今年の運転士全員の共通目標は「扉事故の撲滅」である。昨年を振り返ってみると、個人的にはとても耳が痛い、頭が痛い、心が痛い… そんな目標である。
あるバス停で一人の学生が乗って、財布から100円玉を2枚取り出したところで「キン! カン! コロコロ…」と、1枚の100円玉が逃げ出してしまった。彼はすぐに捕まえて運賃箱へ… とはいかなかった。100円玉が何処かに隠れてしまったらしく、彼の動きが止まっていたのである。
「きっと、開いて折り畳まれた前扉の下にあるのだろう」と思った私は「扉を閉めますね」と彼に言った。扉が閉まると同時に100円玉が姿を現し、「見ぃ~つけた!」と言わんばかりに彼が手を伸ばしながら一歩踏み出し… と、その時! “完全に閉まりきっていなかった”扉のセンサーが反応して、再び扉が開き始めたのである。
ゲゲッ! 悪夢再び!? それでも私は動けなかった… が、今回は彼の反射神経が良かったこと(前回の女性は携帯の操作をしていた)、ノンステップバスであったこと(前回はステップと扉の間で足を挟んでしまった)などの幸運が重なり、何事もなく済んだ。
何か予想外のことが起こると、どうしても“一つのこと(もの)”に神経が集中してしまう。もう、これは直そうと思っても直せるものではない… かもしれない。ならば、扉の開閉前には一呼吸おいて“ちょっと考える”べきだと思うのだが… バスの運行途中では、なかなかそこまで落ち着けないのが現状で… それでも事故が起こってからでは遅いし… むぅ…