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「和風」にすることが、道徳につながるわけではない

2017-03-31 19:43:49 | 徒然

先日、道徳の教科書の一部が訂正されたことで、教科書認定がされやすくなった、という内容の記事が新聞各紙に掲載されていた。
朝日新聞:パン屋「郷土愛不足」で和菓子屋に 道徳の教科書検定
パン屋さんから和菓子屋さん、アスレチック施設から和楽器店という変更をした教科書が、認定されたという内容の記事で、同様の報道は他紙でもされていた。

おそらくこの記事を読まれた方の多く(であってほしい)は、パン屋に「郷土愛が不足しているの?」という、疑問を持たれたのではないだろうか?
というのも、焼き立てパンを販売するパン屋さんだけではなく、最近では製パン会社もこぞって「国内産小麦」の商品を積極的に展開しているからだ。
その中でも特に北海道産の「ゆめちから」という品種の小麦を使ったパンは、ここ2,3年人気となっている。
この「ゆめちから」という品種は、北海道の農業研究センターが13年もの歳月をかけて作った、強力粉用の小麦だ。
それまでパン用の小麦粉(=強力粉)の多くは、輸入に頼らざる得ない状況だった。
同じ強力粉を使って作る「うどん用」の小麦の生産も低下しているようだが、製パン用の強力粉用の小麦粉は、日本で栽培するコト自体が難しい、と言われてきた中で誕生したのが「ゆめちから」という品種だった。

それだけではなく、今の人気パン屋さんに行くと「米粉パン」など、日本の主食である「米」を使った商品も数多くある。ホームベーカリーの機種によっては、「ごはんからパンを作る」という機能もある。
ハンバーガーショップの一つモスバーガーには、「ライスバーガー」というバンズ(=パン)の代わりに焼きおにぎり風のごはんを使った商品もある。
パンの「日本風食化」は、随分進んでいるのだ。
和菓子店で使っている原材料の一部は、輸入に頼っているものもあるはずなのだ。
そうなると、「パンとパン屋」に「郷土愛がない」とは言えないような気がするのだ。

もう一つの「アスレチック施設」を「和楽器店」に置き換えたコトも、視点がずれているような気がする。
そもそも「アスレチック施設」と「和楽器店」とでは、どちらのほうが親しみがあるのだろう?
おそらく多くの人にとっては「アスレチック施設」なのでは、ないだろうか?
「和楽器」そのものを市中の楽器店でも扱ってはいないし、和楽器を見たコトがあるという児童・生徒はどのくらいいるのだろう?
それほど、遠い存在である和楽器なのに、あえて和楽器店とする意味はどこにあるのだろう?

「道徳」という授業でどのようなコトを教えるつもりなのかは、よくわからないが、「パン屋⇒和菓子店」のような枝葉末節の部分ばかりに注目し、肝心な幹となる部分が見えてこない。
一番の問題は「郷土愛」というモノを、学校の道徳の授業で教える、ということだと思う。
「郷土愛」というモノは、地域社会の中で子供たちが自然に身に着けるようなモノではないのか?
他にも「社会科」の授業などで、地元の産業や社会見学などを通して、地域社会の事を学ぶことで身に付いていくのでは?
それをあえて「道徳」という授業で、やろうとすることのほうが、無理があるような気がする。