻が詰まった小さな空き瓶を、お土産に買いました。
200円の値札に、商品を出した(貝殻を詰めた)おばあの名前が書いてあるのが、かわいらしかった。
夜、新月の空には、満天の星。
天の川が、流れている。
東南アジア、台湾から沖縄を通り、ミクロネシア、ポリネシアへと文化が伝わり、羅針盤の無い時代は、星を見て方位を判断し、航海したという。
街灯のない水納島の星空は、最高!だと思う。
翌朝、民宿を立ち、一泳ぎした後は、島の雑貨屋さんでとんぼ玉をお土産に買い、島の東に向かう。
こちらは、こんもりとした森になっている。
島の自然や暮らしは、雑貨屋さんの日記が面白い。
海と島の雑貨屋さん
森の中の道を、東に向かって歩く。
この島にはハブは確認されていないと聞いていたが(雑貨屋さんの日記を読むと不安になるが)、歩くにつれ、ガサゴソ草むらで音がする。
クモの巣は気にならないけど、沖縄で草むらのガサゴソは不安だ。
やっととらえたガサゴソの正体は、コレだった。
本人は隠れたつもりだが、大きなハサミが見えている。
オカガ二君だった。
だんだん心細くなる道をさらに進んでいくと、突き当たりに灯台があった。
ここは、引き返すしかない道だった。
帰り道、オカガ二君の哀れな姿を見つけた。
カラスにやられたのだろうか。
食べ残しも、小さな虫達には、大事な食糧なのだろう。
島で暮らしている生き物には、それぞれが必要な存在だ。
森の道を脇にそれ、拝所、御嶽のようなところを過ぎると、浜の入り口に妙な植物があった。
赤い花が咲いているように見えるけど、実は違う。
葉っぱの付け根部分が赤く染まって、花のように見える。
強風でも散らない、丈夫な花だ。賢い植物だ。
ショウジョウソウ(猩々草)という名前らしい。
砂浜に出て、船着場まで海岸を歩く。
当分、この島にも来れないだろう。
いつまでも自然豊かで、きれいな島であることを願う。