「首振り3年、コロ8年」の先がある。「ロの音10年」。
豊橋のMさん、岡山の国際尺八研修館での「国際尺八
フェスティバル」に参加して、アメリカ人の尺八家、ジョン・
海山・ネプチューンの「尺八の練習方法」という講習を受け
てきた。今や、外国人に尺八を習う時代なのだ。
彼の話では、「ロの音に50分」という。
全部の孔を閉めて出す筒音は、まず竹が良くなければ鳴らない。
多少悪くても、技術と努力で鳴らす。鳴ってくるまでに、毎日
50分、ロの音ばかり吹く。それからいろいろ練習すべき課題が
あって、ネプチューンは毎日10時間、基礎トレーニングを積ん
だという。日本人顔負けである。それまでの尺八界では、わけ
のわからない地歌、箏曲を吹くだけで、こうした基礎トレーニ
ングを教えるところは無かった。
名古屋駅前は格好の練習場所。日中は、人通りも多く、道行く
人の足も速い。通り過ぎる瞬間に聞いてもらえる音は一音ぐらい
だ。「一音成仏」一音でどれだけ相手の心に届くかの真剣勝負。
ロングトーン、笹吹き、楔吹き、ロの音だけでも十分なのだ。
メロディはかえってうるさく迷惑に響く。ロの音50分の練習が
可能なのだ。
「首振り3年」はポピュラーだが、その続きを知っている人は
少ない。いや稀にいるので驚く。
名古屋駅で立っていたら、若い男性が近づいて来て、喜捨を
され、丁寧に手を合わせてから「コロお願いします」と。
講演でこの話が一番うけた。「ころ」というと名古屋では「コロ
うどん=かけうどん」のことだから。
「コロ」とは、尺八の下の方の第1孔と第2孔を交互に開閉して
出す。これが「ころころころ」と転がるように聞こえるように
なるには、熟練を要す。交互に指を開閉するのだが、必ずどちらか
の指がふさがっていなければならない。
さて「尺八習っているのですか?」と問い返すと「以前習って
いたが、コロができなくて止めてしまった」とのこと。
それならばと、実演しておみせしようといきりたったが、しまった
今日は2尺4寸の長管で、スーパー尺八だから、手孔が大きくて
うまくコロができない。試された。ザンネン。