日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

事業を危うくさせるのは、ライバル企業とは限らない

2017-03-05 20:22:30 | ビジネス

宅配物流最大手のヤマト運輸が、検討している「荷受け量の制限」という問題。
思わぬ波紋を「通販事業」に及ぼしている。

そもそもヤマト運輸が「荷受け量の制限」を検討するコトになったのは、Amazonからの荷受け量が多すぎるため、だと言われている。
確かにここ数年で、EC事業の主役は、楽天からAmazonへと移り変わった感がある。
その大きな理由は、Amazonの「送料無料」となる価格設定が安い、ということがあるだろう。
もちろん楽天に比べ、Amazonのほうが安いとか、ECサイトのポータルサイトのような作りのAmazonのほうが、価格の比較検討がしやすい、何よりプライム会員になると「お急ぎ便」が利用でき、夜注文をしても翌日には届く、「スピード配送」は、利用者にとって便利で利用したい!という、気にさせるのだろう。
その結果、Amazonへの注文が楽天よりも多くなっている、という傾向はある意味当然かもしれない。

そのしわ寄せが、ヤマト運輸に集中する結果となっている、というのは利用者側から見た時、なかなか見えにくい問題になってしまっている。
だからこそ、今回のヤマト運輸の「荷受け量の制限」や配達時間指定の見直し、というのは利用者だけではなく社会全体の問題として、クローズアップされているのだと思う。
なぜなら、いくらITが進んでも「物を運ぶ」という事業は、人に頼らざる得ないからだ。
アメリカのAmazonは、ドローンを利用した物流システムを検討しているようだが、ドローンを利用するためには米国のような広大な場所でなくては、逆にリスクが高いように思う。
理由は、ドローンが何等かのアクシデントで落下事故を起こした場合、米国で想定される被害よりも日本で想定される被害のほうが大きいように思うからだ。

また、一部で言われているように、「再配達を減らす」ことで問題が解決する、ということだろうか?という、疑問もある。
「再配達」そのものの量が減れば、配達員の「時間・労力」は各段に軽減されるはずだ。
それは事業収益という点でも、大きな改善を生むコトになるだろう。
しかし、根本的な「荷受け量」そのものが、減らなければ問題の根本的な解決には、結びつかないような気がするのだ。
むしろ、EC産業そのものが伸びれば伸びるほど、物流産業は疲弊し事業が衰退していくような気が、してならないのだ。
その理由は「物流事業にかかる費用」を、利用者側が実感していない、と考えられるからだ。
上述した通り、日本における「物流事業」には、多くの人手がかかる。
その「多くの人手」にかかるコストを、公平に負担しなくては、物流事業者にかかる負担は大きくなるばかりで、撤退を検討する事業者が出てくる可能性があるからだ。
実際、昨年佐川急便はAmazonから撤退をしている。

EC産業の市場が拡大すればするほど、EC事業そのものが危機に陥る危険がある、という現実は、これまでとは違う発想で問題を解決するのか?はたまた「物流コストの見える化」を図ることで、物流コストを利用者とEC事業者とで公平負担をするのか?
今回のヤマト運輸の「荷受け量制限」は、問題提議をしているように思う。