おばあから、電話がかかって来た。
三枚肉を作った、という。
珍しくお客さんが誰も来なかったので、おばあからいろいろな話を聞いた。
山羊専門店を出す前は、名護の公設市場でレストランをやっていて、いろいろな料理を出していた。
当時の沖縄の人たちは、山羊は会社の職場などで自分たちで料理をしていた。
冷蔵庫も冷凍庫もない時代だったので、すぐに食べないと傷んでしまうものだった。
沖縄は、お正月や小学校入学祝いなどのお祝い事には山羊が欠かせない。
55年前に、初めて山羊料理の専門店を出した。山羊肉の刺身と山羊汁だけ。
ヨモギ入れるのもウチが最初。当時から値段は千円。今も。
山羊肉は臭うので苦手という人がいるのが、不思議だ。
3年前に内地から競輪の選手が大勢、山羊を食べに来た。どれだけ臭いのかと来てみたら、全く臭わないと驚いていた。
調理場は、綺麗に磨いて消毒する。野菜も葉っぱ一枚ずつ洗う。ゴーヤも塩で揉んでから出す。
夏場は特に神経を使っており、55年間保健所から言われたことはない。
店は借地なので古いままで手直しもせずに見かけは悪いが、調理場はピカピカ。
……そして、重大な話を聞いた。
来年2月か、3月には、閉店するという…。
10年前から地主さんから立ち退きを求められていて、頑張って営業を続けてきたが、閉店するという。店の周囲は大きなマンション建設が進んでいるから、この場所も駐車場か何かに変わるのだろうか。
閉店後は、緑街の2号店で、15時くらいから店を開けて営業を続けるとともに、大きな店も探す。
この店の山羊料理を楽しみに、遠くからやって来る人もいるのだから、閉店の予告は早めに出してくださいね。
55年続いた、味のある古い店が、とうとうなくなってしまうのか。